あなたが高台周りの白い粒だけを梅花皮と見ていると偽物を掴まされます。
井戸茶碗の最大の特徴は、琵琶色(びわいろ)と呼ばれる黄褐色の釉薬です。この色は楽器の琵琶の木の色に似ていることからこの名で呼ばれており、茶人たちを魅了してきました。
琵琶色は均一ではありません。ところどころに茶褐色が混じり、微妙な濃淡が生まれるのが本物の証です。また、全体に細かな貫入(ひび)が入るのも井戸茶碗の特徴で、これが時間とともに味わい深い景色を作り出します。
この琵琶色の釉薬は、荒い土に透明に近い灰釉がかけられて焼成された結果です。土の質と釉薬の組み合わせが、あの独特の色合いを生み出しています。
参考)井戸茶碗への技術論
人工的に均一な色の茶碗は偽物の可能性があります。
本物は自然な色のムラがあります。
専門店や鑑定士に相談すれば、釉薬の質感から真贋を見極められます。
梅花皮(かいらぎ)は、井戸茶碗を語る上で欠かせない特徴です。これは高台の内外に釉薬が粒状になって固まった部分を指します。荒い土に釉薬がうまく付着せず、焼成時に縮れて玉状に溶けた結果できるものです。
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ただし梅花皮には注意が必要です。必ずしも白い粒粒として現れるわけではありません。筒井筒や美濃といった名品を見ると、釉薬が縮れて粒状になっているだけで、白くないものも多いのです。
参考)https://ameblo.jp/bunpuku-tokyo-sadou/entry-12816579034.html
高台は竹節状の形をしており、これも井戸茶碗の条件の一つです。高台の内側には兜巾(ときん)と呼ばれる盛り上がりが見られます。高さがあり、やや不安定に見える形状ですが、これこそが井戸茶碗の個性となっています。
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現代の偽物は意図的にガラス質の釉薬を高台にかけて白い粒を作ります。全体の釉薬が自然に縮れたものかどうか確認することが重要です。
井戸茶碗の腰回りには、3段から5段の轆轤目(ろくろめ)が見られます。これは成形時の轆轤の跡を最後まで残す技法によるもので、他の高麗茶碗にも見られる手法です。
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この轆轤目はただの製作痕ではありません。シャープで力強い線として残され、茶碗全体に独特のリズムを与えています。大井戸では特に大きく深い轆轤目が特徴的です。
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見込み(茶碗の内側)は深く削り込まれ、杉形(すぎなり)と呼ばれる形状になっています。口に向かって徐々に開いていく形は、朝顔の花にも例えられます。見込みの中心部は高台の接地面とほぼ同じ高さにまで掘り下げられているものもあります。
口径15cm程度の大井戸が最も価値が高いとされます。全体のバランスと轆轤目の美しさを確認しましょう。図録や美術館で本物を見て目を養うことが、良品を見分ける近道です。
井戸茶碗はサイズや特徴によっていくつかに分類されます。
最も有名なのが大井戸です。
大ぶりで堂々とした器形が特徴で、名物が多いため名物手とも呼ばれます。代表作には国宝の「喜左衛門井戸」があります。
小井戸は大井戸と比べて見込みが浅く、高台が小さいのが特徴です。
代表作には「老僧井戸」などがあります。
小貫入は小井戸に準じる器形で、小さく細かい貫入が入ったものを指します。
伝世品が少ない分類です。
参考)井戸茶碗の魅力
青井戸は色に青味が多く、灰色や琵琶色のものもあります。器形の特徴は高台から口縁までほぼ一直線になっている点です。
代表作の「柴田井戸」が有名です。
それぞれの分類には微妙な違いがあります。ただし、7つの条件を全て満たしていても井戸茶碗と断定できないこともあり、分類には曖昧な部分も残されています。実物を比較して違いを体感することをおすすめします。
「一井戸二楽三唐津」という言葉があります。これは茶碗の価値を順位で表したもので、井戸茶碗が最も高く評価されていることを示しています。室町時代から江戸時代にかけて、茶人たちは井戸茶碗を最高のものとして珍重しました。
驚くべきことに、井戸茶碗は朝鮮半島では日常生活用の雑器でした。当地では白磁や青磁の方が価値が高く、庶民が使う普通の器だったのです。それが日本に渡ると、桃山時代の「侘び」の美意識に合致し、抹茶茶碗として最高の地位を得ました。
参考)https://item.rakuten.co.jp/auc-iryusaiun/wwtt287/
現在、井戸茶碗で唯一国宝に指定されているのが「喜左衛門井戸」です。やや色の濃い枇杷色で、ところどころ茶褐色が入り、梅花皮は変化に富んでいます。この茶碗は大井戸の代表作として、荘重な形姿が特色です。
現代作家の井戸茶碗でも数万円から数十万円の価値がつきます。
古い井戸茶碗はさらに高額です。
ただし偽物も多く出回っているため、購入時は専門家の鑑定を受けることが不可欠です。
参考)申 正熙 作『井戸茶碗』 買取価格相場|骨董品買取 緑和堂
陶磁オンライン美術館の井戸茶碗解説ページ
井戸茶碗の詳細な特徴と実際の作品画像が見られ、7つの条件について写真付きで学べます。
国宝井戸茶碗の詳細情報
国宝指定されている喜左衛門井戸の高解像度画像と詳しい解説が掲載されており、本物の特徴を確認できます。