樂焼とは何か作り方特徴歴史を解説

樂焼は茶の湯のために生まれた日本独自の陶芸技法です。手びねりで成形し低温で焼成する特殊な製法が、茶碗に独特の温かみを生み出します。あなたも樂焼の魅力を知りたくありませんか?

樂焼とは何か作り方特徴

樂焼の初心者は釉薬を厚く塗りがちですが、実は1mm以下の薄塗りが失敗を防ぐ鉄則です。


この記事の要点
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樂焼は茶の湯専用の焼き物

400年以上前に千利休と初代長次郎が茶碗のために生み出した技法で、手びねり成形と低温焼成が特徴です

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800~1000℃の低温焼成

一般的な陶器より300℃以上低い温度で焼くため、釉薬の調合と窯出しのタイミングが成功の鍵になります

ろくろを使わない手びねり成形

粘土を手で押し広げながら形作るため、作品一つ一つに作り手の個性が現れ、温かみのある質感が生まれます

樂焼とは茶の湯のために生まれた焼き物


樂焼は安土桃山時代に千利休の指導のもと、初代長次郎が創始した陶芸技法です。茶の湯の精神である「わび・さび」を表現するために生み出されました。


一般的な陶磁器が轆轤ろくろ)を使って成形するのに対し、樂焼は手びねりという技法で一つずつ丁寧に形を作ります。これは大量生産ではなく、一碗一碗に心を込めるという茶道の思想と深く結びついています。


樂焼の最大の特徴は低温焼成です。通常の陶器が1200℃前後で焼かれるのに対し、樂焼は800~1000℃程度で焼成されます。東京スカイツリーの高さが634mですから、その温度差は約スカイツリー1本分に相当する大きな違いですね。


この低温焼成により、土の柔らかさと釉薬の独特な発色が生まれます。特に黒樂赤樂と呼ばれる2種類が代表的で、黒樂は鉄分を多く含む釉薬で深い黒色に、赤樂は聚楽土という京都特有の土を使った赤褐色の仕上がりになります。


樂焼は現在も京都の樂家が伝統を守り続けており、15代目まで続く家系として知られています。樂家以外の作家が作る樂焼風の作品は「樂焼」とは呼ばず「楽焼」と表記することで区別されるのが慣例です。


樂焼は茶碗以外にも香合や花入などの茶道具に応用されますが、基本的には抹茶を飲むための茶碗として発展してきました。茶の湯のために特化した焼き物ということですね。


樂焼の作り方は手びねりと低温焼成が基本

樂焼の製作工程は、土の準備から始まります。聚楽土という京都特有の粘土を使うのが伝統的ですが、現在では各地の土をブレンドして使う作家も増えています。


粘土は十分に練り上げて空気を抜く必要があります。空気が残っていると焼成時に破裂する原因になるため、菊練りという技法で最低50回は練り返します。


これは一般的な陶芸と同じ工程です。


成形は手びねりで行います。粘土の塊から親指で中心を押し広げ、両手で挟みながら少しずつ壁を立ち上げていきます。轆轤を使わないため、左右非対称な形になることも多く、それが樂焼独特の味わいとなります。


形ができたら十分に乾燥させます。急激に乾燥させると割れの原因になるため、ビニールをかけて3~7日ほどかけてゆっくり乾かします。完全に乾燥したら素焼きを800℃前後で行います。


素焼き後に釉薬を施します。黒樂の場合は鉄分を多く含む釉薬を、赤樂の場合は透明釉を使います。釉薬の厚さは0.5~1mm程度が適切で、厚すぎると焼成時に流れ落ちてしまいます。


薄塗りが基本です。


本焼きは800~1000℃で行いますが、樂焼最大の特徴は「引き出し」という技法にあります。窯の中で釉薬が溶けたタイミングを見計らって、火箸で茶碗を取り出し、水や空気で急冷します。


この急冷により釉薬表面に細かいひび貫入)が入り、独特の質感が生まれます。また、還元焼成という酸素を少なくした状態で焼くことで、黒樂の深い黒色が発色します。


酸素が多いと赤褐色になるということですね。


引き出しのタイミングは経験と勘が必要で、数秒の差が作品の出来を左右します。プロの陶芸家でも失敗することがあるほど難しい工程です。


樂焼の特徴は軽さと保温性の高さ

樂焼の茶碗を持つと、まず驚くのがその軽さです。一般的な磁器の茶碗が200~300g程度なのに対し、樂焼の茶碗は100~150g程度しかありません。


これはスマートフォン1台分ほどの重さです。


この軽さは低温焼成によって生まれます。高温で焼くと土の粒子が緻密に結合してガラス質化し重くなりますが、樂焼は土の中に細かい気泡が残るため軽量なのです。


気泡が残ることは保温性の高さにもつながります。空気の層が断熱材の役割を果たし、熱いお茶を入れても手に持ちやすく、お茶の温度も冷めにくいという利点があります。


これは茶の湯で重要な要素です。


樂焼の表面は滑らかではなく、ザラッとした質感があります。これは釉薬が薄く、土の質感が残っているためです。この手触りが「わび・さび」の美意識と合致し、茶人に愛されてきました。


