塩化カルシウム化学式なぜCaCl2か|イオン結合の理由を解説

塩化カルシウムの化学式がCaCl2となる理由をご存知ですか?カルシウムと塩素のイオン結合に基づく価電子の授受が鍵となります。本記事では電子配置から化学式の決定までをわかりやすく解説。鉱石に興味を持つ方に向けて、化学式の成り立ちの謎を紐解きます。

塩化カルシウム化学式がCaCl2になる理由

💡 塩化カルシウムの化学式の仕組み
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カルシウムは2価の陽イオン

カルシウム(Ca)は電子を2個失いやすく、Ca2+として安定化します

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塩素は1価の陰イオン

塩素(Cl)は電子を1個受け取りやすく、Cl-として安定化します

電荷の均衡でCaCl2が成立

Ca2+の電荷(+2)と2個のCl-の電荷(-2)が打ち消し合い、中性の化合物となります

塩化カルシウムのイオン結合と価電子の関係

 

塩化カルシウムの化学式がCaCl2となるのは、カルシウムと塩素の価電子の授受に基づくイオン結合が理由です。カルシウム(Ca)は原子番号20の元素で、最外殻に2個の価電子を持ちます。この2個の電子を失うことで、より安定な電子配置(希ガス構造)を獲得しようとします。

 

参考)Science Station|広報活動|国立研究開発法人日…

一方、塩素(Cl)は原子番号17の元素で、最外殻に7個の電子を持ちます。あと1個の電子を受け取れば8個の電子を持つ安定な希ガス構造になります。そのため、塩素原子は電子を1個受け取りやすい性質を持ちます。

 

参考)塩化カルシウムの電離式(CaCl2)は?電離度は?覚え方や化…

カルシウムが2個の電子を手放したいのに対し、塩素は1個しか受け取れません。この不一致を解消するため、2個の塩素原子が必要となり、結果としてCaCl2という化学式になります。カルシウム1個が2個の電子を失ってCa2+となり、2個の塩素原子がそれぞれ1個ずつ電子を受け取ってCl-となることで、電気的に中性な化合物が形成されるのです。

 

参考)イオン結合|化学の大村 @私立中高一貫校 化学科教員

塩化カルシウムの電離式と電荷の保存則

塩化カルシウム(CaCl2)を水に溶かすと、次のような電離が起こります。

CaCl2 → Ca2+ + 2Cl-
この電離式からわかるように、塩化カルシウム1分子から、1個のカルシウムイオン(Ca2+)と2個の塩化物イオン(Cl-)が生じます。重要なのは、電離の前後で電荷の合計が保存されることです。

 

参考)https://pigboat-don-guri131.ssl-lolipop.jp/012%20Ion.html

電離前のCaCl2は電気的に中性(電荷0)です。電離後、Ca2+は+2の電荷を持ち、2個のCl-はそれぞれ-1の電荷を持つため、合計で-2となります。この+2と-2が打ち消し合い、全体として電荷が0になります。

このように「プラスの数=マイナスの数」という電荷の均衡が、化学式を決定する基本原則となっています。塩化カルシウムに限らず、すべてのイオン結合化合物において、陽イオンと陰イオンの電荷が相殺されるように組成式が決まります。

 

参考)イオン結合(例・共有結合との違い・特徴・強さなど)

塩化カルシウムの価数とイオン化の仕組み

価数とは、イオンになるときに原子が授受する電子の数を指します。カルシウムは2価の陽イオンになりやすく、塩素は1価の陰イオンになりやすい元素です。

 

参考)Cacl2は何故2価なんですか? - 価数とはイオンになると…

カルシウムの電子配置は、最外殻に2個の価電子を持つ構造です。この2個の電子を失うことで、内側の電子殻が最外殻となり、安定な8電子配置(オクテット則)を満たします。電子を失ったカルシウムは、原子核の持つ+20の電荷から18個の電子を引いた+2の電荷を持つCa2+イオンになります。

 

参考)高等学校化学I/化学結合 - Wikibooks

塩素は最外殻に7個の電子を持ち、あと1個で安定な8電子配置になります。そのため、電子を1個受け取ってCl-イオンとなり、-1の電荷を持ちます。塩素の電子親和力が大きいことも、陰イオンになりやすい理由の一つです。

イオン化傾向の大きいカルシウムは、電子を失いやすく酸化されやすい性質を持ちます。一方、電気陰性度の大きい塩素は、電子を受け取りやすい性質があります。この両者の性質の違いが、CaCl2という化学式を生み出す原動力となっているのです。

 

参考)https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/hokeniryo/R4tokutei

塩化カルシウムの組成式の決定と電気的中性

組成式とは、イオン結合化合物において、各イオンの個数比を最も簡単な整数比で表したものです。塩化カルシウムの組成式CaCl2は、Ca2+とCl-が1:2の比率で結合していることを示します。

