失透ガラス原因と対策|陶芸釉薬作り透明性回復方法

ガラスが白く濁る失透現象、実は防げる不純物や温度管理の問題だったことをご存知ですか?陶芸やガラス工芸で避けられない失透の原因から、透明性を取り戻す再生方法、失透釉として意図的に活用する技術まで、作品のクオリティを左右する重要知識を徹底解説。あなたの作品づくりに役立つ具体的な対策とは?

失透ガラスとは

素手で石英ガラスを触ると1100℃以上の加熱で必ず失透します

この記事のポイント
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失透の正体は結晶化

透明なガラスが白く濁るのは内部で結晶が析出するため。温度と不純物が主な原因

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1000℃前後が最も危険

ガラス粘度10³~10⁸ポワズの温度域で失透が起こりやすく、冷却速度も重要

透明性は回復できる

失透したガラスも再加熱や表面処理で透明に戻せる。陶芸では意図的に失透釉として活用

失透ガラスの基本的な定義


失透とは、透明なガラスが白く濁ったり不透明になったりする現象を指します。ガラスは本来、規則性のない非晶質(アモルファス)構造を持つため光を通しますが、この構造が結晶化することで光が散乱し、透明性を失うのです。


参考)石英ガラスの失透とは? 製造現場における原因・対策・再生技術…


石英ガラスの場合、SiO2(酸化ケイ素)の非晶質構造が、高温環境下で安定性を失い、クリストバライトやトリジマイトといった結晶構造へと変化します。


つまり失透とは結晶化です。



ガラス工芸や陶芸の現場では、この失透が意図しない形で発生すると作品の透明感が損なわれるため、大きな問題となります。一方で、陶芸の釉薬では、意図的に失透させることで独特の質感を生み出す「失透釉」という技法も存在します。


参考)透明釉 と 失透釉 : 心の時空


失透現象は準安定なガラス状態から、より安定した結晶状態への相転移と捉えることができます。結晶粒の粒界で光が散乱するため、見た目には白濁して見えるのが特徴です。


参考)https://www.ushio.co.jp/jp/technology/glossary/glossary_sa/devitrification.html


失透ガラスが発生する温度条件

失透が最も起こりやすい温度は約1000℃前後です。ガラスの粘度で表すと、10³~10⁸ポワズの状態が失透域と呼ばれます。この温度域では、ガラスの分子運動が活発になりながらも流動性は限定的で、結晶核が成長しやすい環境が整っています。


参考)http://www.glass-kougeihiroba.jp/arekore/index06.html


石英ガラスでは、1100℃以上の高温環境に長時間晒されると、非晶質構造が安定性を失い結晶化が進行します。特に1300℃以上では失透リスクが顕著に高まります。


参考)https://u-fukui.repo.nii.ac.jp/record/28839/files/bd10125918_03.pdf


ガラス組成によっても失透傾向は変化します。これを抑えるために、Al2O3(アルミナ)やB2O3(ホウ酸)などの成分を添加することが一般的です。


こうした成分が失透を防ぎます。



参考)ガラスQ&A   日電理化硝子株式会社


加熱だけでなく、冷却プロセスも重要です。焼成後は700℃くらいまで早めに冷ますことで、釉薬中の飽和物質の結晶化を減少させることができます。ゆっくり冷却すると結晶が成長する時間を与えてしまいます。


参考)「透明釉と失透釉」 - 泰雅庵の出来事


失透ガラスの見た目の特徴

失透したガラスは表面や内部に白く濁った不透明な箇所が現れます。光沢のある透明なガラスとは対照的に、くすんだマットな質感になるのが典型的な特徴です。


石英管が失透すると、表面が白濁し透明性が失われます。この白濁部分には、微細なクリストバライト結晶が生成されています。結晶の粒界が光を散乱させるため、見た目には白っぽく見えるということですね。


参考)くすんでしまった石英ガラスは透明にできます! 焼き上げ修理編…


失透の程度は軽度から重度まで様々です。軽度の場合は薄く霞がかかったような状態ですが、重度になると完全に不透明な白色になります。失透した箇所は触っても表面は滑らかで、物理的な傷や汚れとは異なります。


陶芸の失透釉では、この白濁効果を意図的に活用し、柔らかく温かみのある質感を生み出します。


透明釉とは異なる魅力があります。



失透ガラスと透明ガラスの違い

透明ガラスと失透ガラスの最大の違いは、内部構造にあります。透明ガラスは非晶質(アモルファス)構造を維持しているため光をまっすぐ通しますが、失透ガラスは結晶化により光が散乱します。


陶芸の釉薬でいえば、透明釉は素地の模様や色が透けて見えるのに対し、失透釉は不透明で素地が見えません。この違いは、釉薬内部に溶けきれない物質が結晶として存在するかどうかで決まります。


