流釉は完全に偶然だけで作れます。
流釉(りゅうゆう)とは、陶芸における釉薬の装飾技法の一つです。焼成時に釉薬が溶けて流れることで、作品表面に独特の模様や表情を生み出します。この技法は、釉薬の特性と窯の温度変化を利用した、陶芸ならではの表現方法といえます。
流釉の最大の特徴は、その予測不可能性にあります。釉薬の種類、塗り方、焼成温度、窯の雰囲気など、さまざまな要素が複雑に絡み合って、最終的な表情が決まるのです。同じ条件で焼いたつもりでも、微妙な違いで全く異なる仕上がりになることも珍しくありません。
つまり偶然性の芸術です。
しかし、完全に運任せというわけではありません。熟練した陶芸家は、長年の経験から釉薬の流れ方をある程度コントロールする技術を持っています。釉薬の粘度調整、施釉の厚み、作品の傾斜角度などを工夫することで、狙った表現に近づけることができるのです。
流釉は日本の陶芸において、特に茶陶の世界で高く評価されてきました。天目茶碗における「曜変」や「油滴」といった名品は、まさに流釉の技法が生み出した至宝といえるでしょう。現代でも、多くの陶芸家がこの技法に挑戦し、新しい表現を追求しています。
流釉を意図的に起こすには、いくつかの条件を整える必要があります。
最も重要なのが釉薬の選択です。
流動性の高い釉薬を選ぶことが基本となります。
代表的な流釉向きの釉薬には以下のようなものがあります。
流れやすい釉薬が基本です。
焼成温度も重要な要素です。一般的に、流釉は1200度から1300度の高温焼成で起こりやすくなります。この温度帯では釉薬が十分に溶融し、重力に従って流れ始めるのです。温度が低すぎると釉薬が固まったまま、高すぎると流れすぎて作品から垂れ落ちてしまいます。
釉薬の厚みも流れ方を左右します。厚く塗れば塗るほど、流れる量も多くなります。ただし、厚すぎると窯の棚板に垂れて作品がくっついてしまう危険性があります。経験を積んだ陶芸家でも、この加減には細心の注意を払っているのです。
作品の形状や傾斜角度も見逃せません。垂直に立った部分では釉薬が下に流れやすく、水平な部分では流れにくくなります。この特性を利用して、意図的に流れの方向や量をコントロールすることができます。
流釉の効果を最大限に引き出すには、施釉の段階での工夫が欠かせません。
まず重要なのが、釉薬の濃度調整です。
水で薄めすぎると流れが弱く、濃すぎると厚くなりすぎて失敗のリスクが高まります。
理想的な濃度は、釉薬をかき混ぜた時に、スプーンなどで持ち上げるとトロリと流れ落ちる程度です。この状態は「ヨーグルトの濃度」と表現されることもあります。数値で示すと、比重1.4から1.6程度が目安となります。
ヨーグルト状が目安です。
施釉の方法にもいくつかの選択肢があります。
流釉を意識する場合、流し掛けや浸し掛けが適しています。これらの方法では釉薬が厚く付着しやすく、焼成時に流れやすい状態を作れるからです。
重ね掛けのテクニックも効果的です。異なる色や性質の釉薬を重ねることで、複雑で奥行きのある流れを生み出せます。例えば、下地に白い釉薬を塗り、その上から鉄釉を部分的に掛けると、茶色の流れが白地を這うような美しい表現が生まれます。
ただし、重ね掛けには注意点もあります。相性の悪い釉薬を組み合わせると、剥離や気泡の原因になることがあるのです。初めて組み合わせる釉薬は、必ずテストピースで試してから本番の作品に使用しましょう。
流釉の成否を決める最も重要な工程が焼成です。窯の温度管理と雰囲気のコントロールが、作品の仕上がりを大きく左右します。
温度上昇のスピードにも配慮が必要です。急激に温度を上げると、釉薬が急に溶けて予想外の流れ方をすることがあります。理想的なのは、最高温度に達するまでの時間を10時間から12時間程度かける、ゆっくりとした焼成です。
ゆっくり焼くことが基本です。
最高温度での保持時間も重要な要素です。温度に達した後、15分から30分程度その温度を維持することで、釉薬が十分に溶けて流れる時間を確保できます。この「ソーキング」と呼ばれる工程により、釉薬の表面が滑らかになり、色の発色も良くなります。
窯の雰囲気も流釉の表情に影響します。酸化焼成では明るく鮮やかな色が出やすく、還元焼成では深みのある渋い色合いになりやすい傾向があります。銅釉の場合、酸化では緑色、還元では赤色に発色するという劇的な違いが現れます。
