黄瀬戸釉調合|配合比率と焼成温度のポイント

黄瀬戸釉の調合で失敗しないための配合比率と鉄分量、焼成温度のコツを解説します。長石と灰のバランスや徐冷のテクニックを知っていますか?

黄瀬戸釉調合

市販の釉薬より自作の方が安上がりという思い込みは間違いです。


参考)黄瀬戸釉


この記事で分かる3つのポイント
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基本配合の黄金比率

長石と灰の比率、鉄分添加量の具体的な数値と選び方

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焼成温度と徐冷の関係

1200~1230℃での酸化焼成と徐冷による結晶析出のメカニズム

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失敗を防ぐ注意点

釉薬の流れ、剥離、発色不良など代表的なトラブルの原因と対策

黄瀬戸釉調合の基本配合比率

黄瀬戸釉の基本配合は長石と灰を組み合わせて作ります。代表的な配合は釜戸長石6に対して土灰4の比率で、外割で鬼板を3%加えるレシピが広く使われています。別の配合例では釜戸長石4、土灰6に外割で黄土10%を添加する方法もあります。


石灰マグネシウム釉として調合する場合は、長石20、土灰60、陶石20の割合に弁柄を外割で1.0%加える配合が結晶性乳濁釉領域を狙えます。長石と灰だけでは黄色の発色が弱く透明釉に近くなる場合、鬼板や黄土などの含鉄土石を追加すると効果的です。


参考)自前の窯場でこだわり作陶 黄瀬戸釉の調合事例


鉄分の含有量によって発色が大きく変わります。1%程度では淡い黄色、3~5%で黄色から褐色になります。黄土を1~2割加えると艶消し状のマット調に仕上がるのが特徴です。


参考)鉄釉陶器と石黒宗麿


つまりこれが基本です。


市販の黄瀬戸釉は1リットルあたり1,620円から2,800円程度で販売されています。自作する場合は長石、灰、含鉄土石をそれぞれ購入する必要があり、初期費用と手間を考えると、少量制作では市販品の方がコスト面で有利です。特に土灰は備長炭灰が理想とされますが入手が難しく、代替の松灰でも結果に影響します。


参考)http://nessho.o.oo7.jp/kiseto.html


自作のメリットは配合を自由に調整できる点です。釉調や発色を細かくコントロールしたい場合は自作が向いていますが、安定した結果を求めるなら市販品が無難ですね。


黄瀬戸釉調合における長石の選び方

長石にはカリ長石、ソーダ長石、灰長石の三種類があります。黄瀬戸釉には釜戸長石のような珪長石が適しています。釜戸長石はカリ(カリウム)とソーダ(ナトリウム)がほぼ同量含まれており、アルミナに対するシリカの比率が透明釉に適した範囲になります。


参考)自前の窯場でこだわり作陶 私の釉薬調合例


福島長石のような純長石はアルミナ含有量が多く、シリカが相対的に少ないため艶消釉に向いています。長石と木灰の二成分系で釉を作る場合、透明性のある黄瀬戸には釜戸長石や天草陶石を使う方が良い結果が得られます。


長石の種類によって釉薬の溶け方や仕上がりの質感が変わるため、目指す釉調に合わせて選択することが重要です。灰透明釉、飴釉、黄瀬戸釉、織部釉では釜戸長石を用いる配合が一般的です。


これが選択の原則です。


千倉や砂婆という材料も選択肢に入ります。これらは長石と珪石が含まれており、長石に比べてアルミナに対するシリカが多い特性があります。古くは灰古瀬戸釉が基礎釉として使われ、土灰10に対して千倉3の割合で混ぜていました。


参考)http://www.tougeishop.com/video/cat62.php


黄瀬戸釉調合に必要な鉄分添加の実践

鉄分添加は黄瀬戸釉の発色を左右する重要な要素です。含鉄土石には様々な種類があり、鉄分含有量が大きく異なります。来待石や益子赤粉は6%、黄土は9%、加茂川石は15%、鬼板は40%近くの鉄分を含んでいます。


鬼板を使用する場合は外割で3%程度が目安になります。黄土を使う場合は10%程度添加すると適切な発色が得られます。弁柄(酸化鉄)は100%に近い純粋な酸化鉄のため、1%程度の少量添加で効果があります。


参考)https://blog.goo.ne.jp/meisogama-ita/e/552af09981504be9f43fdd3de0cad674


土灰自体にも鉄分が含まれています。雑木の灰である土灰には2~3%以上の鉄分を含むものも珍しくありません。材料となる木灰によって鉄分量が変わるため、使用する灰の特性を把握しておく必要があります。


