造岩鉱物用途と加工方法|種類と特徴|産業利用

造岩鉱物は地殻を構成する主要な鉱物で、セラミックス、ガラス、建材など幅広い産業分野で利用されています。石英や長石、雲母などの種類と特徴、それぞれの加工技術と用途について詳しく解説します。あなたの身近にある造岩鉱物の活用法をご存知ですか?

造岩鉱物用途と加工方法

造岩鉱物の基本と活用
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6つの主要造岩鉱物

長石、石英、角閃石、雲母、輝石、カンラン石が岩石の主成分を構成

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多様な産業利用

ガラス、セラミックス、建材、電子部品など幅広い分野で活用

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高度な加工技術

粉砕、分級、溶融、焼成などの工程で目的に応じた製品を製造

造岩鉱物の種類と分類体系

 

造岩鉱物は、地球の地殻を構成する岩石の主要な構成要素であり、火成岩を調べると石英・斜長石・カリ長石雲母類・角閃石類・輝石類・かんらん石などの限られた種類の鉱物で構成されていることがわかります。世界には約4000種類の鉱物が存在しますが、岩石を構成する造岩鉱物として頻繁に産出するものは約50種類程度に限られ、主要造岩鉱物として6種類が特に重要な役割を果たしています。

 

参考)https://www.istone.org/major-intro.html

造岩鉱物は大きく有色鉱物無色鉱物の2つのグループに分けられます。有色鉱物にはカンラン石、輝石、角閃石、黒雲母が含まれ、これらはマグネシウム(Mg)や鉄(Fe)成分が高く、相対的にSiO2成分が少ない特徴を持ちます。一方、無色鉱物には石英と長石類が含まれ、珪酸(SiO2)とアルミニウム(Al)を多く含み、一般に無色から白っぽい外観を示します。

 

参考)https://nh.kanagawa-museum.jp/kenkyu/epacs/museum2/b02.htm

花崗岩を例に取ると、その鉱物組成は石英、斜長石、カリ長石、黒雲母で体積の99%以上を占めることがあり、世の中の岩石が非常に単純な鉱物の組み合わせで構成されていることが理解できます。これらの鉱物は固溶体というしくみにより、ある幅を持った化学組成を持つことができるため、複雑な化学組成を単純な鉱物組成で実現しているのです。

 

参考)http://www.h-hagiya.com/es/zougan1.htm

造岩鉱物の産業用途と利用分野

造岩鉱物は現代の産業において極めて重要な原料として利用されており、特に長石と石英は代表的な造岩鉱物であると同時に幅広い用途を持つ重要な工業原料です。長石はガラス産業の原料として総消費量の約50~60%を占めており、セラミック産業では30%が使用され、残りは化学薬品、研磨剤、グラスファイバー、溶接電極などの産業分野で活用されています。

 

参考)http://ja.huatemagnets.com/news/feldspar-essential-rock-forming-mineral-and-its-industrial-applications/

石英は板ガラス、ガラス製品、ガラス繊維、陶磁器、鋳物砂のほか、フェロシリコンやメタリックシリコンなどの工業原料として利用されています。長石もガラス、セメント、陶磁器、タイル建材などの製造に不可欠な原料となっており、特にカリウムまたはナトリウムが豊富な長石はセラミック、エナメル、ガラス、研磨材など多様な産業分野で使用されています。

 

参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/rpsj1986/33/2/33_2_114/_pdf

雲母は電気絶縁性が高いため、電子部品や断熱材として利用されており、日常生活においても食器や皿、建物の外壁、道路の舗装材などに加工されて私たちの身近な場所で活躍しています。石灰岩は主に方解石という造岩鉱物から構成されており、セメント原料として年間約7,900万トン(全出荷量の47%)が使用されるほか、粉末にした炭酸カルシウムは岩絵の具の胡粉、ベビーパウダー、チョーク、歯磨き粉、化粧品原料、食品添加物、入浴剤などに幅広く利用されています。

 

