「腰掛け仕事のつもりでも、3年続けると転職市場での評価が下がり年収が平均100万円落ちる」
「腰掛け仕事」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。実はこの言葉、江戸時代から使われてきた歴史ある表現です。
語源はシンプルで、「目的地へ向かう途中で腰を一瞬おろして休む」という動作そのものを指します。つまり、本当の目標に向かう途中の仮の休憩所として就く職のことを意味します。コトバンクの定義でも「本来の希望を達するまでの間、一時ある職や地位に身を置くこと」とされています。
現代では大きく2つの意味で使われます。ひとつは「本命の職や夢に就くまでのつなぎの仕事」、もうひとつは「結婚退職を前提とした女性の勤務スタイル」を指す言葉です。後者については、昭和期に広く使われていた表現で、現在では時代錯誤なニュアンスを持つため注意が必要です。
陶器づくりや陶芸家を夢見ている人にとって、この「腰掛け仕事」という概念は非常に身近かもしれません。生活費を稼ぎながら陶芸技術を磨く時間をつくる、というパターンで腰掛け就職を選ぶ人は少なくないからです。つまり「腰掛け」は必ずしもネガティブな言葉ではありません。
ただし、腰掛けのつもりで就いた仕事が思わぬ落とし穴になることも多いのが現実です。
コトバンク「腰掛仕事」の正式な語義・初出の実例(1917年の国民経済講話まで遡る言葉の歴史が確認できます)
「腰掛けだから適当でいい」という考え方は、実は大きなリスクをはらんでいます。これが意外な落とし穴です。
腰掛け就職で最も多く起こる問題のひとつが、「スキルの空白」です。転職市場では、過去の職歴が評価基準になります。腰掛けのつもりで仕事に身を入れなかった結果、3年間の空白同様の評価を受け、次の転職時に年収が平均で100万円以上落ちるケースがあることが、転職情報サービス各社のデータで示されています。
特に陶芸家や陶器作家を目指している方にとって、会社員時代に得るべきスキルがあります。たとえば経理や会計の知識、マーケティングの基礎、オンライン販売の経験などは、将来個人の工房を運営するうえで直接役立ちます。腰掛けのつもりで過ごした3年間は、こうした学びのチャンスを捨てることと同義です。
結論は「腰掛けであっても仕事に本気で向き合う姿勢が大切」ということです。
また、職場の人間関係にも影響します。「腰掛け」的な態度で仕事をしている人は、往々にして職場の人間関係の構築が薄くなる傾向があります。陶器市やクラフトフェアでの人脈形成と同じように、会社員時代のネットワークが将来の作品販売ルートや協力者につながる可能性もゼロではありません。これが意外なところです。
「腰掛け」で仕事してると縁分が寄ってこない(腰掛け姿勢が人間関係に与えるリスクについて具体的に述べたブログ記事)
「腰掛け就職は失敗する」というイメージがある一方で、うまく活用して陶芸家へ転身した実例もあります。
陶芸工房「手島」を運営し現在も活躍する陶芸作家・30代転職の事例では、弟子入りに必要な資金として約1,500万円を準備したうえで会社を辞め、独立への道を歩み始めました。この資金づくりのために、それ以前の会社員時代を「腰掛け期間」と位置づけ、節約と資金積み上げに集中したとのことです。これは使えそうです。
陶芸家の平均年収は200〜300万円程度とされており、初任給は10万円前後からスタートするのが業界の実態です。陶芸家を目指す人の多くが最初に直面するのは、この収入の低さです。腰掛け仕事として会社員を続けながら陶芸教室に通い、技術を磨きつつ貯蓄するというプロセスは、むしろ現実的なキャリア設計といえるでしょう。
「土こね3年、ろくろ8年」が基本です。陶芸の世界では一人前になるまでに少なくとも10年以上かかるとされているため、腰掛け期間で技術習得の時間と資金を確保することは、単なる逃避ではなく戦略的な準備行動と見なされます。
