酸化剤 還元剤 覚え方|半反応式と電子授受で見分ける

酸化剤と還元剤の区別に悩んでいませんか?酸化数の増減や電子の授受、半反応式の作り方など、確実に判別できる方法を基礎から解説します。鉱石精錬にも関わる重要な化学反応を、今すぐマスターしませんか?

酸化剤 還元剤 覚え方

この記事でわかること
🔬
酸化剤と還元剤の定義

電子の授受で判別する基本原理を理解できます

✍️
半反応式の作り方

暗記を減らして確実に式を導く手順がわかります

💡
実践的な見分け方

酸化数の変化から酸化剤・還元剤を判別できます

酸化剤と還元剤の電子授受による定義

 

酸化剤と還元剤を理解する上で最も重要なのは、電子の授受という視点です。酸化剤は相手から電子を奪う物質であり、自身は電子を受け取るため還元されます。一方、還元剤は相手に電子を与える物質で、自身は電子を失うため酸化されます。

 

参考)酸化数のルールを覚えて酸化剤・還元剤を見抜く方法を解説!

この関係を覚えるポイントは「酸化剤は相手を酸化する」「還元剤は相手を還元する」という名前の由来を理解することです。酸化還元反応では、必ず酸化と還元が同時に起こります。例えば、Cu + Cl₂ → CuCl₂の反応では、Cuは電子を失って酸化され還元剤として働き、Cl₂は電子を受け取って還元され酸化剤として働きます。

 

参考)酸化剤・還元剤(違い・見分け方・例・一覧など)

電子の授受を式で表すと、酸化剤が受け取る電子の物質量と還元剤が失う電子の物質量は必ず等しくなります。この原理は酸化還元滴定などの計算問題でも重要な考え方となります。

 

参考)https://pigboat-don-guri131.ssl-lolipop.jp/232%20Oxidizing%20agent%20and%20reducing%20agent.html

酸化剤の酸化数変化と主要物質

酸化剤を見分ける最も確実な方法は、反応前後での酸化数の変化を調べることです。酸化剤は反応によって酸化数が減少します。主要な酸化剤としては、過マンガン酸カリウム(KMnO₄)と二クロム酸カリウム(K₂Cr₂O₇)が代表的です。

 

参考)化学基礎のまとめと効率的暗記|酸化剤と還元剤

過マンガン酸カリウムは赤紫色の溶液で、MnO₄⁻がMn²⁺に変化する際に色が消えます。このMnの酸化数は+7から+2へと減少しており、5つの電子を受け取っています。二クロム酸カリウムは赤橙色の溶液で、Cr₂O₇²⁻がCr³⁺に変化する際に緑色に変わります。Crの酸化数は+6から+3へと減少しています。

 

参考)酸化還元反応とは?覚え方と式の作り方!ヨウ素滴定とは?わかり…
youtube​
その他の重要な酸化剤には、過酸化水素(H₂O₂)があり、通常は酸化剤として働きますが、過マンガン酸カリウムのような強い酸化剤と反応する際は還元剤にもなります。この二面性を理解することも重要です。

 

参考)【化学基礎】必須!覚えるべき酸化剤・還元剤一覧&頻出練習問題…

酸化剤と還元剤の詳しい違いと一覧表 - プロ講師による解説

還元剤の半反応式と覚え方のコツ

還元剤の半反応式を覚える際は、完全に暗記しようとせず、物質名と反応後の生成物だけを覚えることがコツです。主要な還元剤には、シュウ酸(H₂C₂O₄)、硫化水素(H₂S)、塩化スズ(Ⅱ)(SnCl₂)、硫酸鉄(Ⅱ)(FeSO₄)、チオ硫酸ナトリウム(Na₂S₂O₃)、ヨウ化カリウム(KI)があります。
youtube​​
シュウ酸は(COOH)₂ → 2CO₂ + 2H⁺ + 2e⁻という半反応式で表されます。硫化水素はH₂S → S + 2H⁺ + 2e⁻となり、単体の硫黄が生成されます。これらの還元剤に共通するのは、電子を放出して酸化数が増加する点です。

語呂合わせで覚える方法も効果的で、「硫化水素・シュウ酸・塩化スズ・硫酸鉄・チオ硫酸ナトリウム・ヨウ化カリウム」を組み合わせた覚え方があります。ただし、半反応式の詳細は機械的に導く方法を身につける方が長期的には有効です。

 

参考)半反応式の覚え方と作り方|酸化剤・還元剤の半反応式の一覧
youtube​

酸化剤の半反応式の作り方手順

酸化剤の半反応式を作る際は、4つのステップを順番に実行します。まず(ⅰ)O、H原子以外の原子の数を合わせます。次に(ⅱ)両辺のO原子の数をH₂Oで合わせ、(ⅲ)両辺のH原子の数をH⁺で合わせます。最後に(ⅳ)両辺の電荷を電子e⁻で合わせます。