作品の配置も見逃せないポイントです。流釉が予想される作品は、棚板から少し離して設置する必要があります。具体的には、作品の底から3ミリから5ミリ程度の高さまでは釉薬を塗らずに素地を残しておきます。
これを「釉抜き」と呼びます。
釉抜きは必須の処理です。
万が一釉薬が垂れて棚板についてしまった場合、作品と棚板が融着してしまい、取り外す際に作品を壊してしまうことになります。これを防ぐため、棚板には耐火性の粉(アルミナなど)を敷いておくのが一般的です。
流釉は魅力的な技法ですが、失敗のリスクも伴います。よくある失敗とその原因、対処法を知っておくことで、成功率を高めることができます。
最も多い失敗が「流れすぎ」です。釉薬が作品の底まで流れ落ち、棚板に垂れてしまうケースです。これは釉薬の塗りすぎ、または焼成温度が高すぎることが原因です。対処法としては、釉薬の厚みを薄くする、最高温度を20度から30度下げる、釉抜きの範囲を広げるなどが有効です。
流れすぎには注意が必要です。
逆に「流れなさすぎ」という失敗もあります。期待していた流れが全く起こらず、単に釉薬を塗っただけの仕上がりになってしまうケースです。原因は釉薬が薄すぎる、温度が低すぎる、または流動性の低い釉薬を選んでしまったことです。
この場合の対処法は、釉薬を厚めに塗る、焼成温度を上げる、より流動性の高い釉薬に変更する、などが考えられます。初めて使う釉薬の場合は、必ずテストピースで流れ具合を確認してから、本番の作品に使用しましょう。
「色ムラ」も頻繁に起こる問題です。流れた部分と流れていない部分で色が大きく異なってしまう現象です。これは釉薬の厚みが不均一だったり、窯の中の温度分布にムラがあることが原因です。
釉薬を均一に塗る技術を磨くことと、窯の癖を理解することが解決策となります。電気窯の場合、上部と下部で温度差が出やすいため、作品の配置場所にも気を配る必要があります。
「気泡やピンホール」も流釉特有の問題です。釉薬が厚いため、焼成時に発生したガスが抜けきれず、表面に小さな穴が残ってしまうことがあります。これを防ぐには、素焼きを十分に行う、釉薬をよく混ぜて気泡を抜く、焼成時のソーキング時間を長めにとる、などの対策が効果的です。
流釉の特性を理解したら、実際の作品制作に活かしてみましょう。流釉が映える作品にはいくつかの共通点があります。
茶碗や湯呑みなど、縦に長い形状の器は流釉の効果が出やすい作品です。釉薬が縦方向に流れることで、自然なグラデーションや筋模様が生まれます。特に、口縁部を厚めに施釉し、胴体部分を薄めにすることで、印象的な流れを演出できます。
縦長の器が適しています。
花器も流釉との相性が良い作品です。高さのある花瓶では、釉薬の流れが作品全体に動きを与え、生けた花を引き立てる効果があります。釉薬の色選びも重要で、花の色と調和するか、あえて対比を作るかで印象が大きく変わります。
壁掛け用の陶板作品では、流釉の流れ方をより自由にコントロールできます。陶板を斜めに立てかけて焼成することで、釉薬を意図した方向に流すことが可能です。抽象的な表現を追求する際に、この手法は特に有効です。
複数の釉薬を組み合わせる「釉薬の掛け分け」技法も、流釉と相性が良い表現方法です。例えば、作品の上半分に青い釉薬、下半分に白い釉薬を塗り、焼成時に境界部分で両者が混ざり合って新しい色が生まれる、といった効果を狙えます。
この技法で重要なのは、隣り合う釉薬の相性です。混ざり合った時に美しい色を生む組み合わせもあれば、濁った色になってしまう組み合わせもあります。代表的な成功例としては、青磁釉と鉄釉の組み合わせ、白萩釉と織部釉の組み合わせなどがあります。
金継ぎとの組み合わせも面白い表現です。流釉で焼いた作品に意図的にヒビを入れ、それを金で修復することで、流れる釉薬の美しさと金の輝きが共演する作品が生まれます。現代では、最初からデザインとして金継ぎを取り入れた「新金継ぎ」という表現も注目されています。
流釉の偶然性を楽しむなら、同じ形の作品を複数作り、同じ条件で焼成してみるのも一案です。それぞれ微妙に異なる表情が生まれることで、流釉の持つ不思議な魅力を実感できるでしょう。シリーズ作品として発表すれば、統一感がありながらも個性的なコレクションになります。

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