石灰石化学式塩酸の基礎知識と陶芸での活用法

陶芸で使う石灰石と塩酸の化学式や反応について、意外と知らない基本や注意点を解説。釉薬作りに役立つ炭酸カルシウムの性質や安全な取り扱い方法をご存じですか?

石灰石化学式塩酸の基礎反応

陶芸用の釉薬原料として使う石灰石を塩酸に入れると、激しく泡立ちます。


参考)石灰石が塩酸に溶けると気体が発生~化学反応式より物質の名前に…


この記事の3つのポイント
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石灰石と塩酸の基本反応

炭酸カルシウム(CaCO₃)と塩酸(HCl)が反応し、塩化カルシウム、二酸化炭素、水を生成する化学変化の仕組み

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陶芸での石灰石の役割

高温で釉薬を溶かす媒溶剤として機能し、焼成時に炭酸ガスが抜けて酸化カルシウムに変化する特性

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塩酸の取り扱い注意点

市販の塩酸は濃度35~37%で猛毒。希釈せず使うと爆発的反応が起きる危険性がある

石灰石の化学式と炭酸カルシウムの基本


石灰石の化学式はCaCO₃(炭酸カルシウム)です。大理石やチョーク、卵の殻、貝殻にも含まれています。


参考)石灰石と塩酸の化学反応式|なぜ二酸化炭素?白く濁る?CaCO…


カルシウム(Ca)、炭素(C)、酸素(O)の3つの元素で構成されています。陶芸では「白石灰石」と呼ばれる純度の高い炭酸カルシウムを釉薬原料として使用します。


参考)陶器原料の特徴 - MONO FACTORY


白石灰石は釉薬の媒溶剤(溶かす材料)として機能します。焼成中に炭酸ガス(CO₂)が抜けて酸化カルシウム(CaO)に変化し、アルミナやシリカと高温で反応してガラス化を促進させる原料です。


参考)白石灰石 媒溶原料 炭酸カルシウム 陶芸用


冷却後は釉薬の硬度を上げ、耐摩耗性を大きくする働きをします。


つまり仕上がりが丈夫になるということですね。



塩酸の化学式HClと特性

塩酸の化学式はHClで、正確には塩化水素と水の混合物です。水素(H)と塩素(Cl)が結合した物質が水に溶けた状態を指します。


参考)石灰石に塩酸を加えると何が発生する?実験や化学反応式も元研究…


市販の塩酸は通常35~37%と濃く猛毒なので、蒸気を吸ったりしないよう取り扱いには十分注意が必要です。実験で使用する時は必ず薄めて(希釈して)使用しましょう。


濃いままで使うと取り扱いに特に気をつけなければならないですし、反応が爆発的に起こって危険な事もあります。


薄めても強い酸であることは変わりません。



塩酸は無色で刺激臭のある液体です。


一般的には実験室や工業などで使用されます。



酸化物(特に硝酸、塩素酸塩)、シアン化物、硫化物と混ざると反応を起こして、有毒ガスが発生する危険があります。混合物との反応リスクを避けるため、使用前に他の薬品との接触がないか確認してください。


参考)https://www.jsia.gr.jp/data/handling_02.pdf


石灰石と塩酸の化学反応式CaCO₃+2HCl

石灰石(CaCO₃)と塩酸(HCl)を混ぜると、以下の化学反応が起こります。


参考)石灰石に塩酸をかけた時の 化学反応式がわかりません。


CaCO₃ + 2HCl → CaCl₂ + CO₂ + H₂O
左辺のCaCO₃は石灰石、HClは塩酸を表しています。反応式の矢印(→)は、反応が起こることを表しています。


右辺に生成されるのは以下の3つです。


  • CaCl₂(塩化カルシウム:塩の一種
  • CO₂(二酸化炭素):無色無臭の気体
  • H₂O(水):液体

塩酸(HCl)は強い酸であり、石灰石(CaCO₃)は塩基性の物質です。塩酸と石灰石が反応すると、酸と塩基の中和反応が起こります。


この中和反応によって、塩化カルシウム、二酸化炭素、水が生成されるのです。


中和反応が基本です。



石灰石と塩酸の実験で観察される現象

石灰石に塩酸を少しずつかけると石灰石が溶け始め二酸化炭素が発生します。水で満たされている捕集ビンにL字ガラス管を通って、ブクブクと気体が集まる様子が目視でも確認できます。


発生した二酸化炭素は空気よりも重いので、三角フラスコの底からたまり、中の空気を外へ押し出します。この性質を利用して、気体を下方置換法で集めることができます。


実験中にガラス板を強く押さえすぎると、圧力で割れてしまう危険があります。


ガラスの板が割れる事故が報告されています。



参考)http://kinki.chemistry.or.jp/pre/esa-163.html


発生する二酸化炭素の量が多いと内部圧力が上がるためです。


適度な力で押さえることが条件です。



陶芸釉薬における石灰石の溶融温度と反応

石灰(酸化カルシウムCaO)は、高火度釉薬では最も有効で、かつ、安定した熔融剤としての働きがあります。アルミナ成分と硅酸成分と高温域で反応しガラス化を促進させる原料です。


