陶器 食洗機 ダメな理由と手入れ方法

陶器 食洗機 ダメな理由

陶器は温かみのある質感と独特の風合いで多くの人に愛されていますが、その特性から食洗機での洗浄には注意が必要です。便利な食洗機を使いたい気持ちはわかりますが、大切な陶器を長く使うためには、なぜ食洗機での洗浄が適さないのかを理解することが重要です。

 

陶器の吸水性が引き起こす食洗機でのトラブル

陶器は本質的に多孔質な素材であり、この特性が食洗機使用時の最大の問題点となります。陶器は微細な穴が無数に存在し、水分を吸収しやすい性質を持っています。食洗機内で陶器が高温の水と洗剤にさらされると、これらの液体が陶器の内部に浸透していきます。

 

この吸水性の高さが、以下のような問題を引き起こします。

• 内部への水分浸透: 食洗機で洗った陶器は、表面が乾いていても内部に水分が残りやすくなります。この残留水分が時間とともに陶器を弱め、ひび割れの原因となることがあります。

   

• カビの発生リスク: 内部に残った水分は、特に重ねて収納した場合にカビの温床となる可能性があります。一度陶器の内部にカビが発生すると、完全に除去することが非常に困難です。

   

• 匂いの吸着: 陶器は水分だけでなく、食洗機内の他の食器からの匂いも吸収することがあります。これにより、お気に入りの陶器から不快な匂いがするようになる場合があります。

   

特に釉薬がかかっていない部分や底面は吸水性が高く、問題が発生しやすい箇所です。手作りの陶器や伝統的な和食器は特に注意が必要で、食洗機での洗浄を避けるべきでしょう。

 

陶器の釉薬と装飾が食洗機で劣化する理由

陶器の美しさを引き立てる釉薬や装飾は、食洗機の過酷な環境に非常に弱いという特徴があります。食洗機内の高温と強力な洗剤の組み合わせは、時間をかけて陶器の表面を劣化させていきます。

 

釉薬と装飾の劣化は、以下のような形で現れます。

• 釉薬の剥離: 食洗機の高温と化学洗剤の繰り返しの使用により、陶器の表面の釉薬が徐々に薄くなったり、剥がれたりすることがあります。これにより、陶器の防水性が低下し、さらなる水分吸収を招きます。

   

• 色あせと変色: 特に鮮やかな色彩や金彩・銀彩などの金属装飾は、食洗機の洗剤によって色あせや変色が起こりやすくなります。一度失われた色彩や光沢は元に戻すことができません。

   

• クラック（貫入）の拡大: 陶器の釉薬に元々存在する細かいクラック（貫入と呼ばれる）は、食洗機の使用によって拡大することがあります。これにより、陶器の見た目だけでなく、強度も低下する可能性があります。

   

特に手描きの絵付けや伝統的な技法で装飾された陶器は、一回の食洗機使用でも目に見える劣化が起こることがあります。大切な装飾陶器は必ず手洗いすることをお勧めします。

 

陶器が食洗機の高温で受ける熱ショックの影響

食洗機内の急激な温度変化は、陶器にとって大きなストレスとなります。これは「熱ショック」と呼ばれる現象で、陶器の寿命を大幅に縮める可能性があります。

 

熱ショックが陶器に与える影響は以下の通りです。

• 熱膨張と収縮のストレス: 陶器は熱を受けると膨張し、冷えると収縮します。食洗機の洗浄サイクルでは、短時間のうちに54-77°C（130-170°F）の高温から急速に冷却されるため、陶器内部に大きなストレスがかかります。

   

• 不均一な熱分布: 食洗機内では、陶器の各部分が均等に熱せられないため、部位によって膨張率が異なります。これにより内部に歪みが生じ、目に見えない微小なひび割れが発生することがあります。

   

• 累積的なダメージ: 一回の使用では目立った影響がなくても、繰り返し食洗機で洗うことで、これらの微小なダメージが蓄積され、ある日突然割れるといった事態を招くことがあります。

   

特に厚みのある陶器や複雑な形状の陶器は、熱の伝わり方が不均一になりやすく、熱ショックの影響を受けやすいため注意が必要です。

 

陶器と磁器の違いから見る食洗機適性の比較

陶器と磁器は見た目が似ていても、その素材特性と食洗機への耐性は大きく異なります。この違いを理解することで、どの食器を食洗機で洗えるのかの判断基準になります。

 

陶器と磁器の主な違いと食洗機適性は以下の通りです。

特性	陶器	磁器	食洗機適性
原材料	粘土（土）	カオリン（石・ガラス質）	磁器の方が適している
焼成温度	比較的低温（800-1200°C）	高温（1300°C以上）	磁器の方が適している
吸水性	高い（多孔質）	低い（緻密）	磁器の方が適している
透光性	ほとんどなし	あり（薄いものは光を通す）	磁器の方が適している
強度	比較的弱い	強い	磁器の方が適している
熱伝導	遅い（保温性が高い）	速い	磁器の方が適している
質感	温かみがある、素朴	シャープ、洗練された印象	好みによる

磁器は高温で焼成されるため緻密な構造を持ち、水分の吸収が少なく、食洗機での洗浄に比較的適しています。一方、陶器は多孔質で水分を吸収しやすいため、食洗機での洗浄には向いていません。

 

見分け方としては、光に透かしてみたときに磁器は光を通しますが、陶器はほとんど通しません。また、軽く叩いたときの音も異なり、磁器は高い「キーン」という音がするのに対し、陶器は低い「トン」という音がします。

