目止めをしないで夏に陶器を使うと、器に染み込んだ水分がカビの温床になり、気づかないうちに食卓に出し続けてしまいます。
夏の食卓に陶器を取り入れるとき、最初に意識したいのが「色」と「釉薬(ゆうやく)」の選択です。人間の視覚は、器の色によって食事の温度感を無意識に感じとっています。暑い時期には、青や白、淡い緑系の色合いの器を使うだけで、食卓全体の体感温度が下がるように感じられます。
陶器の世界でとくに夏向きとされる釉薬が「青磁(せいじ)」です。青磁は、淡い青緑が特徴の釉薬で、まるで水面をそのまま器にしたような透明感があります。波佐見焼の青磁釉を使ったポットや鉢は、冷製スープやそうめんの器として使うと、盛り付けの涼やかさが際立ちます。青磁が美しく発色するのは約1,240〜1,250℃の焼成温度が目安で、この温度でこそガラスのような透明感が生まれます。
もう一つ夏に映える釉薬が「染付(そめつけ)」です。白地に呉須(コバルト系の顔料)で描かれた藍色の文様が特徴で、日本の有田焼や波佐見焼に多く見られます。染付のうつわは白と青のコントラストが鮮明で、冷奴や刺し身、カルパッチョなど夏らしい料理を盛り付けると食材の色が鮮やかに引き立ちます。これは使えそうです。
一方、陶器独特の素朴な白さを持つ「粉引(こひき)」も夏に人気があります。粉引は白土をかけてから透明釉をかぶせた技法で、柔らかな白さが特徴です。くっきりした白の磁器とは異なり、温かみのある白さが染付の藍色とのコントラストを和らげ、和モダンな夏のテーブルを演出してくれます。
| 釉薬・技法 | 色の特徴 | 夏に合う料理の例 |
|---|---|---|
| 青磁 | 淡い青緑・水面のような透明感 | 冷製スープ、そうめん、サラダ |
| 染付 | 白地に藍色の文様 | 刺し身、冷奴、カルパッチョ |
| 粉引 | 柔らかな乳白色 | 冷製パスタ、フルーツ、豆腐料理 |
| 交趾(浅葱色) | 鮮やかなターコイズ系 | 冷酒の酒器、珍味入れ |
| 刷毛目 | 白土の筆跡が川や波を連想させる | かつおのたたき、揚げ出し豆腐 |
夏の食卓では、テーブルクロスやランチョンマットとの色合わせも重要です。染付など白と青のうつわには、紺やインディゴ系のランチョンマットを合わせると、白×青のグラデーションでまとまりのある涼しげなコーディネートになります。
参考:夏の陶器の意匠(三島手・刷毛目)と料理との相性について詳しく解説されています。
夏向けの涼しげな陶器の意匠とは?|おしゃべりなうつわ|Madame Figaro
「夏の器といえばガラスか磁器」という印象を持つ方は多いですが、実は陶器も正しく使えば夏の食卓に十分馴染みます。ここで陶器と磁器の違いを整理しておきましょう。
陶器は粘土を原料とし、800〜1,300℃で焼成されます。素地(きじ)の中に細かな気孔が残るため吸水性があり、この構造がいくつかの特徴をもたらします。まず、気孔の中の空気が断熱材の役割を果たすため、熱伝導率が低く、冷たい料理の温度を変化させにくいという利点があります。夏に冷奴や冷や汁を盛っても、器が結露しにくいという点は実用的です。
磁器は長石や珪石などの石質原料を使い、1,200〜1,400℃という高温で焼成されます。表面が緻密で吸水性がほとんどなく、光に当てると薄く透けて見えるほど細密です。熱伝導性が高いため、冷たい料理を入れると器自体もひんやりと感じられる点が夏に好まれる理由の一つです。これが条件です。
つまり、「器そのものがひんやり冷たく感じたい」なら磁器、「素朴な温かみと料理の温度を保ちたい」なら陶器という選択になります。夏のテーブルに磁器が好まれるのは視覚的・触覚的な涼しさの面が大きく、陶器は素朴な佇まいと料理映えの面で優位があります。
陶器の中でも夏向きな素材として注目したいのが「やちむん」です。沖縄の方言で「焼き物」を意味するやちむんは、沖縄の力強い自然に育まれた陶器です。ぽってりとした厚みと色鮮やかな絵付けが特徴で、コバルトブルー(呉須)や南国の緑(オーグスヤ)など、沖縄の海や自然を思わせる色合いが夏の食卓を活気づけます。
参考:陶器と磁器の特徴・保温性・吸水性の違いについて詳しくまとめられています。
夏の食卓で陶器を活かす盛り付けには、いくつかの基本法則があります。まず「余白を意識する」ことが涼しげな演出の核心です。器いっぱいに料理を盛り込むと、どんなに美しい器でも見た目に重くなりがちです。大皿を使い、器の縁から2〜3cmほど余白を残して盛り付けると、空間のゆとりが涼しさを生みます。
染付や青磁の大皿にそうめんを盛り付けるとき、麺を中央にこんもりと盛り、薬味を小さな豆皿で添えるスタイルが人気です。刷毛目(はけめ)の取り皿は川や波を連想させる模様が涼しげで、刺し身の盛り合わせとの相性が抜群です。陶器ならではの温かみのある白が、刺し身の赤や白身の淡さを引き立てます。これは使えそうです。
