水簸分級とは|陶土精製の原理と手順・はたき土との違い

陶芸用の粘土を精製する水簸と分級の基本原理から、具体的な作業手順、はたき土との違い、そして意外なデメリットまでを解説します。あなたの粘土作りに影響する重要な知識、知っていますか?

水簸分級の原理と手順

水簸すると鉄分も3割流出します。


📌 この記事の3つのポイント
🔬
水簸分級の基本原理

粒子の沈降速度差で精粗を分別し、不純物を除去しながらきめ細かい陶土を作る精製技術

⚖️
はたき土との決定的な違い

はたき土は「つぶあん」、水簸土は「こしあん」という質感の差と、土味への影響

⚠️
知らないと損する注意点

成分流出による土味喪失や、作業に必要な時間・設備コストのリアル

水簸分級の基本原理と沈降速度の仕組み

水簸(すいひ)とは、陶土を泥水にして水の浮力を利用し、粒子の大きさによって精粗を分別する精製技術です。分級とは粉や粒をサイズでわける作業を指し、水簸はその一種として重力と沈降速度差を利用します。


参考)水簸土(すいひつち)とは


粒子が水中で沈む速度は大きさによって異なり、粗い粒子は速く、微細な粒子はゆっくり沈みます。この原理を利用すると、容器に入れた泥水を放置した後、上澄みを別容器に移せば微細な粘土粒子だけを回収できるということですね。


参考)水簸(スイヒ)とは? 意味や使い方 - コトバンク


実際の作業では、泥水は3層に分かれます。上層はカオリン質が高く陶土に、中層は珪石分が多く釉薬に、下層は粒子が大きいため再度粉砕して水簸し直します。


参考)水簸・水漉 すいひ


この分級作業により、小石や草の根などの異物が除去され、ろくろ成形がしやすいきめ細かい土に仕上がります。磁器や上等の陶器を作る際には水簸工程が必須ですが、一般的な陶器やテラコッタでは省略されることもあります。


水簸作業の具体的な手順と必要時間

水簸作業は、まず完全に乾燥した原土を木づちで細かく粉砕するところから始まります。小さなかたまりもできるだけ細かく砕いておかないと、水と混ぜたときに塊ができてうまく溶けません。


参考)http://www.gadogama.net/elutriation.html


次に、バケツや洗濯機などの容器にまず水を入れてから、粉砕した粘土を少しずつ加えて撹拌します。量が多い場合はドラム缶やコンクリート製の桶を使い、1〜2時間撹拌機や洗濯機の「洗い」モードで運転すれば土が溶けます。


24時間以上放置すると、粒子の沈降速度差によって自然に分級が進みます。上澄みの泥水を細かい目の篩に通して小石やゴミを除去し、素焼き鉢や石膏鉢に布を敷いた中へ流し込みます。


参考)陶土の精製と土練り


4〜5日間かけて、乾いた鉢に取り替えたり粘土をひっくり返したりしながら、適切な硬さになるまで脱水します。硬さが良ければ布から取り出して荒練り菊練りを行い、ビニールで包んで寝かせます。理想的には2年以上寝かせることで微生物分解による粘土の熟成が進みますが、最低でも数週間は必要です。


水簸土とはたき土の違いと使い分け

陶土の精製方法は「はたき」と「水簸」の2つに大別されます。はたき土は砕いた原土を水で練る方法、水簸土は水でより細かくろ過する方法です。


わかりやすく饅頭のあんこに例えると、「はたき土はつぶあん(不純物が多い)」で「水簸土はこしあん(不純物が少ない)」という関係になります。


つまり精製度が違うということですね。



参考)はたき土とは


はたき土の利点は、土本来の成分がそのまま残るため土味が保たれることです。一方で小石や粗い粒子が残るため、ろくろ成形ではやや扱いにくくなります。


水簸土は小石などが完全に取り除かれ、きめ細かくなるのでろくろ成形が非常にしやすくなります。ただし、土の成分が水に溶け出して本来の土味が失われるというデメリットがあります。アルカリ分など作陶に有害なものも溶け出る一方、鉄分などその土独自の成分も水にある程度は溶けだしてしまうのです。


使い分けの基本は、精密なろくろ成形や磁器制作には水簸土、土味を重視する焼き締めや粗い質感を楽しむ作品にははたき土が向いています。実際には両者をブレンドした粘土も市販されており、扱いやすさと土味のバランスを取った選択も可能です。


水簸による成分流出のデメリットと対策

水簸作業の最大のデメリットは、土の成分が水に溶け出してしまうことです。特に鉄分は土の色味や焼成後の表情を決める重要な成分ですが、水簸によってある程度失われます。


アルカリ分など作陶に有害な成分も溶け出るため、この点はメリットとも言えます。しかし同時に、その土独自の個性を形作る成分まで一緒に流出してしまうのが問題です。結果として、焼き上がりの色味が薄くなったり、土本来の表情が出にくくなったりします。


成分流出を最小限に抑えるには、水簸の回数を減らす、または篩の目を粗めにして最低限の不純物除去にとどめる方法があります。目の細かさはお好みで調整できますが、細かくすればするほど成分も失われることを覚えておけばOKです。


もっとも良い粘土の生成方法は、掘った土を乾燥もさせず篩通しも水簸もせず、小石や不純物を指で取り除き、手または足で練って2年以上寝かせることです。ただしこの方法は手間と時間がかかるため、実用性とのバランスで水簸を選ぶ作家も多くいます。


土味を重視する場合は、水簸土とはたき土をブレンドする方法も有効です。適度なきめ細かさを得ながら、土本来の個性も残せる折衷案として、多くの陶芸家が採用しています。


水簸分級に必要な設備とコスト

水簸作業には、粘土の量に応じた適切な設備が必要です。少量であればバケツで対応できますが、本格的に行うなら二層式洗濯機、ドラム缶、コンクリート製の桶などが必要になります。


撹拌には、手作業で棒を使う方法もありますが、効率を考えると撹拌機や洗濯機の利用が現実的です。1〜2時間の撹拌で土が溶けるため、電気代も考慮する必要があります。


脱水工程では、素焼き鉢や石膏鉢、植木鉢などの吸水性のある容器が不可欠です。業務用にはフィルタープレス(脱水機)という専用機械があり、泥漿を流し込むだけで自動的に脱水とパレット成形まで行えます。


厳しいところですね。



参考)土づくり


篩も複数の目の細かさを用意する必要があります。粗い篩で草の根や落ち葉を除去し、細かい篩で小石や砂を分離するという段階的な作業が求められます。


参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcersj1950/69/787/69_787_C268/_pdf


時間コストも見逃せません。乾燥に4〜5日、理想的な熟成には2年以上かかるため、複数のバッチを並行して進める計画性が必要です。趣味の陶芸家が自宅で水簸を行う場合、設備投資は数万円程度で始められますが、作業スペースと時間の確保が最大のハードルになります。


水簸土(すいひつち)とは - 水簸の目的とはたき土との違いについて詳しく解説
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