焼成前のひび割れは金継ぎできません
陶芸作品のひびは、粘土の扱い方と乾燥プロセスで9割が決まります。
最も多い原因は乾燥ムラです。粘土は水分が抜けるときに収縮しますが、厚みが違う部分では乾燥速度に差が出ます。例えば、取っ手と本体の接合部分は厚みが倍以上になることが多く、本体が先に乾いて収縮すると接合部に引っ張られてひびが入るんですね。
急激な温度変化も要注意です。窯の温度を1時間に100度以上上げると、外側だけが先に膨張して内部との差でひび割れが発生します。陶芸教室では「ゆっくり焼く」が鉄則とされる理由はここにあります。
粘土の練り不足も見逃せません。
粘土内部に空気が残っていると、焼成時に空気が膨張してひび割れの起点になります。菊練りを30回以上行うことで、内部の気泡を8割以上減らせるというデータもあります。
焼成前と焼成後では対処法が全く変わります。どういうことでしょうか?
焼成前のひび割れなら、すぐに霧吹きで水分を与えて粘土を柔らかくします。ひび部分を指で優しく押さえながら、ドベ(水で溶いた粘土)を塗り込んでいきます。
ドベは粘土と同じ土を使うのが基本です。
作業は5分以内に完了させないと、周囲との乾燥差が広がってしまいます。
焼成後のひび割れは陶器用接着剤が有効です。
市販の「セメダイン陶器用」などの専用接着剤なら、耐水性があり食器としても使えます。ただし、接着面を脱脂してから使わないと接着強度が半分以下になるので注意が必要です。
無水エタノールで拭くだけでOKです。
ひび割れが髪の毛ほどの細さ(0.1mm以下)なら、そのまま使い続けても問題ないケースが多いです。
これは使えそうです。
ただし、液体を入れる器の場合は漏れの可能性があるため、水を張って24時間放置してチェックしましょう。
陶芸作品の7割は乾燥段階でひび割れが決まります。
最も効果的なのは「ビニール袋養生」です。成形後の作品を厚手のビニール袋で覆い、口を軽く閉じて1日置きます。こうすると作品全体がゆっくり均一に乾燥し、急激な収縮を防げます。特に厚みが不均一な作品では、この方法で8割のひび割れを防止できるというデータもあります。
冬場の暖房や夏場のエアコンは大敵です。
直接風が当たる場所では、30分で表面だけが乾燥してひび割れのリスクが3倍になります。作品は風の当たらない日陰に置くのが原則です。
厚みの差がある部分には「時間差養生」が有効です。本体をビニールで覆ったまま、厚い部分(取っ手や高台など)だけ先に空気に触れさせます。こうすることで全体の乾燥速度を揃えられます。1cm以上の厚みの差がある場合は、この方法が必須になります。
ひび割れは欠点ではなく、作品に新しい物語を与えるチャンスです。
金継ぎは漆で割れた部分を接着し、金粉で装飾する日本の伝統技法です。一見難しそうですが、初心者向けのキットなら3,000円程度から入手でき、YouTube動画を見ながら2時間ほどで基本作業ができます。本漆を使う本格的な方法と、合成漆を使う簡易的な方法があり、食器として使うなら本漆が必要です。
金継ぎの魅力は「不完全の美」です。
つまり金継ぎです。
日本では古くから「破損した器を修復した跡こそが美しい」という美意識があります。茶道具として使われる茶碗の中には、意図的にひびを入れて金継ぎを施したものもあるほどです。現代では海外のコレクターからも注目され、金継ぎ作品は通常の2倍以上の価格で取引されることもあります。
金継ぎの実践には以下の手順があります。
各工程で1週間程度の乾燥期間が必要なため、完成までには1ヶ月かかります。
ただし、待つ価値は十分にあります。
完成した作品は元の器とは違う、唯一無二の存在になるからです。
ひび割れがあっても使える陶器と、使ってはいけない陶器があります。
表面のみの浅いひび(貫入)なら食器として使用可能です。貫入は釉薬にできる細かいひび模様で、むしろ味わいとして好まれます。ただし、貫入の隙間に色素や汚れが入り込むため、使用後は中性洗剤でしっかり洗い、完全に乾燥させる必要があります。
素地まで達する深いひびは要注意です。
このタイプのひびがある器に液体を入れると、24時間以内に漏れ出すことがほとんどです。花瓶として使っていた器から水が染み出し、家具にシミを作ってしまうケースも報告されています。
使用前に必ず水漏れテストを行いましょう。
ひび割れ陶器を電子レンジやオーブンで使うのは禁止です。ひび部分に水分が入り込んでいると、加熱時に急激に膨張して破裂する危険があります。実際に、ひび割れ茶碗を電子レンジで温めた際に破片が飛散し、怪我をした事例も存在します。
食器以外の用途なら問題ありません。
ペン立て、小物入れ、観葉植物の鉢カバーとして使えば、ひび割れも気になりません。特に多肉植物は乾燥を好むため、水漏れしやすいひび割れ鉢との相性が良いです。
安全に使い続けるには定期チェックが基本です。月1回はひびの広がりを確認し、指で触って引っかかりが増えていないか調べます。ひびが1mm以上広がったら、その器は観賞用に切り替えるタイミングです。