御所丸 藤が丘で出会う高麗茶碗の世界と魅力

御所丸茶碗とは何か?藤が丘との深い縁、古田織部が指示した沓形の謎、黒刷毛と本手の違いまで徹底解説。陶器好き必見のポイントを一挙紹介、知らないと損する鑑賞のコツとは?

御所丸と藤が丘を結ぶ高麗茶碗の深い世界

「御所丸」は純粋な陶器ではなく、半磁質の素地で焼かれた特殊な焼き物です。


🎋 この記事でわかること
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御所丸茶碗の正体

高麗茶碗の一種でありながら、朝鮮人が自発的に作ったものではなく、日本人が朝鮮の窯に「注文」して作らせた特注品。その背景には古田織部の審美眼がありました。

「御所丸」という名の由来

朝鮮王朝との交易船「御所丸船」に因む名称ですが、最新研究ではその船が実は偽の御用船だったことが判明。名前の由来に意外な真実が隠されています。

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藤が丘との縁と現代の御所丸

名古屋・藤が丘には「御所丸」を屋号に持つ隠れ家洋食店が存在。この偶然の一致から、現代陶芸作家による御所丸茶碗の「写し」文化まで、奥深い世界を紹介します。


御所丸茶碗とは何か?藤が丘からひもとく高麗茶碗の基礎知識


「御所丸茶碗(ごしょまるちゃわん)」とは、高麗茶碗の一種であり、桃山時代の茶人・古田織部(ふるたおりべ)の指示によって朝鮮半島南部の金海(きんかい)窯で焼かれたと伝えられる茶碗です。正式には「金海御所丸」とも「古田高麗」とも呼ばれており、御本茶碗(日本から形の見本=切形を送って注文制作させた茶碗)のうち、最も古い例の一つとされています。


名古屋市名東区の藤が丘には、この「御所丸」という名を冠した洋食の隠れ家店舗「西洋膳 料庵 御所丸」が存在します。地下鉄東山線・藤が丘駅から徒歩約6分、朝日が丘交差点の角に構えるこじんまりとした和風の店構えは、「一見やってるの?」と思わせるほど目立ちません。この偶然の名称の一致が、陶器好きにとって御所丸茶碗への入り口になるケースも少なくありません。


さて、御所丸茶碗がなぜ「高麗茶碗」と呼ばれるのか、疑問に思う方も多いでしょう。高麗茶碗とは一般に朝鮮半島で焼かれた茶の湯用茶碗の総称で、大半は「高麗時代(918〜1392年)」の作ではなく、「李朝時代(1392〜1897年)」のものです。つまり名前と実際の制作年代がズレているということですね。御所丸茶碗もその一群に含まれており、17世紀の李朝時代に制作されたと考えられています。


陶器に興味を持ち始めたばかりの方にとって、まず押さえるべきポイントが一つあります。御所丸茶碗は「朝鮮の陶工が自発的に作ったもの」ではありません。日本の茶人が形の手本(切形)を送って、朝鮮の窯に作らせた完全な「注文品」なのです。つまり、御所丸茶碗のデザインは日本人の美意識が反映されたものだということです。これが基本です。


参考:御所丸茶碗の概要と形状の詳細解説(鶴田純久の章)
https://turuta.jp/story/archives/191


御所丸の名の由来と「偽の御用船」説——藤が丘から学ぶ歴史の意外な真実

「御所丸」という名前の由来については、長らく定説とされてきた説があります。文禄・慶長の役(1592〜1598年)の際、島津義弘がこの手の茶碗を朝鮮で焼かせ、朝鮮との交易に使われた御用船「御所丸船」に乗せて豊臣秀吉に献上した、というものです。この伝承から茶碗の名がつけられたとされてきました。


ところが、2024年に藤田美術館(大阪)が公開した最新研究によれば、驚くべき事実が明らかになりました。「御所丸」とは本来、対馬(長崎県)藩が、反乱によって途絶えた朝鮮との国交を回復させるために、「国王使船を装って」派遣した「偽の御用船」だったというのです。意外ですね。


つまり、御所丸茶碗が「本当に御所丸船に乗せられて輸入されたかどうかは不明であり、あくまで伝承に過ぎない」というのが現在の学術的見解です。茶道具の分類名には、由来や意味が確かでないものが少なくありません。それでも、名称に分類されることで茶道具としての価値や格が上がるという側面があります。


この点は、陶器を収集・鑑賞するうえで重要な知識です。なぜなら、「〇〇伝来」「〇〇所持」といった来歴(伝来)が骨董市場において作品の評価を大きく左右するからです。一つの名称や来歴が骨董価格を数倍に押し上げることもあります。鑑賞眼を磨く際には、名称の由来と実態を冷静に見極める習慣を持っておくと良いでしょう。


参考:藤田美術館所蔵「重文 御所丸黒刷毛茶碗 夕陽」の詳細解説
https://fujita-museum.or.jp/topics/2024/12/09/8684/


