融剤とは何か製鉄製錬での役割と種類を解説

融剤は製鉄や製錬で不純物を除去し金属を抽出するための重要な物質です。石灰石や蛍石などさまざまな種類があり、それぞれ異なる役割を果たします。あなたは融剤の仕組みと使い方を理解していますか?

融剤の基礎知識と製錬における重要性

融剤が果たす3つの重要な役割
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融点降下作用

鉱石や不純物の融解温度を下げ、効率的な製錬を実現します

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不純物除去機能

鉱石中の有害成分と結合しスラグとして分離します

金属純度向上

高品質な金属を得るために必要不可欠な精錬補助剤です

融剤は製鉄や金属製錬において不可欠な物質で、鉱石から金属を取り出す際に添加される補助材料です。主な役割は鉱石中の不純物と化学反応を起こしてスラグ(鉱滓)を形成し、目的の金属と分離しやすくすることにあります。製鉄プロセスでは、鉄鉱石に含まれるケイ酸などの不純物を除去するために融剤が使用され、これにより純度の高い鉄が得られます。

 

参考)融剤 - Wikipedia

融剤の歴史は古く、古代から金属製錬に利用されてきました。現代の製鉄所では、高炉に鉄鉱石やコークスと共に融剤を投入し、鉄原料中の不純物と化合させてスラグを生成します。このプロセスで融剤は造滓剤(ぞうさいざい)またはフラックスとも呼ばれ、製鉄の効率と品質を大きく左右する重要な役割を担っています。

 

参考)https://www.limestone.gr.jp/introduction/

融剤には融点を下げる効果もあり、単独では融解しにくい物質でも融剤を加えることで比較的低温で溶融させることができます。たとえばアルミニウムの電解製錬では、酸化アルミニウムの融点が非常に高いため、氷晶石を融剤として使用することで約800℃まで融解点を下げることが可能になります。

 

参考)https://lab-brains.as-1.co.jp/enjoy-learn/2025/10/79315/

融剤の製鉄プロセスにおける具体的な働き

 

製鉄プロセスにおいて、融剤は鉄鉱石中に含まれるシリカ(ケイ酸)などの不純物を除去する重要な機能を果たします。高炉では石灰石が融剤として使用され、ケイ酸と結合してケイ酸カルシウムを形成します。このケイ酸カルシウムは溶融状態で鉄と分離しやすく、スラグとして効率的に除去されます。

 

参考)電炉と高炉の基本的な違いを解説 - ホンテス工業

高炉内部では複雑な化学反応が進行しており、融剤の添加量や種類が製鉄の効率に直接影響します。鉄鉱石に含まれるシリカ、アルミナ、マグネシウム、カルシウムなどの酸化物は、一酸化炭素や水素による還元反応を受けながら溶融し、最終的に融剤と反応してスラグとなります。融剤はスラグの流動性を調整する役割もあり、適切な粘度にすることで金属とスラグの分離を促進します。

 

参考)http://fnorio.com/0056history_of_iron_manufacture1/history_of_iron_manufacture1.htm

転炉での製鋼プロセスでも融剤は重要です。酸化カルシウムを主成分とした融剤を添加することで、溶銑中のリンやケイ素などの不純物を除去し、高品質な鋼を製造できます。脱硫プロセスでは生石灰やソーダ灰などの融剤が使用され、液相の生成を促進して脱硫反応を効率化します。

 

参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/materia1962/19/10/19_10_724/_pdf/-char/ja

融剤の主要な種類と成分特性

融剤にはさまざまな種類があり、製錬する金属や除去したい不純物によって使い分けられます。最も一般的な融剤は石灰石(炭酸カルシウム)で、製鉄では高炉に投入されてケイ酸を除去する役割を果たします。石灰石は加熱により酸化カルシウムとなり、ケイ酸と反応してケイ酸カルシウムのスラグを生成します。

 

参考)試料分解法の紹介 融解法、加圧酸分解法、マイクロ波分解法|株…

蛍石フッ化カルシウム)は古くから使われている融剤で、ケイ素原子の結合を切断しケイ酸塩鉱物を溶融しやすくする効果があります。転炉での製鋼プロセスでは滓化促進剤として蛍石が添加されますが、環境規制により使用が制限されるようになりました。蛍石の代替として、ネフェリンなどの新しい融剤が開発されています。

 

参考)機械攪拌式溶銑脱硫における脱硫剤溶融性の影響

ホウ砂やホウ酸も重要な融剤です。ホウ砂は878℃で融解して無色透明のガラス状となり、多くの金属酸化物を融解する性質を持つため、金属製錬や溶接の融剤として広く使用されています。ホウ酸と炭酸ナトリウムの混合融剤は、中間の融点が使え、塩酸可溶性の融成物が得られるため作業性が良好です。

 

参考)ホウ砂 - Wikipedia

アルカリ性融剤には炭酸ナトリウムや水酸化ナトリウムがあり、けい酸塩や酸性酸化物の融解に用いられます。酸化性融剤としては過酸化ナトリウムや硝酸カリウムがあり、融点が低いためガスバーナーを熱源として使用できます。これらの融剤は分析化学の試料分解にも利用されています。

