タタラ成形作り方と陶芸初心者向け技法コツ

タタラ成形は陶芸初心者でも均一な厚みの作品が作れる技法ですが、実は乾燥管理を間違えると作品が割れてしまうことも。正しい作り方とコツを知っていますか?

タタラ成形作り方技法

タタラ成形では粘土を均一に伸ばせば失敗しないと思っていませんか?

この記事の3ポイント
📏
タタラ成形の基本技法

粘土板を使った均一な厚みの作り方と、初心者が押さえるべき3つのコツ

⚠️
乾燥管理の重要性

タタラ成形特有の割れやすさと、適切な乾燥スピードの調整方法

🎨
実践的な作品例

お皿や箱など初心者でも挑戦できる具体的な制作手順

タタラ成形とは何か


タタラ成形は、粘土を板状に薄く伸ばして成形する陶芸技法です。ろくろを使わずに均一な厚みの作品が作れるため、陶芸初心者でも取り組みやすい特徴があります。


この技法の名前は、日本古来の製鉄方法「たたら製鉄」に由来します。たたら製鉄では大きな炉床を使って鉄を作りましたが、その炉床の形が平らで広いことから、平らに伸ばした粘土板を「タタラ」と呼ぶようになったと言われています。


タタラ成形の最大の特徴は、作品の厚みをコントロールしやすいことです。粘土板と呼ばれる道具を両側に置き、その間で粘土を伸ばすことで、誰でも均一な厚みの粘土板を作れます。つまり、経験が浅くても安定した品質の作品が作れるということですね。


具体的には、5mm、7mm、10mmといった厚みの粘土板が一般的です。5mmは小皿やアクセサリー、7mmは中皿や小鉢、10mmは大皿や花器に適しています。この厚みの選択が、作品の強度と仕上がりを左右します。


タタラ成形は平面的な作品だけでなく、立体作品も制作できます。粘土板を曲げたり、複数の板を組み合わせたりすることで、箱や花器、オブジェなど多様な作品が可能です。


創造性を発揮できる技法です。


タタラ成形に必要な道具と材料

タタラ成形を始めるには、基本的な道具を揃える必要があります。必要な道具は大きく分けて5つのカテゴリーに分類できます。


まず粘土の準備道具として、以下が必要です。


  • めん棒(直径3~5cm、長さ30cm以上のもの)
  • 粘土板(たたら板):厚み5mm、7mm、10mmの3種類
  • 布またはキャンバス地(60cm × 60cm程度)
  • 霧吹き
  • ビニール袋またはラップ

粘土板は木製やプラスチック製があり、初心者には扱いやすいプラスチック製がおすすめです。価格は1枚300円~800円程度で、陶芸用品店やオンラインショップで購入できます。


次に成形・加工道具です。


  • カッター(粘土専用の糸カッターまたはワイヤー)
  • ヘラ(木ベラ、金ベラ各1本)
  • 竹串または針
  • スポンジ
  • 定規(30cm以上)

糸カッターは細いワイヤーの両端に持ち手が付いた道具で、粘土を真っ直ぐ切断できます。


価格は500円~1,500円程度です。


接着・仕上げ道具として、ドベ(粘土を水で溶いた接着剤)を入れる容器と筆が必要です。ドベは粘土板同士を接着する際に欠かせません。自分で作る場合は、使っている粘土と同じものを少量の水で溶いてクリーム状にします。


作業台と保管用品も重要です。作業台は平らで安定したもの(60cm × 60cm以上)を用意し、作品を乾燥させる際の板やラックも必要になります。


作業スペースは畳1畳分程度あれば十分です。


材料となる粘土は、初心者には信楽白土または赤土がおすすめです。これらは扱いやすく、タタラ成形に適した可塑性を持っています。1kgあたり300円~500円程度で、最初は5kg程度から始めるとよいでしょう。


初期投資として、道具一式で5,000円~10,000円程度を見込んでおくと安心です。陶芸教室によっては道具を貸し出しているところもあるため、まずは教室で体験してから道具を揃えるのも賢い選択です。


タタラ成形の基本的な作り方手順

タタラ成形の作業は、大きく7つのステップに分かれます。各ステップを丁寧に行うことが、美しい仕上がりにつながります。


ステップ1:粘土の準備
粘土を使いやすい硬さに調整します。購入したばかりの粘土は硬すぎることが多いため、手で200回程度練って空気を抜きながら柔らかくします。この作業を「菊練り」と呼び、粘土内の気泡を除去する重要な工程です。気泡が残ると焼成時に破裂する原因になります。


適切な硬さは、耳たぶと同じくらいの柔らかさです。


ステップ2:粘土板の設置と粘土の配置
作業台に布を敷き、両側に同じ厚みの粘土板を平行に置きます。粘土板の間隔は作りたい作品のサイズより5cm程度広くとります。準備した粘土を粘土板の間に置き、手で軽く押さえて平らにします。


