色盛りの絵具は「厚く塗るほど美しい」は間違いで、厚すぎると焼成後に剥がれて作品が台無しになります。
陶磁器の世界に「盛り(もり)」という言葉を耳にしたとき、最初は何のことかよくわからないという方も多いでしょう。色盛りとは、上絵付け(うわえつけ)技法のひとつで、本焼きを終えた陶磁器の表面に、盛り絵具(もりえのぐ)と呼ばれる専用の絵具を使い、表面をぷっくりと盛り上がらせながら色をのせる装飾技法を指します。平面的な絵付けとは根本的に違い、触れると凹凸が感じられるほどの立体感が生まれる点が最大の特徴です。
上絵付けとは、一度本焼きが完了した素地の釉薬面に絵付けをし、700〜800℃前後の低温で再焼成して絵具を定着させる技法です。つまり色盛りは「低温で焼き付ける上絵付け技法の中で、特に立体的な盛り上がりをつくる方法」と理解するとわかりやすいですね。
ポーセラーツ(白磁に上絵付けをするアート)の世界では、色盛りは作品に奥行きとアクセントをもたらす重要な技法として位置づけられています。ひとつの作品の中で平面的なデザインに色盛りをひとつ加えるだけで、作品の表情が大きく変わります。これは使えそうです。
上絵付けが一般的に700〜800℃で焼成されるのに対し、本焼きは1200〜1300℃という高温で行われます。この温度差があるからこそ、上絵付けではカラフルな色の絵具が使え、色盛りのような鮮やかな装飾が可能になるのです。下絵付けは高温のため使える顔料の種類が限られる一方、上絵付けは色の選択肢が豊富で表現の自由度が高い、というのが原則です。
参考:上絵付け技法の基礎と焼成温度について詳しく解説されています。
「色盛り」「金盛り」「白盛り」の3種は、陶磁器の上絵付けにおける「盛り」技法の代表です。それぞれ目的と使い方が異なるため、違いを整理しておくと技法の理解が一気に深まります。
まず色盛りは、着色された盛り絵具を使い、色と立体感の両方を同時に表現する技法です。ぷっくりした凸部分に色がのることで、平面絵付けとは異なる独特の輝きと存在感が生まれます。次に金盛りは、白盛りや泥漿(でいしょう)で立体的な下地をつくってから焼成し、その上に金液を塗り重ねて再焼成することで、金の浮き彫りのような仕上がりを得る技法です。金盛り材料は粉末タイプとペースト状タイプがあり、焼成後に金液を塗布する際は「盛り絵具の焼成温度より150℃前後低い温度」で焼くことが鉄則です。これだけは例外なく守る必要があります。
白盛りはその名の通り、白い盛り絵具で凸模様の下地をつくる技法で、単体でも使われますが、金盛りや色盛りの下地・アクセントとして組み合わせて使われることも多いです。オールドノリタケに代表される明治・大正期の高級陶磁器では、この白盛り・金盛り・色盛りを組み合わせた豪華な作品が多く残されています。
九谷焼の世界には、さらに「青粒(あおちぶ)」という技法もあります。白盛に色をつけた絵具を専用道具で一粒ずつ絞り出し、間隔や粒の大きさでデザインを変えていく非常に高度な技法です。熟練した職人でないと再現が難しく、まさに門外不出の技術とも言えます。色盛りと青粒はどちらも立体感を生む技法ですが、青粒が点の連続であるのに対し、色盛りはドット・ライン・面など形を自由に選べる、という点で表現の柔軟性が異なります。
参考:九谷焼の多彩な技法(金盛り・青粒・色絵細描など)が詳しくまとめられています。
色盛りをやってみたい、あるいは工程を理解したいという方のために、基本的な手順を整理しておきます。まずは前提として、色盛りは本焼き済みの釉薬面に施す「上絵付け」のひとつです。素焼き段階ではなく、すでに釉薬がかかって本焼きが終わった白磁や磁器の器に対して行う点が重要です。
手順は大きく以下の流れになります。
| 手順 | 作業内容 | ポイント |
|---|---|---|
| ①素地の準備 | 本焼き済みの白磁・陶磁器を用意する | 指の皮脂が残らないよう清潔な布で拭く |
| ②絵具の調整 | 盛り絵具をメジウム(油性)などで硬めに練る | 柔らかすぎると盛り上がりが出ない |
| ③盛り付け | 筆・鉄筆・一陳などで絵具を盛り上げるように置く | 厚すぎると焼成後に剥がれる原因になる |
| ④乾燥 | 指で触っても付かなくなるまで乾燥させる | 乾燥不足のまま焼成すると失敗のもとになる |
| ⑤焼成 | 電気窯で700〜800℃前後で焼き付ける | 400〜450℃までは窯の蓋を2〜3cm開けておく |
