酸化銅を水素で還元する化学反応式は、CuO + H₂ → Cu + H₂Oと表されます。この反応式では、酸化銅(CuO)と水素(H₂)が反応して、銅(Cu)と水(H₂O)が生成されます。他の還元反応と異なり、この反応式では係数をつけなくても原子の数が左辺と右辺で一致するため、係数は不要です。
参考)https://www.fdtext.com/dp/r2k/sr2_k8_kangen_03.pdf
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反応前の物質を見ると、左辺には銅原子が1つ、酸素原子が1つ、水素原子が2つあります。反応後の右辺にも同様に、銅原子が1つ、酸素原子が1つ(水分子の中)、水素原子が2つ(水分子の中)が存在します。このように原子の数が自然に一致するため、化学反応式の作成が比較的簡単な反応といえます。
参考)酸化銅と水素が還元した時の化学反応式を - Clearnot…
言葉で表現すると「酸化銅+水素→銅+水」となり、酸化銅が酸素を失って銅になる還元反応と、水素が酸素を得て水になる酸化反応が同時に起こっています。youtube
参考)https://www.nhk.or.jp/kokokoza/kagakukiso/contents/resume/resume_0000002068.html
酸化銅の水素による還元では、酸素原子が酸化銅から水素へと移動する現象が起こります。この反応が進行する理由は、水素が銅よりも酸素と結びつきやすい性質を持っているためです。
参考)なぜ酸化銅は還元することができるのか?
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酸化銅には元々酸素が含まれており、加熱しながら水素を送り込むと、水素が酸化銅から酸素を奪って水になります。一方で酸化銅は酸素を失うため還元されて銅に変化します。反応が進むにつれて、試験管内の黒色の酸化銅はしだいに赤色の銅に変化し、奪われた酸素の分だけ質量が小さくなります。youtube
この反応では還元と酸化が同時に起こるため、酸化還元反応と呼ばれます。水素は酸化されて水になりますが、これは水滴として試験管の口の部分に付着します。youtube
酸化銅の水素による還元実験では、まず酸化銅を加熱した状態で水素をガラス管内に送り込む装置を準備します。試験管を少し口を下に傾けて設置し、気体誘導管を取り付けます。
実験手順として、加熱した酸化銅を水素の中に入れるか、またはガラス管内で酸化銅を加熱しながら水素を送り込みます。すると、黒色だった酸化銅が赤色の銅に変化し、ガラス管内に水滴が付着していることが確認できます。youtube
実験後の観察では、反応前の酸化銅と反応後の物質の質量を比較すると、酸素が失われた分だけ質量が減少していることが分かります。また、ガラス管の口もとには水が付着し、青色の塩化コバルト紙を使って水であることを確認できます。
酸化銅の還元には、炭素と水素のどちらも還元剤として使用できますが、それぞれ異なる特徴があります。炭素を使った場合の化学反応式は2CuO + C → 2Cu + CO₂となり、銅と二酸化炭素が生成されます。
参考)【中2理科】「酸化銅の還元」
炭素による還元では、酸化銅2.2gに対して炭素粉末0.2gの質量比(約40:3)で混ぜ合わせる必要があります。混ぜ方が不十分だと還元がうまく進行しないため、乳鉢でよく混ぜるか、蓋のできる容器に入れて振り混ぜることが重要です。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/kakyoshi/68/12/68_516/_pdf
水素による還元の利点は、化学反応式に係数が不要で分かりやすい点です。一方、炭素による還元は実験が簡単で、発生する二酸化炭素を石灰水で確認できるという利点があります。両者とも銅より酸素と結びつきやすい性質を利用した還元反応です。
参考)酸化還元
酸化銅の還元反応で学ぶ原理は、実際の産業現場でも重要な役割を果たしています。特に製鉄所では、酸化鉄を含む鉄鉱石をコークス(炭素の主成分)とともに溶鉱炉に入れ、熱風を吹き込んで鉄を生産しています。
鉄鉱石の主な成分は酸化鉄であり、これを金属として利用するには還元する必要があります。コークスは石炭を蒸し焼きにして得られるもので、その主成分である炭素が還元剤として働きます。反応式は「酸化鉄+炭素→鉄+二酸化炭素」となり、酸化銅の還元と同じ原理です。
金属は現代社会にとって不可欠な素材であり、多くの金属が酸化物などの鉱石から取り出されます。酸化物から金属を取り出す仕組みを理解することは、現代社会を理解する上で非常に重要です。自然界の金属は酸化物として存在することが多いため、金属として利用する場合には還元が必要となります。