色鍋島は赤絵付けが主流と思われがちですが、実は青磁釉も同等に重要な技法です。
色鍋島は江戸時代初期の1650年代に、佐賀藩鍋島家が将軍家や諸大名への献上品として作らせた高級磁器です。当初は伊万里市の大川内山に藩窯が設置され、一般への販売は厳しく禁じられていました。
藩窯では選ばれた職人のみが作陶を許され、技術の流出を防ぐため山間部に工房が置かれました。献上品としての性格上、品質管理は極めて厳格で、わずかな欠陥でも不合格となり破棄されたといいます。
つまり最高品質のみが世に出たということですね。
明治維新後、藩の庇護を失った色鍋島の技術は一時途絶えかけました。しかし明治後期から昭和初期にかけて、今泉今右衛門家などが技術を復興させ、現代まで伝統が継承されています。1980年には国の重要無形文化財に指定され、色鍋島の技法は正式に文化財として認められました。
色鍋島の最大の特徴は、白磁の上に赤・黄・緑の三色を基調とした上絵付けを施す技法です。下絵には呉須(藍色の顔料)を使用し、その上から色絵を重ねることで、深みのある色彩表現を実現しています。
一般的な磁器との違いは、焼成工程の多さにあります。素焼き→本焼き→上絵付け→上絵焼きと最低でも4回の窯入れが必要で、工程ごとに異なる温度管理が求められます。本焼きは約1300度、上絵焼きは約800度という具体的な温度差があり、この差が絵具の発色を左右するのです。
上絵焼きだけで3回以上繰り返すこともあります。
もう一つの特徴は、青磁釉を用いた裏文様です。表面には華やかな色絵、裏面には落ち着いた青磁釉という対比が、色鍋島独特の美意識を表現しています。この裏文様は「見えない部分への配慮」という日本の美学を体現したものといえるでしょう。
文様には吉祥文様が多用され、松竹梅・鶴・亀・牡丹などが精緻に描かれます。特に幾何学的な構図と自然モチーフを組み合わせた図案は、色鍋島ならではの様式美として評価されています。
現在、色鍋島の技法を受け継ぐ窯元は佐賀県内に集中しています。代表的なのは伊万里市大川内山の窯元群で、約30の工房が伝統技法を守り続けています。大川内山は藩窯時代の面影を残す歴史的な地区として、観光地としても整備されているのです。
有田町にも色鍋島の流れをくむ窯元が存在します。今泉今右衛門窯は14代にわたって色鍋島の技法を継承し、人間国宝を輩出してきた名門です。薄墨色と呼ばれる独自の青磁釉の研究では、科学的な分析と伝統的な感覚を融合させた釉薬開発を行っています。
伝統が科学で進化しているということですね。
各窯元では後継者育成にも力を入れており、陶芸教室や見学会を定期的に開催しています。特に大川内山では春と秋に「鍋島藩窯秋まつり」が開催され、実演や販売を通じて色鍋島の魅力を発信中です。このイベントには年間約3万人が訪れ、伝統工芸への関心の高さを示しています。
窯元の中には、伝統技法を現代のライフスタイルに合わせた器づくりに挑戦するところもあります。コーヒーカップやワイングラスなど、日常使いできる色鍋島製品も増えており、若い世代への普及も進んでいるのです。
色鍋島の作品を購入する主な方法は、窯元直営店での購入です。大川内山の各窯元では直売を行っており、職人から直接説明を受けながら作品を選べます。価格帯は小皿で1万円台から、大皿や花瓶では10万円を超えるものまで幅広いです。
百貨店での催事販売も一般的な購入方法です。年に数回、都市部の大手百貨店で「有田焼展」や「伊万里焼展」が開催され、複数の窯元の作品を比較検討できます。催事では作家本人が来場することもあり、制作背景や使用方法について詳しく聞けるチャンスです。
作家に直接質問できるのは貴重ですね。
オンラインでの購入も増えています。窯元の公式サイトや工芸品専門のECサイトでは、詳細な写真と説明付きで作品が紹介されています。ただし色鍋島のような高級磁器は、実物の色味や質感が写真では伝わりにくい面があるため、可能であれば一度実物を見てから購入することをおすすめします。
ふるさと納税の返礼品として色鍋島を選ぶ方法もあります。伊万里市や有田町では、地域の窯元の作品を返礼品に設定しており、実質的な負担を抑えながら本格的な色鍋島を手に入れられます。返礼品の内容は定期的に更新されるため、自治体の公式サイトで最新情報を確認してください。
購入後のアフターケアについても確認が必要です。色鍋島は上絵付けのため、食洗機の使用は避け、中性洗剤で手洗いすることが推奨されています。長く使うためには、購入時に窯元からケア方法を詳しく聞いておくと安心です。
伝統技法の保存と現代化の両立が、色鍋島窯元の大きな課題です。若手作家の中には、伝統的な文様を踏襲しながらも、現代的な色使いやデザインを取り入れる動きがあります。例えば、パステルカラーの上絵付けや、抽象的な幾何学模様を用いた作品などです。