粘土の量は、作品の大きさと厚みで決まります。例えば直径20cmの皿を7mm厚で作る場合、約500g~600gの粘土が必要です。


多めに用意しておくと安心ですね。


ステップ3:粘土を伸ばす
めん棒を粘土板の上に渡し、中央から外側に向かって均等に力を加えながら粘土を伸ばします。一方向だけでなく、90度回転させて縦横両方向から伸ばすと、均一な厚みになります。めん棒が粘土板の上を滑るようになれば、粘土が均一な厚みになった証拠です。


この作業では、粘土がめん棒や布に付着しないよう、必要に応じて霧吹きで軽く湿らせます。ただし水分が多すぎると粘土が柔らかくなりすぎるため注意が必要です。


ステップ4:型紙を使った切り出し
伸ばした粘土の上に型紙を置き、糸カッターまたはカッターで粘土を切り出します。定規を当てながら真っ直ぐ切ると、きれいな形になります。曲線を切る場合は、型紙に沿ってゆっくりと刃を動かします。


切り出した余分な粘土は、ビニール袋に入れて保管すれば再利用できます。


乾燥させないことが重要です。


ステップ5:成形
切り出した粘土板を、作品の形に合わせて成形します。平皿の場合は型に押し当て、箱の場合は側面を立ち上げます。この際、接合部分にドベを塗ることで強度が増します。


ドベを塗った後、軽く押さえて密着させます。


成形時の粘土の硬さは重要です。柔らかすぎると形が崩れ、硬すぎるとひび割れます。少し乾燥させて、指で押すと跡が付く程度の硬さが理想的です。


ステップ6:表面の仕上げ
スポンジを使って表面を滑らかにします。水を含ませたスポンジで優しく撫でるように表面を整えると、焼成後の仕上がりが美しくなります。


エッジ部分は特に丁寧に仕上げます。


角が鋭すぎると焼成時に欠けやすいためです。


装飾を施す場合は、この段階で行います。スタンプを押したり、模様を彫ったりする作業は、粘土が「革の硬さ」と呼ばれる半乾燥状態のときが最適です。


ステップ7:乾燥
成形した作品をゆっくりと乾燥させます。急激な乾燥は割れの原因になるため、ビニール袋で覆うか、ラップをかけて湿度を保ちながら3日~1週間かけて乾燥させます。完全に乾燥したら、素焼き釉薬掛け、本焼きと進みます。


乾燥期間は作品の大きさと厚み、季節によって変わります。夏場は乾燥が早く、冬場は遅くなる傾向があります。


タタラ成形初心者が押さえるべきコツ

タタラ成形で失敗しないためには、3つのポイントを理解することが重要です。多くの初心者が同じ失敗を経験するため、事前に知っておくと効率的に上達できます。


コツ1:粘土の硬さを段階的にコントロールする
タタラ成形では、作業の段階ごとに適切な硬さがあります。粘土を伸ばす段階では耳たぶくらいの柔らかさ、成形段階では少し硬め、接着段階では革の硬さが理想的です。


この硬さの見極めが、作品の成否を分けます。


具体的な判断方法として、指で押したときの感触で判断します。耳たぶの硬さは指で押すとすぐに跡が付き、革の硬さは押してもわずかな跡しか付きません。


この中間の硬さが成形に適しています。


硬さの調整には時間管理が重要です。粘土を伸ばした後、5分~10分程度放置すると表面が乾燥して成形しやすい硬さになります。逆に柔らかくしたい場合は、霧吹きで水分を加えてビニール袋で包み、30分程度置きます。


コツ2:接着部分の処理を丁寧に行う
タタラ成形で立体作品を作る際、最も割れやすいのが接着部分です。ドベだけでなく、「スコアリング」という技法を使うと強度が大幅に上がります。


スコアリングは、接着する面に針や竹串で斜めの線を入れる処理です。格子状に5mm間隔で傷を付け、その上にドベを塗ってから接着します。この処理により、接着面積が増えて強度が3倍程度向上すると言われています。


接着後は、接合部の内側と外側の両方から指で押さえて密着させます。内側の接合部に細い粘土紐を貼り付けて補強すると、さらに強度が増します。この補強材は見えない部分なので、形が不揃いでも問題ありません。


コツ3:乾燥管理で割れを防ぐ
タタラ成形で最も注意が必要なのが乾燥管理です。特に接合部分や角の部分は乾燥が早く、本体との乾燥速度の差で割れが発生します。乾燥による割れは、作品完成の直前に起こることが多く、非常に残念な結果になります。


効果的な乾燥方法は、作品全体を新聞紙で包み、その上からビニール袋をかぶせることです。1日に1回、新聞紙を外して作品の状態を確認し、乾燥が早い部分に霧吹きで水分を補給します。この作業を3日~5日続けることで、均一な乾燥が実現します。


