磁器なのに、熱々の丼を素手で持つと手首をやけどするリスクがあります。
ニトリのカルエクレ(karu:ecle)は、2018年頃から展開が始まった超軽量磁器シリーズです。「持った瞬間にわかる軽さ」をコンセプトに掲げ、「器ひとつひとつの個性が調和すること」「和洋中どんな料理にも合うこと」をテーマとして開発されました。その人気は圧倒的で、販売開始からわずか3年でシリーズ累計売上枚数が500万枚を突破しています。これはニトリが2021年8月にプレスリリースで発表した数字であり、現在はさらに増えているとみられています。
価格帯はおよそ300円〜1,000円前後と手頃です。ニトリらしい「お、ねだん以上。」の品質を体現したシリーズといえます。
| 商品名 | サイズ(目安) | 重量(目安) | 価格帯(税込) |
|---|---|---|---|
| 超軽量大皿 | φ23cm | 約330g | 699円〜 |
| 超軽量深皿 | φ22cm | 約307〜400g | 699円〜 |
| 超軽量丼 | φ16.2cm | 約360g | 699円〜 |
| 超軽量スープカップ | 幅13.5cm | — | 610円〜 |
| 超軽量小鉢 | φ12.3cm | 約110g | 349円〜 |
「カル(karu)」は日本語の「軽」、「エクレ(ecle)」はフランス語の「輝く・明るい」に由来するとも言われています。名前からして、日本と西洋の感性を組み合わせた独自のコンセプトを持つシリーズです。陶磁器好きとして、この命名センスはなかなか興味深いですね。
カラー・柄のバリエーションも豊富で、窯変紺(ようへんこん)、白唐津(しろからつ)、いぶし天目(いぶしてんもく)、染十草(そめとくさ)、2色蓮根、二色十草、やちむん(沖縄風)など、伝統的な和の色名が並びます。これが後述する「美濃焼の産地」とも深く結びついています。
参考リンク(ニトリ公式プレスリリース:カルエクレ500万枚突破に関する詳細情報)。
ニトリ カルエクレ シリーズ累計売上500万枚突破プレスリリース(PR TIMES)
カルエクレが「超軽量磁器」を名乗れる理由は、ニトリ独自のブレンド土にあります。通常の磁器に使う原料の配合を見直し、軽量化に適した土の調合を実現したことで、同サイズの従来品と比較して約25%の軽量化に成功しました。これはニトリ公式サイトに明記されているスペックです。
実際の数値でみると、その差は驚くほどです。
310gという差はイメージしにくいかもしれません。缶ジュース1本(約350g)とほぼ同じ重量差です。お皿1枚でそれだけ軽くなると聞けば、毎食の食器の上げ下げがどれほど楽になるか想像できるのではないでしょうか。
ある愛用者のブログでは、自宅で使っていた従来の大皿(580g)と比較して、カルエクレは327gだったと報告しています。実測値では約56%の重さ、つまり従来品の半分以下に相当する軽さを実感したとのことです。
軽量化は単なる快適性の話にとどまりません。重いお皿が負担になるのは、手首への負担が蓄積する高齢者や、料理を运ぶ子どもにとっても大きな問題です。握力が落ちてきたご家族へのプレゼントとして選ぶ人が多いのも、こうした背景があります。
また、カルエクレはスタッキング(重ね収納)がしやすいよう設計されており、食器棚のスペースを効率的に使えます。食洗機の仕切りにぴったり収まる23cmの大皿は特に人気が高く、「食洗機ユーザーの相棒」としても広く支持されています。つまり軽さと収納性が原則です。
陶磁器に興味を持つ人なら、カルエクレの産地に注目してほしいと思います。裏面に刻まれた刻印と、商品スペックを見ると「原産国:日本」と記されており、具体的には岐阜県の東濃地方、すなわち美濃焼の産地で製造されています。
美濃焼(みのやき)は、岐阜県の多治見市・土岐市・瑞浪市を中心とする地域の焼き物で、国内陶磁器生産量のおよそ60%を占めるとされる、日本最大の産地です。奈良時代から続く長い歴史を持ち、1988年には国の伝統的工芸品に指定されています。
美濃焼の最大の特徴は、デザインや技法の幅が非常に広いことです。志野焼・織部焼・瀬戸黒・黄瀬戸など多種多様なスタイルを生み出してきた産地であり、「これが美濃焼」という一定の見た目がないほど多彩です。その反面、時代の需要に合わせて柔軟に技術を発展させてきた産地でもあります。
カルエクレの色柄名に「窯変紺」「いぶし天目」「白唐津」などの和風名称が並ぶのは、まさにこの美濃焼の文化的背景を反映しています。「白唐津」は美濃で焼かれた唐津風陶器の技法に由来します。「天目」は鉄分を含む釉薬で深みのある黒色を出す技法です。ニトリというプライスラインで、これだけ本格的な伝統的色名を用いているのは意外ですね。
陶磁器の愛好者として見ると、カルエクレは「ニトリ価格で手に入る美濃焼磁器」という側面があります。1枚300円台〜700円程度で、日本の伝統的産地の技術を体験できるという点で、非常にコストパフォーマンスが高い選択肢といえるでしょう。