 

参考)酸化剤と還元剤の半反応式の作り方!極限まで暗記を減らす方法

具体例として、MnO₄⁻の半反応式を作ってみましょう。まずMnO₄⁻ → Mn²⁺と書き、右辺にMnは1つあるので左辺もそのままです。次に左辺のO原子4つを右辺にH₂Oで補うとMnO₄⁻ → Mn²⁺ + 4H₂Oとなります。さらに右辺のH原子8つを左辺にH⁺で補うとMnO₄⁻ + 8H⁺ → Mn²⁺ + 4H₂Oとなります。最後に左辺の電荷+7、右辺の電荷+2なので、左辺に5e⁻を加えてMnO₄⁻ + 8H⁺ + 5e⁻ → Mn²⁺ + 4H₂Oという半反応式が完成します。

この手順を確実に実行できれば、どんな酸化剤の半反応式でも導けます。暗記に頼るよりも、この作り方を繰り返し練習することが重要です。

 

参考)道之塾

半反応式の覚え方と機械的な作り方の詳細解説

還元剤の半反応式の導き方

還元剤の半反応式は酸化剤とは逆の手順で作ります。還元剤は電子を放出するため、式の右辺に電子e⁻が現れます。基本的な手順は、(ⅰ)O、H原子以外の原子数を合わせ、(ⅱ)H原子をH⁺で調整し、(ⅲ)電荷を電子e⁻で合わせます。

例えば硫化水素H₂Sの半反応式を作る場合、まずH₂S → Sと書きます。次に左辺のH原子2つを右辺にH⁺で補うとH₂S → S + 2H⁺となります。最後に右辺の電荷+2を左辺の電荷0に合わせるため、右辺に2e⁻を加えてH₂S → S + 2H⁺ + 2e⁻という半反応式が完成します。

シュウ酸の場合も同様で、(COOH)₂ → 2CO₂とまず書き、H原子とe⁻を調整して(COOH)₂ → 2CO₂ + 2H⁺ + 2e⁻となります。還元剤の半反応式では、酸素の調整が不要なケースが多いため、酸化剤よりも手順が簡単です。

酸化数の計算ルールと増減判定

酸化数を正確に求めるには、基本ルールを理解する必要があります。まず単体の酸化数は0です。化合物全体の酸化数の総和は0、イオン全体の酸化数の総和はその電荷に等しくなります。また、水素原子の酸化数は通常+1、酸素原子は通常-2です。

 

参考)酸化数(求め方・ルール・例外・例題・一覧・演習問題)

酸化数の増減から酸化剤・還元剤を判別できます。酸化数が増加すると酸化され、減少すると還元されます。例えば、2Cu + O₂ → 2CuOの反応では、Cuの酸化数は0から+2に増加しているため酸化され、還元剤として働いています。一方、O₂の酸化数は0から-2に減少しているため還元され、酸化剤として働いています。

 

参考)⑥酸化還元反応:電子のやり取り

1族元素の酸化数は+1、2族元素は+2、17族元素は-1というルールも覚えておくと便利です。これらのルールを組み合わせて、複雑な化合物の酸化数も計算できます。

 

参考)これならわかる~酸化数の求め方を攻略しよう~
youtube​

酸化還元反応式の組み立て方

酸化還元反応式は、酸化剤と還元剤の半反応式を組み合わせて作ります。重要なポイントは、電子の授受の数を一致させることです。具体的には、酸化剤が受け取る電子の物質量と還元剤が失う電子の物質量を等しくします。

例えば、硫酸酸性の過マンガン酸カリウムと二酸化硫黄の反応を考えます。酸化剤の半反応式はMnO₄⁻ + 8H⁺ + 5e⁻ → Mn²⁺ + 4H₂O、還元剤の半反応式はSO₂ + 2H₂O → SO₄²⁻ + 4H⁺ + 2e⁻です。電子の係数を揃えるため、前者を2倍、後者を5倍して足し合わせると、2MnO₄⁻ + 5SO₂ + 2H₂O → 2Mn²⁺ + 5SO₄²⁻ + 4H⁺という反応式が得られます。

この方法を使えば、複雑な酸化還元反応も確実に式を立てられます。過マンガン酸カリウムと過酸化水素の反応など、典型的な反応パターンを練習することで、入試問題にも対応できます。

酸化還元反応式を簡単に作る実践的な手順

酸化剤と還元剤の強さと色変化

酸化剤や還元剤には強弱があり、強い酸化剤ほど電子を奪う力が強くなります。最も強い酸化剤として、硫酸酸性の過マンガン酸カリウムと二クロム酸カリウムが知られています。これらの色変化を覚えておくと、反応の進行を判断できます。

 

