劈開とは、鉱物が特定の方向に沿って平面的に割れやすい性質のことです。鉱物を構成する原子の配列(結晶構造)において、原子同士の結合力が弱い部分に沿って割れる現象で、割れた面を劈開面といいます。
参考)鉱物の劈開(へきかい):結晶の隠れた「割れ目」の科学
劈開は鉱物の内部構造を反映した性質であり、結晶の原子配列が規則正しいため、同じ鉱物であれば常に同じ方向に割れます。例えば方解石は何度割っても菱面体の形になり、雲母は紙のように薄く剥がれていきます。
参考)劈開(へきかい)ってどういう意味?
この性質は鉱物の同定において重要な手がかりとなるだけでなく、宝石加工や工業材料としての利用にも深く関わっています。劈開面は比較的平滑で光沢があり、劈開以外の方向に割れた面(断口)は凹凸が多く不規則です。
劈開の完全性は、その平滑さによって主に4段階に分類されます。
参考)へき開 - Wikipedia
きわめて完全な劈開は、ほぼ完全な平面で割れ、劈開以外の方向に割ることが極めて困難です。代表例として方鉛鉱、方解石、滑石、雲母類などがあり、これらは劈開面が鏡のように滑らかで光を反射します。
完全な劈開は、やや完全な平面で割れますが、わずかな凹凸を伴います。ダイヤモンド、閃亜鉛鉱、蛍石、トパーズ、角閃石類、長石類の(001)面などがこの分類に含まれます。
明瞭な劈開は、明らかに平面性が認められますが、断口や不規則な面を伴います。硫砒鉄鉱、灰重石、普通輝石などが該当し、劈開面はありますが多少のざらつきがあります。
不明瞭な劈開は、かなり凹凸がありますが、かろうじて平面性が認められる程度です。黄銅鉱、ルチル、石英などがこれに該当し、以前は劈開がないとされていましたが、実際には不明瞭ながら劈開が存在します。
参考)劈開(へきかい)とは
劈開の方向数は、鉱物の結晶構造によって決まります。
参考)宝石の特徴:劈開(へきかい)について - Orbray MA…
1方向劈開を持つ鉱物は、板状に薄く剥がれるように割れます。石墨、輝水鉛鉱、雲母類、緑泥石、滑石、魚眼石などがこのタイプで、雲母は本のページのようにペラペラと剥がれます。白雲母では桃色で示されるカリウム原子の配列している部分が結合力が弱く、そこに沿って薄く剥がれます。
2方向劈開を持つ鉱物は、柱状に割れるのが特徴です。長石類、輝石類、角閃石類などが該当し、2つの劈開面が交差する角度は鉱物によって異なります。輝石は約90度(正確には87-93度)で交わり断面がほぼ正方形になるのに対し、角閃石は約60度(正確には54-58度または56-124度)で交わり断面がひし形になります。
参考)https://www.s-yamaga.jp/nanimono/chikyu/kobutsu-04.htm
3方向劈開を持つ鉱物は、立体状(六面体)に割れます。方鉛鉱や岩塩は90度で交差する立方劈開を持ち完全な立方体に割れますが、方解石は75度と105度で交差する菱面体劈開を持ち歪んだ立方体状になります。
4方向劈開(八面体劈開)を持つ鉱物は、三角形の面がある八面体に割れます。ダイヤモンドと蛍石がこのパターンを示し、例は比較的少ないです。
6方向劈開(十二面体劈開)を持つ鉱物は、閃亜鉛鉱とそれに類似した原子配列を持つ鉱物以外にはほとんど知られていません。12面体に割れますが、その形は分かりにくく、どこから見ても劈開面がまばゆくキラキラ反射して見えるのが特徴です。
劈開角度は鉱物ごとに決まっており、鉱物の識別において極めて重要な指標となります。
参考)http://www5b.biglobe.ne.jp/~ueta/hakuhen/opt_obspoints.html
方鉛鉱は六面体方向にジャングルジム状に鉛原子と硫黄原子が無限に連なり、その方向に沿って割れやすいため、常に90度の劈開角度を持つ立方体に割れます。方解石は異なる原子配列を持ち、劈開角度は常に75度です。興味深いことに、方解石と同じ原子配列を持つマグネサイト(カルシウム原子の代わりにマグネシウム原子が入った同形の鉱物)の劈開角度は73度で、同形の鉱物同士では劈開角度が極めて近いため区別しにくいです。
輝石と角閃石の区別は地質学で最も重要な劈開角度の応用例です。輝石は劈開角度が93度(補角87度)前後で断面がほぼ正方形になり、結晶形は短くずんぐりした形をしています。一方、角閃石は劈開角度が124度(補角56度)前後で断面がひし形または楔形になり、結晶形は細長い柱状です。
肉眼での観察では、c軸(長軸)に直交する断面で見ると、角閃石では約60度(54-58度)、輝石では約90度(87-88度)で2方向の劈開が交わります。この性質は薄片観察だけでなく肉眼鑑定でも有効で、野外での鉱物識別に役立ちます。
