天目釉調合の基本から配合比率まで完全ガイド

天目釉の調合は陶芸家にとって永遠のテーマです。美しい結晶や発色を生み出すための配合比率、焼成温度、原料の選び方まで、初心者でも理解できるよう丁寧に解説します。あなたの作品を劇的に変える秘訣とは?

天目釉の調合方法と配合比率

市販の天目釉を使えば失敗しないと思っていませんか?

この記事のポイント
🎨
天目釉の基本調合

長石・石灰石・鉄分の黄金比率と配合のコツを解説

🔥
焼成温度の重要性

1230~1280℃での微調整が結晶形成を左右する理由

⚗️
原料選びの落とし穴

鉄分の種類と産地による発色の違いを比較

天目釉の基本配合比率と原料


天目釉の基本配合は、長石40~50%、石灰石20~30%、鉄分5~10%が一般的です。この比率は、宋代の中国で確立された伝統的な配合をベースにしています。


長石はカリ長石と曹長石の混合が推奨されます。カリ長石だけだと釉薬が硬くなりすぎ、曹長石だけだと流れやすくなるためです。


比率は6:4から7:3が扱いやすいですね。


石灰石炭酸カルシウムとして加えますが、産地によって不純物の含有量が異なります。高純度の石灰石を使うと透明感が増し、不純物が多いものは濁りが出やすくなります。


どちらが良いかは目指す表現次第です。


鉄分には弁柄(ベンガラ)、酸化第二鉄、黒鉄鉱などがあります。弁柄は赤褐色の発色になり、黒鉄鉱は黒褐色の深い色調を生み出します。配合量を5%から10%に増やすと、色は濃くなりますが流動性も増すため注意が必要です。


焼成温度は1230~1280℃が基本となります。


50℃の差は大きいですね。


1230℃では結晶が小さく、1280℃では大きな結晶が形成されやすくなります。


天目釉調合での鉄分の役割と選び方

鉄分は天目釉の色を決定する最も重要な要素です。添加量だけでなく、鉄の種類によって発色が大きく変わります。


酸化第二鉄(Fe₂O₃)は最も一般的な鉄分源で、茶褐色から黒褐色の発色を生みます。粒子が細かいため釉薬全体に均一に分散しやすく、初心者にも扱いやすい特徴があります。


配合量5%で茶色、8%で黒褐色が目安です。


弁柄は赤鉄鉱を粉砕したもので、赤みの強い発色が特徴です。油滴天目のような結晶を狙う場合、弁柄を6~7%配合すると効果的です。ただし産地によって色調が変わるため、テストピースでの確認が必須ですね。


黒鉄鉱(マグネタイト)は四酸化三鉄(Fe₃O₄)を含み、より深い黒色を生み出します。曜変天目を目指す陶芸家が好んで使う原料です。配合量は4~6%と少なめでも強い発色が得られます。


意外な選択肢として、製鉄所から出る鉄粉(スケール)を使う方法もあります。不純物が多く含まれるため予測困難ですが、独特の景色が生まれる可能性があります。


これは上級者向けの実験的アプローチです。


鉄分の粒子サイズも重要な要素となります。粗い粒子は結晶として残りやすく、細かい粒子は釉薬に溶け込んで全体を着色します。200メッシュ以下に篩い分けすると扱いやすいですね。


天目釉の焼成温度と雰囲気の調整法

焼成温度の微調整が、天目釉の仕上がりを劇的に変えます。1230℃と1280℃では、見た目がまったく別の釉薬になるほどです。


還元焼成が天目釉の基本となります。酸素を制限した雰囲気で焼くことで、鉄分が還元されて独特の黒褐色や虹色の光彩が生まれます。酸化焼成では茶色やオレンジ色になってしまい、天目釉特有の深みは出ません。


還元のタイミングは900℃から開始するのが一般的です。早すぎると釉薬が十分に溶けず、遅すぎると還元効果が弱くなります。1100℃から1200℃の間が最も強い還元が必要な温度帯ですね。


