製造工程フローチャート書き方のポイントと記号の使い方

製造工程のフローチャートを作成する際、どのような記号を使い、どのように書けば効率的で分かりやすい図になるのでしょうか。

製造工程フローチャートの書き方

📊 この記事で分かること
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フローチャートの基本構造

製造工程を視覚化するための記号と書き方の基礎を理解できます

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実践的な作成手順

工程分析から完成まで、ステップごとの具体的な方法を習得できます

💡
よくある失敗と対策

作成時の注意点と品質向上のためのポイントを学べます

製造工程フローチャートで使用する基本記号

製造工程のフローチャート作成では、JIS規格で定められた記号を使用することが基本です。工程分析記号は全部で6種類あり、最も頻繁に使われるのが加工を表す〇型の記号です。加工記号には作業や操作も含まれ、原材料や部品に形状や性質の変化を与える工程を表現します。

 

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フローチャートで最も基本となる記号は「開始・終了」「処理」「判断」の3つです。開始・終了は楕円形で表し、処理は長方形、判断はひし形で表現します。これらの基本図形を適切に使い分けることで、誰にでも分かりやすい製造工程図を作成できます。

 

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JIS規格では「情報処理用流れ図・プログラム網図・システム資源図記号 JIS X 0121」として記号が規格化されており、形や流れる方向などが統一されています。製造業特有の記号として、手動操作を示す台形記号や、サブプロセスを表す二重線の長方形などもあります。工程図では貯蔵記号を使って工程系列の始まりと終わりの状態を示し、原則として縦に図示します。

 

参考)JISZ8206:1982 工程図記号

製造工程フローチャート作成の具体的な手順

製造工程のフローチャート作成は、まずプロジェクトスコープを決定することから始めます。全体的な作業内容を確認し、分割した各タスクを時系列に沿って配置していきます。この段階では粒度や重複を気にせず、どんどん洗い出しを行うことが重要です。

 

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次に、配置したタスクの種類を分けて記号別に整理します。各工程を表すパーツに適切なフローチャート記号を割り当てていく作業です。工程の洗い出しが完了したら、ルールに沿って工程を配置し、工程の内容にあわせて記号を変更していきます。

 

参考)【フローチャートの規格】日本産業規格(JIS)について調べて…

QC工程表を作成する場合は、まず工程の流れ図を作成し、初期値(製品名や製品番号など)を記入します。その後、工程番号と工程名を記入し、管理点を工程ごとに記入します。具体的な管理方法を記入し、必要に応じて標準時間なども追加します。完成したQC工程表は正式文書として社内で共有することが大切です。

 

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フォーマット・書式を決めた後は、製造工程の情報を収集し、管理項目をリストアップします。項目の管理方法・基準を明確にし、QC工程表を作成し、適時変更管理を行います。

 

参考)QC工程表とは?項目例や作り方を解説

製造工程フローチャートの構造と表現方法

フローチャートは基本的に「順次構造」「分岐構造」「反復構造」の3つの構造の組み合わせでできています。順次構造は工程が順番に進む基本的な流れで、分岐構造は品質検査などで合格・不合格によって異なる工程へ進む場合に使用します。反復構造は不合格品を再加工するループなどを表現する際に活用します。

 

参考)工程フロー図とは?作成するメリットや作成方法を解説

製造業の例では、受注→資材調達→組立→工程内検査→最終検査→梱包・出荷という工程フローが一般的です。検査工程を2段階にし、最初の検査でNGなら再加工ラインへ戻る分岐を描くことがポイントです。部署名(購買部、製造課、品質管理課など)をそれぞれの工程に配置することで、責任の所在を明確にできます。

 

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フローチャート作成時には「誰が」「いつ、何をきっかけに」「どんな作業を」「どういう場合に」という4つの要素を表現することが求められます。「いつ、何をきっかけに」は開始図形で、「どんな作業を」は処理図形で、「どういう場合に」は判断図形で表現するのが一般的です。

プロセスフロー図(PFD)は、生産プロセス全体のフローに焦点を当て、製品がプロセス内の一部または全ての段階を経る作業を図形記号で表現します。全体の生産フローの大まかな進行と主要なステップを理解するのに役立ちます。

 

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製造工程フローチャート作成時の注意点とルール

フローチャート作成時の基本ルールとして、時系列に沿って左から右・上から下へ要素を配置することが重要です。図記号が重ならないよう一定の間隔を設け、分類にあわせた図記号を使用し、テキストは簡潔に記載します。

 

参考)フローチャートの作り方|ルールや見やすいチャートを作るポイン…

1行(1つの記号)には1つの作業だけを記載することが原則です。実施のタイミングが同じ作業でも、1行につき1作業で記載することで各処理を明確にでき、作業概要などの補足情報も書きやすくなります。

 

参考)フローチャート(フロー図)の基本|失敗しない書き方やポイント…

フローチャートの目的を明確にしないまま作成を始めてしまうことは、よくある失敗の一つです。目的が不明確だと、必要な情報やステップを漏らしてしまい、実際のプロセスを正確に反映しない結果となります。フローチャートの構造が不適切であることも失敗の原因で、各ステップが論理的に繋がっている必要があります。

 

参考)フローチャート作成時のよくある失敗は?

