高麗茶碗の多くは日本からの注文で作られた器です。
参考)茶道 表千家 (茶事~稽古&#6…
高麗茶碗は釉薬、形状、模様の3つの基準で分類されます。17世紀に入る頃から本格的に分類が始まり、江戸時代には約100種類あったものが、現在では20種類ほどに整理されました。
参考)高麗茶碗(こうらいちゃわん)とは|日本の茶道で愛された茶碗の…
代表的な分類は次の通りです。
つまり見た目の特徴で分けられているということですね。
興味深いのは、高麗茶碗という名称ですが、実際には高麗王朝時代に作られたものはほとんどありません。大半は15~16世紀の李氏朝鮮時代に焼かれたもので、「高麗」は単に「朝鮮渡来」という意味で使われています。
朝鮮半島では白磁や青磁を目指して作られた日常雑器が、日本では茶の湯のための茶碗として見立てられ、独自の美意識で価値づけられました。
割高台茶碗や一部の作品は、日本からの注文に応じて作られたと考えられており、高台内の削り跡に工夫が見られるものは注文品の特徴です。
参考)李朝割高台茶碗 – Tea Bowl with …
井戸茶碗は高麗茶碗の中で最も有名で、朝鮮陶磁器の中で唯一日本の国宝に指定されています。「一井戸二楽三唐津」という言葉が示すように、茶人の間で最高のものとされてきました。
参考)井戸茶碗(いどちゃわん)とは|高麗茶碗で人気の高い種類の特徴…
井戸茶碗には7つの条件があります。
これらの条件を備えたものが井戸茶碗と呼ばれます。
梅花皮とは、焼成時に釉薬が収縮して表面に粒子状の縮れが生じた状態で、刀剣の柄に巻かれるエイの皮に似ていることからこの名称がつきました。藁灰釉が完全に溶け切る前の段階で焼成を終えることで生じ、釉薬を厚く施すことにより発現しやすくなります。
井戸茶碗はさらに細かく分類されています。
参考)茶の湯名椀「高麗茶碗」
大井戸が原則です。
熊川茶碗(こもがい)は、腰が丸く口縁が外反した独特の姿をとり、見込みに茶溜りと呼ばれる円形のくぼみがあることが特徴です。名称は朝鮮半島東南部の慶尚南道にある地名・熊川に由来しますが、茶碗の呼び名となった理由ははっきりしていません。
熊川茶碗は井戸茶碗と互角の貫禄を示し、品位のある点で古来茶人の間に賞美されてきました。
参考)https://turuta.jp/story/p-chawan-korea-comment2
胎土はオレンジがかった明るめの茶色で、熊川などと比べると粒子が粗く、持って軽いのが特徴です。釉は失透ぎみでグレーもしくは玉子色に発色したものが多く、使い込まれたものは雨漏りの景色を呈します。
やや厚手で、高台も竹の節のような作りががっしりしており、高台は土見せで釉薬がかかっていません。高台内は丸削りになっていて特色があり、『見知紗』には「熊川高台の内に薬なし、土色大かた白し」と記されています。
熊川茶碗の上手物で、磁釉がきれいなものは玉子手と呼ばれます。ただし、素朴な味わいを損なうので、わび茶では上手物であればよいわけではありません。
端反りの口辺が茶を飲むのによく、天目風の面影のある上品な姿が印象深かったため、熊川は茶人に特に親しまれ、古唐津や古萩でも熊川形を真似たものが多く作られました。
三島茶碗、刷毛目茶碗、粉引茶碗は、いずれも粉青沙器という技法で作られた高麗茶碗ですが、装飾方法が異なります。
参考)茶碗の産地分けでよく聞く唐物、高麗物、和物(国焼)の違いは何…
三島茶碗は象嵌技法による模様が特徴で、上品な印象を与えます。素地に文様を彫り込んだり押し込んだりして白土を埋め込む技法で作られ、細かな幾何学模様や草花文様が特徴的です。
参考)高麗茶碗を売るなら今がチャンス?和物とは違う魅力と、茶人に評…
刷毛目茶碗は、素地の上に白泥を刷毛で塗った装飾が施されています。刷毛の跡が縦や横に残り、リズミカルな線模様が生まれることが魅力です。
粉引茶碗は、鉄分の多い素地全体に白泥をかけた後、透明釉を施したもので、柔らかく温かみのある白色の表情が特徴です。柔らかい表情が好まれる一方、評価額はやや抑えられる傾向にあります。
これが基本です。
これらの茶碗は、朝鮮半島では白磁や青磁を目指して作られていましたが、日本の茶人は素朴で作為のない美しさを見出し、茶の湯の茶碗として高く評価しました。
実用的な良品の高麗茶碗を探す場合、数万円以上の価格帯から探すことがおすすめです。この価格帯からが美術品としての価値も満足できるレベルになります。
参考)美術館が教える骨董品のおすすめの買い方|初心者向けにお店と価…
陶磁オンライン美術館では高麗茶碗の種類ごとの詳細な写真と解説が掲載されています
伊羅保茶碗(いらぼちゃわん)は、鉄分の多い砂まじりの臓土で作られ、やや厚手で深めの形が特徴です。胴で張らずに腰からまっすぐ口までのびているため、口が大きく開いた感じがあります。砂まじりの素地は寂びの味を加えるだけでなく、茶が点てやすく、茶碗としての機能性にも優れています。
古伊羅保、黄伊羅保、釘彫伊羅保、片身替など複数の種類があります。
参考)茶の湯に使う茶碗にはどんな種類がある?査定のポイントは?
