玉作りで最初に土をこねると、ひび割れしやすくなります。
玉作り(たまづくり)は、ろくろを使わずに粘土を手で成形する陶芸技法の一つです。紐状に伸ばした粘土を螺旋状に積み上げていく方法で、英語では「coil building(コイルビルディング)」と呼ばれています。
この技法は約1万年前の縄文時代から使われていた最も古い陶器製作方法です。当時の土器の多くは玉作りで作られており、火焔型土器のような複雑な装飾も、この技法があったからこそ実現できました。
つまり日本陶芸の原点です。
現代でも多くの陶芸家が玉作りを採用しています。
理由は自由度の高さにあります。
ろくろでは作れない角ばった形や、大きな作品、左右非対称のデザインも思いのままに作れるためです。
初心者にとっても取り組みやすい技法といえます。ろくろは回転速度や力加減に慣れるまで時間がかかりますが、玉作りは自分のペースでゆっくり成形できるからです。
これは使えそうです。
玉作りを始めるために必要な道具は、驚くほど少なくて済みます。最低限揃えるべきものは、粘土板(約30cm四方の板)、のし棒(直径3cm程度の棒)、切り糸(ワイヤーやテグス)、霧吹き、スポンジ、竹べら、そして陶芸用粘土です。
粘土は1kg単位で購入でき、価格は500円から1,000円程度が相場です。初心者には信楽土や赤土がおすすめで、これらは扱いやすく、焼成後の色味も美しく仕上がります。粘土1kgあれば、お茶碗なら2個、マグカップなら1個程度作れます。
作業スペースは畳1畳分(約1.6平方メートル)あれば十分です。キッチンテーブルでも制作可能なため、自宅で気軽に始められます。
これが基本です。
追加であると便利な道具としては、木製のコテ(粘土の表面を整える)、かきべら(模様を彫る)、弓状の削り器があります。
ただし最初はなくても問題ありません。
粘土の保管には注意が必要です。乾燥を防ぐため、使わない粘土はビニール袋に入れ、さらに密閉容器で保管します。適切に管理すれば3ヶ月以上使えますが、放置すると1週間でカチカチに固まってしまいます。
玉作りの制作手順は大きく5つのステップに分かれます。正しい順序で進めることが、失敗を防ぐ最大のポイントです。
ステップ1:土練り
粘土内の空気を抜き、硬さを均一にする作業です。菊練りという技法が一般的ですが、初心者は荒練りから始めましょう。粘土を手のひらで押し潰し、折りたたむ動作を50回程度繰り返します。
空気が残っていると焼成時に破裂する危険があります。土練りは面倒な作業ですが、省略すると8割以上の確率で失敗します。
厳しいところですね。
ステップ2:紐作り
練った粘土を手のひらで転がして、太さ1~1.5cm、長さ30~40cmの紐状に伸ばします。
太さは均一に保つことが重要です。
太い部分と細い部分があると、積み上げたときにバランスが崩れます。
紐の本数は作りたい作品のサイズで変わりますが、お茶碗サイズなら10本程度必要です。作業中に乾燥しないよう、使わない紐は濡れタオルで覆っておきましょう。
ステップ3:底作り
平らな粘土板から円形の底を切り出します。直径は完成品の底のサイズより5mm程度大きめにカットします。
乾燥時に収縮するためです。
底の厚みは5~7mm程度が目安です。3mm以下だと割れやすく、1cm以上だと重くなりすぎます。
つまり5~7mmです。
ステップ4:積み上げ
底の縁に紐を一周巻きつけます。接合部分は指でしっかり押さえてなじませます。この作業が不十分だと、接合面から剥がれてしまいます。
2段目以降も同様に積み上げていきますが、内側と外側の両方から指でなじませることがコツです。
片側だけだと強度が不足します。
5~6段積み上げたら、竹べらで内側と外側をなめらかに整えます。
形を広げたいときは紐を外側に少しずらして積み、狭めたいときは内側にずらします。この調整で、お椀型や壺型など様々な形が作れます。
ステップ5:仕上げ
全体の形が整ったら、スポンジで表面を水で湿らせながらなめらかにします。
指紋や凹凸を丁寧に消していく作業です。
縁の部分は特に丁寧に仕上げます。飲み口になる部分がガサガサだと、使用時に不快だからです。
竹べらや指でしっかり整えましょう。
玉作りでよくある失敗は、大きく分けて3つのパターンに集約されます。それぞれの原因と対策を理解すれば、失敗率は大幅に下がります。
ひび割れの原因と対策
最も多い失敗がひび割れです。乾燥中または焼成中に作品が割れてしまう現象で、原因は主に3つあります。
1つ目は乾燥速度が速すぎること。特に冬場の暖房の近くや夏場の直射日光下では、表面だけが急激に乾いて内部との収縮差でひびが入ります。対策として、作品にビニール袋をかぶせて2~3日かけてゆっくり乾燥させます。
2つ目は粘土の水分量のバラツキです。底と側面で硬さが違うと、乾燥時の収縮率が異なりひびが発生します。制作中はこまめに霧吹きで水分を補い、全体を同じ硬さに保ちます。
3つ目は接合不足。紐と紐の接合が甘いと、その部分から割れます。積み上げる際は、必ず内側と外側の両方からしっかり押さえることが原則です。
形が崩れるトラブル
積み上げている途中で形が歪んだり倒れたりする失敗もよくあります。原因は粘土が柔らかすぎること、または一度に積み上げすぎることです。
粘土の硬さは耳たぶくらいが理想です。
それより柔らかいと自重で崩れます。
