同じ柄ばかりで揃えると、かえって食卓が単調に見えて損します。
ポートメリオンというブランドの起点は、1953年のウェールズにあります。陶器デザイナーのスーザン・ウィリアムズ・エリス(1918〜2007年)が、建築家だった父親から引き継いだウェールズの小さな土産物店でのことでした。その後1960年にイングランドの「ストーク・オン・トレント」という陶磁器産業の聖地へ拠点を移し、ポートメリオン社として正式にスタートを切ります。
スーザンは単なるデザイナーにとどまりませんでした。1961年には2つ目の陶器工場を取得するなど、女性が社会進出することが少なかった時代に事業家としての才能を発揮した人物でした。イギリスのキャリアウーマンの先駆けとも言えるスーザンが作り出すデザインは、時代の女性たちの心をつかみ、ブランドは急速に成長していきます。
そして1972年、ポートメリオン最大のヒット作「ボタニックガーデン(Botanic Garden)」が誕生しました。意外なことに、発表当時の取引先からは「どうせ売れないだろう」と冷ややかな目で見られていたといいます。それを覆す形で、現在まで50年以上にわたり世界中で愛され続けるロングセラーとなりました。
デザインのインスピレーション源となったのは、19世紀前半に作られた植物図鑑の図版です。当時はまだ写真技術が普及していなかったため、植物の形状・色・質感は職人が一枚一枚手作業で銅版画に刻み、印刷・着色していました。その緻密で写実的な描写が、ボタニックガーデンのデザインに息づいています。スーザン自身も生涯にわたって植物のスケッチを続け、そのスケッチが食器のデザインへと昇華されていきました。
つまりボタニックガーデンとは、19世紀の植物図鑑アートとスーザンの情熱が交わって生まれた作品といえます。
ポートメリオンの歴史とスーザン・ウィリアムズ・エリスの足跡を詳しく紹介しているページ(wabbey.net)
「ボタニックガーデンを揃えたいけど、どの柄にすればいいの?」と悩む方は多いものです。その答えを考えるうえで重要な事実があります。ボタニックガーデンの花柄は、毎年新しい図柄が追加され、古い図柄と入れ替わる仕組みになっているのです。
これは常に新鮮なラインナップを保つための製品戦略ですが、コレクターの視点から見ると「気に入った柄が廃盤になる」という意味でもあります。実際、Etsy(世界最大のハンドメイド・ヴィンテージ市場)などでは1970〜80年代製造のヴィンテージ品が販売されており、「25年以上保管されていた68ピースセット」が出品されているほど、廃盤となった旧図柄を求めるコレクター需要が存在します。
現在流通している柄だけでも100種類以上に及ぶとされており、バラ、ローズマリー、スミレ、ポピー、スイートピー、パッションフラワーなど、身近な植物から珍しいものまで幅広くそろっています。お皿の縁にはハーブが描かれており、料理を乗せているときはそのハーブがさりげないアクセントに、食べ終わると中央に描かれた花の絵が現れる——というデザイン上の仕掛けも評価されています。
これは使えそうです。お気に入りの柄が廃盤になる前に入手しておくという考え方が、コレクションをより充実させる手がかりになるでしょう。最新のラインナップは公式サイトや正規輸入代理店のページで定期的に確認しておくことが大切です。
ボタニックガーデンシリーズのラインナップと特徴を詳しく解説しているページ(Sohbi公式)
「食器は同じ柄で揃えるべき」と思っている方には、少し驚くかもしれません。ボタニックガーデンは、創業者スーザンが「異なる植物の柄を自由に組み合わせて楽しんでほしい」という意図で設計されたシリーズです。同じ柄で揃えるクラシックなスタイルはもちろん魅力的ですが、異なる花柄を混在させるコーディネートこそが「ボタニックガーデンらしい食卓」といえます。
実際に英国のユーザーたちは、食器の一枚一枚が異なる花柄であることを積極的に楽しんできました。6人分の食卓に、バラ・ポピー・スミレ・スイートピーなど6種類の異なる柄のプレートを並べれば、まるで植物園のテーブルに座っているような世界観が生まれます。これはウェッジウッドやロイヤルコペンハーゲンといった「揃いの美しさ」を大切にするブランドとは、根本的に異なるコンセプトです。