海外市場への展開も進んでいます。ヨーロッパやアメリカでは日本の伝統工芸への関心が高く、色鍋島の精緻な技術は高く評価されています。2019年にはパリで色鍋島の展示会が開催され、現地のコレクターや美術関係者から注目を集めました。
国際的な評価が高まっているということですね。
デジタル技術の活用も始まっています。一部の窯元では、3Dスキャンで作品をデジタルアーカイブ化し、技法の記録や研究に役立てています。VR技術を使った窯元のバーチャル見学も実験的に行われており、遠方の人でも色鍋島の制作現場を体験できるようになりつつあるのです。
若手育成プログラムも充実してきました。佐賀県立有田窯業大学校では色鍋島の技法を学べるコースがあり、毎年10名程度が入学しています。卒業生の中には独立して窯元を開く者や、既存の窯元で職人として活躍する者もおり、技術継承の土台が整いつつあります。
環境への配慮も新しい課題です。窯の燃料を灯油から電気やガスに切り替える動きがあり、CO2排出削減に取り組む窯元も増えています。伝統を守りながら持続可能な生産体制を構築することが、次世代への責任として認識されているのです。
伊万里市公式サイト(大川内山の窯元情報・イベント情報が掲載)
古九谷は実は有田で焼かれていた
九谷焼は石川県の代表的な伝統工芸品で、約360年前の江戸時代前期に誕生しました。現在は石川県南部の加賀市、小松市、能美市、金沢市などで生産されており、1975年には国の伝統工芸品として認定されています。豪華で美しい色絵を描いた磁器として世界中から愛されている焼き物です。
この記事では、九谷焼がどの県で作られているのか、その歴史や特徴、産地ごとの違いについて詳しく解説します。陶芸に興味のあるあなたが、九谷焼の産地や魅力を正しく理解できる内容になっていますよ。
九谷焼の産地は石川県の南部地域です。具体的には加賀市、小松市、能美市、金沢市の4つの市が主な生産地として知られています。
参考)九谷焼|石川の伝統工芸
発祥の地は加賀国江沼郡九谷村(現在の石川県加賀市山中温泉九谷町)で、この地名が「九谷焼」という名称の由来となりました。江戸時代前期の1655年ごろ、大聖寺藩の領内で陶石が発見されたことがきっかけで磁器の生産が始まったと言われています。
現在の九谷焼の中心地として最も栄えているのは、石川県能美市寺井町です。日本海と山の間に挟まれた県南部にある人口約15,000人の町で、多くの作家や窯元が集まっています。能美市には九谷陶芸村があり、美術館や体験館、10の九谷焼店舗が集結しており、手頃な値段で購入することもできます。
つまり石川県全域ではなく、県南部の加賀地方が九谷焼の産地ということですね。
参考)https://www.toulife.jp/?mode=f19
九谷焼の発祥地は、石川県加賀市山中温泉の奥地にある九谷村(現在の九谷町)です。大聖寺川の上流にある雪深い山あいの里で、冬になると雪に閉ざされ交通も途絶えるような場所でした。
参考)九谷焼とは/加賀市
江戸時代前期の1655年(明暦元年)ごろ、大聖寺藩の初代藩主・前田利治が領内の鉱山開発中に、この九谷村で磁器の原料となる陶石を発見しました。これがきっかけで磁器の生産が始められ、陶石の産地となった九谷村に窯を築いたことで「九谷焼」と呼ばれるようになったのです。
参考)九谷焼とは。豪快な線・鮮やかな「五彩」の特徴とミステリアスな…
加賀市山中温泉九谷町には「1号窯」「2号窯」と呼ばれる2つの窯跡が残されており、現在は九谷焼窯跡展示館として一般公開されています。九谷村は九谷焼作家や九谷焼コレクターの人々の「聖地」となっているんです。
参考)九谷焼の魅力に迫る!絵付け体験&窯跡見学|ブログ|【公式】石…
江戸末期頃までは、この窯を中心とした旧大聖寺藩領内で作られたもののみが九谷焼と呼ばれていました。
発祥の地は加賀市という点が重要です。
九谷焼の最大の特徴は、「九谷五彩」と呼ばれる5色の色使いです。緑、黄、赤、紫、紺青の5色を使い、白い磁器の肌に豪華で美しい色絵を描きます。
参考)石川県の伝統工芸品【九谷焼】とは|美しい絵柄の特徴や魅力を徹…
絵付けの手法は、まず呉須(ごす)と呼ばれる寒色系の黒色で線描き(骨描き)をし、その後五彩の絵の具を厚く盛り上げて塗る彩法が用いられます。2回焼き上げることにより、多彩で色鮮やかな発色が実現されるのです。
九谷焼には複数の様式があり、代表的なものに「青手」があります。青手は寒色を主とした濃く深みのある緑・黄・紺・紫を使用し、赤を使用しないことが特徴です。「青九谷」とも呼ばれており、独特の色合いが魅力になっています。
参考)伝統工芸品【九谷焼】の特徴やおすすめの器、お店などまとめて紹…
