炉冷(ろれい)は、加熱が終了した後も炉の中に作品を入れたままゆっくりと冷却する方法です。窯の電源やガスを止めた後、そのまま炉内で自然に温度を下げていきます。
参考)鋳造用語集
冷却時間が最も遅い冷却方法です。
参考)鋳造用語集
陶器やガラスなど、ゆっくりとした温度変化が求められる素材に用いられます。炉の壁が断熱材の役割を果たすため、外気温の影響を受けにくく、温度が緩やかに下がっていくのが特徴です。
参考)https://blog.goo.ne.jp/meisogama-ita/e/ea096fbdc7f97c082ebed6c068cb0c49
炉冷は「徐冷」と同じ意味で使われることも多いですが、厳密には炉冷は炉内で冷却することを指し、徐冷はゆっくり冷却する方法全般を指します。陶芸では両者をほぼ同義として扱うケースが一般的です。
結晶釉などの特殊な釉薬を使う場合、炉内で一定温度を保持しながら冷却する「保持冷却」という技法も炉冷の一種です。例えば1,200℃から1,100℃まで下げて3~4時間その温度をキープすると、結晶が1~2cm程度まで大きく成長します。
参考)結晶釉
空冷(くうれい)は、加熱後に空気を用いて冷却する方法です。炉から作品を取り出して外気にさらすか、炉の扉を開けて空気を流入させることで温度を下げます。
参考)熱処理用語 空冷
炉冷に比べて冷却速度が速いのが特徴です。
扇風機やファンを使って冷却速度をさらに早める「ファン空冷」や「衝風空冷」という方法もあります。風速を調整することで、硬さや質感を微調整できるため、作品の要求に応じた柔軟な対応が可能です。
熱処理の分野では、「焼ならし」という組織を均一化させる処理でも空冷が使われます。あえて急速な冷却をしないことで、鋼の表面と内部の組織を整える目的があります。
空冷は設備がシンプルでコストが低く、特別な冷却媒体が不要なため経済的です。また、環境への影響が少ない点も利点として挙げられます。
参考)熱処理における空冷とは?
炉冷と空冷の最大の違いは、冷却速度にあります。炉冷は炉の壁が熱を保持するため、1時間あたり数十℃程度のゆっくりとした温度低下になります。
空冷では1時間あたり100℃以上下がることもあります。
窯の大きさや壁の厚さも冷却速度に大きく影響します。小型の窯や壁が薄い窯は冷めやすく、大型で壁が厚い窯はゆっくり冷えます。同じ冷却方法でも、窯の仕様によって実際の温度変化は異なるということですね。
参考)長時間徐冷をやってみた - ∴ん窯やきもの山房 里山暦
陶芸で特に重要なのは、1,150℃~800℃の温度帯での冷却速度です。この範囲で釉薬の結晶化や乳濁、透明度などの表情が決まるため、冷却方法の選択が作品の仕上がりに直結します。
窯の下部は上部よりも早く冷えるため、同じ窯で急冷用と徐冷用の作品を同時に焼成する場合は、下部に急冷用、上部に徐冷用を配置する工夫もあります。
参考)https://blog.goo.ne.jp/meisogama-ita/e/f4acb86c53da837ba79112a1ee159195
炉冷が適しているのは、ゆっくりとした温度変化で美しさを発揮する釉薬です。代表的なものは結晶釉で、冷却過程で亜鉛や鉄の結晶が成長し、大きな結晶模様が表面に現れます。
志野釉は炉冷で淡雪のような白さが生まれます。
急冷すると透明釉のようになり、志野特有の乳白色の質感が失われてしまいます。黄瀬戸も炉冷によって結晶が析出し、「油揚手」と呼ばれるきれいな黄色の表情が現れます。
辰砂(しんしゃ)は銅を含む釉薬で、徐冷によって銅コロイドが発達し、鮮やかな紅赤色に発色します。急冷すると色が逃げて発色しないため、必ず炉冷が必要です。
白萩釉やそば釉のような艶消し釉、失透性の釉薬も炉冷に適しています。1,150℃~800℃の範囲でゆっくり冷やすことで、狙った質感や色合いを実現できます。