硬すぎる場合は水を少量加えて調整し、柔らかすぎる場合は30分ほど放置して水分を飛ばします。
一度に10段以上積み上げると、下の部分が重みに耐えられず潰れます。対策として、5~6段積んだら30分程度休憩を入れ、粘土をやや硬めにしてから続きを積みます。
これだけ覚えておけばOKです。
厚みの不均一
底や側面の厚みがバラバラだと、焼成時に歪みや割れの原因になります。厚い部分と薄い部分で乾燥・収縮の速度が違うためです。
側面の厚みは5~8mmに統一するのが理想です。定期的に指で触って確認し、厚すぎる部分は削り器で削ります。
底の厚みも同様に5~7mmを保ちます。
プロの陶芸家は、作品を持ち上げたときの重さで厚みの均一性を判断します。練習すれば感覚で分かるようになりますが、初心者は定規で測りながら作業することをおすすめします。
せっかく作った作品を長く使うためには、焼成後の扱い方と日常的なメンテナンスが重要です。多くの人が見落としているポイントを紹介します。
初回使用前の目止め処理
焼成したばかりの陶器は、表面に細かい穴が無数に開いています。この状態で使うと、汚れや臭いが染み込みやすくなります。
目止めという処理をすることで、穴を塞ぎ汚れを防げます。方法は簡単で、米のとぎ汁または小麦粉を溶かした水に器を入れ、弱火で20分煮沸するだけです。
冷めたら水洗いして完了します。
この処理をするかしないかで、器の寿命が2倍以上変わります。
面倒でも初回は必ず実施しましょう。
これは必須です。
使用後の洗い方
陶器は磁器と違い吸水性があるため、洗い方にも注意が必要です。使用後はなるべく早く洗い、長時間水に浸けっぱなしにしないことがポイントです。
食洗機の使用は避けましょう。高温と強力な洗剤で釉薬が劣化し、ひび割れの原因になります。
手洗いが基本です。
油汚れがひどい場合は、お湯で洗う前にキッチンペーパーで拭き取ります。いきなり洗剤をつけると、油が器に染み込んでしまいます。
保管方法
洗った後は完全に乾燥させてから収納します。湿ったまま重ねると、カビが生えたり変色したりします。
自然乾燥で2時間程度が目安です。
重ねて収納する場合は、器と器の間にキッチンペーパーや布を挟みます。直接重ねると、接触部分に傷がつき、そこから割れやすくなります。
長期間使わない場合でも、月に1回は取り出して空気に触れさせます。
密閉状態が続くとカビの原因になるためです。
これが条件です。
ひび割れの応急処置
万が一ひびが入っても、小さいひびなら修復可能です。陶器用の接着剤(エポキシ系)を使えば、実用レベルまで強度を回復できます。
ただし食品を直接触れる部分の修復は、安全性の観点から避けるべきです。花瓶やオブジェなど、観賞用としての利用に限定しましょう。
ひびを放置すると徐々に広がり、最終的には割れてしまいます。発見したらすぐに対処することが、作品を救う唯一の方法です。
玉作りの技術を効率的に向上させるには、目的を持った練習が欠かせません。ただ作品を作るだけでなく、特定のスキルに焦点を当てた練習メニューを取り入れることで、上達速度が大きく変わります。
紐の太さを揃える練習
均一な太さの紐を作れるかどうかが、作品のクオリティを左右します。目標は、30cmの紐の太さの誤差を2mm以内に抑えることです。
練習方法は、粘土を転がす際に両手にかける力を均等にすることを意識します。片手に力が入ると、紐が曲がったり太さがバラバラになったりします。
最初は定規で測りながら練習し、徐々に感覚で判断できるようになることを目指しましょう。プロは目視だけで1mm単位の違いを見分けます。
意外ですね。
積み上げスピードの向上
作業が遅いと、先に積んだ部分が乾燥して接合しにくくなります。お茶碗1個を30分以内で積み上げられるようになることが、一つの目標です。
スピードアップのコツは、紐をあらかじめ必要な本数だけ作っておくことです。積み上げ途中で紐作りに戻ると、作業中の部分が乾燥してしまいます。
また、接合作業を丁寧かつ迅速に行う技術も重要です。指の動かし方を工夫し、1周を10秒程度でなじませられるよう練習します。
形のコントロール練習
思い通りの形を作れるようになるには、紐の配置と積み上げ角度の関係を体で覚える必要があります。練習として、球形、円柱形、逆台形の3つの基本形を繰り返し作りましょう。
球形は紐を徐々に外側にずらし、中間点から内側にずらす技術が必要です。円柱形は垂直に積み上げるバランス感覚を養います。
逆台形は口を広げる技術の基礎になります。
各形を5個ずつ作れば、形のコントロール感覚がかなり身につきます。同じ形を繰り返すことで、再現性も高まります。
結論は反復練習です。
独自のアレンジ技術
基本をマスターしたら、オリジナリティを加える練習に移ります。表面に模様を彫る、色のついた化粧土を塗る、異なる色の粘土を組み合わせるなど、表現の幅は無限です。
特に象嵌(ぞうがん)という技法は、玉作りと相性が良くおすすめです。器の表面に溝を彫り、そこに別の色の粘土を埋め込んで模様を作る技法で、焼成後も美しい柄が残ります。
陶芸教室や公民館の講座に参加すると、こうした応用技術を学べます。独学では気づかないコツを教えてもらえるため、月1回程度の受講でも上達速度が変わります。
NHK文化センターの陶芸講座では、全国各地で玉作りの基礎から応用まで学べる講座が開催されています。