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酸化コバルトは陶芸で青色を出す代表的な着色原料です。焼成前は黒い粉なのに、焼成後は美しい青に変わる不思議な特性を持ちます。濃度や釉薬との組み合わせで色が大きく変わることをご存知ですか?

酸化コバルト 色 発色

あなたが使う0.1%でも青く出ます。


この記事の3つのポイント
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焼成で黒から青に変化

酸化コバルトは焼く前は黒い粉だが、釉薬中で高温焼成すると深い青色に発色する化学変化が起きる

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微量でも強力な発色力

0.1%の微量でも青色を発色し、3%で瑠璃色、5%で強いマリンブルーになる濃度依存の特性がある

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釉薬と焼成条件で色が変わる

還元焼成では紫がかった藍色、酸化焼成では黒味が強くなり、釉薬の成分でも色調が変化する

酸化コバルトが焼成前は黒、焼成後は青になる理由

酸化コバルトはコバルト金属が酸化してできた黒い粉末です。素焼きの器に描いたときは光を返さない黒い物質として見えます。しかし、釉薬をかけて高温で焼成すると、酸化コバルトが釉薬のガラス質に溶け込みます。


参考)301 Moved Permanently


この化学変化がポイントです。


釉薬中に溶けたコバルトイオン(Co²⁺)が整列し、特定の光(赤から橙)を吸収することで、深い青色が生まれます。コバルトイオンの電子配置が変化し、青い光だけを反射するようになるのです。この現象は「呉須色(ごすいろ)」として古くから陶磁器の世界で愛されてきました。


参考)呉須とは?焼く前は黒・焼くと青になる“酸化コバルトの青”を徹…


焼成前の黒と焼成後の青、この劇的な色変化は酸化コバルトが持つ独特の化学的性質によるものです。


酸化コバルトの濃度による色の違い

酸化コバルトは0.1%程度の微量でも青色に発色します。これは他の着色原料と比べて極めて強い発色力です。初心者の方が「少し青くしたい」と思って多めに入れると、予想以上に濃い色になって驚くケースがよくあります。


参考)呈色のための材料として ② - 泰雅庵の出来事


濃度が上がるほど青は深くなります。


3%配合するといわゆる瑠璃色になり、5%で強いマリンブルーを呈します。10%まで増やすと非常に濃い紺色に近づきます。テストピースで段階的に試すと、0%、2.5%、5%、10%でそれぞれ異なる青の濃淡を確認できます。


色の濃さをコントロールするには、0.1%刻みで慎重に配合比を調整することが大切です。数字で管理すれば、狙った青色を再現しやすくなります。


酸化コバルトと釉薬成分の組み合わせ

釉薬の成分によって酸化コバルトの発色は大きく変わります。珪酸やマグネシアが多い釉薬では、コバルトの色が黒味がかった青になります。逆に、アルカリ成分が多い釉薬では明るい青色が出やすい傾向があります。


参考)Cobalt 酸化コバルト さんかコバルト


結晶釉では意外な色が出ます。


結晶釉に酸化コバルトを加えると、青ではなくピンク色の結晶斑が析出することがあります。これは結晶構造の中でコバルトイオンが特殊な配置をとるためです。カオリンマット釉に配合すると、マットな質感の青色釉薬ができます。


参考)https://item.rakuten.co.jp/tougeino-yorozuya/k-6kobaruto/


釉薬との相性を知るには、ベース釉薬を決めてから段階的にコバルトを添加してテストすることです。福島長石30、合成土灰40、朝鮮カオリン30の配合をベースにすると、安定した青が得られやすいです。


酸化コバルトの焼成条件と発色の関係

酸化コバルトは焼成中の全温度帯で安定しており、色にほとんど変調がありません。単独では1800℃で分解する程度なので、一般的な陶芸の焼成温度では非常に安定しています。ただし、焼成雰囲気によって色調は変化します。


還元焼成では紫がかった藍色になります。


酸化焼成では黒味が強くなります。純度の高い酸化コバルトを顔料として使う場合、この違いは特に顕著です。電気窯での酸化焼成とガス窯での還元焼成では、同じ配合でも全く違う青色になることがあります。


焼成温度が低すぎると発色が弱くなり、高すぎると釉薬に溶け込みすぎて色が沈むことがあります。1200℃から1250℃程度が、安定した青を出すのに適した温度帯です。


過焼成には注意が必要です。



参考)https://ngy.co.jp/pages/38/


酸化コバルトを使った呉須と染付の技法

呉須(ごす)は酸化コバルトを主成分とする陶磁器専用の絵具です。素焼きの器に呉須で絵を描き、その上から透明釉をかけて焼成すると、釉薬の下に青い絵が定着します。これが「染付(そめつけ)」と呼ばれる技法です。


赤絵とは色の出方が違います。


赤絵は釉薬の表面に色がのるためハッキリとした装飾になりますが、呉須は釉薬の下に入るため深みのある青色になります。この「青=呉須、赤=赤絵」の二本柱が焼物文化の発展を支えてきました。


呉須を作る際は、酸化コバルトに酸化鉄酸化マンガンを混ぜて色調を調整することもあります。マンガン・弁柄・クローム・コバルトで黒釉を作ることもできます。純粋な青だけでなく、様々な色合いを作り出せるのが酸化コバルトの魅力です。


酸化コバルト使用時の実務的な注意点

酸化コバルトは化学物質なので、取り扱いには注意が必要です。粉じんやミストを吸入しないこと、取扱い後はよく手を洗うこと、使用時に飲食や喫煙をしないことが基本です。屋外または換気の良い場所で使用してください。


参考)http://www.st.rim.or.jp/~shw/MSDS/72713737.pdf


保管時は湿気と高温を避けます。


参考)http://www.showa-chem.com/MSDS/03378350.pdf


汚染された作業衣は作業場から出さないようにし、適切な保護具を着用することも重要です。漏出した場合は、風上から作業し、粉じんが飛散するなら水噴霧で抑えます。


参考)https://www.kishida.co.jp/product/catalog/msds/id/3233/code/200-17642j.pdf


安全データシート(SDS)を確認し、廃棄・保管・表示の方法を把握しておくことです。陶芸を楽しむためにも、化学物質としての正しい知識を持つことが大切です。安全に配慮すれば、酸化コバルトは長く使える優れた着色原料になります。


呉須の詳しい解説と歴史について(酸化コバルトの青の化学的仕組みや染付技法の詳細が書かれています)
酸化コバルトと釉薬の組成による発色の違い(珪酸・マグネシアなどの影響について詳しい情報があります)