小型の窯で炉冷が必要な釉薬を焼く場合は、燃料や電気を完全に止めずに弱火で温度を保ちながら徐々に下げる方法もあります。
結晶釉の詳しい調合と焼成条件については、こちらの記事で温度帯やキープ時間の具体例が紹介されています
空冷が適しているのは、急冷によって色艶が良くなる釉薬です。織部釉は代表的な例で、ゆっくり冷やすと表面に銅分の黒い結晶が浮かび、黒ずんだ色になります。
早く冷めるほど色艶が良くなります。
青磁や白磁のような透明性の高い釉薬も急冷に適しています。急冷することで色合いが澄んで冴えた発色になるため、作品の美しさが際立ちます。
色釉と呼ばれる着色された釉薬の多くも急冷向きです。冷却速度が速いと、釉薬の成分が結晶化する前にガラス質のまま固まるため、クリアで鮮やかな色が出ます。
アズキ釉は徐冷で濃い発色をする釉薬ですが、引き出し(急冷)すると透明釉のようになり発色しません。このように、釉薬によって最適な冷却方法が真逆になることもあるため、使用する釉薬の特性を事前に調べておくことが重要です。
窯の種類によっても自然な冷却速度が異なります。電気窯はガス窯よりも自動的に徐冷になりやすく、ガス窯は比較的早く冷えます。
「冷ましも、窯焚きの内」という言葉があるように、冷却方法は焼成の成否を左右する重要な工程です。まず、使用する釉薬がどの冷却方法に適しているかを確認しましょう。
釉薬の特性を知ることが第一歩です。
同じ窯で複数の釉薬を焼く場合、窯詰めの位置を工夫することで対応できます。窯は下部から冷えるため、急冷が必要な作品は下段に、徐冷が必要な作品は上段に配置します。
急激な温度変化は作品を割る原因になります。特に800℃以下の温度帯で急冷すると、冷め割れが発生しやすくなります。陶器は磁器に比べて焼成温度が低く、急激な温度変化に弱いため注意が必要です。
小型の窯で徐冷が必要な場合、窯の隙間を耐火レンガや断熱材で覆って冷却速度を遅くする方法もあります。あるいは、火を完全に止めずに弱火で温度を下げていく方法も効果的です。
窯を開ける温度は一般的に300°F(約150℃)以下が推奨されます。それより高い温度で開けると、釉薬にひびが入る「貫入」が予期せず発生することがあります。
焼成後の割れ方の違いと原因については、こちらの記事で昇温時と冷却時の亀裂の見分け方が解説されています
実際の陶芸では、炉冷と空冷を組み合わせた冷却方法も使われます。例えば、炉内で一定温度まで徐冷した後、炉から取り出して放冷(外気で自然冷却)する方法です。
温度帯によって冷却方法を変えるということですね。
ガス窯や灯油窯では、加熱終了後に一度温度が下がってから再点火して温度を保持する「再加熱」という技法もあります。例えば1,100℃まで下がったらその温度をキープすることで、結晶釉の結晶成長や志野の乳白色を促進できます。
結晶釉の焼成では、最高温度1,200℃で30~60分練らし(温度キープ)した後、約40分で1,100℃まで下げ、その温度を3~4時間保持する方法が一般的です。
その後は自然に徐冷します。
冷却中の雰囲気(酸化・還元)も発色に影響します。特に鉄分を多く含む酸化飴釉や鉄赤釉では、冷却時に還元雰囲気を維持することで他の焼成方法とは顕著に異なる釉の発色を得られます。
参考)https://www.itic.pref.ibaraki.jp/publication/doc/research/h29/vol46_20.pdf
窯の容量や壁の厚さに合わせて、冷却方法をカスタマイズすることが、理想的な作品を生み出すコツです。自分の窯の特性を理解し、釉薬ごとに最適な冷却プロセスを見つけていきましょう。

Frcolor 高ホウケイ酸ガラス製ティーポット 1000ml 大容量冷水ポット ステンレスフィルター付き 漏れ防止シリコンリング 電気炉対応 家庭用冷