手前から奥に押し出す切り方はダメ
切り糸は、粘土の固まりをきれいに切断したり、轆轤で成形した器を台座から切り離したりするための陶芸専用の道具です。
「シッピキ」とも呼ばれます。
参考)https://www.kairyudo.co.jp/contents/05_kyoiku/togei-koza/12.pdf
粘土は粘性が強いため、手やナイフでは容易に切れません。切り糸を使うことで、粘土の内部構造を壊さず、滑らかな切断面を得られます。
これは作品の仕上がりに直接影響するんです。
轆轤作業では、成形した器を台座から切り離す最終工程で切り糸が活躍します。切り離しの精度が悪いと、器の底が歪んだり、乾燥時にひび割れが発生したりするリスクがあります。つまり切り糸は作品の成否を左右する重要な道具ということですね。
切り糸には主に3つの素材があります。それぞれ特徴が異なるため、作業内容に合わせて選ぶことが大切です。
切り糸の素材別特徴
| 素材 | 特徴 | 適した用途 |
|---|---|---|
| たこ糸 | 柔らかく扱いやすい、初心者向け | 一般的な器の切り離し、練習用 |
| 釣り糸(テグス) | 細く鋭い切れ味、滑らか | 繊細な作品、薄手の器の切り離し |
| 針金・ワイヤー | 硬く強度が高い、耐久性抜群 | 大きな粘土塊の切断、頻繁な使用 |
初心者の方は、まずたこ糸から始めるのがおすすめです。柔らかく手に馴染みやすいため、力加減を覚えやすいんです。
釣り糸は切れ味が鋭く、薄手の器を切り離す際に底面をきれいに仕上げられます。ただし細いため、力を入れすぎると指に食い込んで痛いので注意が必要です。手袋を使うか、糸の両端に持ち手を付けると安全に作業できます。
針金やワイヤーは、大量の粘土を切断する際や、教室などで頻繁に使う場合に向いています。耐久性が高いため、糸が切れる心配がありません。これは長期的なコスト削減にもつながりますね。
切り糸を効果的に使うには、正しい持ち方と適切な張り具合が重要です。これを間違えると、切断面が汚くなったり、作品を傷つけたりします。
基本的な持ち方は、両手の人差し指に糸を巻き付け、適度に張った状態を保つことです。糸の長さは30cm程度(A4用紙の短辺くらい)が作業しやすい長さです。
張り具合は、軽く引っ張って少したわむ程度が理想的です。強く張りすぎると糸が切れやすく、緩すぎると粘土をきれいに切断できません。どういうことでしょうか?
適切な張り具合を見極めるには、糸を軽く弾いてみて、低い音が鳴る程度を目安にします。高い音が鳴るほど張っていると、糸への負担が大きすぎます。逆に音が鳴らないほど緩いと、切断時に粘土に糸が埋もれてしまうんです。
作業中は常に同じテンションを保つことを意識してください。一定の力で引くことで、均一な切断面が得られます。
これが基本です。
轆轤で成形した器を切り離す際、切り糸を入れる方向とタイミングには複数の方法があります。日本式と韓国式では、糸の入れ方が正反対なんです。
参考)https://ameblo.jp/gtr9885/entry-12780887307.html
日本で一般的な方法は、奥(先)に切り糸を張って轆轤を回転させ、糸が交差した瞬間に左手を水平に引く方式です。この方法では、糸切痕が渦巻き状の流れた形になります。
意外と上手くできます。
一方、韓国の伝統的な方法は、手前から奥に向かって糸を押し出すように切る方式です。この方法だと糸切痕の模様が異なり、直線的な切り口になります。
切り離しのタイミングは、成形後すぐではなく、粘土の表面が少し乾いて指で触っても形が崩れない程度になってからです。完全に乾く前、つまり「生乾き」の状態が最適です。このタイミングなら、切り糸がスムーズに入り、器の底が歪みにくいんです。
奥から手前に引く日本式は、初心者でも糸の交差点が見えやすく、タイミングを掴みやすいというメリットがあります。一方、手前から奥に押す韓国式は、慣れれば素早く切り離せますが、力加減が難しく段差ができやすいという注意点があります。
自分のやりやすい方法を選んで練習すれば大丈夫です。
切り糸を使う際、初心者がよく陥る失敗パターンがいくつかあります。これらを知っておくことで、無駄な失敗を避けられます。
よくある失敗と対策
切り離した後の器の底面をチェックする習慣をつけると、自分の癖がわかります。渦巻きの形が均等でない場合、糸を引く速度が一定でない証拠です。
これは使えそうです。
失敗を防ぐために、まずは不要な粘土で練習することをおすすめします。100円ショップの粘土でも切り糸の練習はできますし、感覚を掴んでから本番の作品に取り組めば、失敗によるストレスを減らせます。
本格的に陶芸を続けるなら、切り糸の専用ホルダーを導入するのも一つの手です。Amazonや陶芸用品店で1,000円程度から購入でき、糸の張り具合を一定に保てるため、安定した切り離し作業ができるようになります。
開隆堂の陶芸講座PDFには、切り糸の基本的な使い方が図解付きで解説されています。初心者向けの詳しい情報が欲しい方は参考にしてください。
陶芸では切り糸以外にも、粘土を切断する道具や方法があります。それぞれの特徴を理解して、状況に応じて使い分けることが重要です。
粘土切断方法の比較
| 方法 | メリット | デメリット | 適した場面 |
|---|---|---|---|
| 切り糸 | 滑らかな切断面、轆轤作業に最適 | 厚い粘土塊は切りにくい | 轆轤での器の切り離し |
| ワイヤーカッター | まっすぐ切れる、大きな粘土塊に強い | 持ち運びに不便、場所を取る | 大量の粘土の分割 |
| 陶芸用ナイフ | 細かい調整可能、削り作業にも使える | 切断面が粗くなりがち | 細部の修正、装飾 |
| テグス付き弓 | 両手で安定して切れる、力が入りやすい | 準備が必要、繊細な作業には不向き | 大きな粘土板の切断 |
切り糸は轆轤作業では最適ですが、大きな粘土塊を縦に切断する場合はワイヤーカッターの方が効率的です。ワイヤーカッターは、陶芸教室などで備え付けられていることが多く、20kg以上の粘土を切り分ける際に重宝します。
陶芸用ナイフは切り糸では対応できない細かい修正作業に向いています。ただし、粘土は粘性が強いため、ナイフでは滑らかな切断面を得にくいという弱点があります。仕上げの段階で切り糸と併用すると良いですね。
状況に応じて道具を使い分けることで、作業効率が大幅に向上します。初心者のうちは切り糸一本で十分ですが、本格的に陶芸を続けるなら、複数の道具を揃えることをおすすめします。陶芸用品の専門店では、切り糸とナイフのセットが3,000円程度で購入できるため、まとめて揃えるとコストパフォーマンスが良いです。