石灰透明釉の溶融温度は1250~1280℃とされています。石灰バリウム釉は1230~1250℃、石灰亜鉛釉は1200~1230℃です。


参考)https://www.aichi-inst.jp/tokoname/research/report/9T2.pdf


焼成中に釉薬中のドロマイトや炭酸カルシウムなどの炭酸塩から二酸化炭素が放出されます。これは600~800℃の温度帯で起こります。


900℃になると釉薬が溶け始め、陶土と結合しだします。温度管理が釉薬の仕上がりを左右するということですね。


陶器原料の特徴 - MONO FACTORY
陶芸で使用する石灰原料の種類と特性について、白石灰・鼠石灰・珪灰石などの違いが詳しく解説されています。


石灰石原料の種類と釉薬への影響

陶芸で使う石灰原料には複数の種類があります。


📋 主な石灰原料

  • 白石灰:CaCO₃ 純度の高い炭酸カルシウム。焼成中に分解して酸化カルシウム(CaO)となり、溶融助剤としてガラス形成を助ける。生地では耐火度を調整し白化させる
  • 鼠石灰:CaCO₃ 炭酸カルシウムを主成分とする。白石灰と比べ鉄やマンガンなどの不純物を含む。


    溶解剤として作用しガラス形成を助ける。


    白濁した質感や微妙な変化を与えるために使用

  • 珪灰石ケイ酸カルシウム(CaSiO₃) 溶融温度の低下やマット仕上げに使用
  • 石灰石:溶媒材として用いる。炭酸カルシウムや方解石を主成分としている

鼠石灰に含まれる不純物が釉薬に独特の表情を与えます。


意外ですね。



純度による使い分けが釉調を左右するため、目的に応じて原料を選ぶ必要があります。白濁した質感や微妙な変化を狙う場合は鼠石灰を、透明感のある仕上がりを求める場合は白石灰を選びます。


灰の漉し方で釉調を左右する程大切な作業なので、何目のフルイを使うか、水の量はどのくらいか、掻き混ぜた後にすくい取るタイミング等、たくさん経験することが重要です。


参考)http://www.tougeishop.com/video/cat61.php


釉薬調合での石灰石配合と実践的コツ

土灰(石灰を含む灰)と長石の配合比率を変えることで、釉調に変化が生まれます。基本的な配合例として、長石7:土灰3、長石6:土灰4、長石5:土灰5などがあります。


灰釉の調合で最も大切な素材は灰です。


灰の漉し方が釉調を左右します。



アクが必要な釉を作る時はフクイ灰(ふるって取った灰)と言って水簸さえしないこともあります。アクは必要または不必要とは言わず、その釉に合わせてアクを抜いたり残したりします。


窯の中に残った灰のように高温で焼いた灰と炭から出来た灰のように低温で出来た灰とは、アルカリ度が異なるので注意が必要です。焼成温度の違いで同じ灰でも性質が変わるということですね。


釉薬調合の失敗リスクを減らしたい場合、黄瀬戸釉や古瀬戸釉等は灰で決まってしまうため、特に慎重かつ丁寧に灰漉しを行います。


釉調合で最も大切な要素のひとつです。



【薬剤師×陶芸】薪ストーブの灰で釉薬つくってみたよ!
薪ストーブの灰を使った釉薬作りの実験記録。土灰と長石の配合比率による釉調の変化について、実際の焼成結果が詳しく紹介されています。


石灰成分が過剰な場合の水和崩壊リスク

釉薬目線で見ると、石灰石を主要構成物としてこれをガラス化させるために長石やカオリンを入れていくとき、フリーのカルシア(CaO)が残って崩壊する現象が起きます。


参考)つくばセラミックワークス: カルシアのるつぼ …


これは水和崩壊と呼ばれます。酸化カルシウム(CaO)は水と反応して水酸化カルシウムに変化する際に体積が膨張し、構造が崩れる現象です。


石灰成分が適切にガラス化されずに残ると、焼成後に水分を吸収して崩壊する可能性があります。フリーのカルシアが残らないようアルミナ・シリカとのバランスを調整する必要があります。


石灰マット釉などでも同様の注意が必要です。


痛いですね。



崩壊を防ぐためには、釉薬の配合設計段階で石灰分とガラス形成成分のバランスを計算し、フリーの酸化カルシウムが残らないようにする必要があります。三角試験(段階的に配合比を変えた試験)で事前に確認すると安全です。





石のさかい 砕石 ライムストーン 石灰砂利 約20キロ (小 5−20ミリ)