金は工業製品、特に電子機器の分野で欠かせない素材となっています。スマートフォンやパソコン、テレビ、デジタルカメラなどの電子機器に使用される金は、電子回路を構築する基板の表面処理に金メッキとして施されています。金が電子機器の基板で使われる最大の理由は、電気伝導性に優れているためです。
参考)身の回りにある金!工業用の用途を紹介
電子機器の基板では、信号を正確に伝える必要があるため、安定した電気伝導が求められます。金は銀や銅に次いで伝導率が高く、熱や電気を素早く伝えられる特性を持っています。さらに金は錆びにくく、長期間経過しても電気伝導がスムーズなままという特徴があります。そのため、基板のコネクターや接点の部分に金メッキが使われています。
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具体的には、CPUやメモリなどの半導体部品、コネクタ、接点などには微量ながらも確実に金が含まれており、スマートフォン1台あたりには約0.03g、ノートパソコン1台で0.1g前後の金が使われています。コネクタ端子では、高い信頼性が求められる接点部分に、下地としてニッケルメッキを施した硬質金メッキが多く用いられています。
参考)コネクタにおける部分めっき技術
田中貴金属工業:貴金属の用途解説
金をはじめとする貴金属の特徴と工業用途について詳しく解説されています。
半導体産業において、金めっきは導体形成や接続部の端子、パッド、バンプ形成に利用されています。半導体ICsの高密度化に伴い、金めっきは最表面層として使用されることが多くなっています。金は電気の伝導率が高いため、電子信号を高速で伝達できるうえ、腐食にも強く安心して活用できます。
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プリント配線板では、ファイン化が進む中で表面処理の役割が大きくなっており、微細な配線パターンに対応するため高精度な表面処理が求められています。金端子(ゴールドフィンガー)は、プリント基板の基板端にある金めっきされた細長いコネクタのことで、複数の基板間や子基板とコンピュータのマザーボードとの間を電気的に接続します。
参考)ファインパターンに対応したプリント配線板用表面処理液の概況
金端子に金を使う理由は、金が導電性が高く、耐食性に優れているためです。基板の表面処理は通常フラッシュ金が使われていますが、金の端子は頻繁に抜き差しする必要があるため、耐摩耗性を高めるためにニッケルと組み合わせて使われます。電機・機械産業において、金めっきは電子部品や精密機械の接点、コネクタ、半導体部品などに広く使用されています。
参考)金端子 - PCBGOGO
💡 意外な事実:日本は電子材分野でのゴールドの最大需要国であり、年間70トンあまりのゴールドを使用しています。世界の電子材分野でのゴールドの需要量は過去10年で約250トンから300トンの間で推移しています。
金は古来、化学的に安定した物質として装飾品などに使われてきましたが、ナノ粒子だと逆に他の物質とよく反応し、触媒として化学品合成やエネルギー変換、汚染物質除去などに利用できます。金触媒は、パラジウムや白金の102~104倍という、はるかに高い触媒活性を示します。
参考)金が触媒になる!?常識を覆す金ナノ粒子触媒の発見
通常、パラジウムや白金をアルミナやシリカのような金属酸化物上に担持したものを触媒とすると、COを酸化させるためには100℃以上にする必要がありますが、金触媒では、それより約200℃低い温度でも、CO酸化の効率を維持できることがわかっています。同じ温度で、10倍高い効率で反応するということは、1/10の時間で同じ量の反応が起きるということであり、産業化の観点から優れた点と言えます。
最近では、直径約3ナノメートルの金のナノ粒子を用いた安定し優れた触媒が開発されています。この触媒は、有害物質に代わって酸素を酸化剤として使え、金以外のさまざまな金属にも応用でき、医薬品や各種材料の合成、資源循環など多彩な活用が期待されています。金ナノ粒子には光を吸収する性質があり、センサーの材料などとしても使われています。
参考)安定し優れた金ナノ粒子触媒を開発 酸化反応、環境に優しく 東…
産業技術総合研究所:金触媒の発見と応用
金が触媒として機能する革新的な発見について、詳細な研究成果が紹介されています。
歯科医療分野において、金合金は長年にわたり重要な材料として使用されています。金合金は、その加工性と審美性から特に人気があり、磨きやすく、自然な歯の色合いと調和し、優れた適合性を提供し、腐食やプラークの蓄積のリスクを低減します。
参考)歯科用合金:種類、特性、用途
金歯(ゴールドインレー・クラウン)のメリットとして、以下の点が挙げられます。まず、耐久性があることです。金はほかの金属に比べて柔軟で、時間がたつごとにかみ合わせになじむという特性があります。かむ力が歯列に均等にかかるようになるため、ほかの歯に負担をかけません。
参考)金歯にはどんなメリットがある?金歯の意外な魅力について解説 …
次に、再度虫歯になりにくいという点です。金合金は歯との密着性が非常に高いため、すき間ができにくく、虫歯の再発リスクが低いとされています。さらに、金合金は唾液や酸に強く、長年経っても変色・腐食がしにくい素材です。
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タイプⅡ、Ⅲ、Ⅳの金合金は、酸や塩基、および他の腐食性物質に対して高い耐性を持っており、口腔内での長期間の使用に耐えることができます。また、金合金の耐蝕性は、修復物の寿命を延ばし、追加の治療や交換の必要性を減らすことができます。生体適合性の面でも、金合金は口腔内での生体組織との相互作用が最小限に抑えられるように設計されており、炎症やアレルギー反応のリスクが低くなります。
参考)「歯科で使われる金合金の種類と特徴」|寺田町おとなこども歯科…
🏥 主な用途:コネクターや接点、スイッチなどの部品には金めっきが施されることが多く、医療や歯科の分野でも幅広く使用されています。
参考)なぜ、金が医療機器や器具に多く使用されているのか?