参考)雑記帳 - 角閃石
閃亜鉛鉱の劈開角度は120度(補角60度)で、6方向劈開の特徴的な例です。長石類では結晶方位による2種類の異なる劈開があり、(001)面には完全な劈開、(010)面には明瞭な劈開があって、その平滑さが異なります。
劈開は宝石加工において両刃の剣となる性質です。
参考)宝石の「劈開(へきかい)」とは?硬いダイヤモンドがカットでき…
ダイヤモンドの加工では、劈開性を巧みに利用します。ダイヤモンドは地球上で最も硬い物質(モース硬度10)ですが、八面体方向には完全な劈開があります。1908年、史上最大の3,106カラットのカリナンダイヤモンドを劈開させる際、職人のジョセフ・アッシャーは最初の一撃で道具を折ってしまいましたが、4日後の再挑戦で見事に成功し、現在イギリス王室の宝石となっている530カラットの「アフリカの星」を含む9つの宝石が生まれました。原石を切り出すときには鉄製のナイフを利用する劈開加工と呼ばれる原始的な方法も用いられます。
参考)世界一硬いといわれる『ダイヤモンド』はどうやって加工されるの…
雲母の工業利用は多岐にわたります。完全な底面劈開により極薄シートに加工できる特性を活かし、半田ごて等の電気絶縁体として利用されています。雲母を誘電体(電荷をためる物質)に利用した電子部品のコンデンサは「マイカコンデンサ」と呼ばれます。
参考)雲母(うんも)の様々な用途
耐熱性も優れており、発熱物のニクロム線を絶縁材である雲母で挟み込み、工業・業務用ヒーターとして使用されます。穴あけ・切りかけ加工なども可能なため、アイロン・ポット・コーヒーメーカーなどの家庭電化製品にも多く使用されます。加熱物に直接接触させるため、熱効率が良く昇温速度が早いのが特長です。
ガラスが高価だった中世ロシアでは、雲母の薄片を「モスクワガラス」として窓に使っていました。大きな雲母結晶から切り出した透明な板は、熱に強く割れにくいため、船のランタンや極寒地の建物に最適でした。
**黒鉛(石墨)**も1方向劈開を持ち、鉛筆では劈開により層が紙に転写されます。また層間の滑りやすさを利用して潤滑剤として使用され、るつぼやブレーキライニングにも使われます。
近年では、自動車や建築物等の塗料の材料の一部として雲母が使われることがあり、二酸化チタンをコーティングした雲母はパール塗料や絵具の金属色として使われます。化粧品、製紙やプラスチック製造時に混ぜる填料、金属加工用の切削油など、その用途は拡大し続けています。
<参考リンク>
鉱物の劈開について詳しい解説と写真が掲載されています。
鉱物の劈開(へきかい):結晶の隠れた「割れ目」の科学
倉敷市自然史博物館による鉱物の割れ方の詳細な分類表が参考になります。
劈開と断口は、鉱物の割れ方を理解する上で対照的な概念です。
劈開は原子配列に沿った規則的な割れ方であり、劈開面は比較的平滑で光沢があります。一方、断口は劈開以外の方向に割れた面で、非常に凹凸しており不規則です。方解石が劈開に沿って割れると菱面体になりますが、劈開以外の方向で割ると粗く不規則な断口面になります。
断口にもいくつかのタイプがあり、貝殻状断口は石英に見られる特徴的な形状です。まるで貝殻の内側のような滑らかな曲面を持ち、同心円状の模様が現れます。この断口は劈開がない、または劈開が不明瞭な鉱物によく見られます。
多片状断口は雲母類に見られ、劈開面とは異なる不規則な破片状の割れ方をします。針状断口は金属結晶の破断面に見られ、いわゆる「金属疲労」で割れた面です。
石英は不明瞭な劈開を持ちますが、主に貝殻状断口で知られています。ガーネットは劈開を持たず、すべての方向で結合が均等に強いため、ランダムに割れて断口を示します。
劈開がない鉱物は「割れない」という意味ではなく、特定方向への優先的な割れやすさがないということです。例えば翡翠は表面に傷がつきやすいものの、劈開が弱く靭性は一級なので、カービング(彫刻)を施すこともできます。
緻密な多結晶集合体の塊(例:緻密な方解石の石灰岩、緻密な石英の碧玉・めのう)が不規則に割れる破断面は、原子配列とは無関係な割れ方なので断口とはいいません。結晶内部の不完全性に起因する平面的な割れ方は裂開と呼ばれ、劈開とは区別されます。
裂開は結晶の双晶境界・離溶境界のひずみによる脆弱性や、結晶成長時に生じた微細な包有物(不純物)の平面的配列などに起因します。方解石の裂開は(0 1 -1 2)の集片双晶の双晶面に沿って起こります。

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