窯に入れる前の作品配置で8割が失敗します。
窯詰めとは、乾燥させた陶芸作品を焼成窯の中に配置する工程を指します。素焼きや本焼きの前に行う重要な作業で、作品の仕上がりを大きく左右するステップです。
単に作品を窯に入れるだけではありません。窯内の温度分布を考慮しながら、作品同士が接触しないよう慎重に配置していきます。特に電気窯では上部が高温になりやすく、ガス窯では炎の通り道を意識した配置が求められます。
陶芸教室では講師が窯詰めを担当することが多いですが、自宅で陶芸を楽しむ方や工房を持つ作家にとっては必須のスキルです。配置を間違えると作品が破損したり、釉薬が流れて棚板にくっついたりするリスクがあります。
つまり技術と経験が必要な工程です。
初心者の失敗例として最も多いのが、作品同士を近づけすぎることです。焼成中に作品は微妙に動き、膨張することもあるため、十分な間隔を確保しないと接触して傷がつきます。
窯詰めの最大の目的は、すべての作品に均等な熱が伝わる環境を整えることです。
窯内には必ず温度ムラが存在します。
どれだけ高性能な窯でも、上下左右で10〜30℃の温度差が生じるのが一般的です。
この温度差を考慮して作品を配置することで、焼きムラを最小限に抑えられます。例えば、厚みのある大きな作品は温度が上がりにくい窯の下部に、薄い小さな作品は中段から上段に配置するのが基本です。
また、窯詰めには作業効率を高める目的もあります。限られた窯のスペースを最大限活用し、一度に多くの作品を焼成できれば、電気代やガス代の節約につながります。
ただし詰め込みすぎは禁物です。
空気の流れも重要な要素です。窯内で熱気が循環しやすいよう、作品の配置に工夫が必要になります。棚板と棚柱を使って複数段に分けることで、効率的な熱循環が可能になります。
これが窯詰めの原則です。
窯詰めには専用の道具が必要です。最も重要なのが棚板と棚柱で、これらを組み合わせて窯内に段を作ります。棚板は耐火性のセラミック製で、サイズは窯の大きさに合わせて選びます。
棚柱は高さの異なる複数本を用意します。一般的な電気窯なら5cm、10cm、15cmの3種類があれば、ほとんどの作品に対応できます。作品の高さに応じて棚柱を選び、棚板を水平に設置することが大切です。
その他に必要な道具は以下の通りです。
釉薬を使った本焼きの場合、作品の底に釉薬がついていないか確認が必要です。釉薬が溶けて棚板とくっつくと、作品も棚板も使えなくなります。底に釉薬がついている場合は、焼成前にヤスリで削り落とします。
窯詰め用の記録ノートを用意するのもおすすめです。どの位置にどんな作品を配置したか記録しておくと、焼き上がりの結果と照らし合わせて次回の改善に活かせます。経験を積むほど、効率的な窯詰めができるようになります。
窯詰めは下段から順番に配置していきます。まず窯の底に最初の棚板を置き、その上に作品を並べていく流れです。この時、作品同士の間隔を最低3cm以上空けることが鉄則になります。
作品を配置する際は、重い作品から先に置くのが基本です。大きくて重い器や花瓶などを先に配置し、残ったスペースに小さな作品を入れていきます。バランスよく配置することで、棚板への負荷が均等になります。
次の段に移る時は、棚柱を3本または4本使って棚板を支えます。3本の場合は三角形の頂点に、4本の場合は四隅に配置すると安定します。棚板が傾かないよう、水平を保つことが重要です。
素焼きの場合は作品同士を接触させても問題ありませんが、本焼きでは絶対に接触させてはいけません。釉薬が溶けて作品同士がくっついてしまうからです。特に釉薬を使った本焼きでは、作品間の距離を通常より広めに取ります。
窯詰めで避けるべき配置パターンがあります。
これらは温度ムラや破損の原因になります。特に熱電対の前に作品を置くと、正確な温度測定ができず、焼成不良につながる可能性があります。どういうことでしょうか?
熱電対は窯内の温度を測るセンサーで、この数値を基に焼成プログラムが制御されています。センサーの前に作品があると、実際の窯内温度より低い温度が表示され、過焼成になるリスクがあるのです。
窯詰めでの失敗は、作品の破損や焼成不良という形で表れます。最も多い失敗が、作品同士の接触による傷や変形です。焼成中は1200℃前後の高温になるため、わずかな接触でも作品に跡が残ります。
釉薬の垂れによるトラブルも頻発します。釉薬を厚く塗りすぎると、焼成中に溶けて流れ落ち、作品の底が棚板にくっつきます。こうなると作品を取り外す時に底が欠けてしまい、場合によっては棚板も傷つけます。
温度ムラによる焼成不良も深刻な問題です。窯の上部に配置した作品は過焼成になり、釉薬が溶けすぎて色が濁ったり、形が歪んだりします。逆に下部の作品は焼成不足で、釉薬が十分に溶けずマット仕上げになることがあります。
これらの失敗を防ぐには、事前の準備が欠かせません。作品の底をしっかり確認し、釉薬がついていれば削り落とします。また、釉薬の厚みを均一にすることで、垂れるリスクを減らせます。
配置のシミュレーションも効果的です。窯に入れる前に、作品を並べてレイアウトを決めておきます。この段階で作品の高さや数を把握し、必要な棚板の枚数や棚柱の高さを計算します。
準備が成功の鍵です。
トラブルが起きた時の対処法も知っておく必要があります。作品が棚板にくっついた場合は、無理に外そうとせず、グラインダーで少しずつ削り取ります。急いで外そうとすると、作品も棚板も壊れてしまいます。
窯詰めの記録を残すことで、失敗のパターンが見えてきます。「この位置は温度が高すぎる」「この配置だと接触しやすい」といった傾向が分かれば、次回以降の窯詰めで同じミスを繰り返さずに済みます。
経験豊富な陶芸家でも、新しい窯や釉薬を使う時は試し焼きを行います。少量の作品で焼成テストを行い、窯の特性を把握してから本格的な窯詰めに移ります。
これは無駄ではありません。
失敗を恐れすぎて作品を少なくすると、窯の稼働効率が悪くなります。適度にスペースを活用しつつ、安全な配置を心がけるバランス感覚が求められます。何度も経験を積むことで、最適な窯詰めができるようになります。