御所丸茶碗の3つの特徴——沓形・亀甲箆・黒刷毛の見どころ完全ガイド

御所丸茶碗には現存するすべての作品に共通する、非常にはっきりした造形的特徴があります。この特徴を知っておくだけで、骨董市や美術館での鑑賞が格段に深まります。これは使えそうです。


まず最大の特徴は「沓形(くつがた)」と呼ばれる、楕円に歪められた形状です。名前のとおり、履き物(沓)のように側面から押しつぶしたような楕円形をしており、真円ではありません。一般的に茶碗は丸くあるべきという感覚が自然ですが、御所丸茶碗はあえて「歪み」を美とする桃山時代の「わび」の精神が宿っています。この歪みは職人の技術不足ではなく、意図的なデザインです。


次の特徴は「亀甲箆(きっこうべら)」です。茶碗の部分に、亀の甲羅のような形状の箆削り(道具で削り込んだ跡)が施されています。この削り跡は単なる装飾ではなく、触ったときの独特の凸凹感を生み出し、手のひらへの収まり感を高める役割もあります。高台(こうだい)は大きく、箆で五角形または六角形に切り出されており、釉薬がかからず土が剥き出しになっています(これを「土見せ」といいます)。


そして3つ目が「本手(白手)」と「黒刷毛」という2種類の意匠です。白い無地の本手と、白地に黒い鉄釉を刷毛で片身替わりに塗った黒刷毛の2パターンがあります。黒刷毛は黒織部茶碗と非常に近い関係にあり、日本の美意識が朝鮮の窯で表現されたことを示す象徴的な例です。一方、白い本手の代表作が、のちに「古田高麗」と命名された茶碗で、もともと古田織部が所持し、鴻池家に伝来したものです。


| 特徴 | 内容 |
|------|------|
| 形状 | 沓形(楕円形に歪んだ形) |
| 装飾 | 腰に亀甲箆(亀甲状の箆削り) |
| 高台 | 大きく五角〜六角形、土見せ |
| 意匠① | 本手(白無地):「古田高麗」が代表作 |
| 意匠② | 黒刷毛:黒い鉄釉を半面に塗る |
| 素地 | 半磁質(陶器と磁器の中間) |


素地については特筆すべき点があります。結論は「御所丸茶碗は純粋な陶器ではない」ということです。金海の土は半磁質のよく焼き締まる灰白土で、肌に淡紅の斑点(御本)を浮かび上がらせるのが特色です。これは一般的な陶器の素材とは異なります。陶器は主に粘土から作られますが、御所丸の素地は磁器の原料である陶石を含む中間的な素材で焼かれており、「骨董用語では半陶半磁とも呼ばれる」特殊な焼き物です。このことを知らずに「陶器として」だけ御所丸茶碗を語ると、専門家の前で恥をかく可能性もあります。注意が必要です。


御所丸茶碗の価値と買取相場——陶器コレクターが知っておくべきお金の話

陶器に興味を持ち始めると、やがて「いつかは本物を手に入れたい」という気持ちが芽生えてきます。御所丸茶碗は骨董市場でどの程度の価値を持つのでしょうか?


まず重要な前提として、「御所丸茶碗」には桃山〜江戸初期の真作品と、現代作家による「写し(うつし)」があります。真作の御所丸茶碗は、国宝・重要文化財クラスのものが大阪・藤田美術館や三井記念美術館などに所蔵されており、一般の骨董市場に流通することは極めてまれです。仮に流通したとしても、相場は数百万〜数千万円以上になることが想定されます。


一方、「御所丸写し茶碗」は現代陶芸作家や各窯元が制作しており、こちらは比較的手が届く価格帯にあります。たとえば、萩焼の十二代坂倉新兵衛による「萩御所丸写茶碗」は骨董買取サイトで参考買取価格17,000円前後とされています。また、京都在住の現代作家・通次廣(つうじひろし)が制作した御所丸茶碗はギャラリーラボで198,000円で販売されており(現在完売)、現代の良質な写し作品がいかに高く評価されるかを示す例といえます。


手に入れた御所丸茶碗を鑑賞・保管するだけでなく、将来の売却や相続を視野に入れるなら、作家名・共箱・来歴の記録が査定額に大きく影響します。これが条件です。特に共箱(作者直筆の箱書き)が付属しているか否かで、査定額が2〜3倍変わることも珍しくありません。茶碗を購入するときは、必ず共箱の有無を確認するようにしましょう。


また、骨董品の売却益には税金が発生することも覚えておきましょう。骨董品・絵画などの売却で利益が出た場合、所得税と住民税が課税され、その税率はその方の年収水準に応じて15〜最大55%まで課税されます。数十万円以上の利益が出た場合は、税理士への相談も検討してみてください。


現代に生きる御所丸茶碗の「写し」文化——藤が丘に学ぶ陶芸鑑賞の新視点

「写し(うつし)」とは、優れた古陶磁の名品を手本にして制作された作品のことで、単なるコピーや模造品とは一




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