白金の用途(工業)触媒電極燃料電池自動車排気ガス化学

白金は工業分野で幅広く利用される貴金属です。自動車触媒から燃料電池、化学工業まで、その用途は多岐にわたります。なぜ白金がこれほど重要な役割を果たしているのでしょうか?

白金の工業用途

白金の主要工業用途
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自動車触媒

排気ガス浄化装置として有害物質を無害化

燃料電池電極

水素と酸素の化学反応を促進する触媒機能

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化学工業触媒

石油精製や化学品合成の反応促進剤

白金の自動車排気ガス触媒用途

 

白金は自動車産業において最も重要な工業用途の一つとして、排気ガス浄化装置の触媒に使用されています。マフラー内部の三元触媒コンバーターに白金を使用することで、排気ガスに含まれる一酸化炭素や窒素酸化物といった有害物質を、無害な二酸化炭素、窒素、水に変換する優れた触媒機能を発揮します。白金の工業用途の中で、この自動車触媒としての利用が最も大きな割合を占めており、プラチナ需要全体の約4割にも達しています。​

 

白金は主にディーゼルエンジンの触媒として使用され、パラジウムよりも優れた触媒性能を持っています。特に高い耐久性と耐熱性を備えているため、長期間にわたってその効果を維持できる点が評価されています。自動車メーカーは厳しい環境規制に対応するため白金触媒を採用しており、排気ガス規制が厳格化するにつれて使用量は増加傾向にあります。​

 

エコ・マテリアル - プラチナの自動車触媒としての詳細な解説

 

点火プラグや排気センサーなど、過酷な環境に晒される自動車部品にも白金は多用されています。これは白金が高温環境下でも化学的に安定し、酸化されにくい特性を持つためです。​

白金の燃料電池電極用途

燃料電池は水素と酸素を白金触媒電極で反応させて電気エネルギーを生み出す発電システムで、白金が重要な役割を果たしています。固体高分子型燃料電池では、水素極で水素分子を電子と水素イオンに分離する際に白金が触媒として働き、電子を取り出すことで発電を実現します。空気極でも白金触媒が水素イオンと酸素の化学反応を促進し、最終的に水のみを排出するクリーンな発電を可能にしています。​

 

燃料電池車(FCV)では、一台当たりディーゼル車の数倍の量の白金が触媒として使用されており、今後FCVが普及すれば白金にとって新たな需要分野となることが期待されています。耐酸性・耐食性が求められる電極板に白金は最適な素材ですが、自動車一台につき約100gものプラチナが必要となるため、コスト面が課題となっています。​

 

田中貴金属 - 燃料電池における白金の役割の詳細

 

研究開発では白金使用量の削減が進められており、大阪大学では架橋高分子材料上に単原子状に分散担持した白金が高効率な水素酸化触媒として機能することを発見し、白金触媒量を約80%削減した燃料電池電極の開発に成功しています。これは希少で高価な白金の使用量低減という喫緊の課題への重要な貢献です。​

白金の化学工業石油精製触媒用途

化学工業分野では、白金は20世紀初頭から接触式硫酸製造法で亜硫酸ガスの酸化触媒として使用されて以来、耐久性と耐蝕性に富む特性のため広く利用されています。硝酸合成、ナイロン、ポリウレタンなどの樹脂合成において白金は触媒として重要な役割を担っています。石油精製プロセスでも水素化反応の触媒として利用され、原油から有用な石油製品を効率的に精製することを可能にしています。​

 

白金が触媒として広く用いられる理由は、酸化体である酸素と還元体である水素との結合力のバランスが良く取れているためです。この特性により、さまざまな化学反応を効率的に促進させることができます。化学的に極めて安定しており酸化されにくく、融点が1,769℃と高いことから、反応条件が厳しい工業プロセスでも長期間使用可能です。​

 

身近な製品では、ハクキンカイロの発熱装置にも白金触媒が利用されており、白金の触媒機能が日常生活にも活用されています。このように白金は化学工業において多方面で不可欠な触媒材料となっています。​