 

陶器を食洗機で洗う場合の対策と正しい手入れ方法

どうしても食洗機を使いたい場合や、日常使いの陶器については、以下の対策を講じることで、ダメージを最小限に抑えることができます。

 

食洗機を使う場合の対策：

1. 低温設定の活用: 可能であれば、食洗機の温度設定を低くし、「デリケート」や「エコ」モードを選択しましょう。高温による熱ショックを減らすことができます。

    

2. 適切な配置: 陶器同士が接触しないよう、十分なスペースを確保して配置します。特に取っ手や縁などの繊細な部分が他の食器と当たらないよう注意しましょう。

    

3. 洗剤の選択: 食器用の中性洗剤や、陶器に優しい専用洗剤を使用しましょう。強力な漂白剤や研磨剤が含まれていない製品を選ぶことが重要です。

    

4. 乾燥サイクルの回避: 食洗機の乾燥サイクルは特に高温になるため、このステップをスキップして自然乾燥させることをお勧めします。

    

手洗いによる正しい手入れ方法：

1. 適切な洗い方: 柔らかいスポンジと中性洗剤を使用し、優しく洗います。硬いたわしやクレンザーは表面を傷つける可能性があるので避けましょう。

    

2. すすぎと乾燥: 洗剤が残らないようにしっかりとすすぎ、自然乾燥させます。特に底部まで完全に乾かすことが重要です。

    

3. 保管方法: 完全に乾いてから収納し、重ねる場合は間に布やフェルトを挟むと、傷や欠けを防ぐことができます。

    

4. 定期的なケア: 長期間使用していない陶器は、使用前に湿らせた布で拭いてから使うと、急激な温度変化による衝撃を和らげることができます。

    

これらの対策と手入れ方法を実践することで、陶器の寿命を延ばし、その美しさを長く楽しむことができるでしょう。

 

陶器の価値を保つための食洗機以外の洗浄方法

大切な陶器の価値と美しさを長く保つためには、食洗機に頼らない洗浄方法を取り入れることが重要です。特に作家ものや伝統工芸品、高価な陶器コレクションには、以下の方法がおすすめです。

 

基本的な手洗い方法：

1. ぬるま湯での洗浄: 極端に熱い水や冷たい水は避け、人肌程度のぬるま湯を使用します。急激な温度変化は陶器にストレスを与えるため注意しましょう。

    

2. 適切な洗剤選び: 食器用中性洗剤を少量使用します。漂白剤や研磨剤が含まれていない、マイルドなものを選びましょう。

    

3. 柔らかい道具の使用: 柔らかいスポンジや布を使い、優しく洗います。金属たわしやナイロンたわしなどの硬い素材は表面を傷つける可能性があるので使用しないでください。

    

特殊な汚れへの対応：

1. 茶渋の除去: 重曹水に一晩浸け置きすると、茶渋が自然に落ちやすくなります。その後、柔らかいスポンジで優しくこすれば効果的です。

    

2. 頑固な汚れ: クエン酸水溶液（水1リットルにクエン酸小さじ1）に浸け置きすると、水垢や石灰質の汚れを落とすことができます。

    

3. 油汚れ: 食器用洗剤を少し多めに使い、ぬるま湯でしっかり泡立てて洗います。必要に応じて重曹を少量加えると効果的です。

    

プロが実践する陶器のケア：

1. 定期的な「お湯だめ」: 陶器専門店や料亭では、使用後の陶器をぬるま湯に浸けておく「お湯だめ」という方法を実践しています。これにより、汚れが固着する前に浮かせることができます。

    

2. 拭き取り乾燥: 柔らかい布で水分をしっかり拭き取り、その後風通しの良い場所で自然乾燥させます。特に底部や釉薬がかかっていない部分は丁寧に拭き取りましょう。

    

3. 季節ごとのメンテナンス: 長期間使用しない陶器は、収納前に日陰で完全に乾燥させ、柔らかい布で包んで保管します。季節の変わり目には取り出して状態を確認するとよいでしょう。

    

これらの方法を実践することで、陶器本来の風合いや美しさを長く保ち、世代を超えて受け継ぐことができる価値ある食器として楽しむことができます。

 

陶器と食洗機の関係性から考える食器選びのポイント

現代の忙しいライフスタイルの中で、食洗機は多くの家庭で欠かせない存在となっています。しかし、大切な陶器を長く使いたいという願いとの間でバランスを取ることが重要です。ここでは、食洗機の使用を前提とした食器選びのポイントをご紹介します。

 

食洗機に適した食器の特徴：

1. 素材の選択: 磁器、強化ガラス、ステンレス製の食器は食洗機での洗浄に適しています。特に業務用や量産品の磁器は、高温焼成により緻密な構造を持ち、食洗機での使用に耐えられるよう設計されています。

    

2. 表面加工の確認: 「食洗機対応」や「dishwasher safe」と明記されている食器は、食洗機での使用を想定して作られています。特に近年の食器は、この点を考慮した製品が増えています。

    

3. シンプルなデザイン: 複雑な形状や突起の少ないシンプルなデザインの食器は、食洗機内での水流による衝撃を受けにくく、破損のリスクが低くなります。

    

TPOに合わせた食器の使い分け：

1. 日常使い: 頻繁に使用する日常食器は、食洗機対応の磁器や強化ガラス製品を選ぶと便利です。デザイン性と実用性のバランスが取れた製品が理想的です。

    

2. 特別な場面: おもてなしや特別な日に使用する高級陶器や作家ものは、手洗いを前提