違う種類の粘土を混ぜると作品が無駄になります
陶土とは焼成して硬化させることができる粘土全般を指します。一般的な粘土(水粘土)は乾燥すると硬化しますが、再度水を加えれば元の柔らかい状態に戻すことが可能です。
対して陶土は、窯で800℃以上の高温で焼くことで化学変化を起こし、二度と粘土には戻らない硬い状態になります。
これが最も大きな違いですね。
参考)土にふれる・土をしる
陶芸や彫刻の世界では、焼成前の作品であればカチカチに乾燥していても水に浸けて粘土に戻せます。しかし一度でも窯で焼いてしまうと、割れや欠けがあっても修正できません。
この不可逆性が陶土の特徴です。
参考)失敗作|Shiori
陶土には陶器用の陶土、磁器用の磁器土、その中間の半磁土など複数の種類があり、それぞれ成分や焼成温度が異なります。作りたい作品の用途や質感によって、適切な陶土を選ぶことが重要になります。
参考)陶器と磁器の違い
陶土と磁器土の最大の違いは、粘土質・長石・珪石の配合比率にあります。この比率の違いが、焼き上がりの質感や強度を大きく左右するということですね。
陶土の標準的な配合は、粘土質50%・長石10%・珪石40%です。粘土質の割合が高いため可塑性(変形しやすい性質)が高く、手びねりやろくろ成形がしやすい特徴があります。焼成温度は約1200℃で、焼き上がりは吸水性のある温かみのある質感になります。
一方、磁器土の配合は粘土質30%・長石30%・珪石40%です。長石と珪石の比率が高いため、高温で熔けてガラス質になりやすく、約1300℃の高温焼成が必要です。磁器土は陶土に比べて硬めで扱いがやや難しく、手びねりをする場合は「手びねりも可」と表記されたものを選ぶ必要があります。
参考)【陶芸入門】陶土の種類~知っておきたい6種の土の特徴を紹介
| 種類 | 粘土質 | 長石 | 珪石 | 焼成温度 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|---|
| 陶土 | 50% | 10% | 40% | 約1200℃ | 柔らかく成形しやすい・吸水性あり |
| 磁器土 | 30% | 30% | 40% | 約1300℃ |
硬く緻密・ガラス質で透明感 |
長石を多くするとガラス質が増えて磁器になり、少なくすると陶器になります。つまり成分調整が焼き物の性質を決めるということです。
陶土は含まれる鉄分や採掘場所によって色が大きく異なり、それが作品の表情を決定します。主に赤土と白土の2種類に大別されますが、産地ごとに細かな違いがあります。
赤土は鉄分を多く含むため、焼成すると赤褐色や茶色に発色します。唐津焼の赤土や信楽の灰色の粘土など、産地によって色味が異なります。赤土だけで作品を作ると皿などが垂れてしまうことがあるため、白土と混ぜて使う陶芸家も多いです。
参考)[陶芸の専門店]陶芸.com 粘土一覧陶芸用品・陶芸機材のオ…
白土は鉄分がほとんど含まれず、焼き上がりが白やクリーム色になります。釉薬の発色が美しく出るため、絵付け作品や色釉を使った器づくりに最適です。京白土はきめが細かく、酸化焼成・還元焼成のどちらでも白く仕上がる標準的な陶芸粘土のひとつです。
参考)陶芸に使う粘土の種類一覧|赤土・白土・信楽土の違いを徹底比較…
信楽粘土は薄茶色でザラザラした質感が特徴で、粒子が粗く耐火度が高いです。花器や大物作品、自然な風合いを活かした造形作品に向いています。焼成すると焦げやビードロ(自然釉)などの美しい表情が現れます。
| 陶土の種類 | 焼き上がりの色 | 特徴 | 向いている作品 |
|---|---|---|---|
| 赤土 | 赤褐色・茶色 | 鉄分多い・温かみのある質感 | 湯呑み・小鉢・素朴な食器 |
| 白土 | 白・クリーム | 鉄分少ない・釉薬の発色が良い | 絵付け・色釉の器 |
| 信楽粘土 | 薄茶・ザラ感 | 粒子粗い・耐火度高い | 花器・大物・造形作品 |