工業用に使われる金の割合は金全体の需要に対してほんの10%ほどですが、わたしたちの生活を支える電子機器のなかで重要な役割を果たしており、現代の情報社会を陰で支える貴金属といえます。そして今、金は再生可能なため都市鉱山からの再利用の動きが拡大しています。
年々増加し続ける電子廃棄物から金などのレアアースを抽出し、リサイクルするのが「電子廃棄物マイニング」です。電子機器には、金、銀、プラチナ、パラジウム、銅などの貴金属や、希土類元素、その他の有用な材料が含まれているため、寿命を終えた電子廃棄物の効果的な管理は利益につながる可能性があります。
参考)https://eetimes.itmedia.co.jp/ee/articles/2311/02/news105.html
特殊な化学的方法により、電子廃棄物から貴金属を選択的に回収することができます。ポルフィリンやシクロデキストリンなどの生体高分子は、金と強い親和性を持つ空洞を含んでおり、この新しい方法では、電子廃棄物から99.6%の純度で金を回収できることが実証されています。
こうした電子廃棄物の採掘プロセスは、低コストで予測可能であり、環境に優しいものです。持続可能な都市鉱山技術を導入することで、環境に溶出する有毒物質や発がん性物質の量を減らすことができます。電子廃棄物を採掘し、リサイクルする資格を持つ組織や企業には、高額の在庫を現金に換える十分なビジネスチャンスがあります。
EE Times Japan:電子廃棄物から金を回収する最新技術
都市鉱山から高純度の金を回収する革新的な技術と、そのビジネスチャンスについて解説されています。
携帯電話などの小型の電子機器を含めた電気電子機器廃棄物に含まれる貴金属やレアメタル等の金属資源のリサイクルが注目を浴びています。パソコンやスマホの基板等は近年では都市鉱山と呼ばれ、そこからのゴールドの回収が注目されており、東京オリンピックのメダルに使われたゴールドとシルバーはすべてこの都市鉱山からのものでした。
参考)https://www-cycle.nies.go.jp/magazine/kenkyu/20090608.htm
金は、人類が古くから利用してきた金属で展性と延性に富み錆びずに光沢を失うことなく加工できるため、古来、宝飾品、通貨、美術工芸品など高い価値を持ってきました。高い導電性、熱伝導性を持ち化学的に安定していて酸化されにくいため、産業の高度化と共に電子・電気部品のめっき被膜として広く用いられています。
参考)https://mric.jogmec.go.jp/wp-content/uploads/2019/03/material_flow2018_Au.pdf
国内用途は電気・電子・機械部品等の産業向けが主で次に宝飾品、歯科医療、メッキと続いています。空気中では高温でも安定ですが、塩素、臭素と高温で反応します。金は他の金属と比べても電気を通しやすい、錆びにくい、加工しやすいなど工業製品を作る際に必要な特性を兼ね揃えています。
全体の需要を見ると、最大の分野は宝飾品で、2021年の予想では1815トンです。その次の分野は投資で、現物とETFを合わせると1246トンです。一方、産業の材料として使われる加工用需要は324トンと需要全体の7%に過ぎません。
ゴールド以外のシルバー及びPGM(白金族)はあくまで「産業用メタル」としての側面が強く、シルバーはその需要の50%が産業用需要、PGMではプラチナの65%の需要が工業用需要、パラジウムにいたっては需要の80%が自動車触媒でありその他の産業用需要を含めると90%以上です。これに比べると、金は工業用需要の割合は低いものの、その重要性は非常に高いといえます。
📊 需要内訳(2021年予想)
| 分野 | 需要量 | 割合 |
|---|---|---|
| 宝飾品 | 1815トン | 約50% |
| 投資 | 1246トン | 約30% |
| 工業用(加工用) | 324トン | 約7% |
| その他 | - | 約13% |
金が工業製品の材料として使用される理由は、その物理的・化学的特性の組み合わせが他の金属では代替できないためです。柔らかさ、豊かな金属光沢、導電性の高さ、そして何世紀にもわたって腐食することなく輝き続ける性質は、高信頼性の電子コネクターや回路に最適です。
参考)金元素の性質と用途

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