参考)【造岩鉱物とは】鉱物の基本と博物館で学べる最新情報まとめ|鉱…

造岩鉱物の加工技術と製造工程

造岩鉱物の加工は主に粉砕、分級、溶融、焼成などの工程を経て目的の製品に仕上げられます。粉砕工程では、ボールミルやハンマーミルを用いて原料鉱物を微細な粉末にし、続いて分級工程でサイクロンや気流分級機を活用して粒径を調整します。鉱石や岩石を任意の大きさに砕く粉砕操作では、凝集粒子の解砕、数種類の粉体の混合・分散、粒子の表面積増大などが行われます。

 

参考)鉱物系粉体の加工とは?特徴・プロセス・メリットを解説

分級では重力(粒子の落下速度や落下位置の違い)、慣性力(流体中の慣性力を利用)、遠心力(流体の旋回を利用)などの原理を利用し、粉砕を施した粉体を粒子径・密度・形状などによって区分けします。鉱石処理では鋼球、ロッド、小石などの粉砕媒体を使用して鉱石を希望のサイズに粉砕し、浮選という分離プロセスでは様々な鉱物の物理化学的表面特性の違いを利用して貴重な鉱物粒子を選択的に分離します。

 

参考)技術情報|技術情報|宇治電化学工業株式会社

ガラスやセラミックスの製造においては、造岩鉱物を高温で溶融し、結晶化させることで高付加価値な製品を作製します。結晶化ガラスの作製方法には、型に入れた粗目状ガラス片を焼成しガラス表面から核形成と結晶析出させる表面結晶化と、ガラスを塊のまま熱処理しガラス中に均一に結晶核を形成し結晶を析出成長させる体積結晶化の2通りがあり、体積結晶化で作製したものは均一かつ緻密で強度が高くなる傾向があります。

 

参考)https://www.newglass.jp/mag/TITL/maghtml/80-pdf/+80-p009.pdf

造岩鉱物の薄片作製と観察方法

造岩鉱物の同定と研究において、岩石薄片の作製と偏光顕微鏡による観察は不可欠な技術です。薄片とは岩石などの固体試料を透過光で観察できるまでに薄くしたもので、通常は試料をスライドグラスに貼付けて余剰分を研削することで30μm程度の厚さに調製されます。この薄片を2枚の偏光板を用いた偏光顕微鏡で透過観察することにより、鉱物の種類や量比、結晶構造を調べることができます。

 

参考)https://www.tech.nagoya-u.ac.jp/archive/h27/Vol11/hon_secur/P8_s.pdf

薄片作製の工程は、まず岩石カッターを用いて岩石試料から目的とする試料範囲を含んだ岩片(チップ/およそ幅3cm×奥行2cm×厚1cm程度)を切り出します。次にチップの一面を研磨盤で平滑に研磨し、スライドグラスにカナダバルサム等の接着剤を用いて貼り付け、チップを除去した後、試料厚が70μm程度になるまで研磨盤や研磨機器等により研磨します。最終的に手擦りでアルミナ粉#1000→#2000→#3000により仕上げ、仕上がりの厚さは30μmを基準とします。

偏光顕微鏡による観察では、鉱物の形態や色、劈開、多色性、消光角などの光学的性質から鉱物の種類を判定できます。例えばカンラン石は無色透明ですが鉱物の周囲が風化して茶色になっていることが多く、クロスで観察すると鮮やかなピンク色~青に偏光するのが特徴的です。角閃石は124度で交わる2方向の劈開を観察でき、長柱状をしていることが多く、黄色から青色を呈し劈開が斜めに向いた時に消光(斜消光)します。黒雲母はオープンで回転させると劈開が横になった時に褐色の濃い色、縦になった時に淡い色へと変化する多色性が観察できます。