色彩は黒樂と赤樂が基本ですが、現代作家は様々な色を試みています。銅を使った緑色、コバルトを使った青色など、伝統を守りながらも新しい表現を追求する動きがあります。


樂焼は吸水性が高いという特徴もあります。低温焼成のため土が完全に焼き締まっておらず、使い込むうちにお茶の成分が染み込んで色が変化します。これを「茶碗が育つ」と表現し、使い手との関係性が深まる要素として評価されます。


ただし、吸水性が高いということは汚れやカビも付きやすいということです。使用後は必ず乾燥させ、定期的に煮沸消毒することが長持ちさせるコツになります。


洗剤を使う際は中性洗剤を選んでください。


樂焼の茶碗で抹茶を飲むと、土の温もりと釉薬の柔らかい質感が手のひらに伝わり、茶の湯の精神性をより深く感じられます。


いいことですね。


樂焼の歴史は千利休と長次郎から始まった

樂焼の歴史は1580年代、安土桃山時代に遡ります。千利休が理想とする茶碗を実現するため、瓦職人だった長次郎に製作を依頼したことが始まりです。


長次郎はもともと瓦を焼く技術を持っていましたが、利休の指導のもと茶碗専用の技法を確立しました。瓦焼きの低温焼成技術が樂焼の基礎となったわけです。


豊臣秀吉は長次郎の茶碗を高く評価し、「樂」の印章を与えました。


これが樂焼の名前の由来です。


樂という字は「楽しむ」という意味だけでなく、「安楽」「平和」という意味も込められています。


初代長次郎の作品は現在も数十点が現存しており、国宝や重要文化財に指定されているものもあります。特に「大黒」という黒樂茶碗は樂焼の最高傑作の一つとされ、東京国立博物館に収蔵されています。


2代目常慶、3代道入(のんこう)と続く中で、樂焼の技法は洗練されていきました。特に3代道入は「のんこう茶碗」として独自の作風を確立し、樂家の中でも特に高く評価されています。


江戸時代を通じて樂家は茶道の発展とともに繁栄しましたが、明治維新後は茶道文化の衰退により一時期困難な時代を迎えました。しかし樂家は伝統を守り続け、現在15代目まで続いています。


15代吉左衞門(当代)は伝統技法を守りながらも、現代アートとしての新しい表現にも挑戦しており、国内外で高い評価を受けています。2020年には京都に樂美術館が開館し、歴代の作品を常設展示しています。


樂美術館公式サイト
樂焼の歴史や歴代作品の詳細、展覧会情報が掲載されています。


樂焼は日本の陶芸の中でも特に茶道と密接に結びついた技法として、400年以上の歴史を持ちます。伝統が今も受け継がれているということですね。


樂焼体験は陶芸教室で初心者でも挑戦可能

樂焼に興味を持った方は、専門の陶芸教室で体験することができます。東京や京都、大阪などの都市部には樂焼専門のコースを持つ教室が複数あります。


初心者向けの体験コースでは、1回2~3時間で手びねりによる茶碗製作を体験できます。料金は3000~5000円程度が相場で、材料費と焼成費が含まれます。


完成品は後日受け取る形式が一般的です。


本格的に学びたい方には、月謝制の定期コースがあります。月4回で8000~15000円程度が相場で、基礎から応用まで段階的に技術を習得できます。樂焼は轆轤を使わないため、陶芸初心者でも比較的取り組みやすい技法です。


教室選びのポイントは、樂焼専用の窯があるかどうかです。樂焼は一般的な電気窯ガス窯とは異なる特殊な窯を使うため、設備が整った教室を選ぶ必要があります。


事前に確認してください。


京都では樂美術館に隣接する場所で、樂家直系の指導を受けられる特別講座が開催されることもあります。これは抽選制で倍率が高いですが、本格的な樂焼を学べる貴重な機会です。


自宅で樂焼を行うのは設備的に困難ですが、七輪を使った簡易的な樂焼体験キットも販売されています。本格的な作品は作れませんが、樂焼の原理を理解するには有効な方法です。


樂焼を学ぶことで、茶道の精神性や日本の美意識への理解も深まります。単なる陶芸技術だけでなく、文化的な背景まで含めて学べるのが樂焼の魅力です。


これは使えそうです。


体験教室に参加する前に、樂焼の基礎知識を書籍やウェブサイトで予習しておくと、より充実した体験になります。特に手びねりの基本動作を動画で確認しておくとスムーズです。




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