レアメタルは経済産業省の鉱業審議会が定義する31鉱種の希少金属をいいます。地球上に存在する量が少ないか、採掘・精錬する過程が複雑でコストが高く、市場に流通する量が限られている非鉄金属の総称です。定義として「資源量や分離精製が難しく、自動車や電子製品など身の回りのハイテク製品に広く使われる元素」とされています。
31種類のレアメタルは以下のグループに分類されます。
軽金属系
リチウム、ベリリウム、マグネシウムなど。リチウムはEV(電気自動車)やスマートフォンのバッテリー技術に必須で、低温用潤滑グリース、医薬品にも使用されています。ベリリウムは航空機素材や工業用途に活躍しています。
遷移金属系
チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケルなど。コバルトは耐熱合金やバッテリー製造に、ニッケルはステンレス鋼や電池の材料として重要です。
高融点金属
タングステン、モリブデン、ニオブなど。タングステンは電子ビーム発生源、工業用フィラメント、装飾品に使用される剛性に優れた材料です。
貴金属
白金、パラジウムなど。自動車の排ガス触媒に不可欠な存在です。
その他
ガリウム、ゲルマニウム、セレン、インジウム、アンチモン、テルルなど半導体関連の元素。これらは電子機器の高性能化に必須です。
レアアースは希土類(きどるい)とも呼ばれる17種類の元素の総称です。元素周期表ではスカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)の2元素と、ランタノイド系列の15元素(ランタンからルテチウムまで)で構成されています。これら17元素には著しい化学的相似性があり、通常は3価の酸化状態を示しますが、ユウロピウムは2価、セリウムは4価の安定状態を示すという特異性を持ちます。
軽希土類(LREE:Light Rare Earth Elements)と重希土類(HREE:Heavy Rare Earth Elements)に分類されることも重要です。
軽希土類(5種類)
ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)。これらは採掘量が多く、相対的に低コストです。
重希土類(12種類)
ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)など。採掘量は少なく、一般に高コストです。
両者の用途は明確に異なります。レアメタル全体は電子機器、自動車、医療、エネルギー産業まで極めて広範です。例えば、リチウムはEVやスマートフォンのバッテリーに、コバルトはバッテリーと耐熱合金に、タングステンは工業用フィラメントに使用されています。
一方、レアアースはより限定的で高度な機能が要求される用途に特化しています。ネオジムとジスプロシウムは強力な永久磁石(ネオジム磁石)の主要成分で、EV用モーター、風力発電機、空調機、ハードディスク駆動装置に不可欠です。ユウロピウムの赤色発光特性とテルビウムの緑色発光特性は、テレビやスマートフォンのディスプレイの蛍光体に利用され、高色純度を実現しています。セリウムは研磨材や自動車の排ガス触媒に、ランタンはカメラレンズや顕微鏡の高品質ガラスに使用されるなど、専門的な機能が活かされています。
レアアースは「産業のビタミン」と呼ばれるほど、少量の添加で耐熱性や強度を劇的に向上させることができるため、ハイテク産業において戦略的に重要な位置を占めています。
供給構造と地政学的な課題でも両者は大きく異なります。レアメタル全体の供給は比較的分散しており、複数国での採掘と精錬が行われています。しかし、個別の元素によってはボトルネックが存在します。例えば、コバルトはコンゴが世界生産量の60%以上を占めており、政治的不安定性がある地域に依存しています。
レアアースの供給状況はより深刻で、中国の支配力が圧倒的です。2023年データによると、中国はレアアース生産量の67.8%を占め、埋蔵量でも世界の48.9%を保有しています。この極端な集中は、2010年に中国がレアアースの輸出規制を強化した際、世界的な供給危機と価格急騰を招きました。この事件を契機として、米国は閉鎖していたマウンテンパス鉱山を再開させ、カナダ、オーストラリア、グリーンランドでの鉱床発見と採掘拡大へ向かいました。
中国政府は2024年10月に「レアアース管理条例」を施行し、2025年8月には「採掘および分離精製に関する総量調整管理の暫定弁法」を発表するなど、生産・流通の一元管理を強化しています。これは採掘、精製、輸入、製品の利用状況までを一括管理する規制で、業界の川上から川下まで全プロセスを監視する体制を構築しています。この動きは、レアアースの供給が単なる経済問題ではなく、国家の経済安全保障上の戦略的課題となっていることを示しています。
レアメタル全体とレアアースの違いを理解することは、現代の産業戦略と技術開発にとって不可欠です。EV革命、再生可能エネルギー拡大、5Gネットワーク整備など、グローバルなメガトレンドはいずれも大量のレアメタル、特にレアアースへの需要を生み出しています。
スマートフォンやEVに必要なレアアースの需要は、今後10年で2倍以上に増加する見通しがあります。同時に、リサイクル技術の開発と代替材料の研究が急速に進んでいます。ネオジム磁石の重希土類使用量低減技術、ニッケル水素電池の軽希土類活用、セリウムを含まない研磨材開発など、使用量削減と効率化の取り組みが国際的に展開されています。
また、あまり知られていない点として、海底熱水鉱床からのレアアース回収技術が開発されつつあります。従来の陸上採掘に依存しない新たな供給源として期待されており、これが実用化されれば地政学的なリスク軽減につながる可能性があります。
日本、米国、欧州各国は戦略的にレアメタル・レアアースのサプライチェーン多元化と自給率向上に投資を集中させています。レアメタルとレアアースの違いを正確に把握し、各元素の特性と用途を理解することは、次世代産業の競争力確保に欠かせません。
経済産業省の公式サイトでレアメタル政策に関する詳細情報が掲載されており、日本のレアメタル戦略を理解する上で有用です。
米国地質調査所(USGS)のレアアース統計データは、世界のレアアース生産量と埋蔵量の最新情報を提供しており、グローバルな供給動向の把握に役立ちます。
検索結果から、「ラステンバーグ 石」は南アフリカ産の黒御影石で、別名「インパラブラック」であることが分かりました。さらに詳しい情報を取得するため、検索結果から有用なサイトの詳細を確認します。

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