辰砂釉で5%以上の銅を入れると黒く焦げます。
辰砂釉の基本調合は、長石系の基礎釉に炭酸銅を0.5~3%程度加えたものです。
最も一般的な配合は、石灰釉や長石釉をベースに炭酸銅を1~2%混ぜる方法ですね。
炭酸銅の配合量が発色の鍵を握ります。
1%未満だと薄いピンク色、2~3%で鮮やかな赤、それ以上になると紫がかった暗い色や黒っぽくなるリスクが高まります。
基礎釉の組成も重要な要素です。石灰分が多い釉薬(石灰釉)は比較的安定した赤色が出やすく、初心者にも扱いやすい特徴があります。一方、長石釉をベースにすると透明感のある深い赤色になりますが、温度管理がシビアになります。
具体的な配合例を挙げると、以下のような比率が基本です。
つまり基礎釉が98~99%、銅が1~2%ということですね。
この配合比率は、焼成温度や窯の特性によって微調整が必要になります。電気窯と薪窯では還元雰囲気の違いから、同じ配合でも発色が変わるためです。自分の窯に合わせたテストピースを複数作り、0.5%刻みで銅の量を変えて試すのが確実な方法です。
記録を取ることも忘れずに。配合比率、焼成温度、還元のタイミングをノートに残しておけば、理想の赤色を再現しやすくなります。
辰砂釉の発色には1230~1280℃での還元焼成が必須条件です。
この温度範囲で十分な還元雰囲気を作ることで、銅イオンが赤色を発色する状態に変化します。どういうことでしょうか?酸化銅(CuO)が還元されて亜酸化銅(Cu2O)になることで、あの美しい赤色が生まれるんです。
還元のタイミングは900~1000℃から始めるのが一般的です。早すぎる還元は釉薬の溶け方に悪影響を与え、遅すぎると十分な赤色が出ません。最高温度に達してからも15~30分程度、しっかり還元雰囲気を維持する必要があります。
還元が不十分な場合の失敗例。
これは使えそうです。
温度管理の具体的なコツとして、焼成カーブ(温度の上げ方)も重要です。急激な昇温は避け、時間をかけて均一に温度を上げることで、釉薬の溶け方が安定します。目安として、800℃までは100℃/時間、それ以降は80℃/時間程度のペースが理想的です。
窯の種類による違いも考慮してください。ガス窯は還元雰囲気を作りやすく辰砂釉に適していますが、電気窯では炭化物(木炭や灯油)を使った局所還元が必要になります。電気窯で挑戦する場合は、サヤに入れて炭を一緒に焼く方法が一般的です。
日本陶磁器産業振興協会 - やきものの基礎知識
還元焼成の基本的な仕組みと温度管理について、より詳しい技術情報が記載されています。
辰砂釉に使う銅は炭酸銅が最も一般的ですが、酸化銅でも調合可能です。
炭酸銅(CuCO3)は粒子が細かく釉薬に均一に混ざりやすいため、ムラのない発色が期待できます。一方、酸化銅(CuO)は炭酸銅より銅の含有率が高いため、配合量を0.7~1.5%程度に減らす必要があります。同じ重量で比較すると、酸化銅の方が約1.5倍強い発色になると考えてください。
銅の純度も発色に影響を与えます。工業用の炭酸銅には不純物が含まれることがあり、それが意図しない色味を生むこともあります。
厳しいところですね。
陶芸用に精製された炭酸銅を使えば、より安定した結果が得られます。
銅以外の着色成分との組み合わせも検討できます。
ただし複数の金属を混ぜると発色の予測が難しくなるため、まずは銅単体での調合をマスターしてからの応用をおすすめします。
市販の辰砂釉を使う選択肢もあります。初めて辰砂釉に挑戦する場合、市販品で発色の感覚をつかんでから自己調合に進む方が失敗が少なくなります。市販品の成分表示を参考に、自分なりの配合を考えるのも良い学習方法です。
辰砂釉の基礎釉には石灰系、長石系、灰釉系の3タイプがあり、それぞれ異なる赤色を生み出します。
石灰系基礎釉は最も安定した赤色が出やすく、初心者向けです。石灰石を15~25%含む配合で、マットな質感の赤色が特徴ですね。温度範囲も比較的広く、1230~1270℃で良好な結果が得られます。
長石系基礎釉は透明感のある鮮やかな赤色を生みますが、焼成温度の管理がシビアです。1250~1280℃の狭い範囲で最良の発色となり、5℃違うだけで色味が変わることもあります。ガラス質の光沢が美しく、上級者に好まれる配合です。
灰釉系は伝統的な配合で、藁灰や木灰を使った基礎釉です。自然な風合いの赤色になり、窯変(色の変化)も楽しめます。ただし灰の成分は原料によって変動するため、安定した発色を求める場合は管理が難しいというデメリットがあります。
基礎釉の融点も重要な選択基準です。
| 基礎釉タイプ | 適正焼成温度 | 発色の特徴 | 難易度 |
|---|---|---|---|
| 石灰系 | 1230-1270℃ | マットな赤 | 易 |
| 長石系 | 1250-1280℃ | 透明な赤 | 難 |
| 灰釉系 | 1240-1270℃ | 自然な赤 | 中 |
それで大丈夫でしょうか?
基礎釉の選択では、自分の窯の特性と求める質感を考慮してください。電気窯で局所還元を行う場合は石灰系が扱いやすく、ガス窯で本格的な還元焼成ができるなら長石系に挑戦する価値があります。何度かテストを重ねて、自分の環境に最適な基礎釉を見つけることが成功への近道です。
辰砂釉でよくある失敗は、期待した赤色にならず緑色やグレーになるケースです。
緑色になる原因は、還元が不十分で銅が酸化銅のまま残っている状態です。どういうことでしょうか?辰砂の赤色は亜酸化銅(Cu2O)の発色で、酸化銅(CuO)は緑色を発色するんです。還元雰囲気が弱い、または還元の時間が短すぎると、銅が十分に還元されず緑色になります。
グレーや黒っぽくなる失敗は、銅の配合量が多すぎることが主な原因です。炭酸銅を3%以上入れると、過剰な銅が釉薬中で金属状態になり、黒ずんだ色になります。
意外ですね。
「濃い赤が欲しいから銅を増やそう」という考えが裏目に出るわけです。
ムラになる失敗の原因。
釉薬が剥がれる失敗もあります。これは基礎釉と素地の熱膨張率が合っていない場合に起こります。特に高温で焼成する辰砂釉では、冷却時の収縮差で釉薬が剥離しやすくなります。
素地との相性テストが必須です。
失敗を防ぐ対策として、テストピースの作成が効果的です。10cm四方程度の小さな板を複数用意し、以下の条件を変えてテストします。
これで16通りのパターンができます。各ピースに番号を振って記録を残せば、自分の窯で最良の条件が見つかります。時間はかかりますが、本番での失敗を大幅に減らせる投資です。
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