藁を乾燥させずに燃やすと灰が5分の1しかできません。
藁灰は稲藁を燃やして得られる灰のことです。陶芸の世界では釉薬の重要な原料として古くから使われてきました。
主成分は二酸化ケイ素(シリカ)で約50~60%を占めます。これが釉薬にガラス質の光沢を生み出す要素です。その他、酸化カルシウムやカリウムなどのアルカリ成分も豊富に含まれています。
つまり藁灰は天然の融剤です。
市販の藁灰もありますが、1kgあたり2,000~3,000円程度かかります。
自作すれば材料費はほぼゼロです。
田んぼが近くにあれば、収穫後の藁を譲ってもらえる可能性もあります。
自分で作った藁灰を使った釉薬は、市販品とは違う独特の風合いを生み出します。
これが陶芸家にとって大きな魅力です。
まず乾燥させた稲藁が必要です。
生藁や湿った藁では完全燃焼しません。
水分が残っていると、燃焼温度が上がらず炭化してしまいます。
理想的な水分含有率は15%以下です。
触ってパリパリと音がする状態が目安になります。
藁は約5kg用意すれば、最終的に500g程度の灰が得られます。
燃焼用の容器は一斗缶がおすすめです。ホームセンターで500円程度で購入できます。底と側面に直径2cm程度の穴を10~15個開けておくと、空気の流れが良くなって燃焼効率が上がります。
その他に必要な道具。
安全面の準備も重要です。燃焼場所は風下に民家がない、広い屋外を選びましょう。コンクリートやレンガの上で作業すると、地面への延焼リスクが減ります。
消防署への届け出が必要な地域もあるので、事前に確認が必須です。
最初に一斗缶を安定した場所に設置します。缶の下にレンガを数個置いて、地面から10cm程度浮かせると空気が入りやすくなります。
藁は一度に全部入れず、少しずつ追加していく方式が効率的です。
手順は以下の通りです。
燃焼中は絶対にその場を離れないでください。
風が強い日は避けるべきです。風速5m以上だと火の粉が飛び、危険度が一気に上がります。曇りで風の弱い日が理想的な気象条件になります。
黒い炭が残っている状態で火を消してはいけません。
灰の品質が大きく下がります。
完全に白くなるまで燃やし切ることが、純度の高い藁灰を作る秘訣です。
陶芸三昧 - 藁灰の作り方実践レポート
実際の燃焼時間や煙の様子など、現場のリアルな状況が写真付きで紹介されています。
燃焼後の灰には、未燃焼の炭や藁の茎の硬い部分が混ざっています。
これらの不純物を取り除く作業が精製です。
まず粗いザル(5mm目)で大きな異物を取り除きます。次に中目のザル(2mm目)、最後に細かいザル(0.5mm目)で段階的にふるいます。
この方法で不純物の90%以上が除去できます。
さらに純度を上げたい場合は、水簸(すいひ)という方法を使います。灰をバケツに入れて大量の水を加え、よくかき混ぜた後に30分放置してください。重い不純物は底に沈み、細かい灰は水に浮遊します。
上澄み液をゆっくり別の容器に移し、沈殿物は捨てます。
この作業を2~3回繰り返すと、釉薬に最適な純度の藁灰になります。最後に天日干しで完全に乾燥させることが必須です。湿気が残っていると、保管中にカビが生えたり固まったりします。
保管は密閉容器で行います。ガラス瓶やプラスチック製の保存容器に乾燥剤と一緒に入れ、直射日光の当たらない涼しい場所に置きましょう。
適切に保管すれば5年以上使えます。
藁灰釉は日本の伝統的な釉薬の一つです。淡い黄色から緑がかった色合いが特徴で、柔らかく温かみのある仕上がりになります。
代表的な藁灰釉の配合例は、藁灰40%、長石40%、カオリン20%です。
この比率が基本形です。
焼成温度によって発色が大きく変わります。1,200℃以下の還元焼成では青みがかった緑色、1,250℃以上では黄色みが強くなります。酸化焼成の場合は全体的に明るい黄土色になる傾向があります。
どういうことでしょうか?
還元焼成とは窯の中の酸素を少なくして焼く方法で、釉薬中の金属成分が変化して独特の色を生み出します。
酸化焼成は酸素が十分な状態で焼く方法です。
藁灰の産地や品質でも色が変わります。同じ配合でも、使う藁灰が違えば全く別の表情になることもあります。
これが自作の面白さです。
テストピースで必ず試し焼きをしてから、本番の作品に使いましょう。小さな器に釉薬を掛けて焼いてみると、発色や溶け具合が確認できます。
最も多い失敗は「灰の量が少なすぎる」です。5kgの藁を燃やしても、実際に使える灰は500g程度にしかなりません。
これは10対1の比率です。
初心者は燃やす藁の量を少なく見積もりがちです。釉薬を作るには最低でも300g以上の灰が必要なので、逆算すると3kg以上の藁を用意する必要があります。
黒い炭が残る失敗も頻発します。これは燃焼温度が不十分か、空気の流れが悪い証拠です。一斗缶に開ける穴の数を増やす、藁を詰め込みすぎない、こまめにかき混ぜる、この3点で解決します。
煙がひどくて近所迷惑になるケースもあります。
対策は事前の挨拶です。燃焼の前日に近隣の家を回って「明日の午前中に藁を燃やします」と伝えておくだけで、トラブルは激減します。
曜日は平日の午前中が無難です。
灰が固まって使えなくなる保管ミスにも注意してください。湿気が原因なので、容器に入れる前に3日以上天日干しすることが条件です。
急いでいても、この工程は省略できません。
精製が不十分だと、釉薬に黒い斑点が出たり、表面がザラザラになったりします。面倒でも水簸を2回以上行うと、仕上がりの品質が段違いに良くなります。
NHK らいふ - 陶芸の基礎知識
釉薬の基本的な知識や、灰の使い方について専門家の解説があります。