トンネル窯とは|連続焼成の仕組み構造メリット

トンネル窯は陶芸作品を連続的に焼成できる窯として知られていますが、個人での導入はほぼ不可能な巨大設備であることをご存じでしょうか?その仕組みや構造、メリットについて詳しく解説します。

トンネル窯とは連続焼成の仕組み

個人の陶芸家には購入できません。


この記事の3ポイント要約
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トンネル窯の基本構造

長さ30~100mの長大なトンネル状の窯で、台車に乗せた陶磁器が連続的に移動しながら焼成される工業用設備

連続焼成のメリット

24時間稼働可能で燃料効率が高く、大量生産に適した構造。焼成時間は8~24時間程度

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導入コストと運用

建設費は数億円規模で、維持費も年間数千万円。主に大手メーカーや量産工房で使用される

トンネル窯の連続焼成の仕組みと構造

トンネル窯は、長さ30~100mほどのトンネル状に作られた大型の窯です。東京ドームの外周を4分の1ほど歩いた距離に相当します。


この窯の最大の特徴は、台車(キルンカー)に陶磁器を載せて、レール上を移動させながら焼成する点です。窯の中は予熱帯、焼成帯、冷却帯の3つのゾーンに分かれており、製品は一定速度で移動しながら段階的に温度変化を受けます。


焼成帯の温度は1200~1400℃に達し、製品はこの高温ゾーンを通過することで焼き締まります。


つまり連続ベルトコンベアのような仕組みです。


従来の窯(間欠式窯)では1回の焼成ごとに窯全体を加熱・冷却する必要がありましたが、トンネル窯は常に一定温度を保った状態で製品だけが移動するため、熱エネルギーのロスが大幅に削減されます。


燃料効率が基本です。


この構造により、24時間365日の連続操業が可能になり、大量生産体制を支えています。


米国標準技術研究所によるトンネル窯の詳細解説(英語)

トンネル窯の焼成時間と温度管理

トンネル窯での焼成時間は、製品の種類や窯の長さによって8~24時間程度です。


焼成時間が一日以内ということですね。


温度管理は3つのゾーンで精密に制御されます。予熱帯では常温から徐々に600℃程度まで上昇し、製品内部の水分を完全に蒸発させます。急激な加熱は製品の破損につながるため、この段階は特に慎重です。


焼成帯では目的とする最高温度(陶器なら1200℃前後、磁器なら1300~1400℃)を維持します。この温度域でガラス質が溶け出し、粒子が結合することで強度が生まれます。


厳しいところですね。


冷却帯では1000℃以上から徐々に常温近くまで下げていきます。急冷すると熱応力で亀裂が入るため、特に600℃以下での冷却速度管理が重要です。


つまり時間をかけた冷却が不可欠です。


各ゾーンには複数の温度センサーが設置され、コンピューター制御で±5℃以内の精度で管理されています。この精密な温度管理により、品質のばらつきを最小限に抑えられます。


製品の移動速度(台車の送り速度)を調整することで、各ゾーンでの滞在時間をコントロールし、最適な焼成条件を実現しています。


トンネル窯導入のコストとメリット

トンネル窯の建設費は規模によって異なりますが、中型のもので3~5億円、大型のものでは10億円を超えることも珍しくありません。


桁が違いますね。


維持費も年間数千万円規模になります。燃料費、電気代、レンガの補修費、制御システムのメンテナンス費などが主な内訳です。さらに24時間操業のため、交代制の専門オペレーター複数名の人件費も必要になります。


しかし大量生産を前提とする企業にとっては、このコストを上回るメリットがあります。


最大のメリットは燃料効率の高さです。従来の間欠式窯と比較して、燃料消費量を30~50%削減できるとされています。窯全体を毎回加熱・冷却する必要がないためです。


つまり年間の燃料費で数千万円の差が出ます。


生産性の向上も見逃せません。連続操業により、同じ設備面積でも生産量は間欠式の3~5倍になります。製品の品質も安定しやすく、不良品率が大幅に低下します。


ただし、この規模の設備は個人の陶芸家や小規模工房では現実的ではありません。初期投資の回収には年間数十万個以上の生産が必要になるため、主に食器メーカーやタイルメーカーなどの大手企業が導入しています。


