ディーゼル車の最大の魅力は圧倒的な経済性にあります。ガソリンエンジンと比較して燃費性能が20～30%優れており、同じ距離を走行する場合でも使用燃料が少なくて済みます。これは高い熱効率により、燃料のエネルギーを効率的に活用できるためです。
さらに、軽油はガソリンよりもエネルギー密度が高く、同じ量の燃料でより長距離を走行できます。トータルの燃料コストで見ると、ディーゼル車はガソリン車に比べて圧倒的に少ない支出で済むのが特徴です。長距離運転や高速道路での使用が多いドライバーにとって、この経済性は大きなメリットとなります。
軽油はガソリンより価格が安く販売されていることも重要です。燃費の良さに加えて燃料代が安いという二つの要因により、特に長期間の使用を想定した場合、ディーゼル車の総合的なコストパフォーマンスは非常に優れています。
ディーゼルエンジンは低回転域から非常に大きなトルク（回転力）を発生させるのが特徴です。これにより、坂道走行や加速時に力強い走りを実現でき、ガソリン車のような高回転まで待つ必要がありません。大排気量のガソリン車と同等、あるいはそれ以上のトルク特性を持ちながら、より小さな排気量で実現できるのです。
この特性により、悪路走行や山道での走行性能も優れており、トラックやバスなどの商用車で多く採用されてきた理由でもあります。力強い加速と走行の安定性により、運転手の疲労軽減にも貢献し、特に長距離運転での快適性が向上します。
従来のディーゼル車は音や振動が大きいという欠点がありました。しかし現在のディーゼル車は技術進化により、静粛性が大幅に向上しています。振動も減少し、ガソリン車と同等レベルの快適な運転環境が実現されています。
長距離運転時の疲労軽減において、この静粛性向上は重要な意味を持ちます。新型車では防音材の採用やエンジン制御の改善により、かつてのディーゼル特有の不快感が大きく低減されました。
ディーゼル車の大きなデメリットとして、新車購入時の価格がガソリン車よりも高く設定されていることが挙げられます。例えば、マツダCX-5の場合、ディーゼルモデルはガソリンモデルより約30万円高い価格設定となっており、同じ車種でも数十万円の価格差が一般的です。
この価格差は、ディーゼルエンジンの複雑で頑牢な構造、排ガス浄化装置（DPFやアドブルーシステム）の搭載、より丈夫な部品が必要になることに起因しています。長期間の使用により燃料代での節約を見込める場合は相殺可能ですが、短期間の使用や短距離走行主体のドライバーにとっては、この初期費用の負担が大きな課題となります。
ディーゼル車は構造が複雑で、メンテナンスコストが高くなる傾向があります。軽油を燃焼することで煤が多く発生し、エンジンオイルが汚れやすいため、ガソリン車よりもオイル交換の頻度が多くなります。ターボ装備の場合は5,000km毎またはおよそ半年に1回、ターボなしでも10,000km毎または1年に1回の交換頻度が目安となっています。
さらに、排ガスを浄化するために使われるアドブルー（尿素水）は走行するたびに消費されます。走行1,000kmあたり1リットルを消費するのが一般的で、定期的な補充が必要です。アドブルー補充にかかるコストは見落とされやすいですが、長期的には月単位での支出が発生します。
DPF（ディーゼル微粒子フィルター）の再生・洗浄も必要で、エンジン管理が高度化しているため、整備時の技術費も高くなる傾向があります。
大気汚染の防止を目的として、窒素酸化物（NOx）と粒子状物質（PM）に関する規制が世界各地で強化されています。日本でも首都圏を中心にディーゼル車運行規制が実施されており、特定の地域での走行が制限されている車両があります。
この環境規制は今後さらに厳しくなる傾向にあり、ディーゼル車の購入や使用が制限される可能性が増加しています。多くの先進国ではガソリン車やハイブリッド、電動車への転換を政策的に推し進めており、ディーゼル車の市場は縮小傾向にあります。
ディーゼル車の中古車市場も、こうした規制の影響を受けて、資産価値が低下する可能性があります。購入したディーゼル車が将来的に走行制限地域の拡大により、実用性が低下する懸念も考慮する必要があります。
ディーゼルエンジンは低回転域での圧倒的なトルクが特徴ですが、高回転域での出力がガソリンエンジンに劣ります。高速道路での追い越し加速や急な坂道での加速が必要な場合、ガソリン車のような俊敏性を期待できません。
特に高速巡航時は、ディーゼル特有の低回転での力強さが活かせず、運転の楽しさや反応性の面ではガソリン車に分があります。スポーツドライビングを楽しむドライバーや頻繁な加速を必要とする用途には、ディーゼル車は適していません。
ディーゼルエンジンは燃焼効率が高いため、ガソリン車と同じ距離を走行する場合、CO2排出量が少なくなる傾向があります。燃料のエネルギーを効率よく利用できるため、ガソリン車より少ない燃料で同じ走行距離を実現でき、その結果、二酸化炭素の排出量を抑えることができます。
カーボンニュートラル社会への転換期において、この環境性能は重要な評価ポイントとなっています。特に、再生可能ディーゼル（RD）の普及が進む中で、従来の軽油をRDに切り替えることにより、温室効果ガス排出量を最大91%削減できる可能性も報告されています。欧米ではすでにRDの活用が物流やデータセンター、航空関連施設で進んでおり、今後の燃料転換の可能性も視野に入れておく価値があります。
高圧に耐えるため、ディーゼルエンジンの部品はガソリンエンジンより頑丈に製造されています。エンジンブロック、ピストン、クランクシャフトといった主要部品の耐久性が高いため、定期的なメンテナンスを行えば、長期間の使用が可能です。
適切なオイル交換とメンテナンスを実施することで、50万km以上の走行に耐える事例も報告されており、商用車での採用が多い理由もここにあります。新車時の価格は高いですが、エンジン寿命が長いため、長期保有による総合的なコストパフォーマンスは優れています。
ディーゼル車とガソリン車を選択する際は、購入時の価格差、メンテナンスコスト、走行距離、地域の環境規制、個人の運転スタイルなど、複数の要因を総合的に検討することが重要です。短距離走行主体でメンテナンス面倒が不安な場合はガソリン車が、長距離走行や安定した走行性能を求める場合はディーゼル車が適しています。
環境規制の動向やカーボンニュートラルへの転換も視野に入れた上で、自分のライフスタイルと優先事項に最も適した選択をすることが賢明な判断といえるでしょう。
一般社団法人 日本自動車工業会 - ディーゼル車規制に関する詳細情報
（日本の自動車NOx・PM法に基づく規制内容や車種別の規制基準が記載されています）
伊藤忠エネクス - リニューアブルディーゼル（RD）の最新情報
（再生可能ディーゼルの普及状況、世界での導入事例、日本での供給実績について詳しく解説されています）
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