特に注意が必要な場所は、底と側面の接合部、持ち手の付け根、蓋と本体の接触面です。これらの部分は他より薄く湿らせた布を当てて、乾燥速度を調整します。手間はかかりますが、この作業が割れを防ぐ最も確実な方法です。


季節による調整も重要です。夏場は乾燥が早いため、ビニール袋の密閉度を上げて湿度を保ちます。冬場は乾燥が遅いため、やや通気性を持たせて調整します。湿度計を使って、作品周辺の湿度を60%~70%に保つのが理想的です。


タタラ成形で作れる作品例と制作のポイント

タタラ成形の技法を使えば、様々な作品を制作できます。初心者から中級者まで段階的に挑戦できる作品例を、具体的な制作のポイントとともに紹介します。


平皿(難易度:初級)
最も取り組みやすい作品が平皿です。直径15cm~20cmの皿なら、7mm厚のタタラで十分な強度が得られます。制作時間は成形まで約30分、乾燥から焼成まで含めると2週間程度です。


制作のポイントは、型を使うことです。石膏型や既存の皿を型として使い、その上にタタラを載せて形を作ります。縁の部分は指で軽く押さえてカーブを付けると、より使いやすい皿になります。底に高台を付ける場合は、粘土紐を輪状にして接着します。


平皿のバリエーションとして、楕円形や四角形、六角形など様々な形が可能です。型紙を作る際に、縁から内側に3cm程度の余裕を持たせると、焼成時の収縮を考慮した適切なサイズになります。


小箱(難易度:初中級)
正方形や長方形の小箱は、タタラ成形の立体作品として人気があります。10cm角の箱なら、5mm~7mm厚のタタラが適しています。


制作時間は成形まで約1時間です。


制作のポイントは、各面を正確に切り出すことです。定規で測りながら、底面1枚、側面4枚を切り出します。側面の高さは底面より2mm低くすると、蓋を載せたときの収まりが良くなります。接着は前述のスコアリングとドベを使い、内側から粘土紐で補強します。


蓋を作る場合は、本体よりも1mm~2mm大きめに作ります。


焼成時の収縮を考慮した設計です。


蓋の縁に小さな粘土の突起を付けると、ずれ防止になります。


マグカップ(難易度:中級)
円筒形の本体に持ち手を付けるマグカップは、やや難易度が上がります。7mm~10mm厚のタタラを使い、制作時間は成形まで約1.5時間です。


制作のポイントは、円筒の接合部を確実に接着することです。側面用のタタラを細長く切り出し、円形の底板に立てて接着します。接合部は内側と外側の両方から丁寧に処理し、特に内側は飲み物が漏れないよう念入りに仕上げます。


持ち手は別途作り、本体が革の硬さになってから接着します。持ち手の太さは直径1.5cm~2cm程度が持ちやすく、本体との接着面は平らに削って密着面積を増やします。持ち手の位置は、マグカップの重心を考慮して決めます。


花器・一輪挿し(難易度:中級)
高さのある花器や一輪挿しは、タタラ成形の応用作品です。10mm厚のタタラを使い、底を小さく口を広げた形状が安定します。


制作時間は成形まで約2時間です。


制作のポイントは、側面に角度を付けることです。台形状に切り出したタタラを組み合わせることで、すぼまった形や広がった形を作れます。角度は15度~30度程度が一般的で、急な角度ほど難易度が上がります。


底には水抜き穴を開けず、釉薬をかけて水が漏れないようにします。高さが15cm以上になる場合は、途中で補強用の粘土を内側に貼り付けると、強度が向上します。


独自視点:タタラ成形とテクスチャー表現
タタラ成形ならではの表現として、テクスチャー(表面の質感)を活かした作品作りがあります。粘土を伸ばす段階で、布の下にレースや葉っぱ、木の板などを置くと、その模様が粘土に転写されます。


この技法は「型押し」と呼ばれ、タタラ成形の平面性を活かした装飾方法です。転写された模様は焼成後も残り、独特の風合いを生み出します。特にレースの模様は人気が高く、アクセサリートレイや壁掛け作品に使われます。


型押しを行う際は、粘土を伸ばす前に布の下に模様の元になるものを置きます。めん棒で圧力をかけながら伸ばすことで、模様が深く転写されます。転写の深さは、めん棒の圧力と粘土の柔らかさで調整できます。深すぎると強度が落ちるため、0.5mm~1mm程度の深さが適切です。


また、タタラを重ねる技法もあります。異なる色の粘土でタタラを作り、部分的に重ねて切り出すと、断面に模様が現れます。この技法は「象嵌」に近い表現で、幾何学模様やグラデーション効果を生み出せます。色粘土は市販のものを使うか、酸化金属を混ぜて自作します。


テクスチャー表現は、タタラ成形の基本技術に少しの工夫を加えるだけで実現できます。オリジナリティのある作品を作りたい方には、ぜひ挑戦してほしい技法ですね。




粘土のべ棒 太大 450×40mmΦ 米ヒバ材