一方で、陶芸家として独立後にフリーランスで年収600万円以上を達成している事例も存在しています。ただし、そこに至るまでには個展やクラフトイベントでの売上、オンライン販売、指導料など複数の収入源を組み合わせる努力が必要です。
陶芸家の年収・働き方・キャリアプランの詳細(初任給10万円から人間国宝レベルまでの収入の実態を解説)
腰掛けのつもりで仕事に就く場合、選ぶ職種と向き合い方で将来が大きく変わります。
まず、腰掛け期間に「陶芸家としての将来に活きるスキルを意識的に取りに行く」ことが重要です。たとえば、マーケティングやSNS運用を学べる職場を選べば、将来ミンネやCreemaといったハンドメイドマーケットで陶器を販売する際に活きてきます。経理や財務を学べる職場なら、個人工房を開く際の資金管理に直結します。これが条件です。
転職市場のデータでは、転職経験者の約70%が「自分のスキルや強みを明確に理解していたこと」が転職成功の要因として挙げられています。腰掛け就職中であっても、スキル習得の意識を持ち続けることで、次のステップへの移行がスムーズになります。
また、腰掛け就職でよくある失敗として「給与30万円→35万円という数字に釣られ、レジュメに書けるスキルが増えない会社に入る」パターンがあります。月5万円の差は年間60万円に見えますが、スキルが空白のまま3〜5年過ごした場合、次の転職で年収が逆に100万円以上下落するリスクの方がはるかに大きいのです。痛いですね。
腰掛け就職中にやっておくべき行動は大きく3つあります。
- スキル記録をつける:毎月、今月身についた知識や経験を1つメモする習慣をつける
- 陶芸教室への週1通学を維持する:腰掛け期間中も週1回以上の実技練習で技術の底上げをはかる
- 目標資金を決める:独立に必要な金額(工房開設費・窯の設置費など最低でも200〜300万円)を試算し、積み立て期間を逆算しておく
腰掛けの期間を「意図的な準備期間」と再定義することで、仕事への向き合い方が変わります。
陶器好きや陶芸家志望者が直面する最大のジレンマが「今の仕事をどう位置づけるか」という問いです。
腰掛けと割り切った場合のリスクとして、日本では転職2回以上の経験者のキャリアが大きく2つに分かれるというデータがあります。日経xwomanの分析によると、年収500万円未満の「ジョブホッパー」層と年収1500万円以上の「キャリアアッパー」層に明確に二極化するとされています。腰掛け就職を繰り返した人は前者になるリスクが高く、各職場でスキルを深めて転職した人は後者になりやすいのです。
一方で、「今の仕事は腰かけであると完全に割り切り、作った時間を独立へ向けた努力に最大限向ける」という考え方も、実は有効な戦略です。この割り切りが機能するのは、陶芸技術の向上や工房開設の準備に向けた具体的な行動が伴っている場合に限ります。ぼんやりと「いつか辞めて陶芸家になる」と考えているだけでは、割り切りではなく単なる先送りです。
重要なのは「何のために腰掛けているのか」を言語化することです。
腰掛け期間の終わりを明確にする方法として、「〇年以内に工房開設資金300万円を貯める」「〇月の陶芸展に出品して初売上を立てる」など、具体的な期限と目標を設定することが効果的です。この目標が定まれば、今の仕事での過ごし方も自然と変わってきます。
陶芸家として独立するための現実的な準備として、認定陶芸士の資格取得を視野に入れることもひとつの方法です。社団法人日本近代芸術協会が認定する「認定陶芸士」は、陶芸の知識と技術を証明する民間資格で、将来的に陶芸教室を開く際の信頼性向上にも役立ちます。腰掛け就職中の休日に受験を目指すのは、時間の使い方として非常に合理的です。
キャリアの分岐点は「腰掛けか本気か」ではなく、「腰掛け期間を戦略的に使えているか否か」にあります。これが原則です。
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