スタバのスタッキングマグを「どれも同じ陶器マグ」だと思って選ぶと、のちのち3,000円以上の損をすることがあります。
スターバックスのスタッキングマグと一口に言っても、その素材と産地は大きく異なります。大きく分けると「通常ラインの磁器・陶器」と「JIMOTO Made(じもとメイド)シリーズの伝統工芸品」の2系統が存在します。
まず通常ラインとして代表的なのが、岐阜県土岐市産の美濃焼を使ったスタッキングマグです。満水時容量は約250ml、サイズは直径75mm×高さ75mmとコンパクトで、税込1,210円と比較的手に入れやすい価格設定になっています。電子レンジも食洗機も使用可能なため、日常使いに適した一品です。
一方でJIMOTO Madeシリーズは、文字通りその土地の伝統工芸品とのコラボレーション商品です。代表的なのが石川県加賀エリア限定の九谷焼スタッキングマグで、容量237ml、価格は税込5,700円にのぼります。360年以上の歴史を誇る九谷焼の技法を用い、「銀彩」「庄三風」「古九谷風」「永楽風」と複数のデザインが展開されています。美濃焼との差は約4,490円。これが購入前に知っておくべき価格の幅です。
産地ごとの特徴を整理すると以下のようになります。
| 産地 | シリーズ | 容量 | 価格(税込) | 電子レンジ | 食洗機 |
|------|--------|------|-----------|----------|------|
| 美濃焼(岐阜) | 通常ライン | 約250ml | 1,210円 | ✅ 可 | ✅ 可 |
| 九谷焼(石川) | JIMOTO Made | 237ml | 5,700円 | ❌ 不可 | ❌ 不可 |
| 萩焼(山口) | JIMOTO Made+ | 355ml | 詳細は店舗確認 | ❌ 不可 | ❌ 不可 |
| 備前焼(岡山) | JIMOTO Made | 355ml | 詳細は店舗確認 | ❌ 不可 | ❌ 不可 |
九谷焼マグは石川県内の特定店舗でのみ購入でき、オンライン販売もありません。つまり金沢などを旅行した際にしか手に入らない、完全な地域限定品です。これが基本です。
スタッキングという機能面では、同シリーズのマグを重ねて収納できる設計になっており、棚の省スペース化に役立ちます。キッチンに複数並べてもすっきりと収まる点が、陶器好きの間で人気を集めている理由のひとつです。
スターバックス公式 タンブラー&マグカップ一覧(現行ラインナップを確認できます)
陶器に興味がある方にとって、JIMOTO Madeシリーズは単なる「スタバのグッズ」を超えた存在です。各産地の職人が一点一点手仕事で仕上げているため、同じ品番であっても色合いや模様に微妙な個体差があります。これが陶器・磁器の醍醐味でもあります。
九谷焼の場合を例に取ると、その歴史は江戸時代初期の1655年頃まで遡ります。加賀藩の庇護のもとで発展し、赤・青・黄・緑・紫の「九谷五彩」と呼ばれる独特の色使いが世界的に知られています。スタバとのコラボでは、そのスタイルを引き継ぎつつ、シアトルの景観やスターバックスのロゴを取り入れた和洋折衷のデザインが採用されています。意外ですね。
萩焼は山口県萩市を中心に生産される陶器で、400年以上の歴史を持ちます。最大の特徴は「七化け」と呼ばれる変化で、使い込むほどに茶渋や酒が器に染み込み、独特の味わいが生まれていきます。スタバの萩焼マグ(JIMOTO Made+ 萩マグ薄藍355ml)は、ロースタリー東京の夜のテラスや目黒川をイメージした薄藍と薄桜の2色展開です。
備前焼は岡山県備前市を代表する伝統陶芸で、釉薬を一切使わないのが大きな特徴です。土の成分と炎の反応だけで焼き上げるため、ひとつとして同じ色柄の器が存在しません。スタバの備前焼マグ(JIOMOTOマグ備前焼SANGIRI 355ml)は、薪窯でゆっくりと時間をかけて焼かれており、軽さにこだわった薄作りの仕上がりになっています。
それぞれの陶器の特性をまとめると以下のとおりです。
- 🏺 九谷焼:鮮やかな上絵付けが特徴。5色の彩色が映える磁器質で、見た目のインパクトが大きい
- 🌿 萩焼:使うほどに変化する「七化け」が魅力。やわらかな土の風合いと手ざわりが陶器らしい
- 🔥 備前焼:釉薬なし・薪窯焼き。土と炎が生み出す偶然の焼き色が一点ものの証
- 🌾 美濃焼:全国シェア50%超を誇る日本最大の陶磁器産地。実用性と美しさを両立した設計
これが陶器好きにJIMOTO Madeシリーズが刺さる理由です。
スターバックス公式ストーリー「伝統や技術を100年先へ。沖縄のやちむん『壺屋焼』のマグ」(JIMOTO Madeの背景にある産地への想いが詳しく読めます)
せっかく手に入れたスタバのスタッキングマグを長く使い続けるために、素材ごとのお手入れの違いを把握しておくことが大切です。同じ「スタッキングマグ」という名前でも、素材によって取り扱いが180度異なるケースがあります。
通常ラインの美濃焼スタッキングマグは電子レンジ・食洗機ともに対応しています。食洗機を使う場合は詰め込みすぎに注意すれば、日常的に使いやすい設計です。洗い方に神経を使わなくていい点は大きなメリットです。
一方、九谷焼・萩焼・備前焼などJIMOTO Madeシリーズは電子レンジ・食洗機ともに非対応のものが多く、手洗いが基本です。特に九谷焼は上絵付けに金属顔料を使っているため、電子レンジに入れると金箔・銀箔部分が発火するリスクがあります。金属顔料には注意が必要です。
