幾何学文とは何か 陶芸での意味・歴史・技法を解説

幾何学文は陶芸装飾で古くから使われる文様です。縄文時代から現代まで、どう変化し、どんな技法で描かれるのでしょうか。陶芸に興味があるあなたに、その魅力を紐解いてみませんか?

幾何学文の意味と歴史

実は昔の陶芸では装飾が少ないほど高級品だったんです。


この記事のポイント
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幾何学文の基礎

円・三角・直線などの図形を組み合わせた規則的な文様で、縄文時代から現代まで受け継がれている

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陶芸での応用

象嵌・呉須筆書き・掻き落としなど多彩な技法で表現でき、線の密度で印象が大きく変わる

独自表現のコツ

完璧な左右対称より「適当な間隔」が織部焼らしさを生み、現代では意外な組み合わせが魅力に

幾何学文とは何を指すのか


幾何学文とは、円・三角・四角・直線・曲線といった基本的な図形を規則的に組み合わせた装飾文様のことです 。陶芸の世界では、こうした文様が縄文時代から現代まで連綿と使われ続けています。


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自然界の植物や動物を描く具象的な文様とは対照的に、幾何学文は抽象的で数学的な美しさが特徴です 。例えば、縦縞・横縞・格子・市松・斜格子・点文・丸文・三角文などが代表的なパターンとして挙げられます 。線の太さや間隔を変えるだけで、シンプルにも複雑にも見せられるのが魅力ですね。


参考)幾何学模様 - Wikipedia


幾何学文は器の形態との相性も良く、特に幾何学的な形の器には幾何学的にパターン化された装飾を施す方が全体の調和が取れると考えられています 。これは全体と末端が相似形を示すフラクタル理論にも通じる考え方です。


参考)https://geidai.repo.nii.ac.jp/record/274/files/hakubi373.pdf


幾何学文の歴史的変遷

日本における幾何学文の歴史は縄文時代にまで遡ります 。縄文中期の土器には火焔式土器のように炎の形に装飾された派手な幾何学文が見られますが、時代が下るとシンプルな形態が好まれるようになりました 。縄文中期以降、幾何学文様は洗練化され、弥生時代になる頃にはスマートな印象を持つものに進化していったのです 。


参考)【日本の文化】文様の歴史|発光大王堂ブログ -


弥生時代の土器はろくろを使い窯で焼き上げられ、装飾は少なく表面はなめらかで機能的になりました 。しかし、青銅の儀式用の鐘である銅鐸には幾何学模様で飾られ、家畜や日常生活の場面が描写されていました 。実用と装飾が分離していったということですね。


参考)なぜ土偶はあんなスタイルに? 縄文・弥生・古墳時代の美術


桃山時代になると、織部焼で幾何学文が大胆に復活します 。太めの縦縞や細縞、よろけ縞、斜格子文、丸や三角などの幾何学文が、適当な間隔で自由に描かれるのが特徴です 。完璧な左右対称ではなく、「適当な間隔」こそが織部焼らしさを生み出しています。


参考)http://avantdoublier.blogspot.com/2020/10/blog-post.html


織部焼の幾何学文様の特徴について、具体的な作品例と文様の種類が詳しく解説されています

幾何学文が陶芸で使われる理由

幾何学文が陶芸で長く愛用される理由は、技法との相性の良さにあります。はっきりとした線を描くことのできる象嵌技法では、幾何学文様が最も効果的に表現できるのです 。線の密度によって印象が変わり、可能性の広がる文様だと評価されています 。


参考)https://naruto.repo.nii.ac.jp/record/29601/files/20847031.pdf


また、幾何学文は下書きがしやすいという実用的なメリットもあります 。市松模様などの幾何学デザインは、円の分割をしっかり下書きしておくと、呉須の筆書きがしやすくなります 。初心者でも比較的取り組みやすい文様ということですね。


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さらに、幾何学形態の器には幾何学的な装飾が形態的に妥当性を持つという美学的な理由もあります 。全体の調和が取れ、統一感のある作品に仕上がるため、現代陶芸でも幾何学文は頻繁に用いられているのです。器の機能性を保ちながら装飾できるのが基本です。


陶芸における幾何学文の主な技法

陶芸で幾何学文を表現する技法には、いくつかの代表的な方法があります。まず象嵌技法は、素地に文様を彫り込み、そこに異なる色の化粧土を埋め込む方法です 。はっきりとした線が描けるため、幾何学文に最適とされています。


次に呉須筆書きは、染付けとも呼ばれ、青色の顔料で直接筆で描く技法です 。市松模様のような幾何学デザインは、円の分割を下書きしておくことで美しく仕上がります 。


筆のタッチが残るのが魅力ですね。



掻き落とし技法は、釉薬や化粧土を塗った後、その一部を掻き落として文様を作る方法です 。織部焼では、白窓に銹絵で幾何学文様を描き、鉄釉の部分に同系統の文様を掻き落としで描くことで、ネガとポジを並べたような効果を生み出しています 。