中小規模の工房がトンネル窯のメリットを享受したい場合は、外部の焼成委託サービスを利用する選択肢もあります。1個あたり数十円~数百円で委託焼成を請け負う業者が全国に存在します。


トンネル窯と従来の窯の違い

トンネル窯と従来の窯(間欠式窯)の最も大きな違いは、焼成の「連続性」です。


間欠式窯は、製品を詰め込んでから点火し、焼成が終われば消火して冷却するという一連の工程を繰り返します。登り窯穴窯電気窯ガス窯など、陶芸家が通常使用する窯はすべてこのタイプです。


焼成が基本です。


一方、トンネル窯は常に火が入った状態で、製品だけが移動します。工場のベルトコンベアのように、入口から製品を投入すれば出口から焼き上がった製品が出てくる仕組みです。


温度分布も大きく異なります。間欠式窯では窯全体を目標温度まで上げるため、場所による温度差(窯詰めの位置によって焼き上がりが変わる問題)が発生しやすいです。対してトンネル窯は各ゾーンで温度が固定されており、すべての製品が同じ温度履歴を経験するため、焼きムラが少なくなります。


作業効率の面でも差があります。間欠式窯では焼成後に窯が冷えるまで製品を取り出せないため、次の焼成まで数日間の待機時間が必要です。トンネル窯なら焼き上がった製品は随時取り出せるため、作業の流れが途切れません。


これは使えそうです。


ただし間欠式窯には、作品ごとに焼成温度雰囲気酸化焼成還元焼成)を変えられる柔軟性があります。トンネル窯は設定変更に時間がかかるため、基本的に同じ条件での大量生産に特化しています。


個人の陶芸家が作品の個性を追求する場合は間欠式窯、企業が規格品を効率的に生産する場合はトンネル窯という使い分けが一般的です。


トンネル窯を使った陶磁器製品の実例

トンネル窯は主に工業製品の生産に使われており、私たちの日常生活で目にする多くの陶磁器がこの窯で作られています。


食器類では、ファミリーレストランチェーンや給食で使われる業務用の白い皿やカップの多くがトンネル窯製です。1日あたり数万個という単位で生産されており、全国の食器メーカーの主力製品となっています。


無印です。


建材分野では、内装・外装用のタイルがトンネル窯の代表的な製品です。特に駅やショッピングモールの床に敷かれている大型タイルは、そのほとんどがトンネル窯で焼成されています。1枚あたりの焼成コストを抑えながら、均一な品質を保てるためです。


衛生陶器も重要な分野です。トイレの便器や洗面台は、大型で厚みがあるため高度な温度管理が必要ですが、トンネル窯の精密な制御により安定した生産が可能になっています。


碍子(がいし)と呼ばれる電力設備用の絶縁部品も、トンネル窯で大量生産されています。電柱や変電所で使われる碍子は、高い強度と絶縁性が求められるため、トンネル窯の均一な焼成が不可欠です。


意外なところでは、スパークプラグの絶縁部分(セラミック部分)もトンネル窯で作られています。自動車1台につき4~8個のスパークプラグが使われており、世界中で膨大な数が生産されています。


これらの製品に共通するのは、「大量生産」「品質の均一性」「コストの最適化」という3つの要素です。トンネル窯はこれらを同時に実現できる唯一の設備として、現代の陶磁器産業を支えています。


個人作家の作品とは対照的ですが、工業製品としての陶磁器の世界では、トンネル窯なしには成り立たない規模の需要が存在しているということですね。


日本セラミックス協会による産業用陶磁器の製造技術情報