陶器を手洗いする際のポイントは以下のとおりです。
- 🧼 中性洗剤を使う:アルカリ性の洗剤は釉薬を傷める原因になるため避ける
- 🫧 柔らかいスポンジで優しく:金属たわしや硬いブラシはNG
- 💧 洗浄後はよく乾かす:水分が残ったまま重ねると、内側に結露やカビが発生することがある
- 🚫 急激な温度変化を避ける:熱いままの器を冷水につけると、ひびが入る「貫入」が起こりやすくなる
萩焼には「貫入」と呼ばれる釉薬のひびが意図的に作られているものがあり、これは不良品ではありません。むしろそのひびに茶渋や液体がしみ込むことで「七化け」が進む仕様です。知っていると得する情報です。
備前焼は釉薬なしのため表面が微細な凹凸を持ちます。コーヒーや紅茶の茶渋がつきやすい場合は、重曹を使った軽いつけ置き洗いで対応できます。いずれも陶器の特性を理解して付き合えば、数十年使い続けることも十分可能です。
スターバックス公式「土と釉薬で表現する優しい風合いを伝えるJIMOTO Made+萩」(萩焼の製法と特徴について詳しく解説されています)
陶器好きがスタバのスタッキングマグを手に入れたら、ぜひ活用したいのが「マイマグ持参割引」の制度です。スターバックスでは、自分のタンブラーやマグカップを持参してドリンクを注文すると、店内利用で税込22円引き、お持ち帰りで税込21円引きになります。スタバ以外のマイマグでも対象になります。
年間でどれくらいの節約になるかを計算すると、たとえば週3回スタバに通う場合、年間約156回の来店で156×22円=約3,432円の節約になります。JIMOTO Madeの九谷焼マグ(5,700円)であれば、約166回持参した時点でマグ代の元が取れる計算です。これは使えそうです。
さらに、毎月10日は「タンブラー部の日」として、マイマグ・マイタンブラー持参で通常22円引きのところが55円引きになります。2025年1月に開始したこのキャンペーンは、月に1度かならず確認する価値があります。
| 通常時(毎回持参) | 毎月10日(タンブラー部の日) |
|------------|------------|
| 店内22円引き | 店内55円引き |
| 持ち帰り21円引き | 持ち帰り54円引き |
ただし一点注意があります。モバイルオーダーを利用する場合、マイマグ持参の割引は原則として対象外です。割引を受けるには、カウンターで口頭注文することが条件になります。毎日モバイルオーダーで済ませている方は、この点だけは覚えておけばOKです。
陶器のスタッキングマグをスタバに持参する際は、蓋がないため中身がこぼれないよう注意が必要です。持ち帰りよりも店内でゆっくり過ごす使い方に適しています。陶器ならではの口当たりを店内で楽しみながら割引も享受するというのが、最もスマートな使い方といえます。
スターバックス公式「タンブラー部 掲示板」(割引の最新情報やキャンペーンが確認できます)
陶器に興味がある人にとって、スタバのJIMOTO Madeスタッキングマグには購入後にも続く楽しみがあります。それが「器を育てる」という感覚です。この観点からスタバのマグを語る記事は、あまり見当たりません。
普通のマグカップは使い込んでも変わりません。しかし萩焼のスタッキングマグは、コーヒーを淹れるたびに茶渋が貫入(釉薬のひび)に少しずつしみ込み、3ヵ月後・半年後・1年後と表情が変わっていきます。いわば「自分だけのエイジング」です。
備前焼も同様で、土の微細な凹凸がコーヒーの香りを適度に吸収し、長く使うほどにコーヒーとの相性が深まっていくと言われています。備前焼の職人の間では、「器を使い込むほど、飲み物がうまくなる」という表現が使われることもあるほどです。これは陶磁器としての正当な評価です。
使い込む際に意識したい点を挙げると以下のとおりです。
- ☕ 最初の「目止め」を行う:新しい陶器は、お粥の上澄みや米のとぎ汁を入れて軽く煮ることで、細かい穴をふさぎ汚れを吸収しにくくできる
- 📅 使用頻度を記録する:備前焼や萩焼は使うごとに変化するため、半年に一度写真を撮って比較すると変化がよくわかる
- 🤝 同じ器でシリーズをそろえる:九谷焼マグとコースターを同時に使い込むと、経年変化が揃い統一感が生まれる
目止めは陶器全般に効果的ですが、磁器に近い仕上がりの美濃焼には不要な場合もあります。購入時の取り扱い説明書を確認するのが確実です。
スタバのスタッキングマグは「スターバックスのグッズ」という側面だけでなく、日本の伝統陶芸を日常生活に取り入れるきっかけとして機能しています。毎朝のコーヒータイムに、職人の手仕事が生んだ一点ものの器を使う。それだけで、ふだんの時間の質が少し変わります。陶器との向き合い方が変わるということです。
また、JIMOTO Madeの九谷焼マグはメルカリなどのフリマアプリでも取引されており、定価5,700円のものが未使用品で6,800円以上になることもあります。限定店舗でしか手に入らないという希少性が価格を支えているためです。陶器コレクターとしての視点でも、旅先での購入は投資的な意味合いを持ちます。
ハフポスト日本版「スタバが発売した環境に配慮した3つのグッズとは?」(リサイクルセラミックを使ったスタッキングマグのサステナビリティへの取り組みが詳しく紹介されています)