視覚的な面白さが際立ちます。



ゴム液を使ったマスキング技法もあります 。黒釉を掛けた上にゴム液を使って絵筆で幾何学文様を施し、マスキングする手法です 。焼成後にゴム液を剥がすと、文様の部分だけが素地の色になります。
参考)鉄釉紅彩幾何文鉢(黒井 博史)|ギャラリージャパン


幾何学文で失敗しないコツ

幾何学文を描く際、最も多い失敗は線の密度や間隔の不均一です。線の密度によって印象が大きく変わるため、最初に全体の配置を下書きで決めておくことが重要です 。特に円の分割や格子の間隔は、定規やコンパスを使って正確に測るとミスが減ります。


成形段階での失敗も注意が必要です。タタラやひも作りで幾何学形の向付を作る場合、接合部の圧着が不十分だとひび割れの原因になります 。紐づくりや板づくりの接合部はしっかり圧着し、底と側面の境目を丁寧になじませましょう 。5〜7mm程度の均一な厚みを保つのがコツです。


参考)302 Found


焼成時のリスクも考慮すべきです。薪窯の作品は毎回が実験で、失敗作も出ると陶芸家は語ります 。器とモチーフをしっかりくっつけたつもりでも、翌日来てみたら割れていることもあるのです 。複雑な幾何学文を施した作品ほど、乾燥と焼成の管理に気を配る必要があります。


参考)「見るための器」|すべての人に向けられた、ユーモラスのかたち…


記録を取る習慣も失敗を減らします 。使用した土の種類、釉薬の種類、施釉方法、焼成条件などを記録すると、原因の特定がしやすくなります 。メモアプリで撮影と同時に記録すれば手間が省けますね。


現代陶芸での幾何学文の新しい表現

現代陶芸では、伝統的な幾何学文を独自の視点で再解釈する作家が増えています。例えば、絵画制作で培った表現のあり方を陶器の表面に応用する試みが見られます 。平面的な幾何学文様を立体的な器の表面でどう見せるかという実験的な取り組みです。


参考)https://www.artmuseums.go.jp/media/2024/06/20240626_kounyu_momak.pdf


素材の黒土を扁平な方形となるように指跡を残しながら紐づくりで立ち上げ、幾何学形態そのものを作品とする手法もあります 。装飾としての幾何学文ではなく、器の形態自体が幾何学的な美を追求しているのです。「傾き」や「曲がり」をテーマにしたシリーズもあり、幾何学の固定概念を崩す試みが行われています 。


デジタルツールの活用も進んでいます。Adobe ExpressやCanvaなどの無料デザインツールでは、幾何学模様のテンプレートや素材が豊富に用意されています 。これらを参考に下絵を作成し、陶芸作品に応用することで、より洗練されたデザインが可能になります 。数億点以上の画像やイラスト素材から幾何学模様を選べるのが便利です。


参考)幾何学模様のおしゃれなデザインアイデア40選と無料素材を紹介


色絵古九谷では、油彩を思わせる濃厚な配色と独特のデザイン様式が用いられ、幾何学文地に開光を配した作品が見られます 。堂々とした雄渾な力強さが感じられ、現代でも高く評価されています 。


伝統と革新が共存していますね。



参考)https://idemitsu-museum.or.jp/research/pdf/01.idemitsu-No27_2022.pdf


Adobe Expressの幾何学模様デザインのアイデアと無料素材の使い方が紹介されています

幾何学文を独自視点で楽しむアプローチ

幾何学文の魅力を最大限に引き出すには、従来の「完璧な対称性」という概念から離れてみるのも一つの手です。織部焼が示すように、太さも間隔も一定せずに自由に描いた幾何学文こそが、躍動感と独自性を生み出します 。点文が枠にはまらないのも織部焼らしさの一つです 。


異なる幾何学文様を同じ作品内で組み合わせる手法も注目されています。白窓にはそれぞれ異なる幾何学文様を描き、各窓の右側の鉄釉部分に同系統の文様を掻き落としで描くことで、片身替わりのような視覚効果が生まれます 。


ネガとポジの対比が面白いですね。



日常生活の中で幾何学文様を探してみるのも創作のヒントになります。銅鐸に描かれた家畜や日常生活の場面のように、幾何学文と具象的なモチーフを組み合わせるのも一つのアプローチです 。伝統的な文様を現代のライフスタイルに合わせて再解釈することで、新しい表現が生まれます。


実験的な制作を恐れないことも大切です。陶芸家が語るように、薪窯での焼成は毎回が実験で、失敗作も出ます 。しかし、その失敗から得られる学びこそが、独自の幾何学文表現につながるのです。記録を取りながら少しずつ調整していけば大丈夫です。


参考)益子焼 陶芸家 鈴木稔さん


益子焼の陶芸家による幾何学文様を使った実験的な制作の様子が紹介されています




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