参考)失透釉


透明釉を作るには、塩基性・中性・酸性の3要素のバランスが適切であること、原料粒子を細かく粉砕すること、そして冷却を早めることが重要です。一方、失透釉は意図的にいずれかの成分を過剰にして、溶けきれない物質を残します。


失透したガラスでも、適切な処理により透明性を回復できます。これは結晶を再び非晶質構造に戻せるということです。


失透ガラス発生の主な原因要素

失透の最大の原因は不純物の付着です。特に指紋や未洗浄の手袋、純度の低い洗浄水からのナトリウム(Na)汚染が深刻な問題となります。素手で触れた石英ガラスを高温加熱すると、皮脂に含まれるナトリウムが結晶核の起点となり、必ず失透が発生します。


アルカリ金属(K、Ca)や重金属(Fe、Al)も失透を引き起こします。装置内部の腐食や材料摩耗から金属粒子が脱落し、ガラス表面に付着すると、高温環境下で拡散・酸化されて微細な結晶核を形成するのです。


表面傷や微粒子の付着も要注意です。微細なキズや粉塵は結晶核の起点となり、そこから失透が始まります。


つまり表面がキレイだと防げます。



加熱・冷却サイクルの繰り返しによる熱応力も、構造を乱して局所的な結晶化を進行させる要因です。温度、保持時間、ガラス自体に含まれる不純物、周囲の汚染物質など、複数の環境要因が複合的に影響します。


失透ガラスを防ぐための具体的対策

まず徹底すべきは不純物の除去です。石英ガラスを扱う際は、必ず清潔な手袋を着用し、素手での接触を絶対に避けます。これだけでナトリウム汚染のリスクが大幅に減ります。


洗浄には純度の高い水を使用し、洗浄後は完全に乾燥させることが重要です。残留水分中のミネラル分も不純物となるため、十分な乾燥が必須です。


温度管理では、失透域(約1000℃前後)での保持時間を最小限にすることが効果的です。必要な温度まで素早く昇温し、作業後は速やかに冷却する運用が望ましいでしょう。700℃までの冷却を早めれば結晶化を抑制できます。


作業環境の清浄化も見逃せません。装置内部の定期的な清掃、腐食部品の交換、粉塵の発生源の特定と除去など、包括的な環境管理が必要です。


清潔な環境が基本です。



釉薬の場合は、Al2O3やB2O3などの失透防止成分を適切に配合することで、結晶化を抑制できます。原料を細かく粉砕し、化学反応を促進させることも有効な方法です。


失透した石英ガラスの再生方法

失透した石英ガラスは、適切な処理により透明性を回復できます。最も一般的な方法が「焼き上げ」と呼ばれる再加熱処理です。


焼き上げでは、バーナー火炎を使って失透部分を石英の軟化点(約1700℃)付近まで局所加熱します。この高温により、クリストバライトなどの結晶層が再び溶融し、冷却時に急冷されることで非晶質構造へと再構築されます。


結晶を溶かし直すということです。



フュージングガラスの場合は、表面が白くなるまでクリアガラスパウダーを振りかけて再焼成する方法が効果的です。1101クリアや1401クリスタルクリアのガラスパウダーを使用すると、失透や焼付き汚れをキレイに除去できます。


参考)フュージングガラスの失透や焼付き汚れを消すにはどの方法がいい…


ただし、再生処理には限界があります。不純物が深く浸透している場合や、構造的なダメージが大きい場合は、完全な透明性の回復が困難なこともあります。


予防が最も重要です。


陶芸での失透釉の意図的な活用法

陶芸の世界では、失透を欠点ではなく積極的に活用する「失透釉」という技法があります。透明釉とは異なる柔らかく温かみのある質感が特徴で、粉引刷毛目といった技法と組み合わせると独特の美しさを生み出します。


失透釉を作るには、釉薬内部に細かい結晶を出す必要があり、そのためには溶けきれない成分を意図的に加えます。塩基性、中性、酸性のいずれかの成分を過剰にすることで失透効果が得られます。


具体的には、塩基性成分(CaO、MgOなど)を増やす、中性成分(Al2O3など)を増やす、または酸性成分(SiO2)を増やす方法があります。シリカを増やす場合は、釉が溶けなくなるため、塩基性成分も少し増やすのが一般的です。


失透釉とマット釉は、どちらも光沢を抑えた仕上がりという点で共通しています。ただし、マット釉は表面の微細な凹凸による光の拡散が主な原因であり、失透釉の結晶化とはメカニズムが異なります。


使い分けが重要ですね。



石英ガラスの失透対策と再生方法について、製造現場での実践的な情報が詳しく解説されています(関英加工)
ガラスの失透現象に関する技術的なQ&Aが参照できます(日電理化硝子)




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