組成式を決める際の基本原則は、全体として電気的に中性にすることです。Ca2+は+2の電荷を持つため、これを打ち消すには-2の電荷が必要です。Cl-は1個あたり-1の電荷しか持たないため、2個のCl-が必要となります。

計算式で表すと、Ca2+の電荷(+2)とCl-×2個の電荷(-1×2=-2)を足し合わせると、+2+(-2)=0となり、電気的に中性になります。このように「+の数=-の数」となるように、それぞれのイオンの個数を調整することで、組成式が決まります。

同様の原理は、他のカルシウム化合物にも適用されます。例えば水酸化カルシウムCa(OH)2では、Ca2+に対して1価の陰イオンOH-が2個必要となり、組成式はCa(OH)2となります。

 

参考)高校化学 典型金属 - Wikibooks

塩化カルシウムと鉱物資源の関係性

カルシウムは地殻中に豊富に存在する元素で、酸素、ケイ素、アルミニウム、鉄に次いで5番目に多い元素です(地殻存在度4.2%)。自然界では、炭酸カルシウム(CaCO3)として石灰石(石灰岩)や方解石、大理石の形で産出されます。また、硫酸カルシウム(CaSO4・2H2O)として石膏の形でも多産します。

 

参考)https://www2.city.kurashiki.okayama.jp/musnat/geology/mineral/miner/Ca.html

石灰石は、サンゴや貝殻などの炭酸カルシウムからなる生物の遺骸が堆積して固まったものです。これらの鉱物資源は、塩化カルシウムの工業的製造の原料として重要な役割を果たしています。炭酸カルシウムと塩酸を反応させることで、工業的に塩化カルシウムを製造できます。

 

参考)塩化カルシウム - Wikipedia

方解石は、塩酸に二酸化炭素の泡を出して容易に溶ける性質があります。この反応を化学式で表すと、CaCO3 + 2HCl → CaCl2 + H2O + CO2となります。また、水酸化カルシウム(消石灰)と塩酸の中和反応によっても塩化カルシウムが生成されます。

 

参考)【乾燥剤】塩化カルシウムの性質から用法までが5分で分かる徹底…

鉱物としてのカルシウムは、変成岩や火成岩を構成する斜長石角閃石類にも含まれています。哺乳類の骨はリン酸カルシウム(Ca5(PO4)3(OH))でできており、カルシウムは生命活動にも不可欠な元素です。このように、カルシウムは鉱物資源として、また生命の構成要素として、自然界において重要な役割を担っています。

塩化カルシウムの潮解性と発熱反応の原理

塩化カルシウムは潮解性を持つ物質で、空気中の水分を吸収すると液体化する特性があります。この性質により、塩化カルシウムは乾燥剤として広く利用されています。特に湿度の高い環境では、シリカゲルなどの他の乾燥剤と比較して、指数関数的に多くの水分を吸収できる点が特徴です。

 

参考)シリカゲルと乾燥剤の違いとは?種類や機能についても解説します…

塩化カルシウムが水と反応する際、顕著な発熱反応が起こります。この発熱のメカニズムは、潮解性によるものです。固体の塩化カルシウムが空気中の水分を吸収して水溶液になる過程で、溶解熱が発生します。実験データによると、塩化カルシウムと水の反応では、90秒で最高22.3℃の温度上昇が観察されました。

 

参考)塩化カルシウムとは

この発熱性は、融雪剤や凍結防止剤としての用途に活かされています。塩化カルシウムは水と反応して発熱するため、速効性が高く、-55℃以下の厳寒地でも効果を発揮します。道路の凍結防止剤として使用される際、水と反応して発生する熱が雪や氷を溶かすのを助けるのです。

 

参考)<塩化カルシウム>産業用除湿剤 ファインドライBシリーズ

また、塩化カルシウムの溶解度は非常に大きく、水に溶けると多量の溶解熱を生じます。この性質を利用して、工業プロセスでは乾燥剤、反応制御剤、塩水調製剤として不可欠な役割を担っています。食品添加物としても安全性が認められており、豆腐のにがりにも代用されています。

 

参考)日本塩化カルシウム市場は、産業用融雪剤の拡大と4.69%とい…

<参考リンク>
塩化カルシウムの電離式や電離度の詳細については、こちらで化学反応式の解説があります:
塩化カルシウムの電離式(CaCl2)は?電離度は?覚え方や化学反応式詳細も解説!
イオン結合の基本原理と共有結合との違いについて、具体例とともに学べます:
イオン結合(例・共有結合との違い・特徴・強さなど)
塩化カルシウムを含むカルシウム化合物の利用方法と身の回りでの存在について解説:
カルシウムを含む物質とその利用 ~身の回りにあふれているカルシウム~

 

 


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