温度管理を間違えれば割れや色ムラの原因に。
徐冷の基本から釉薬別の最適な時間、失敗しないためのポイントまで詳しく解説します。あなたの作品は正しく冷却できていますか?
徐冷不足で作品の8割が割れることもあります。
徐冷(じょれい)とは、陶芸やガラス工芸において焼成後の作品を窯の中でゆっくりと冷却する工程を指します。高温で焼き上げた作品をいきなり外気に触れさせると、急激な温度差によって内部に応力が生じ、割れや歪みの原因となるため、この工程が不可欠です。
参考)釉薬ものの徐冷
焼成温度から徐々に温度を下げることで、作品内部の温度ムラを解消し、均一に冷却できます。
つまり割れ防止が第一の目的です。
参考)ガラスが熱で割れる仕組みとは?原因と防止方法を詳しく解説|ガ…
陶芸では一般的に1000℃から1100℃程度まで時間をかけて冷却し、その後は自然冷却に移行します。釉薬の種類によっては、特定の温度帯でゆっくり冷やすことで色の発色や結晶の成長を促す効果もあります。
参考)やきもの(陶芸)の体力戦 3|JunkoTorii×紫峰窯
ガラス工芸では徐冷点という専門用語があり、15分間で歪を除去できる温度のことを指します。これ以下の温度では急冷しても歪が生じにくくなるため、温度管理の目安として活用されています。
参考)ガラスにおける熱処理
徐冷と急冷は、陶芸作品の仕上がりを大きく左右する対照的な冷却方法です。徐冷は窯の中で数時間から十数時間かけてゆっくり温度を下げる方法で、急冷は高温の状態で作品を窯から取り出して一気に冷やす技法です。
瀬戸黒という黒い茶碗は、鉄釉を高温で焼いた状態で窯から取り出し急冷することで、艶のある深い黒色を生み出します。一方、同じ鉄釉でも窯の中で徐冷すると茶色や褐色に発色します。
急冷すると決まった色が出るわけですね。
織部釉は急冷によって色艶が良くなりますが、徐冷すると銅分の黒い結晶が浮かび上がり黒ずんだ色になります。逆に辰砂という釉薬は急冷すると発色せず色が逃げてしまい、徐冷によって銅コロイドが発達して鮮やかな紅赤色が生まれます。
同じ窯で急冷用と徐冷用の作品を同時に焼く場合は、下部に急冷用、上部に徐冷用を配置します。窯は下から冷えるという性質を利用した配置です。
徐冷の時間と温度管理は、作品の色調や表面の質感を決定づける重要な要素です。結晶釉の場合、高温での焼成後に時間をかけてゆっくり温度を下げることで結晶の成長を促し、表情豊かな釉調を生み出すことができます。
参考)https://tile-park.com/blog/detail/36426
実際の焼成例では、7時間の徐冷と17時間の徐冷で飯碗の仕上がりが大きく変わることが確認されています。17時間かけて1000℃まで冷ました作品は、釉薬の発色や質感が安定し、理想的な仕上がりになります。
徐冷時間が長いほど良いということですね。
志野焼の緋色は酸化焼成で1050℃付近で強く反応するため、1100℃付近から徐冷に入り、950℃まで4時間かけてゆっくり温度を下げます。この温度帯での徐冷が、志野焼特有の美しい緋色を引き出す鍵となっています。
ルチール結晶釉では、焼成条件や釉薬の厚みによってピンク色が現れることがあり、これはルチールに含まれる微量な鉄分が結晶化する際の反応によるものです。
温度の下げ方次第で色が変わります。
参考)[陶芸の専門店]陶芸.com ルチール結晶釉 5リットル(液…
徐冷における最も一般的な失敗は、作品の割れです。徐冷剤に入れるタイミングが遅いと、作品が必要以上に冷えて取り出した時に外気との温度差で割れてしまいます。トンボ玉の場合、炎から出して20~30秒くらいで徐冷剤の中に入れる必要があります。
逆に炎から出してすぐに徐冷剤に入れても、ガラスがまだ柔らかすぎて変形したり、徐冷剤の粉が作品に付着したりします。最高でも30秒以内には徐冷剤に入れるべきですが、即座に入れるのもダメということです。
徐冷時間が短すぎることも深刻な問題で、最低でも30分は徐冷する必要があります。取り出すタイミングが早いと外気との温度差で割れが発生します。徐冷剤の上に手をかざしてぬくもりが無くなるまで待つのが目安です。
温度管理以外にも、制作時の温度管理が不十分だったり、ガラスの中に融解温度の異なる異物が混入したりすることも割れの原因になります。金属と組み合わせる場合は、金属を真っ赤になるまでよく焼いてからガラスを付ける必要があります。
参考)https://kinariglass.shop/?mode=f7
徐冷時間は釉薬の種類や作品の大きさによって大きく異なりますが、一般的な目安が存在します。結晶釉を使用した作品では、ねらしが終わった後に17時間かけて1000℃まで冷ますという長時間徐冷が推奨されています。
志野焼の場合、全焼成時間15時間30分、最高温度1214℃、ねらし3時間30分、徐冷4時間という配分が標準的です。1100℃付近から徐冷に入り、950℃まで4時間かけてゆっくり温度を下げます。
時間配分が明確ですね。
温度を下げるペースは、マイナス25℃/時を目安にすると効果的です。1165℃から1000℃まで5時間かけて冷却する場合、この速度を維持します。
実際の焼成記録では、全焼成時間16時間、最高温度1192℃、ねらし3時間、徐冷6時間という例も報告されています。窯の大きさや壁の厚さによって冷める温度が変わるため、自分の窯の特性を把握することが重要です。
徐冷を終わらせる温度は釉薬の種類によって若干異なりますが、1050℃程度を一応の目安にします。これ以降は完全に火や電気を止めて自然冷却に移行できます。
参考リンクとして、詳しい焼成条件と徐冷時間の実例が掲載されている資料があります。
釉薬によって徐冷への適性が大きく異なり、それぞれに最適な冷却方法があります。結晶釉は徐冷に最も適した釉薬の代表格で、ゆっくり冷やすことで結晶の成長を促し、美しい結晶模様を生み出します。
辰砂も徐冷が必要な釉薬で、徐冷によって銅コロイドが発達し、鮮やかな紅赤色が生まれます。急冷すると発色せず色が逃げてしまうため、必ず徐冷が求められます。
色を出すための条件ですね。
一方、織部釉は急冷に適した釉薬です。ゆっくり冷やすと表面に銅分の黒い結晶が浮かび上がって黒ずんだ色になりますが、早く冷めるほうが色艶よくなります。
瀬戸黒は特殊な「引き出し黒」という技法を使い、高温で焼いている状態で窯から取り出して急冷させます。鉄釉を急冷すると艶のある黒色になり、器面には細かい貫入が生じます。これが瀬戸黒の特徴的な釉調を作り出しています。
黄瀬戸以外の多くの釉薬は17時間の徐冷が基本となりますが、色釉は比較的短時間の徐冷でも問題ありません。自分が使う釉薬の特性を事前に調べておくことで、失敗を回避できます。
参考として、結晶釉の技法について詳しく解説されているページがあります。