ティーカップの取っ手に指を通して飲むと、高級ホテルで「ぬるいです」という無言のクレームを出していることになります。
「岸辺露伴は動かない」のエピソード「富豪村」では、富豪一家への挨拶の場でいくつかのマナーが試されます。畳の縁を踏まない、上座・下座の区別、そしてティーカップの取っ手に指を通してはいけない——この3つのマナー違反が「退場」の引き金として描かれました。
登場人物の泉京香がティーカップの取っ手に指を通した瞬間、「マナーは『正しい』か『正しくない』かのどちらかです。寛容はございません」という一言とともに追い出されてしまう場面は、2020年のNHKドラマ放映後に大きな反響を呼びました。
「穴が開いているのになぜ指を入れてはいけないの?」という疑問がSNSで飛び交い、陶器・紅茶ファンの間でも議論になりました。これが正しいマナーです。「取っ手はつまむ、指は通さない」——これだけ覚えておけばOKです。
作品内でこのティーカップとして使われたのは、英国コールポート窯が1830年代に製造した「アデレイドシェイプ」と呼ばれる骨董品。鳳凰モチーフが施されたアンティーク陶器で、現在市場では1セット2〜4万円以上の値がつくこともある希少品です。
ドラマの美術監修を担当したアンティーク専門家によれば、「格式のある家にふさわしい」という理由でこのカップが選ばれたとのことです。
岸辺露伴は動かない「富豪村」ドラマあらすじとマナー試験の詳細解説(yamapy.net)
では、実際にどのように持てば正しいのでしょうか。基本の手順は3段階で押さえられます。
まず第一に、親指と人差し指で取っ手(ハンドル)をつまむことから始めます。ちょうど、薄い紙の端を軽くはさむイメージで、力を入れすぎずに持ちます。取っ手の輪の中に指を通すのではなく、あくまで外側から「つまむ」動作が基本です。
第二に、中指を取っ手の下部に軽く添えて、カップが安定するよう補助します。中指の腹の部分で取っ手の底辺をそっと支えると、液体が入った状態でも揺れにくくなります。
第三に、薬指と小指は揃えて自然に下ろすのが正解です。よく「上品に見せようとして小指をピンと立てる」人がいますが、これは紅茶マナーの世界では逆にNGとされています。小指を高く立てると、見た目も「気取りすぎ」と受け取られることがあります。
以下に正しい手順をまとめます。
| 指 | 役割 | ポイント |
|---|---|---|
| 親指・人差し指 | 取っ手をつまむ | 力を入れすぎない |
| 中指 | 下から補助・支える | 腹の部分で添える |
| 薬指・小指 | 揃えて自然に下ろす | 立てない・離しすぎない |
現代の市販ティーカップは単体で約150g前後あり、紅茶を140cc程度注ぐと合計で300g近くになります。つまんで持つのは確かに指の力が必要で、慣れないうちはプルプルすることもあります。それが基本です。
慣れるまでの練習として、まず中身を入れずに持つ感覚をつかんでおくのがおすすめです。アンティーク陶器やボーンチャイナの薄いカップは100g以下のものも多く、それらなら紅茶込みでも200g前後なので比較的つまみやすいでしょう。
【プロが解説】紅茶を飲むときの正しいマナーとカップの美しい持ち方(yo-raku.co.jp)
「なぜ穴があるのに指を入れてはいけないのか?」という疑問は、実は多くの人が持つ自然な疑問です。意外ですね。この問いに答えるには、ティーカップの歴史を少し遡る必要があります。
17世紀、ヨーロッパに最初に伝わった茶器は、中国の磁器をそのまま使ったもので、取っ手がありませんでした。日本の湯飲みに近い形です。その後、1740年頃からイギリスで「指が熱くならないように」という理由でハンドル(取っ手)が付けられるようになります。
ここで注目したいのは、当時の上流階級の紅茶文化における「熱さのサイン」というマナーです。紅茶は熱々の状態で出すのがホストのマナー。カップが熱いということは、それだけ丁寧に淹れてくれた証拠です。だからこそ、カップをがっちりつかんだり指を通したりすると「冷めていて熱くない=ぬるい紅茶を提供された」という意味として受け取られてしまいます。
両手でカップを包むように持つのも同じ理由でNGとされています。「両手で包めるほど熱くない=ぬるいです」という暗黙のクレームをホストに向けているとされるからです。