過度に複雑化したフローチャートも避けるべきです。一つのチャートに多すぎる情報を詰め込むと、読み手の理解を妨げ、「プロセスの明確化」という本来の目的を損なってしまいます。プロセスを適切に分割し、複雑さを管理することが重要です。

 

参考)失敗しないフローチャート作成:よくある3つの間違いと回避テク…

フローチャートを作成した後のレビューやテストを行わないことも大きな失敗です。レビューを行うことで、他の人の視点からのフィードバックを得ることができ、見落としていた問題点を発見することができます。

製造工程フローチャート作成に役立つツールと活用法

製造工程のフローチャート作成には、さまざまなツールが活用できます。draw.ioは、Web上でフローチャートを作成できる無料の作図ツールで、フローチャートの作成だけなら会員登録は不要で利用できます。ユーザーフレンドリーなインターフェースと豊富なテンプレートを備えており、初心者でも簡単に使用できます。

 

参考)【2024年最新】フローチャート作成ツール14選│メリットや…

Microsoft Visioは、専門的な図表作成ソフトウェアで、フローチャート、組織図、ネットワーク図などの作成が可能です。豊富なテンプレートとシェイプが用意されており、プロフェッショナルなデザインの図表を簡単に作成できます。他のMicrosoft製品との連携も強力で、データの共有やチームでのコラボレーションを容易に行えます。

 

参考)フローチャート作成で生産性向上!Microsoft などのツ…

Miroのフローチャート作成ツールは、業務フローの見える化やタスク管理に活用できる無料のツールです。Miro AIを使ってフローチャートを数秒で作成し、編集やカスタマイズにすぐに取り掛かることができます。ダイアグラムモードを使用すると、管理されたダイアグラムツールバー、レイヤーでの作成など、より集中した作業環境が得られます。

 

参考)https://miro.com/ja/flowchart/

工程管理システムでは「サクっと工程Pro」のように、ガントチャートをマシン別・部品別で切り替え可能で、横軸を分単位で表示してより詳細なスケジュールを組めるツールもあります。進捗状況はガントチャートで表示され、都度更新されるので異常発生の把握もスピーディーです。

 

参考)製造業向け工程管理システム比較14選。生産方式別にタイプ分け…

鉱石加工における製造工程フローチャートの応用例

鉱石加工プロセスでは、原材料の受入から製品出荷までの一連の流れをフローチャートで管理することが重要です。還元鉄製造技術を例にすると、MIDREXプロセスではペレットあるいは塊鉱石をシャフト炉の炉頂から装入し、炉内で還元鉄が製造されます。このような連続プロセスは、その技術的特性により製造業全体の生産性と品質を左右する極めて重要な分野です。

 

参考)https://www.kobelco.co.jp/r-d/technology-review/dumm/__icsFiles/afieldfile/2025/03/19/232_002-007.pdf

鉱石処理工程では、原材料の検査、加工、組立、検査、包装という主要なプロセスステップを明確にする必要があります。プロセスフロー内の各ステップの順序と接続関係を決定し、完全なプロセスルート図を作成します。化学反応器では、原材料を常時反応器に送り込み、化学反応を起こしながら連続的に生成物を取り出す工程をフローチャートで表現します。

 

参考)製造業の連続プロセスにおける生産性向上

入力・出力を明確化することも重要で、製造業なら「原材料」がインプットで「完成品」がアウトプットとなります。受注→設計→製造→検査→出荷のように、大きく工程を分けて表現します。石炭ガス化設備で製造した合成ガスを還元材として利用する場合など、複雑な工程では各段階を分かりやすく図示することが求められます。

鉱石加工におけるフローチャート作成では、プロセスの始点と終点を決定し、例えば原材料の入庫から製品の出庫までを明確に示します。品質管理の観点から、検査工程での分岐や再加工ループを適切に配置することで、不良品の流出を防ぎ、安定した製品品質を確保できます。工程ごとの管理点と管理方法を明記することで、現場での作業標準としても機能します。