菊練りを省略するとそばが茹でたときに短く切れます。
菊練りとは、そばの生地を内側に練り込み、団子状にまとめる作業のことです。生地を押し伸ばして内側に織り込む作業を繰り返すと、玉の中心に菊の花のようなしわができることから「菊練り」と呼ばれています。
この作業の本当の目的は「空気を抜きながら粉と水をなじませること」です。初心者はどうしても菊の形にこだわってしまいますが、形を作ることが目的ではありません。
つまり空気抜きが本質です。
そば粉はそれ自体ではつながりにくいため、中力粉というつなぎを使いますが、水を加えてよく練ることでグルテンの持つ力を引き出す必要があります。この練りが不十分だと、茹でたときにそばが短く切れてしまうのです。実際、そば打ち体験で菊練りを適当に切り上げた結果、見かけはまあまあでも茹で上げたら短く切れてしまったという失敗例が報告されています。
菊練りはそば打ちだけでなく、陶芸でも粘土の空気を抜くために同じ手技が使われています。パン屋さんでも同じ方法で空気を抜いているそうです。「菊練り三年」と言われるほど習得に時間がかかる技術なので、最初はうまくできなくて当たり前だということを覚えておいてください。
菊練りの正しいやり方は、右手で生地を下から持ち上げ、掌の根元で練り込むという動作を繰り返すことです。練り込んだときに左手で生地を反時計回りにずらし、この動作をリズミカルに連動させていきます。
手の力で押すのではなく、体全体を使ってしっかりと練っていくのがコツです。こね鉢の曲線部分を活用しながら、右手は掌の根元で、左手は生地を回転させる役割を担います。
リズムが基本です。
生地をまんべんなく回転させながら練るために、向こう側をちょっと引っかけ上げて手前に回して落とすという操作を行います。この「ちょっと引っかけて回して落とす」という操作は菊練りにおいて重要な動きです。初心者はこの動きを陶芸教室やそば打ち教室で教えてもらうと、上達が早くなります。
菊練りが終わったら「へそ出し」という作業に移ります。菊の模様がついた部分を尖らせ、最後は潰すのです。菊模様を自分側に向けて両手を使って右から左へと転がし、菊模様側を尖らせるように転がしていきます。次に尖った部分(へそ)を右に向けて、奥から手前に転がしながら右手でへその部分をなだらかに潰します。
これが基本の流れです。
菊練り段階でひびが入ってしまう原因は、いくつか考えられます。最も多いのは水分不足で、そば粉が古い場合や真空パックでも保存状態によっては乾燥が進んでいる可能性があります。
加水量の目安は生地の割れ方でチェックするのが基本です。荒練りから菊練りにかけて、生地の状態を確認しながら進めてください。適切な加水量なら、生地の表面がつるつるしてきます。
このつるつるした面がそばの表になるのです。
ひび割れが出る場合は、水を少量ずつ追加して練り直す必要があります。ただし、一度に大量の水を加えると生地が緩くなりすぎて失敗するため、霧吹きなどで少しずつ調整するのがおすすめです。耳たぶくらいの硬さが目安と覚えておけばOKです。
練り終わった生地は、ビニール袋に入れて15分ほどねかせます。この時間をとることで、グルテンがしっかり形成され、のし作業がしやすくなります。時間が足りないときでも、最低10分はねかせたいところです。
初心者が最もやりがちな失敗は、時間が足りないからと菊練りを適当なところで切り上げることです。「もう錬られただろう」と判断して次の工程に進むと、茹で上げたときにそばが短く切れてしまいます。
菊練りは見た目で終了を判断するのではなく、手の感触で判断することが大切です。生地の表面がなめらかで、押したときに弾力がある状態になるまで練り続けてください。
これが原則です。
迷って時間をかけてそばを乾燥させるくらいなら、菊練りを省略して次の作業に移るほうがいいという意見もあります。実際、一部のそば打ち教室では初心者に対して菊練りを省略させるケースもあるそうです。ただし、本格的にそば打ちを習得したいなら、菊練りは避けて通れない技術といえます。
陶芸でも同様で、菊練りで粘土の中の空気を追い出さないままロクロを挽くと、薄い部分ができて失敗します。さらに素焼きしたときに破裂して、まわりの器にも被害が出るのです。そば打ちでも陶芸でも、菊練りの練り不足は後工程での大きなトラブルにつながることを理解しておきましょう。
菊練りの上達には、とにかく反復練習が必要です。「菊練り三年」と言われるように、すぐに習得できる技術ではありません。
厳しいところですね。
練習のポイントは、リズムよりも確実性を重視することです。まず真下に折り畳み、それから前方へ押しつぶすという動作を、必要ならばゆっくり確実に行ってください。右手はちょっと支える程度の役割ですが、理想の状態からずれそうなときに臨機応変に粘土の位置を修正したり、縁の形を整えたりすることに使います。
YouTubeなどの動画を参考にする場合は、「1倒して・2引いて・3切って」という3拍子で包丁を規則正しく動かす練習方法も有効です。菊練りだけでなく、そば切りの技術も同時に磨けます。
手打そば基本【菊練り&蕎麦切り】注意点を解説します - YouTube
この動画では、水回しから菊練りにかけての生地の状態確認方法と、そば切りの基本的な技術が解説されています。加水量の目安や生地の割れ方チェック方法を学べます。
練習用のそば粉は、最初は少量から始めるのがおすすめです。1キロ玉よりも500g程度の方が扱いやすく、失敗しても損失が少なくて済みます。慣れてきたら徐々に量を増やしていけば問題ありません。
菊練りの巻き上げ作業では、ひだを少しずつ巻いて閉じていき、砲弾状にします。ひだに空気を閉じ込めないようにする必要があるため、ちょっと引っかけ上げて回し、落とす動作がここで有効です。きめ細かく巻き上げを行っておくと、後のろくろ工程での土殺し作業が非常に楽になります。
菊練りは陶芸の世界でも必須の技術で、粘土から空気を抜くために使われます。観光地の陶芸場での電動ろくろ体験では、普通はお店の人がろくろの上に粘土を据え付けてお膳立てをしてくれています。
本格的に陶芸をやろうとする場合は、原材料の粘土から空気を抜くための菊練りという手技もできるようになっておきたいところです。陶芸での菊練りも、そば打ちと同様に「押しつぶした先端を掴み上げ、また折りたたんで押しつぶす」ことを繰り返します。
陶芸の菊練りでは、直方体の粘土を台の上に、できるだけ自分の上半身の真下に置きます。右手は粘土のてっぺんを軽く掴み、左手は上から3分の1くらいのところにのど輪押しのようにあてがって、ひじを伸ばし、上半身の体重をかけて時計の1時の方向に粘土を押しつぶしていきます。
体重をかけた練りが基本です。
陶芸の場合、菊練りが不十分だと素焼き時に破裂するリスクがあります。これはそば打ちで茹で時に切れるのと同じく、練り不足が原因です。どちらの分野でも、菊練りの目的は「空気を抜くこと」と「材料を均一になじませること」という共通点があります。
そば打ち体験をした陶芸家が、土練りとそば打ちは共通するところがあると気づいたという事例もあります。一つの技術を習得すれば、もう一つの分野にも応用できるのです。
これは使えそうです。
陶芸:菊練り - 陶芸と台所
陶芸での菊練りの詳しい手順と、ろくろ工程での土殺し作業のコツが解説されています。体重のかけ方や粘土の位置調整方法が参考になります。
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