白金の電極・医療機器用途

白金は化学的安定性を要する分野で電極として広く利用されています。電気化学測定や電気分解装置の電極に白金が使用されるのは、極めて安定した化学的性質と高い導電性を兼ね備えているためです。第二次世界大戦末期、日本はジェット戦闘機「秋水」の燃料用として過酸化水素を大量生産する際、電解装置の電極にプラチナを用いて、終戦まで1900キログラムもの大量のプラチナが消費されたという歴史的事例もあります。​

 

医療分野では、白金は体内に入ってもアレルギーや拒否反応を起こしにくい性質を持つため、さまざまな医療器具に使用されています。心臓疾患患者の体内に設置するペースメーカーの電極には、人体に無害で電気伝導度が高い白金が最適な材料として採用されています。カテーテル、抗がん剤の一部、歯科治療での歯の詰め物にも白金が使われており、その安全性と耐久性が評価されています。​

 

白金は金と同様に酸化しづらいため、金属アレルギーになりにくい金属として知られ、長期間体内に留まる医療機器に適しています。このように白金の化学的安定性は、医療分野においても重要な特性となっています。​

白金のるつぼ・耐熱材料用途

白金は融点が1,769℃と非常に高く、化学的に極めて安定しているため、るつぼや耐熱材料として利用されています。白金るつぼは主に高温で物質を加熱、融解、または焼成する実験・製造工程で用いられる耐熱容器で、高融点かつ酸化性雰囲気でも物性が安定していることから、不純物混入を抑え精密に組成を制御する必要がある単結晶育成に欠かせません。​

 

ニオブ酸リチウムやシンチレータ結晶(BGO、PWO、CsI:TI等)といった代表的な単結晶は白金るつぼで育成されています。キログラム原器やメートル原器も、白金90%とイリジウム10%からなる合金で作られていた歴史があり、白金の寸法安定性と化学的安定性の高さを示しています。​

 

石福金属興業 - 白金るつぼの製品情報と用途

 

ガラス製造分野でも白金の耐熱性が活用されています。産業用需要として、ガラス以外にも電子材、化学、石油、医療などの分野で主に触媒や電極、高い融点を利用したるつぼに用いられており、白金の耐熱性は多様な工業プロセスにおいて重要な役割を果たしています。理化学用器具として白金耳なども広く使用され、高温環境下での実験や分析に不可欠な材料となっています。​

 

白金のリサイクルと希少性による工業的価値

白金は1トンの原鉱石からわずか3gしか採取できず、これは細い指輪1本分に相当する極めて低い含有率です。この希少性により、白金は工業分野においてリサイクルが積極的に進められています。日本は白金の産出国ではないものの、リサイクル技術において世界トップクラスの評価を受けており、貴金属が含まれたスクラップから白金を取り出すリサイクルが盛んに行われています。​

 

リサイクルによる白金生産は、鉱山から採掘するよりも多くの白金を効率的に取り出すことが可能で、日本のリサイクル技術は白金供給において重要な役割を担っています。白金の年間供給量は約200トンに限られ、これは金の年間供給量の約1/19に過ぎません。埋蔵量や採掘量の限界、精錬作業の困難さが年間供給量を抑える要因となっており、限られた供給が白金の市場価値を高めています。​

 

白金の現在の総量はわずか1万6千トン程度とされ、金よりも希少性が高い貴重な資源です。産出が南アフリカ、ロシア、ジンバブエなど一部の国々に限られることも、白金の希少価値を高めている要素の一つです。経済が安定して成長が続く時期には白金の価格は金よりも高くなる傾向があり、2倍程度になることもあります。一方、経済が不安定な時期には産業需要の減少により白金の価格が下がる傾向がありますが、工業用途での需要の高さとリサイクル技術の発展により、白金は今後も価値が高騰する可能性がある重要な工業材料です。​

 


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