作りたい作品のイメージに合わせて土の色を選ぶことが、満足度の高い作品づくりにつながります。
初心者が陶土を選ぶ際、最も重要なのは扱いやすさです。柔らかくて伸びやすい可塑性の高い粘土は、形を整えやすく作業がスムーズに進みます。
信楽の粘土は初心者に特におすすめです。適度な粘りと扱いやすさがあり、失敗が少ないのが特徴ですね。赤土や白土も可塑性が高く、手びねりでもろくろでも成形しやすい土です。
参考)陶芸用の粘土の種類はたくさんありますが、どのように選んだらよ…
逆に磁器土や粒子の粗い土は、ろくろ作業や手びねりで形が崩れやすく、初心者にはハードルが高めです。最初の1kgは扱いやすい粘土から試すのが失敗を避けるコツです。
粘土の水分量も作業に大きく影響します。水分が多すぎるとネチャネチャで形が崩れやすく、少なすぎるとカラカラでひび割れの原因になります。土練りをしっかり行い、少し落ち着かせてから使うと扱いやすくなります。
参考)亀井俊哉の陶芸の失敗例!初心者がやりがちなポイントと対策 :…
また、作りやすさを確認したい場合は、陶芸材料店のカタログに記載された粘土の特性を参考にするのも有効です。「手びねり向き」「ろくろ向き」といった表記があるため、目的に合った土を選びやすくなります。
陶芸用粘土一覧(陶芸.com)
陶芸材料専門通販サイトで、各粘土の詳細な特性や焼成温度が確認できます。
異なる種類の陶土を無計画に混ぜると、焼成時に収縮率の違いから割れや歪みが発生し、作品が無駄になるリスクがあります。これは陶芸初心者が気づきにくい落とし穴です。
参考)彫塑用粘土と、陶土の違いはどこにありますか?彫塑用粘土を焼く…
土の種類によって焼成温度や収縮率が異なるため、混ぜる場合は同系統の土を選び、十分に土練りを行う必要があります。例えば赤土と白土を混ぜて発色を調整する技法はよく使われますが、それぞれの土の性質を理解した上で配合することが前提です。
練り上げ技法のように複数の粘土を使う場合、無計画に行うと混ざった粘土が大量に余り、使い道のない無駄な土ができてしまいます。少量ずつ計画的に作業することで、粘土を無駄なく活用できます。
参考)https://ameblo.jp/de-de-chan/entry-11850045347.html
余った粘土と新しい未使用の粘土を混ぜる際も土練りが必須です。土練りを怠ると粘土内部に気泡やムラが残り、焼成時に破損の原因になります。
参考)初めまして。陶芸勉強中の初心者です。下手に土練りするくらいな…
もし異なる産地の土を試したい場合は、まず小さなテストピースを作って焼成してみるのが安全です。本格的な作品に使う前に、収縮や発色を確認する手間が後悔を防ぎます。
陶土は適切に保管すれば長期間使用できますが、乾燥や汚染に注意が必要です。湿度を保つために密閉容器やビニール袋に入れ、直射日光を避けて保管するのが基本です。
参考)https://ameblo.jp/hagi-tougei/entry-11863751723.html
乾燥した陶土は水に浸けることで再び柔らかい粘土に戻せますが、これは焼成前に限られます。一度でも窯で焼いた後は二度と粘土には戻らないため、作品チェックは焼成前に入念に行う必要があります。
粘土に有機物(コーヒー豆のカスなど)を混ぜる技法もありますが、放置するとバクテリアの作用でガスが発生し、扱いにくくなります。混ぜた粘土はすぐに使い切るか、冷蔵保管することが推奨されます。
また、有機物を混ぜた粘土は焼成後に素地内部が多孔質(ポーラス)になり、強度が低下します。食器として日常的に使う作品では水漏れや欠けやすさの原因になるため、装飾用や一時的な用途に限定すべきです。
余った粘土の再利用は可能ですが、異なる種類の土と混ざらないよう分別して保管することが大切です。土が違うと焼き上がりの雰囲気も変わるため、作品の一貫性を保つためにも管理が重要になります。