堅手茶碗(かたで、かたて)は、磁器のように硬いことが特徴で、厚塗りのまだらな釉が景色を出しています。秀吉の朝鮮出兵に関わって日本に伝わりました。
参考)茶碗の種類や名称を豊富な写真で解説「茶碗鑑賞の知識:1」
割高台茶碗は、三角に切れ目を入れた十字の高台を持つのが最大の特徴です。胴に入る細かな貫入と腰付近のゆず肌になり小さな孔が点在することも見分けるポイントです。高台付近には釉薬が大きく縮むことで美しい梅花皮(かいらぎ)が咲きます。
十字につくられた高台は生焼けを防ぐ目的などから内側を削り取られた丁寧な作り込みで、そのほとんどは日本からの注文であったと考えられています。
結論は日本の茶人の好みで生まれた器ということです。
呉器茶碗(ごきちゃわん)やととや茶碗も、秀吉の朝鮮出兵に関わって日本に伝わった種類です。ととや茶碗は形の上から、本手ととやと平茶碗のととやに分けられ、本手ととやは概して大ぶりで、締まった小ぶりの作は少ないだけに尊ばれます。
見込みには目が瀟洒に並び、内外にわたって引き目の細筋が美しいことが見どころです。本手ととやはその作風から、釜山付近で焼かれた茶人の切り形による一種の御本茶碗とみられています。
御所丸茶碗は、高台外側が不整の丸で、内側は箆削りで五角になっていることが特徴です。織部所持の古田高麗が御所丸の本歌として有名で、御所丸の多角の高台はこれを手本にしておいおい形式化されたものとみられます。
高麗茶碗の種類を見分ける際は、高台の形状と釉薬のかかり方を最初に確認することが効果的です。
高台内に釉薬がかかっているものは、白磁や青磁を狙って作られた朝鮮本来の作品です。逆に高台周りや高台内に釉薬がかかっていないものは、日本からの注文品である可能性が高くなります。
高台の形状による見分け方は以下の通りです。
高台の内外に梅花皮(かいらぎ)があれば井戸茶碗または割高台茶碗です。
釉薬の色と質感も重要な手がかりです。枇杷色なら井戸茶碗、グレーや玉子色なら熊川茶碗、白泥の刷毛目模様があれば刷毛目茶碗、象嵌模様があれば三島茶碗と判断できます。
口辺の形状も見分けのポイントになります。端反りの口辺は熊川茶碗の特徴的な形状で、天目茶碗の影響を受けています。口辺を内外から押してグルリと一周して土を締めた跡がある場合、割れを防ぐための工夫で、日本からの注文品の可能性があります。
初心者が実際に購入を検討する場合、信頼できる骨董店や美術館のミュージアムショップを利用すると安心です。数万円以上の価格帯から実用的な良品が見つかりますが、購入前に実物を手に取って高台の作りや釉薬の状態を確認することが大切です。
野村美術館の谷館長による高麗茶碗の解説動画では、実物を見ながら鑑賞ポイントを学べます
高麗茶碗は「ゆがみ」や「作為のなさ」が価値とされるため、完璧すぎるものより素朴な味わいのあるものが好まれる傾向があります。これは中国の官窯磁器のように整ったものを良しとする美意識から、わび茶の美意識への転換を示しています。