クエン酸で渋抜きすると織部が白く粉をふくことがあります。
織部釉は銅を含む釉薬で、酸化焼成で美しい緑色を発色します。しかし焼成中に銅が揮発し、冷却過程で釉表面に再付着することで酸化銅の被膜が形成されます。この被膜は酸化銅(II)CuOという黒色の物質で、織部の鮮やかな緑を曇らせてしまいます。
焼成温度が低かったり焼成時間が短いと釉が十分に溶けず、被膜が発生しやすくなります。酸化焼成が基本の織部ですが、途中で還元焼成を挟むと深みのある緑色になる一方、冷却がゆっくりだと酸化膜が強くなる傾向があります。
これを「織部がカブる」と呼びます。
大きな薪窯ほどこの現象が起きやすく、プロの陶芸家でも頭を悩ませる問題です。
従来は希塩酸を使った渋抜きが一般的でしたが、入手に身分証明が必要で取り扱いも危険です。クエン酸なら100円ショップでも購入でき、安全に使えるため初心者や趣味の陶芸家に最適です。
塩酸は水で数倍に薄めて使い、使用後は数時間水を流しっぱなしにして洗う必要があります。対してクエン酸は食品添加物としても使われる安全な酸なので、たとえ口に入っても心配ありません。
臭いもなく、処理後の水洗いも簡単です。
少量の作品を処理するなら、コスト面でもクエン酸が有利です。大量生産する陶芸作家は塩酸を選びますが、趣味で数点焼く程度ならクエン酸で十分な効果が得られます。
まず焼き物を水に浸けておきます。これは酸が貫入(釉薬の細かいヒビ)に染み込むのを防ぐためです。
次に40〜60℃のお湯1リットルに対してクエン酸40グラムを溶かします。
濃度は約4%です。
ただし実験では1%や0.5%でも十分効果があることが確認されています。1%なら8分弱、0.5%でも10〜12分程度で被膜が除去できます。
この溶液に器を5〜12分浸し、スポンジで軽くこすります。スポンジに膜の汚れが付いてきたら、水で洗って様子を見ます。必要に応じて再度浸けるか、そのまま天日干しして完成です。
クエン酸スプレーを作って吹きかける方法もあります。
最も重要なのは浸けすぎないことです。濃い塩酸やクエン酸に長時間浸けると、織部が白く粉をふいたように変色します。
これは釉薬の成分が過剰に溶け出すためです。
通常は15〜20分程度で被膜が脱げるように濃度を調節しますが、強くカブった織部は1時間以上かかることもあります。焦って濃度を上げすぎると変色リスクが高まるので注意が必要です。
濃度が基本ですね。
チンチンに沸いた湯に酸を溶かすと織部の反応が良くなり、濃度を抑えられます。ただし熱湯を使う場合は火傷に注意し、換気も十分に行ってください。
古くからある方法として、栃渋(とちしぶ)を使う技法があります。クヌギの実のヘタを集めて水に浸した液体に器を浸ける方法です。
栃渋は黒っぽい液体なので、器の貫入に入り込んで黒い筋を作ります。これは欠点とも言えますが、古びた味わいを出すのに適しているため、あえてこの方法を選ぶ陶芸家もいます。器を水に浸けてから栃渋に浸けると、適度な色合いで古風に仕上がります。
食酢やトイレ用洗剤(サンポールなど)も使えます。ただし臭いが強いため、水洗いの手間を考えるとクエン酸が最も実用的です。
使い分けが大切です。
プロの陶房では器や釉薬、土の種類によって栃渋と塩酸を使い分けています。透明釉や貫入のある釉薬に渋が入り込むことで、古びた表情が生まれるからです。
陶芸教室 陶八さん - 織部釉の酸化膜をクエン酸で取る方法
織部釉のクエン酸処理について、ChatGPTを使った濃度計算の方法など実践的な情報が掲載されています。
土岐市公式サイト - 織部釉の膜を取る方法
織部釉の酸化膜除去について、食酢やクエン酸など各種方法の比較が公的機関によって解説されています。