工程の中でとくに見落としがちなのが③と⑤です。盛り絵具は「ある程度の厚みがあると艶感が出る」というのは本当ですが、過剰に厚く盛ると焼成後に剥離するリスクが高まります。適切な厚みの感覚は実際に試し焼き(テストピースの作成)で身につけるのが一番の近道です。乾燥不足も失敗の大きな原因です。
また窯の温度管理に関しては、400〜450℃までの段階で蓋を少し開けておくことが推奨されています。絵具中の有機物が燃える際にガスが発生するため、酸素不足になると色が曇ったり定着不良になったりします。焼成温度の確認はその都度行うことが基本です。
参考:焼成時の金液・盛り絵具の管理と注意事項が専門的にまとめられています。
色盛りで最も失敗しやすいポイントは、焼成温度と色の組み合わせを理解していないことです。上絵付けの焼成温度は一般的に700〜800℃の範囲ですが、使用する色(顔料)によって適切な温度が異なります。この違いを知らないと、せっかくの色盛りが焦げたり、色が消えたりします。
なかでも赤系の色は高温が苦手な代表格です。790〜750℃程度の低めの温度で焼かないと、色が抜けて白っぽくなったり、逆に黒く焦げたりします。また薄く塗りすぎるとグレーに仕上がるケースもあるため、ある程度の厚みを意識して塗ることが大切です。厳しいところですね。
一方、還元磁器のように本焼きが1300℃以上で焼かれた釉薬を持つ素地の場合は、金液の焼成も800〜850℃が目安になります。つまり色盛りの適温は「素地の素材と釉薬の種類」によっても変わるため、使用する白磁の種類を事前に確認しておくことが重要です。
複数の色を組み合わせた色盛りを行う場合は、温度に敏感な色(赤・黄など)を後回しにして、耐熱性の高い色から順番に焼成回数を重ねる方法が有効です。同じ作品を複数回焼成する際は、毎回少しずつ温度を下げていくのが一般的な手順です。焼成回数と温度の管理が条件です。
参考:焼成温度によって発色が変わるポーセラーツ用絵具の特性が実例つきで解説されています。
焼成前後でこんなに変わる!ポーセラーツ用転写紙の色味|Art Studio MORICO
色盛りという技法は、現代のポーセラーツ教室でも人気がありますが、その歴史的ルーツは明治〜大正期の日本陶磁器産業にあります。特にオールドノリタケ(1890年代〜1940年代頃に製造されたノリタケの輸出向け陶磁器)は、盛り上げ技法・金盛り・色盛り・エナメル盛りを組み合わせた豪華な装飾で欧米を魅了しました。
当時の職人技は「MORIAGE(盛り上げ)」として欧米でも知られており、ロンドンやニューヨークのアンティーク市場でいまも高値がつくほどです。金点盛り(ビーディング)と呼ばれる連続した点飾の技法は1890年代〜1910年代に多用され、現在でも専門コレクターが世界中にいます。これだけ長い歴史を持つ技法だということですね。
九谷焼においても、色盛りに通じる「デコ盛り」という技法が発展しています。白盛りにさまざまな色をつけて派手に仕上げるこの技法は、主に置物や花器に多く使われ、九谷焼特有の鮮やかな色彩(九谷五彩:赤・緑・黄・紫・紺青)と組み合わさることで、ほかの産地にはない独特の存在感を放っています。
有田焼の世界でも上絵付けによる色彩装飾は非常に盛んで、730〜830℃前後の低温焼成によって使える顔料の種類が増え、鮮やかな多色表現が可能になっています。これが有田焼や九谷焼が「色絵磁器」として世界に誇る理由のひとつでもあります。色盛りという技法は、こうした色絵文化の流れの中に確かに位置づけられています。
参考:オールドノリタケの盛り上げ・金盛りなど各技法の解説と歴史的背景がまとめられています。
色盛りに興味を持ったら、まずどんな道具が必要かを知ることが最初の一歩です。揃えるものは意外とシンプルで、最低限以下のアイテムがあれば始められます。
電気窯は価格が数万円〜数十万円と幅が広く、自宅で購入するのは初心者にはハードルが高いのが現実です。ポーセラーツ教室や陶芸教室の体験レッスンから始めて、技法を身につけてから自分の環境を整えるのが、失敗を最小限にできる現実的な手順です。つまり最初は教室から始めるのが基本です。
一陳はもともと江戸時代に京友禅・加賀友禅の染糊線を引くために使われた道具で、これを陶磁器の絵付けに応用したのが九谷・瀬戸・多治見などの産地でした。現在はスポイド式にアレンジされたものが市販されており、陶芸用品専門店やオンラインショップで入手可能です。
参考:陶芸.comでは盛り絵具・チューブタイプの上絵具など制作道具を幅広く取り扱っています。
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