参考)金属イオンの溶液と沈殿~金属イオンの色の変化の観察~

過マンガン酸カリウムは赤紫色から無色(Mn²⁺)に変化します。二クロム酸イオンは赤橙色から緑色(Cr³⁺)に変化します。ただし、二クロム酸イオンと還元剤の反応では、還元剤の種類によって青色や紫色になる場合もあります。これは三価のクロムが配位子によって異なる色を示すためです。

 

参考)やさしい基礎化学 : ニクロム酸カリウムと過酸化水素水の反応…
youtube​
過酸化水素は通常無色ですが、過マンガン酸カリウムと反応すると酸素が発生して泡が出ます。このような視覚的な変化を理解しておくと、実験問題でも役立ちます。

 

参考)滴定の歴史(8):酸化還元指示薬 - 化学と歴史のネタ帳

鉱石精錬における酸化還元の応用

鉱石から金属を取り出す精錬プロセスは、酸化還元反応の重要な応用例です。鉄鉱石や銅鉱石には酸化物が多く含まれており、還元剤を用いて酸素を取り除くことで金属単体を得ます。

 

参考)https://www.env.kochi-tech.ac.jp/mfurue/Kotz/chap_4/N4_10.pdf

鉄の精錬では、酸化鉄(Fe₂O₃)をコークス(炭素)で還元します。反応式はFe₂O₃ + 3CO → 2Fe + 3CO₂で表されます。この反応では、一酸化炭素が還元剤として働き、自身は酸化されて二酸化炭素になります。鉄鉱石の酸化鉄は、コークスの炭素から電子を受け取って金属鉄になるという酸化還元反応により精錬されます。

 

参考)鉄の精錬 [ブログ] 川口液化ケミカル株式会社

コバルトの精錬では、酸化鉱を還元剤と共に電気炉で還元熔錬する方法や、硫酸浸出後に還元剤を用いて二価のコバルトとして溶出させる方法があります。このように、鉱物資源の利用には酸化還元反応の理解が不可欠です。

 

参考)コバルト生産技術動向|JOGMEC金属資源情報

酸化還元滴定の計算原理

酸化還元滴定は、酸化剤または還元剤の濃度を求める分析手法です。基本原理は「酸化剤が受け取る電子の物質量 = 還元剤が失う電子の物質量」という関係式です。

例えば、過マンガン酸カリウムとシュウ酸の滴定では、MnO₄⁻の半反応式から1 molあたり5 molの電子を受け取り、(COOH)₂の半反応式から1 molあたり2 molの電子を放出することがわかります。したがって、過マンガン酸カリウム2 molとシュウ酸5 molが反応する比率となります。

この比率を使って、既知濃度の溶液から未知濃度の溶液を求めることができます。過マンガン酸カリウムは色の変化を伴うため、指示薬が不要という利点があります。酸化還元滴定は、中和滴定と同じ器具を用いて行えます。

酸化数ゼロから見る単体の特徴

単体の酸化数は常にゼロであるというルールは、酸化還元反応を理解する上での基準点となります。単体とは1種類の元素だけからなる物質で、O₂、H₂、Cu、Feなどが該当します。

 

参考)【高校化学基礎】「酸化数の決め方(単体・化合物)」

単体が反応する際は、必ず酸化数が変化します。例えば、金属Cuが酸化されてCu²⁺イオンになる場合、酸化数は0から+2に増加します。逆に、金属イオンAg⁺が還元されて金属Agになる場合、酸化数は+1から0に減少します。

鉱石精錬で金属単体を得る過程は、まさに酸化数をプラスからゼロに戻す還元反応です。自然界に存在する金属の多くは酸化された状態(鉱石)であり、これを還元して酸化数ゼロの単体金属にすることで、私たちが利用できる金属材料となります。

 

参考)酸化と還元/ホームメイト

酸化還元反応の実験での注意点

酸化還元反応を実験で扱う際は、いくつかの重要な注意点があります。まず、硫酸酸性条件で行う反応が多いため、硫酸の取り扱いには十分注意が必要です。硫酸酸性とは、反応式に直接現れないものの、H⁺イオンの供給源として必要とされる条件です。

過マンガン酸カリウムや二クロム酸カリウムは色の変化が明確なため、反応の進行を目で確認できます。過マンガン酸カリウムの赤紫色が消える様子や、二クロム酸カリウムの赤橙色が緑色に変わる様子は、実験の成功を示す重要な指標です。
youtube​​
還元剤として過酸化水素を用いる場合、酸素ガスが発生するため泡が観察されます。シュウ酸を使う場合は加熱が必要なケースもあり、反応条件を正しく理解することが大切です。実験動画や参考資料を活用して、色変化や反応の様子を事前に確認しておくと理解が深まります。
youtube​

 

 


酸化セリウム 50g CeO2 99.95% レアアース