鉄分量が調整できました。


含鉄土石を調合する際は60目のフルイで良く漉すことが推奨されています。乾燥粉の含鉄土石を加える時は、少しづつ水で薄めながらフルイを通すと無駄なく使えます。フルイの目の細かさによって仕上がりが変わるため、自分の好みに合った目を選ぶとよいでしょう。


加茂川石と来待石はカルシウム、マグネシウム、ナトリウムなどの塩基成分が多く、黄土は塩基成分が少ないのが特徴です。塩基成分の多い含鉄土石を使うと釉薬の溶け方が変わるため、配合全体のバランスを考慮する必要があります。


黄瀬戸釉調合後の焼成温度設定

黄瀬戸釉の焼成温度は1200~1230℃が基本です。推奨温度は1230℃とされており、酸化焼成が原則となります。温度が5度変わるだけで仕上がりが大きく変わるデリケートな釉薬です。


参考)113 黄瀬戸2 : 小川哲央の窯ぐれ随筆


酸化焼成では黄色味が強く出ますが、還元焼成すると青磁釉のような発色になります。青磁釉と黄瀬戸釉は本質的に同じ釉薬で、焼成雰囲気の違いによって色が変わることが知られています。鉄分2%程度を外割で入れた釉薬を酸化焼成すれば黄瀬戸になります。


焼成カーブも重要な要素です。徐冷すると結晶が析出し、黄色みを帯びた黄瀬戸釉ができます。具体的には1070℃で2時間から3時間の徐冷が推奨されています。


再加熱する方法でも結晶析出が促進されます。



参考)https://ob3.aitai.ne.jp/~kumagai/yuyaku/gendai/kumagaiyuyaku-gendai.html


徐冷が条件です。


徐冷すれば乳白釉やマット釉領域でもきれいな黄瀬戸釉ができるとの報告があります。結晶性乳濁釉領域で特徴のある黄瀬戸釉を狙う場合、石灰マグネシウム釉として調合し、適切に徐冷することできれいな結晶が生じます。


焼成温度の範囲は1200~1260℃まで幅がありますが、高温になるほど流れやすくなるため注意が必要です。1210~1240℃程度で焼成するまだら黄瀬戸釉の場合、薄掛け部分は黄色く、厚く掛かった部分は濃い発色になる特性があります。


参考)https://item.rakuten.co.jp/tougeishop/t0703097/


徐冷時間と温度設定の詳細な解説はこちら(現代釉の焼成条件一覧)

黄瀬戸釉調合のトラブルと対処法

釉薬の流れは黄瀬戸釉でよくある失敗例です。重ね掛けした釉薬が棚板まで流れてしまい、高台に付いた釉薬を拭き取っていても流れることがあります。鉄分が多く含まれる釉薬はより動きやすい性質があります。


参考)■釉がけの失敗■ : ぎゃらりーカフェUZU ちょこっと陶芸


釉薬の剥離も代表的なトラブルです。口の部分が完全に剥離する原因として、化粧土の濃度が濃すぎることが挙げられます。施釉前に作品の表面がきれいであることを確認し、埃や指紋がないようにすることが重要です。


参考)Reddit - The heart of the inte…


発色不良は配合と焼成の両方が関係します。長石と灰だけでは黄色の発色が弱く透明釉に近くなる場合があるため、鬼板や黄土などの含鉄土石を追加する必要があります。酸化・還元炎の雰囲気がちょっと違っただけでも結果が変わります。


これには期限があります。


釉薬の管理も失敗の原因になります。釉薬そのものの濃度に問題があったり、管理方法が悪いと同じ粘土と釉薬の組み合わせでも結果が大きく異なります。ブク(気泡による膨れ)が発生する場合、粘土に空気が入っていた可能性があり、菊練りの段階から注意が必要です。


参考)https://sorachikara.com/im/process/miss-27664/


黄瀬戸に織部を重ね掛けすると、織部が相当流れてアルミナ板にくっついて取れないことがあります。重ね掛けする場合は相性を考慮し、下の釉薬と上の釉薬の溶け方の違いを理解しておくべきです。


黄瀬戸釉の基本調合と失敗回避のポイント(陶路の黄瀬戸釉解説)
釉掛量の調整も重要です。普通の厚さを0.7~0.8mm厚として、黄瀬戸マット釉の場合は薄く掛かったところが黒ずみ、より渋い作品になる特性があります。薄掛け部分と厚掛け部分で発色が変わるため、意図的に釉掛量を調整することで表現の幅が広がります。


参考)[陶芸の専門店]陶芸.com 黄瀬戸マット釉 2リットル(液…


灰の種類による違いも把握しておきましょう。備長炭灰が理想とされますが入手が難しく、松灰などで代用する場合が多くなっています。灰に含まれる微妙な成分が出来映えに影響を与えるため、使用する灰の特性を記録しておくと再現性が高まります。