造岩鉱物を活用した結晶化ガラスの開発

造岩鉱物を利用した結晶化ガラスは、建材として高い強度と耐久性を持つ新しい材料として注目されています。結晶化ガラスの作製にはCaO-Al2O3-SiO2系の組成が基本となり、ウォラストナイトやアノーサイトの結晶がガラス中に析出することを想定して調合、溶融が行われます。原料には、ガラス相および結晶相の形成主要三成分であるケイ砂(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、石灰石(CaCO3)、融剤にソーダ灰(Na2CO3)、結晶核形成剤には鉄(Fe)粉末、無水ぼう硫(Na2SO4)、グラファイト(C)などが使用されます。

御影石廃石を利用した結晶化ガラスの製造では、廃石のブロックにサーマルショックを与えて脆くし、約500μm以下に粉砕します。ガラスバッチは廃石微粉末に対して石灰石、ソーダ灰、無水ぼう硫、グラファイト、亜鉛華をそれぞれ調合し、CaO-Al2O3-SiO2系平衡状態図上のウォラストナイト結晶析出領域を参考にして石灰分などを調整します。最適化された熱処理条件で処理した結果、主結晶はウォラストナイトであり、結晶がガラス全体に均一に絡み合って析出し、天然石と比べ高強度で耐候性に優れた材料となります。

石炭灰などの無機系廃棄物を高温状態で均一に溶融、ガラス化し、人工的に結晶化させることで、一層強度などの特性が向上した高付加価値な結晶化ガラスを作製できます。この結晶化ガラスは建材として建築物の内外壁材に利用でき、従来物のコンクリート、モルタル、陶磁器タイル、装飾ガラス、天然石(御影石、大理石)と比較して強度、耐久性、加工性、コスト面、装飾性で劣らないことが期待できます。玄武岩やはんれい岩などの造岩鉱物を含む岩石から製造されたガラスセラミックスは、優れた機械的特性を持ち、弾性率や一軸圧縮強度が高く、建築材料として有望な素材となっています。

 

参考)Document Moved

造岩鉱物と持続可能な資源利用

造岩鉱物の利用は、環境負荷の低減と資源の有効活用という観点からも重要な意味を持っています。鉱山廃石や産業廃棄物を原料とした結晶化ガラスやセラミックス製品の開発は、廃棄物の削減と新たな付加価値の創出を同時に実現する循環型社会の構築に貢献しています。御影石廃石を原料の60%に有効利用した結晶化ガラスの製造例では、膨大な量の廃石に新たな用途を提供し、資源の有効活用を実現しました。

鉱業廃棄物を道路建設材料として利用する研究も進められており、尾鉱、スラッジ、残渣などの大量の廃棄物を舗装材料や骨材として活用することで、天然資源の保全と環境影響の低減という2つの利点が得られます。石灰岩は国内で年間約1億4千万トン生産され、そのうち約21%(3千5百万トン)がコンクリート用骨材、約5%(760万トン)が道路用骨材として使われており、石灰石砕石はアルカリ骨材反応の心配がないため今後の需要増大が期待されています。

 

参考)https://www.limestone.gr.jp/introduction/

カオリナイト族鉱物は水と造岩鉱物(長石、雲母類等)および火山灰などの無定形物質から形成され、その隠蔽性を利用したガラスファイバー用原料や製紙用のフィラーとして利用されています。セラミックスやガラスなどの珪酸塩工業製品の化学分析によると珪酸(SiO2)やアルミノ珪酸がほとんどを占めることから、造岩鉱物が現代の材料産業の基盤を支えていることがわかります。このように造岩鉱物は地球科学的な重要性だけでなく、持続可能な社会の実現に向けた産業原料としても不可欠な存在となっているのです。

 

参考)https://www.pref.aichi.jp/touji/about-aito/pdf/1984aitou_06_hujikado.pdf

石灰石鉱業協会 - 石灰石の用途と生産方法に関する詳細情報
造岩鉱物の基礎知識 - 主要な造岩鉱物の種類と特徴
鉱物系粉体の加工技術 - 粉砕・分級工程の詳細解説

 

 


偏光顕微鏡―-その使用法と造岩鉱物の判別法- (1969年)