参考リンク(美濃焼の歴史・特徴・伝統工芸品としての背景について)。
美濃陶磁器工業協同組合 — 伝統工芸品「美濃焼」について
カルエクレを購入した多くの人が口をそろえて言うのが、「和風なのに洋食にも合う」という意外なマッチングの良さです。これは偶然ではなく、ニトリが「和洋中どんな料理にも合うこと」をテーマに設計したことの成果です。
現行のカラーラインナップは以下のように展開されています。
陶磁器の愛好者の立場から見ると、これらのカラーは「安価だから単調」ではなく、それぞれに1点1点わずかに濃淡の差があります。釉薬の風合いを表現しているため、全く同じ柄でも個体差があり、それが焼き物らしい表情につながっています。これは使えそうです。
コーディネートのコツとして、格子柄の場合、模様を斜めに向けて置くと和テイスト、まっすぐに置くと洋テイストになります。同じ皿を向きを変えるだけで雰囲気が変わる、という点が食卓を豊かにする秘訣です。また、異なる柄を複数持っていても、カルエクレシリーズ同士なら組み合わせても調和がとれるよう設計されています。
シリーズ内でどの柄を選ぶか迷ったときは、ニトリの店頭で実物を手に取ることをおすすめします。ネット通販でも購入できますが、塗りや釉薬の個体差があるため、現物確認のほうが自分の好みに合ったものを選びやすいです。
カルエクレは非常に優れた食器シリーズですが、陶磁器として正しく理解しておくべき注意点もあります。知っておかないと思わぬ損をすることになります。
まず、割れるリスクは通常の磁器と同様にあります。「超軽量」と聞くと耐久性が高いと思いがちですが、軽量化と耐衝撃性は別の話です。実際にニトリのレビュー欄にも「2年持ったら良いほう」「よく割れる」という声があります。
ただし、これはカルエクレが特別に脆いというわけではなく、磁器一般の性質として、落下や強い衝撃には弱いという点が前提にあります。割れにくい食器を求めるなら、メラミン樹脂や強化ガラスの食器を選ぶほうが適切です。磁器ならではの質感と軽さを取るか、耐衝撃性を取るか、目的で選ぶのが基本です。
次に、熱伝導の問題があります。薄く軽量化された磁器は、厚みのある従来品より熱が伝わりやすくなります。特に熱々のラーメンやうどんを盛った丼を電子レンジで温めた場合、器自体がかなり熱くなることがあります。火傷につながるリスクがあるため、布巾や鍋つかみを使うことが必要です。これは軽い食器全般の注意点に注意すれば大丈夫です。
また、「オーブン・直火には使用不可」という点も見落とされがちです。電子レンジと食洗機はOKですが、オーブン料理やグリル料理に直接使うことはできません。グラタンなどを作りたい場合は、オーブン対応の別の器を用意する必要があります。
さらに、ヒビが入った状態での使用は避けましょう。磁器にヒビが入ると、使い続けるうちに突然割れる危険があります。特に熱い食べ物を盛った状態で熱膨張が起こると、亀裂が広がりやすくなります。ヒビに気づいたら、惜しまずに交換することが大切です。
ここでは、一般的な記事ではあまり語られない独自視点から、カルエクレを陶磁器の観点で評価してみます。
陶磁器の世界では一般的に、「良い食器は重い」という価値観が根強くあります。高火度で焼き締めた磁器は密度が高く、重さがずっしりとあることが品質の証とされてきました。有田焼や清水焼の高級品は、その重厚感が価値の一部です。
カルエクレはこの常識に真っ向から挑んでいます。美濃焼の技術を使いながら、ニトリ独自の土のブレンドで意図的に重さを削ぎ落とした磁器です。結果として、従来の「軽い磁器=品質が低い」という固定観念に疑問を投げかけることになりました。
実際に使い続けているユーザーの声を見ると、「毎日使っても傷が目立たない」「5年以上使っているが気に入っている」という長期愛用者の報告が多く見られます。磁器の質感としては、器をテーブルに置いたときや金属が当たったときの音が通常の磁器より軽めです。しかし日常使いとして支障はありません。
外側はザラつきのある質感で、内側はつるっとした釉薬仕上げになっており、汚れがつきにくく洗いやすいという実用性が確保されています。陶磁器として見たときの「焼き物らしさ」も残しつつ、現代生活の利便性に最適化されているのがカルエクレの本質です。結論は、日常使い磁器の中で優れたコストパフォーマンスを持つシリーズです。
もし陶磁器の審美的な深みをさらに追求したい場合は、カルエクレと並行して、同じ美濃焼の産地で作られた美濃焼専門の工房作品や、作家もののうつわと比較してみると面白い発見があります。カルエクレを「入口」として使いながら、美濃焼の伝統に興味を深めていくという楽しみ方もできます。
参考リンク(美濃焼の詳細な特徴・種類・産地についての解説)。
美濃焼とは?特徴・種類・産地のあれこれ(大人の焼き物)