有田焼との違いは、有田焼が「白色の磁器に絵付けをほどこす作品」が多いのに対し、九谷焼は「赤色・黄色・緑色の絵付けや文様が色濃く見られる作品」が多い点です。豪快で濶達な線書きの上に施される和絵具の重厚な輝きが九谷焼の美しさということですね。
参考)一挙に解決!有田焼と伊万里焼の違いとは?特徴や歴史、3大様式…
九谷焼の歴史には、「古九谷産地論争」という大きな謎があります。350年前に加賀大聖寺藩の九谷で誕生したとされる古九谷が、実は九州の肥前有田・伊万里で作られたものではないのかという論争です。
参考)九谷焼の真実に迫る
研究が進むにつれて、古九谷の産地は有田であった事が判明しつつあります。昭和40年代以降の考古学的発掘調査で、有田の山辺田窯跡や丸尾窯跡から古九谷様式の磁器片が出土しました。九谷側よりも有田側の窯跡から、古九谷の名品の素地に近い陶磁片が多く出てくるという事実が判明したのです。
参考)古九谷 論争の深層解析:歴史的背景と考古学的発見による新たな…
しかし現在でも、九谷焼の本場ではこの説を認めない人が多く、いまだに謎が多いとされています。窯の再興にあたりお手本としていたのが九州の伊万里焼だったという説を、九谷焼に関わる方々が安易に受け入れるはずがなかったのです。
参考)うつわのおはなし 〜華やぐ彩り・九谷焼(後編)〜|ひいな
古九谷の作品には、裏模様と表模様が全く関係のないものが描かれているという特徴もあります。通常は表模様を描いてから、それに合わせた模様を裏に描くのが当たり前なのですが、古九谷は違うんです。これは九州で作られた素地をこちらへ運んで活用したという説を裏付ける証拠とも考えられています。
参考)九谷焼の真実に迫る
産地論争が今も続いているということですね。
参考)https://www.pressnet.or.jp/publication/spot/090113_269.html
九谷焼を深く知るには、実際に見学や体験ができる施設を訪れるのがおすすめです。石川県内には複数の九谷焼関連施設があります。
主な九谷焼施設
| 施設名 | 所在地 | 特徴 | 入場料 | 営業時間 |
|---|---|---|---|---|
| 石川県九谷焼美術館 | 加賀市大聖寺地方町 | 名品を鑑賞できる | 一般560円 | 9:00~17:00 |
| 九谷焼窯跡展示館 | 加賀市山代温泉 | 発祥の窯跡を見学 | 一般350円 | 9:00~17:00 |
| KAM能美市九谷焼美術館 | 能美市寺井町 |
絵付け・作陶体験可 |
施設による | 要確認 |
石川県九谷焼美術館では、現代九谷焼作家の作品を購入することもできます。月曜日が定休日で、祝日の場合は開館しています。
能美市の九谷陶芸村には、講師の指導による九谷焼の絵付けや作陶ができる体験館があり、2024年9月28日にリニューアルオープンしました。10の九谷焼店舗も集結しており、手頃な値段でお土産を購入できるのが魅力です。
駐車場も完備されている施設が多いので、車でのアクセスも問題ありません。
九谷焼の制作工程や歴史を学べる施設が充実しているということですね。
九谷焼を初めて購入する際は、いくつかのポイントを押さえておくと失敗しません。
選び方のコツ
購入後のお手入れも簡単です。市販の中性洗剤を薄めて、柔らかいスポンジや布でやさしく洗ってください。
食器洗い機でも大丈夫です。
ただし土物(粉引など)を購入した場合は、まず煮沸しましょう。鍋に水をたっぷり張り、器と一緒に一握りの米を入れて煮沸し、冷ましてから水洗いしてしっかり乾燥させます。吸水性の残る器面をコーティングして、汚れや臭いがつきにくくなるんです。
「これだ!」と思ったものは永くご愛用いただけるでしょう。
現代では伝統的なデザインだけでなく、かわいいイラストをモチーフにした作品やキャラクターとのコラボ商品も流通しており、若い世代にも人気が広がっています。今の感性で表現された新しい九谷焼は、今の暮らしに馴染みやすく普段使いにピッタリです。
参考)https://www.utsuwa-daifuku.net/?tid=12amp;mode=f7
九谷焼には、古い伝統を受け継ぎながら独自の感性で作品を生み出している作家や窯元が多くいます。
参考)【厳選】九谷焼のおすすめ人気作家8選!モダンでおしゃれな作品…
代表的な作家・窯元
能美市寺井町には多くの作家や窯元が集まっており、石川県の代表的な工芸品として多様な作家が活躍しています。現在は金沢から寺井・小松まで県下広域に九谷焼の産地が形成されているのです。
店内がギャラリーになっている工房も多く、現代九谷焼作家の作品を直接見て購入することもできます。作家によって色使いや絵柄の雰囲気が大きく異なるため、自分の好みに合った作家を見つけるのも九谷焼の楽しみ方の一つです。
色彩豊かでさまざまな個性が楽しめるのが九谷焼の魅力ということですね。