混ぜ使いをするときに意識しておくと便利なのが「共通項を一つ持つ」ことです。プレートはすべてボタニックガーデン・シリーズで揃え、柄だけを変えると統一感が生まれます。あるいはカップ&ソーサーだけ同柄にして、プレート類は異柄にするという方法も、テーブルにリズムが出てよい方法です。
ボタニックガーデンが基本です。ブランドとしての統一感さえ保てば、柄の組み合わせは自由で正解がありません。コーディネートの幅を広げたい場合は、後述するハーモニーコレクション(無地系の新ライン)とのミックスも選択肢に入ってきます。
ボタニックガーデンシリーズの大きな実用的メリットの一つは、食洗機・電子レンジ・オーブン・冷凍庫のすべてに対応していることです。日常使いの食器として申し分ない機能性を持ちます。ただし、ここに重要な例外があります。
ポートメリオンには「サラミラー」シリーズをはじめとする、金彩(金の装飾)が施された製品ラインが存在します。この金彩シリーズは、電子レンジ・食洗機・オーブンでの使用が不可です。金彩の食器を電子レンジに入れると、金属部分に電磁波が集中してスパークが起き、食器が破損したり火花が出たりするリスクがあります。金彩が「断線」するとその後使い続けることも難しくなります。
購入時に見分けるポイントは、食器の縁や模様部分に「光沢のある金色の装飾があるかどうか」です。ボタニックガーデンの通常ラインは植物の絵のみで金彩は使われていませんが、別ライン購入の際は必ず商品説明を確認する習慣をつけましょう。正規輸入代理店(ル・ノーブル、Sohbiなど)では商品ページに「金彩あり・なし」の注意書きが明記されているので、オンライン購入時は必ずそこをチェックするのが確実です。
オーブン使用については、170度以下が推奨されています。高温での長時間使用は避けることが原則です。食器の寿命を縮めないためにも、使用温度の目安は守るようにしましょう。
ポートメリオン各シリーズの使用上の注意と商品詳細が確認できるページ(ル・ノーブル公式)
ボタニックガーデンのシリーズは、プレートやマグカップにとどまらず、カトラリー・キッチンアクセサリー・インテリア雑貨まで幅広い展開をしています。「どこから集め始めればいいのか?」というビギナーの疑問に対して、カテゴリ別のポイントを整理します。
まずプレートから始めるのが王道です。サイズ展開は15cm(スイートディッシュ)から38cm(大皿)まで幅広く、最もポピュラーなのは22〜25cmのディナープレートです。ハガキ(横幅約14.8cm)よりやや大きく、一般的なワンプレートランチにも対応できるサイズ感で扱いやすいと評判です。価格は1枚あたり2,500〜4,000円前後が目安で、最初の1枚としてコストパフォーマンスの高い選択肢といえます。
マグカップはギフトとして選ぶ方も多く、容量は280ml(約マグカップ標準サイズ)が中心です。相場は1個あたり3,000〜5,000円程度で、2個セットのギフトボックスは4,000〜8,000円が一般的です。ティーカップ&ソーサーは200ml容量が多く、紅茶文化のイギリスらしい一品として人気があります。
ティーカップ&ソーサーは必須です。花柄の食器で楽しむアフタヌーンティーは、ボタニックガーデンが最も映えるシーンの一つです。複数の花柄を組み合わせた6客セットを揃えれば、コレクターらしい食卓になります。
また、単独で展開されている「ハーモニーコレクション」はレトロ×モダンをコンセプトにした無地系のラインで、フォレストグリーンやストーン(ベージュ)などの落ち着いた色調が特徴です。花柄のボタニックガーデンと組み合わせることで、食卓全体に奥行きと統一感が生まれるとして、すでに持っているコレクターからも評価されています。ラインナップを深めたい段階でぜひ検討してみてください。
ポートメリオンのマグカップラインナップと選び方がわかるページ(Sohbi公式)

ポートメリオン【Portmeirion】ボタニックガーデン スウィートディッシュ10cm Pansy(パンジー)BGHL48940pansy