アンティークの高級ティーカップには、そもそも指が通らない設計のものが多いという事実も見逃せません。1830年代製造のコールポート窯の茶器がまさにその例で、取っ手の穴が小さく、指を通すことを最初から想定していない造りになっています。こうした設計そのものが、つまんで持つことへの"答え"とも言えます。
ティーカップの持ち方以外にも、陶器好きがうっかりやってしまいがちなNG所作があります。知らないまま実践していると、格式あるティータイムの場や、茶器好き同士の集まりで気まずい思いをすることも。正しい所作を一度整理しておきましょう。
まず最も多い失敗が「小指を立てる」ことです。テレビドラマなどで「上品な人は小指を立てている」というイメージが広まっていますが、これは現代の正式マナーでは「下品」「気取りすぎ」と評価されます。小指は薬指に揃えて自然に下ろすのが正解です。
次に「両手でカップを包む」行為も要注意です。日本茶の場合は両手でいただくのが丁寧とされますが、紅茶・コーヒーの文化では前述のとおり「ぬるいです」というサインになってしまいます。
以下にNG所作をまとめます。
| NG所作 | 何を意味するか | 正しい所作 |
|---|---|---|
| 取っ手に指を通す | 下品・熱くない証拠 | 3本指でつまむ |
| 両手でカップを包む | 「ぬるいです」のサイン | 片手(右手)で持つ |
| 小指を立てる | 気取った所作・マナー違反 | 薬指と揃えて下ろす |
| ソーサーを常に持ち上げる | テーブルが高い席ではNG | テーブルの高さで判断 |
| 猫背でカップに口を寄せる | 見た目がエレガントでない | カップを口元まで上げる |
「ソーサーを持つかどうか」も場面次第です。ダイニングテーブルのような高いテーブルの場合は、ソーサーはテーブルに置いたままカップだけ持ちます。一方、立食パーティーや低いテーブルの場合は、ソーサーを左手に持ち右手でカップを持って飲みます。場面ごとに変わります。
陶器の茶器を愛用している方は、カップの素材や薄さによってもつまみやすさが変わります。薄いボーンチャイナ製は比較的軽く扱いやすい一方、分厚い陶器製は重くなりやすいため、カップ選びの段階から持ちやすさを意識すると日常のティータイムが一段と楽しくなります。
ティーカップのマナーを知ったうえで、次に大切なのが「どんな陶器を選ぶか」という視点です。これは使いやすさと美しさの両立に直結します。
ストレートティーを楽しみたい場合、口が外側にやや広がった浅めのカップが適しています。口が広いと紅茶の香りが立ちやすく、白無地に近い内側ならば紅茶の「水色(すいしょく)」——つまり茶液の色合いを目でも楽しめます。薄手の陶器であればあるほど、視覚的に色が映えます。
ミルクティーを愛用するなら、やや厚みのある深型カップが向いています。ミルクを加えることで温度が下がりやすいため、保温性の高い厚手の陶器が重宝します。つまり、飲み方次第で最適なカップの形状が変わります。
陶器ファンの間でよく語られる「コールポート」「ウェッジウッド」「ロイヤルコペンハーゲン」などのブランド品は、軽量で薄く、つまんで持つことを想定した作りのものが多いです。とくにアンティーク品(1800〜1900年代製造)は取っ手が小さく、つまむ所作が自然と身につく設計になっています。
現代の量販品カップとアンティーク品を比較すると、重量差で倍近く違うこともあります。150g超の現代品に対し、100g以下のアンティーク品は指の負担が全く違います。それが大きな違いです。
アンティークのティーカップを本格的に探したい場合は、英国陶磁器を取り扱うアンティークショップや、大手オークションサイトを活用するのがひとつの方法です。コールポートのカップ&ソーサーセットは、メルカリやヤフオクでも2万〜5万円程度で流通することがありますが、状態や年代によって価格は大きく異なります。購入前に窯印(バックスタンプ)を確認する習慣をつけておくと安心です。
英国ティーカップの歴史:取っ手が付いたのは1740年頃から(sandersperry.jp)

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