酸化鉛半反応式と陶器釉薬の安全性

酸化鉛の半反応式は鉛蓄電池の仕組みを理解する鍵です。同時に、陶器の釉薬に含まれる酸化鉛の安全性についても気になりませんか?

酸化鉛の半反応式と電池反応

酸化鉛の化学反応のポイント
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鉛蓄電池での酸化還元

酸化鉛(PbO₂)が電子を受け取り硫酸鉛(PbSO₄)へ変化する反応が正極で起こります

電子の移動

負極の鉛から正極の酸化鉛へ電子が移動することで電気が発生します

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充電と放電

二次電池として繰り返し使用でき、反応が可逆的に進行します

酸化鉛の半反応式の基本

 

酸化鉛(PbO₂)を用いた鉛蓄電池の正極では、酸化還元反応によって電気が生成されます。正極における半反応式は次のように表されます。
参考)【高校化学】「鉛蓄電池の極板での反応」

PbO₂ + 4H⁺ + SO₄²⁻ + 2e⁻ → PbSO₄ + 2H₂O
この反応では、酸化鉛が電子を2個受け取り、鉛の酸化数が+4から+2へと変化します。このとき、硫酸イオンと結びついて硫酸鉛(PbSO₄)として正極表面に付着する特徴があります。
参考)鉛蓄電池の充放電(1)放電のしくみ<バッテリーの基礎知識>|…

鉛蓄電池における負極の半反応式

負極では金属鉛(Pb)が酸化される反応が進行します。負極の半反応式は以下の通りです。​
Pb + SO₄²⁻ → PbSO₄ + 2e⁻
鉛が硫酸に溶けて鉛イオンとなり、電子を2個放出します。このとき鉛の酸化数は0から+2に変化し、発生した鉛イオンはすぐに硫酸イオンと結合して硫酸鉛になります。この電子が外部回路を通って正極へ移動することで電流が発生する仕組みです。​

酸化鉛半反応式から見る全体反応

鉛蓄電池の全体反応式は、負極と正極の半反応式を組み合わせることで導出できます。​
Pb + PbO₂ + 2H₂SO₄ ⇄ 2PbSO₄ + 2H₂O
この反応式の特徴は、左右両方向の矢印で示されている点です。左から右へ進むのが放電、右から左へ進むのが充電を意味し、鉛蓄電池が二次電池として繰り返し使用できることを示しています。放電時には両極で硫酸鉛が生成され、硫酸の濃度が低下する一方、充電時には逆反応によって元の状態に戻ります。​

陶器釉薬に含まれる酸化鉛の性質

陶器製の食器に使用される釉薬には、古くから酸化鉛が含まれてきました。酸化鉛は低温で釉薬を溶かすことができ、透明性や発色性に優れているため、コスト面でも有利な材料として広く使用されてきた歴史があります。
参考)え!?食器に鉛が入ってたの?知らなきゃ損する器のあれこれ。

しかし、焼成温度が800℃以下と低い場合、鉛が陶器の原料に十分吸収されず表面に留まってしまいます。このような状態では、食品中の有機酸(お酢など)によって鉛が溶出する可能性があり、健康リスクが懸念されます。特に上絵付けの色彩に使用される鉛化合物は、食品と接触すると酸によって溶出しやすい性質があります。​
九谷焼の無鉛釉開発の経緯について詳しく解説されています

酸化鉛と食器の安全基準の変化

日本では食品衛生法の改訂により、食器の鉛溶出基準が厳格化されました。現在では飲食器に有鉛絵具の使用が制限され、多くの生産者が無鉛釉薬の開発に取り組んでいます。
参考)陶磁器の安全性について href="https://monofactory31.com/%E9%99%B6%E7%A3%81%E5%99%A8%E3%81%AE%E5%AE%89%E5%85%A8%E6%80%A7%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6/" target="_blank">https://monofactory31.com/%E9%99%B6%E7%A3%81%E5%99%A8%E3%81%AE%E5%AE%89%E5%85%A8%E6%80%A7%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6/amp;#045; MONO FACTOR…

800℃以上の高温で焼成された陶磁器では、釉薬中の鉛が原料に吸収されて硬化し、表面がガラス化されるため溶出リスクは大幅に低減されます。白い食器や釉下彩の磁器は鉛を含まないため比較的安全とされています。一方、ヴィンテージの陶器や粗悪な製品では鉛やカドミウムなどの重金属が溶出する可能性があるため注意が必要です。
参考)https://downloads.hindawi.com/journals/mpe/2014/759018.pdf

現代の高品質な陶器製品は無毒で鉛を含まない釉薬を使用しており、使用中に有害物質が食品に浸出することを防いでいます。電子レンジを使用する場合は、白いボウルか釉下彩のボウルを選ぶことが推奨されています。
参考)陶磁器と健康:陶磁器の食器が健康的な食事体験をどのように高め…

食品衛生法における陶磁器の鉛溶出基準について詳細な情報が掲載されています

半反応式の計算と質量変化

鉛蓄電池に関する計算問題では、半反応式を用いた質量変化の計算が頻出します。電子が2mol移動する際、負極では硫酸イオン(SO₄、質量96g)が付加されるため96g増加し、正極では酸化物(O₂、質量64g)が減少して硫酸イオンが付加されるため、差し引き64gの増加となります。

 

例えば、2.0Aの電流を20秒間流した場合、流れた電子のmol数は以下のように計算できます。

 

電子(mol) = (2.0A × 20秒) ÷ (9.65×10⁴ C/mol) ≒ 4.15×10⁻⁴ mol
この電子量に基づいて、各極での質量変化を比例計算で求めることができます。正極の質量増加量は、2mol:64g = 4.15×10⁻⁴mol:x より、x ≒ 1.3×10⁻² gと算出されます。このような計算手法は入試でも頻出であり、半反応式の係数と電子のmol数を正確に把握することが重要です。