下絵付(したえつけ)は、陶磁器の装飾技法のひとつで、釉薬をかける前の素焼きした素地に顔料で絵を描く方法です。絵を描いた後に釉薬をかけて本焼きするため、釉薬の下に絵があることから「下絵付」と呼ばれます。素焼きは約800℃で行われ、この状態で絵付けをします。
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釉薬の下に絵があることが基本です。
特に呉須(ごす)と呼ばれる藍色の顔料で描かれたものを「染付」と呼び、日本では染付、英語では「ブルーアンドホワイト」、中国では「青花」という名称で親しまれています。染付は下絵付の代表的な技法として世界中で知られています。
参考)下絵付けとは?
下絵付と上絵付の違いは焼成のタイミングにあります。下絵付は釉薬をかける前の素焼き状態で絵を描き、その後釉薬をかけて高温(1200~1300℃程度)で本焼きします。一方、上絵付は本焼き後の釉薬がかかった状態で絵を描き、低温で再度焼成する技法です。
参考)https://www.bitouen.jp/blog_k1606196330.html
下絵付けの基本技法について詳しく解説している陶芸スタジオの記事
下絵付で使える顔料は、本焼きの高温(1200~1300℃)に耐え、鮮やかに発色する金属顔料に限られます。昔は酸化鉄によって茶色に発色する「弁柄」や「鬼板」と、酸化コバルトによって発色する「呉須」の2色しかありませんでした。
色数が少ないのが特徴です。
呉須は酸化コバルトを原料に含む青色の発色をする絵具で、還元焼成の方が青みが鮮やかになります。現代では技術の進歩により、カナリヤ黄、エンヂ赤、ピンク、ライラック、トルコ青、グリーンなど約18色程度の下絵具が開発されていますが、それでも上絵付に比べると使える色数は限定的です。
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高温焼成に耐える顔料は限られています。例えば、ゴス絵具(呉須)は100gで3,740円、1kgで34,100円と高価ですが、酸化・還元どちらの焼成でも使用可能です。ただし、ピンクやライラックなどの色は還元焼成や亜鉛を含む釉薬では茶褐色に変色するため、使用条件に注意が必要です。
素焼きの生地は非常に吸水性が高く、絵の具の成分は塗った瞬間にすぐ吸収されていきます。このため、絵付けの職人は描くときに素早い判断と筆さばきが必要になります。一度描いた線は修正できないため、集中力と技術が求められる作業です。
やり直しはほぼ不可能です。
失敗してどうしてもやり直したい場合は削るしかありませんが、現実的ではありません。プロを目指すなら、失敗した作品を何とかしようとする時間があれば、作り直すか別の作品に取り掛かる方が効率的です。
素焼き器の表面は荒いため、細かい繊細な絵を描くことが難しいという特徴もあります。このため、下絵付では大胆な構図やシンプルなデザインが好まれる傾向にあります。初心者がチャレンジする際は、まず簡単なデザインから始め、徐々に複雑な絵柄に挑戦していくことが上達の近道です。
参考)陶磁器~下絵と上絵【2016年買取・新着情報】 - いわの美…
下絵付の技法と職人の筆さばきについて解説した京都の工房ブログ
下絵付と上絵付では発色の特性が大きく異なります。下絵付は釉薬の下に描かれるため、柔らかな発色となり、透明感のある仕上がりになります。一方、上絵付は釉薬の上に描かれるため、不透明で明瞭に表れ、鮮やかな色調が特徴です。
発色の違いが作品の印象を決めます。
上絵付は低温焼成(約800℃前後)のため、耐えられる顔料の種類が多く、金や銀などの金属色も使用できます。このため、色鮮やかで華やかな装飾を施したい場合は上絵付が適しています。下絵付は色数が限られる代わりに、高温焼成により釉薬と一体化するため、耐久性に優れ、食器として使用する際に絵が剥がれにくいという利点があります。
色鍋島などの高級磁器では、下絵付と上絵付を組み合わせる技法が用いられます。まず染付で文様の輪郭線を下絵として描き、その後上絵付で赤や緑などの鮮やかな色を加えることで、柔らかな染付の線が色絵の鮮やかな色調を引き立てる役割を果たします。
初心者が下絵付に挑戦する際は、修正できないリスクを回避するための準備が重要です。まず、本番前に必ず下絵(デザイン案)を紙に描いて、構図やバランスを確認しましょう。下絵を素焼き器の下に置いてトレースすることで、迷わず描き進められます。
事前準備が成功のカギです。
筆は細筆(面相筆や削用筆)を用意し、絵の具の濃度調整に注意します。濃すぎると厚塗りになって黒くコゲた状態になり、薄すぎると発色が弱くなります。特に釉裏紅下絵具などは濃度がポイントとなるため、テストピースで事前に試すことをおすすめします。
参考)水墨画の描き方|初心者の時の下絵や下書き(アタリ)の考え方と…
描く順番を意識することも大切です。水墨画と同様に、下絵付も筆跡が残るため、どこから描けば描きやすいか、全体をよく見て確認してから作業に入ります。線描き部分から始め、薄墨~中墨程度の濃度で描いていくと失敗が少なくなります。
初心者向けには、アレンジのきく簡単なデザインから始めることをおすすめします。色や大きさを変えて楽しみながら、徐々に技術を向上させていきましょう。和ペースト下絵具などは粒子が細かいため扱いやすく、薄塗りでも綺麗に色が発色するため初心者に適しています。