 

参考)https://www.jsac.or.jp/bunseki/pdf/bunseki2008/200802nyuumon.PDF

融剤の使い方と適切な温度管理

融剤を効果的に使用するには、適切な温度管理が不可欠です。融剤の種類によって最適な融解温度が異なり、分解対象試料の融点が高い場合は溶融温度が高い融剤を選択する必要があります。たとえば炭酸ナトリウムの融点は851℃、炭酸ナトリウムとホウ酸の混合融剤は184℃のホウ酸を含むため中間の温度で使用できます。

 

参考)https://resources.rigaku.com/hubfs/2024%20Rigaku%20Global%20Site/Resource%20Hub/Knowledge%20Library/Rigaku%20Journals/Japanese/45%E5%B7%BB2%E5%8F%B7%E9%80%9A%E5%B7%BB102%E5%8F%B7%EF%BC%882014%E5%B9%B410%E6%9C%88%EF%BC%89/rigaku-jounal_45-2_19-24.pdf

製鉄プロセスでは、融剤の添加量も重要な管理項目です。溶銑脱硫工程では生石灰を主剤とし、蛍石やソーダ灰などの副剤を混合して液相生成を促進します。副剤の混合比率を変えることで、フラックスの溶融性や脱硫能を調整できます。機械攪拌方式では、高液相生成条件でのフラックスの凝集現象が脱硫反応に大きく影響します。

 

参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/materia1962/19/10/19_10_708/_pdf

分析化学の融解法では、るつぼの選定も重要です。白金るつぼは高温に耐え化学反応に強いため広く使用されますが、アルカリ性融剤にはニッケルるつぼやジルコニウムるつぼも用いられます。融剤の融点が高い場合は電気炉を熱源とし、水酸化アルカリのように融点が低い場合はガスバーナーを使用します。

蛍光X線分析のガラスビード法では、融剤を使用前に乾燥させることが重要です。融剤は吸湿性があるため、白金皿に入れて電気炉で融点より200〜250℃低い温度で約4時間乾燥します。融解時の温度は融点より200〜250℃高めに設定し、四ホウ酸リチウムとメタホウ酸リチウムの混合融剤(12:22 Flux)の場合は融点825℃に対して1000〜1075℃程度で融解します。

融剤法による結晶成長技術

融剤法(フラックス法)は、目的物と反応せず分離が容易な融剤を用いて溶融液を生成し、その中で単結晶を育成する方法です。この手法では溶質(原料粉末)を融剤に加熱溶解させ、冷却やフラックスの蒸発による過飽和度の増加を利用して結晶を成長させます。融剤法は気相成長に比べて高品質な結晶が得られる特徴があります。

 

参考)302 Found

窒化ガリウム(GaN)の結晶成長では、ナトリウム-ガリウム混合融液を融剤として使用するフラックス法が研究されています。この方法では温度と窒素圧力を制御することで、過飽和度を調整し、単結晶の成長モードを変化させることができます。過飽和度が高い領域では多核成長が起こり、低い領域では種結晶領域にのみ結晶が成長します。

融剤法で使用される融剤には、酸化鉛(PbO)、フッ化鉛(PbF₂)、塩化カリウム-塩化ナトリウム混合物などがあります。融剤の溶融温度が低いことは単結晶育成に有利であり、第二成分を添加して溶融温度を下げる工夫が行われます。融剤法は高温高圧条件下でも適用可能で、特殊な材料の結晶成長に威力を発揮します。

 

参考)https://nagoya.repo.nii.ac.jp/record/10623/files/ot2761.pdf

融剤の取り扱いにおける安全上の注意点

融剤には人体や環境に影響を与える可能性がある物質が含まれるため、取り扱いには十分な注意が必要です。ホウ酸やホウ砂は強い眼刺激性があり、生殖能や胎児への悪影響のおそれがあるため、全ての安全注意を読み理解するまで取り扱ってはいけません。粉じんの吸入を避け、取扱い後はよく手を洗うことが重要です。

 

参考)http://www.st.rim.or.jp/~shw/MSDS/01163359.pdf

フッ化アルミニウムなどのフッ素化合物を含む融剤は、特に危険性が高い物質です。漏洩時には関係者以外の立入りを禁止し、保護具を着用して作業する必要があります。粉じんが飛散する場合は水噴霧で抑え、密閉された場所に立入る時は事前に換気することが求められます。環境保護の観点から、河川や下水道、土壌への排出を避ける措置も重要です。

融剤の保管には適切な容器と環境が必要です。ホウ酸は温度を上げると水を失って酸化ホウ素に変化し、ホウ砂も加熱により無水ホウ砂となります。これらの物質は吸湿性があるため、密閉容器に入れて湿気の少ない場所で保管することが推奨されます。使用時には屋外または換気の良い場所で作業し、保護手袋、保護衣、保護眼鏡、保護面を着用することが安全対策として求められます。

 

参考)第16回 ホウ酸 / ホウ砂 - 月刊化学物質管理

 

 


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