日用食器の石爆はざらつきが口に当たるリスクがあります
石爆(いしはぜ)とは、陶土に含まれる長石や珪石などの石粒が、焼成時の高温によってはじけて器の表面に露出する現象です。1200度以上の高温で焼かれる際、石粒内部の熱膨張率が粘土本体と異なるため、石が膨張してはじけます。
参考)ご購入前にご確認ください
結果として白い粒状の凹凸が器面に現れます。
この現象は意図的に起こす場合と、粘土の性質上自然に発生する場合があります。信楽焼の粘土には元々長珪石(ケイ酸質の鉱物)が含まれており、石爆が起きやすい特性を持っています。備前焼では花崗岩由来の耐火度の高い粘土を使用するため、やはり石爆が発生しやすいです。
陶芸家によっては、土に意図的に粗い石粒を混ぜ込んで石爆を演出することもあります。
石爆は主に信楽焼、備前焼、伊賀焼などの日本の伝統的な陶器に見られる特徴です。これらは「土もの」と呼ばれる陶器で、釉薬を使わないか最小限の使用にとどめるため、土の質感が直接現れます。
信楽焼は滋賀県甲賀市信楽町で作られ、火色・ビードロ・焦げと呼ばれる自然釉の美しさと、粗く素朴な土味が特徴です。粘土に含まれる長石の粒が焼成時にはじけることで、独特の白い斑点模様が生まれます。
備前焼は岡山県備前市を中心に生産され、釉薬を一切使用しない製法が特徴です。
参考)備前焼、日本古来の焼き物の特徴を探る。体験できる窯元は?
赤黒い器面に自然釉がかかった独特の色調を持ち、石爆も景色の一つとして重宝されています。伊賀焼も同様に粗い土を用いるため、石爆が現れやすい焼き物として知られています。
参考)https://turuta.jp/story/%EF%BD%8B-shigaraki-bizen-tanba
石爆は本来、茶道文化の中で侘び・寂びの景色の一つとして楽しまれてきました。完璧ではない不完全さや自然のままの姿を美とする日本の美意識が背景にあります。
参考)https://www.the-kansai-guide.com/ja/article/item/16213/
白い石の粒と器肌の色が調和することで、人工的ではない独特の風合いが生まれます。ざらついた肌合いは、手で触れたときに土の質感を直接感じられるため、茶人たちはこれを鑑賞の対象としました。
参考)https://huukyou.com/blogs/nipponhearsay/japanesepottery
つまり景色として価値があるのです。
茶道では不完全さの中に美を見出す精神性が重視されるため、石爆のような自然が生み出す偶然の表情が好まれます。水墨画のような侘びた風情や、枯山水の庭のような静かな迫力を、小さな器の中に見出すことができるからです。
現代でも骨董や茶道具のコレクターの間で、石爆の豊かな作品は高い評価を受けています。
石爆のある器を日常的に使用する場合、いくつかの注意すべき点があります。まず、湯飲みやカップなど口に直接触れる食器では、石爆の凹凸が口当たりに影響する可能性があります。
ざらついた表面は人によって不快に感じることがあります。
また、石爆の凹凸部分には汚れや茶渋が溜まりやすく、通常のスポンジでは洗いにくいという点もあります。柔らかい布やスポンジで優しく洗い、急激な温度変化を避けることが推奨されます。熱々の器をいきなり冷水に浸すと、石爆部分からひび割れが生じるリスクがあるためです。
参考)302 Found
電子レンジや食洗機の使用については、製品ごとに確認が必要です。
吸水性のある陶器は水分を吸い込み、電子レンジで加熱すると破裂する危険性があるため、「電子レンジ使用可」の表示があるか必ず確認してください。石爆のある器を長く愛用するには、丁寧な扱いと適切な手入れが欠かせません。
参考)セーフティファースト!陶磁器食器の選び方と注意点|ceram…
石爆を意図的に避けたい場合、陶芸制作の段階でいくつかの対策があります。最も基本的なのは、使用する粘土を精製度の高いものにすることです。土の中の石粒を取り除くために、ふるいを使って粗い粒子を除去します。
参考)https://www.shuminoengei.jp/?m=pcamp;a=page_qa_detailamp;target_c_qa_id=3801
精製された粘土なら石爆は起きません。
また、焼成温度や昇温速度を調整することも効果的です。急激な温度上昇は石粒の膨張を促進するため、ゆっくりと温度を上げることで石爆を抑えられる場合があります。ただし、信楽焼や備前焼のように石爆が特徴となっている焼き物では、あえて粗い粘土を使用します。
制作者の意図によって、石爆を景色として活かすか、滑らかな表面を追求するかが決まります。
日用食器として滑らかな口当たりを重視する場合は、磁器(有田焼や波佐見焼など)を選ぶのも一つの選択肢です。磁器は陶石を原料とするため、石爆のような現象は起こりません。
参考)もしかすると備前焼!?土でできた信楽焼と石でできた有田焼の違…
石爆のある陶器を長く使うためには、日常の手入れが重要です。使用後は、石の表面に残った水分や汚れをしっかりと洗い流し、柔らかい布で水気を拭き取ります。
水垢や茶渋の蓄積を防ぐためです。
硬いたわしは表面を傷つけます。
石爆の凹凸部分に汚れが溜まった場合は、やわらかいブラシや歯ブラシを使って優しくこすります。強くこすると石爆部分が欠けることがあるため、力加減に注意が必要です。
急激な温度変化は陶器にひび割れを起こす原因となるため、熱い器を冷水に浸けたり、濡れたまま火にかけたりしないでください。特に石爆部分は構造的に弱点となりやすく、温度変化のストレスでひび割れが生じやすいです。
初めて使う前には目止め処理がおすすめです。
米のとぎ汁や小麦粉を溶いた水で煮ることで、陶器の細かい隙間を埋め、汚れや臭いの吸着を防げます。これにより石爆のある器も長く清潔に使用できます。保管時は湿気を避け、完全に乾燥させてから収納しましょう。
現代の陶芸家の中には、伝統的な石爆の美を新しい形で表現する試みが見られます。あえて異なるサイズの石粒を混ぜ込んで、従来とは違う質感やパターンを作り出す作家もいます。
器の一部だけに石爆を配置することで、滑らかな部分と粗い部分のコントラストを楽しむデザインも登場しています。口に触れる縁の部分は滑らかに仕上げ、側面や底部に石爆を集中させることで、使い勝手と鑑賞性を両立させる工夫です。
色のついた釉薬と石爆を組み合わせる技法も注目されています。
釉薬が石爆部分で独特の表情を見せることで、従来の茶褐色の素朴な風合いとは異なる、カラフルで現代的な作品が生まれています。このような取り組みにより、石爆は伝統的な景色から現代アートの表現手法へと進化しつつあります。
オンラインショップや陶器市では、こうした新しい感覚の石爆作品を探すことができます。
伝統を守りながらも新しい表現を模索する陶芸家の作品に触れることで、石爆の奥深さをより感じられるでしょう。作家によって石爆の使い方や表現が異なるため、自分の好みに合った作品を見つける楽しみもあります。