温度上昇速度も結晶形成に影響します。1時間あたり100℃のゆっくりとした昇温が理想的です。急激に温度を上げると釉薬が沸騰して気泡が残り、表面が荒れる原因になります。


冷却速度はさらに重要な要素です。1250℃から1100℃までを1時間あたり50℃でゆっくり下げると、美しい結晶が成長します。この温度帯で急冷すると結晶が形成されず、ガラス質の平坦な表面になってしまいます。


電気窯よりガス窯の方が還元雰囲気を作りやすいのは確かです。しかし電気窯でも炭化ケイ素の発熱体を使い、木炭や木片を投入することで局所的な還元が可能になります。


コストは抑えられますね。


天目釉調合の失敗例と対処法

天目釉の調合で最も多い失敗は、釉薬が流れすぎて高台まで垂れてしまうケースです。これは鉄分が多すぎるか、焼成温度が高すぎることが原因となります。


釉薬が流れた場合の対処法は、次回の配合で石灰石を5%増やすことです。石灰石は釉薬の粘性を高め、流動性を抑える働きがあります。また焼成温度を20~30℃下げることも効果的ですね。


逆に釉薬が溶けきらず、表面がざらざらする失敗もあります。長石の量が少ないか、焼成温度が低すぎることが原因です。長石を10%増やすか、焼成温度を30℃上げると改善されます。


ピンホール(針穴)が無数に開く失敗は、素地からのガス抜けが原因です。釉薬の調合ではなく、素焼きの温度を800℃から850℃に上げることで解決できます。素地に含まれる有機物や炭酸塩を十分に分解させることが重要です。


結晶が全く出ない場合は、冷却速度を見直してください。1250℃から1100℃を2時間以上かけて下げると、結晶が成長しやすくなります。


急冷は禁物ですね。


色が薄すぎる失敗は、還元不足か鉄分不足です。鉄分を1~2%追加するか、還元のタイミングを早めて900℃から開始してください。炎の色がオレンジから青白く変わるのが還元の目安となります。


天目釉の独自調合レシピと応用技法

伝統的な天目釉にオリジナリティを加える調合テクニックを紹介します。基本配合をベースに、特定の鉱物を少量添加することで予想外の景色が生まれます。


コバルトを0.5~1%添加すると、黒地に青い斑点が浮かぶ「星天目」風の表現が可能です。コバルトは強力な着色剤なので、1%を超えると青が強すぎて天目釉の雰囲気が失われます。


微量が鍵ですね。


銅を2~3%加えると、還元焼成で赤銅色の光沢が生まれます。これは「紅天目」と呼ばれる技法で、中国の宋代にも作られていました。ただし銅は揮発しやすいため、窯詰めの位置によって発色が変わります。


骨灰(リン酸カルシウム)を5%程度混ぜると、釉薬の流動性が増し、独特の乳濁効果が生まれます。動物の骨を焼いて作るため入手は限られますが、魚の骨を焼成して自作することも可能です。


チタンを1~2%加えると、釉薬表面に金色の結晶が析出します。これは「金結晶天目」として近年注目されている技法です。ただしチタンは高価なため、テストピースで効果を確認してから本番に使うのが賢明ですね。


灰を10~20%混合する「灰天目」も魅力的な選択肢です。藁灰、木灰、竹灰など植物の種類によって発色が変わります。灰に含まれるカリウムやマグネシウムが、独特の景色を生み出します。


これらの応用技法は、基本の天目釉調合を完全にマスターしてから挑戦してください。基礎ができていないと、失敗の原因が調合なのか焼成なのか判断できなくなります。


段階的な実験が成功への近道です。


天目釉の調合は科学であり芸術でもあります。同じレシピでも窯や原料のロットによって結果が変わるため、詳細な記録を取り続けることが上達の秘訣となります。失敗を恐れず、少しずつ自分だけの配合を見つけていってください。




本焼釉薬 鉄赤天目釉 1kg 粉末 酸化焼成用