やちむんの大鉢には、夏野菜の煮びたしや冷ややっこをどんと豪快に盛り付けるスタイルが似合います。唐草模様や点打(てんうち)模様が料理に視覚的な活気を加えるため、シンプルな料理でも食卓が賑やかに見えるのが魅力です。一方、黒三島(こくみしま)の大皿はかつおのたたきや揚げ物を盛り付けると格別に見栄えがよく、料理のエンジ色や揚げ色を洒落よく見せてくれます。
夏の食卓で陶器をコーディネートする際のポイントをまとめると、次のとおりです。
参考:染付のうつわを使った夏の食卓コーディネートの実例が多数紹介されています。
夏を乗り切る爽やかなうつわ〜ガラス・やちむん・磁器|和食器通販 うちる
陶器を夏に安心して使うために、絶対に覚えておきたいのが「目止め(めどめ)」です。陶器には素地の中に無数の微細な気孔があり、使用前に何もしないと料理の油分・色素・水分がそのまま染み込んでいきます。夏は気温・湿度が高いため、こうした水分が乾き切らないうちに器をしまうと、カビが発生しやすくなります。吸水性の高い陶器を水に浸したままにしておくと、汚れた水を吸収しカビ・シミ・臭気の原因となります。
目止めとは、米のとぎ汁に含まれるでんぷん質を陶器に染み込ませ、微細な穴を塞ぐ下処理のことです。これを行うだけで、シミ・におい移り・カビのリスクを大幅に下げられます。目止めが基本です。
目止めの手順(米のとぎ汁を使う方法)
夏場の陶器管理で見落とされやすいのが「乾燥」です。目止めをした後でも、使用後に完全に乾かす前にしまうと、中に残った水分からカビが繁殖することがあります。使用後はすぐに洗い、自然乾燥させてから収納するのが原則です。乾燥が条件です。
また、一部の専門店では「目止めがかえってカビの原因になる場合もある」という見解も示されています。これは目止め後の乾燥が不十分なまま収納した場合や、器の種類によっては目止め効果が逆効果になるケースがあるからです。必要に応じて購入店や窯元の案内に従うことが大切です。
| 夏の陶器トラブル | 原因 | 対処方法 |
|---|---|---|
| カビが生えた | 乾燥不十分のまま収納 | 重曹水に半日浸ける。それでも取れない場合は煮沸 |
| 染みができた | 目止め未実施・色素の染み込み | 塩を少量の水で溶いて軽くこすり洗い |
| カビ臭い | 水分の吸収・放湿不足 | レモン汁を絞った水で2〜3回煮沸 |
参考:陶器の目止めの方法と、カビ・臭いが出た場合の対処法が詳しく解説されています。
夏に陶器を使う人の多くは、「使った後にしっかり洗えば大丈夫」と考えています。しかし実際は、洗い方と保管場所の組み合わせが陶器の寿命に大きく影響します。ここでは検索上位ではほとんど触れられていない、陶器の保管と使い方の実践的な知識をお伝えします。
まず気をつけたいのが「重ねて収納すること」です。陶器は表面に微細な凹凸があるため、重ねると傷がつきやすく、とくに釉薬が薄い部分(高台まわりなど)は欠けの原因になります。夏場に食器棚の中を整理するついでに、陶器同士の間に薄いキッチンペーパーや布を1枚挟んでおくだけで、傷と欠けを防げます。地味ですが、器を10年単位で使い続けるためには重要な習慣です。
次に「食洗機の使用」について。多くの陶器は食洗機非対応または推奨外とされています。食洗機は高温の水流で一気に洗い、乾燥工程も高温で行います。陶器の微細な気孔に急激な熱が加わると、目に見えないひびが入り、そこから水分が入り込んで割れやすくなったり、カビが繁殖しやすい構造になるリスクがあります。手洗い一択が原則です。
「電子レンジ」も注意が必要です。陶器は粘土を原料とするため、細かな穴から水分を吸収します。内部に溜まった水分が電子レンジの高熱で膨張し、器が割れることがあります。電子レンジ対応と明記された陶器以外は、使用を避けるのが安全です。
夏の陶器生活をより豊かにするために、産地の特性を知っておくことも役立ちます。例えば愛知県瀬戸市の小春花窯(こはるかがま)は江戸時代から続く窯元で、「麦藁手(むぎわらで)」と呼ばれる縞模様が夏の食卓に映えます。上から見ると花火のような幾何学模様が広がり、夏の冷酒のお供から冷や汁まで幅広く使えます。意外ですね。
夏の高温多湿の環境では、陶器の管理はとくに繊細になります。しかし、これらの手間こそが器を育てる喜びでもあります。使い込むほどに表情が変わっていく陶器の魅力は、丁寧に扱うことで最大限に引き出されます。陶器に注意すれば大丈夫です。
参考:陶器の正しい取り扱い方法(電子レンジ・食洗機・重ね収納)についてわかりやすくまとめられています。

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