伊賀焼作家一覧と窯元の魅力

伊賀焼を代表する著名作家から現代の陶芸家まで、それぞれの特徴と作品の魅力を詳しく解説します。伝統技法を受け継ぐ作家や独自の表現を追求する陶芸家について、どのような作品が生まれているのでしょうか?

伊賀焼作家一覧と窯元

この記事でわかること
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著名な伊賀焼作家

菊山当年男、福森雅武、谷本光生など、高い評価を受ける作家の特徴と作品の魅力

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現代伊賀焼の作家

新学、小島憲二など、伝統と現代性を融合させた作家の独創的な作品

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伊賀焼窯元の特徴

長谷園をはじめとする代表的な窯元の歴史と製作技法

伊賀焼作家の歴史的巨匠

伊賀焼の歴史において、古伊賀の復興と発展に尽力した作家たちの功績は計り知れません。菊山当年男は古伊賀焼の復興に取り組み、三重県無形文化財にも指定された著名作家です。松尾芭蕉の研究者・歌人としての一面も持ち、亀型香合や花瓶、香炉、抹茶碗など幅広いジャンルで制作活動を行いました。その作品は文化的価値が高く評価され、市場でも高額で取引されています。
参考)伊賀焼の買取相場!高く売れる伊賀焼の特徴や少しでも高く売るコ…

 

川喜田半泥子は「東の魯山人・西の半泥子」と称される偉大な作家で、伊賀焼だけでなく広範な分野で活躍しました。銀行家として活動していた50代から作陶を始め、自由でユーモラスな作品を数多く残しています。石水博物館に収蔵されている「つぶれ壺 銘:ふくら雀」では、割れた壺を花器に用いるなど、ひび割れを生かす独自の作風が特徴です。
谷本光生は、戦後の古伊賀焼復興の旗手として知られる巨匠です。元々画家志望でしたが伊賀焼に感銘を受け陶芸家に転向し、日本で初めて「抽象陶画」を制作して陶芸をキャンバスに見立てた独自の世界観を確立しました。景氏は「耳付花入」などの古典的作品を数多く手がけると同時に、独自の造形美を追及する伊賀焼を代表する作家の一人として活躍しています。
参考)http://tougeizanmai.com/tabitetyou/016/view-kama.htm

 

伊賀焼作家の現代の担い手

現代伊賀焼を代表する作家として、新学(あたらし まなぶ)が注目を集めています。1973年大阪生まれで、1999年に父・新歓嗣に師事し、2002年に穴窯を築窯して初個展を開催しました。伝統的な伊賀焼を現代的に創造し、大胆なカットや造形で次世代の伊賀を牽引する作家です。新学の作品は伊賀焼の持つダイナミックな造形を花器や抹茶茶碗だけでなく、普段使いのご飯茶碗や湯呑、珈琲カップまで表現しています。
参考)伊賀焼 陶芸家 新学の作品なら【公式】Artshop Gal…

 

父である新歓嗣は、伊賀伝統と現代性を融合させた独創的な作品で、特に仏像や花器において高い評価を得ています。1975年に三軒窯を築き、伊賀土と穴窯を使った焼き締め技法を確立しました。この10年ほどは夢幻的な造形や神仏をモチーフとした作品を数多く手がけ、半世紀以上のキャリアと個性的造形を備える作品はコレクター市場で非常に価値が高くなっています。
小島憲二は、伊賀焼の可能性を追求し続ける現代作家です。「先人が残した数少ない古伊賀が常に自分のものさしとして存在している」と語り、桃山時代の伊賀焼を目標に作品制作に取り組んでいます。1953年愛知県知多市生まれで、1972年に愛知県立常滑高校窯業科を卒業後、伊賀丸柱に移り作陶を開始しました。現在では日本全国の有名百貨店で頻繁に個展を催す伊賀を代表する作家として名を馳せています。
参考)https://www.chaki-shop.com/Manufacturer_products_list.asp?mid=78

 

伊賀焼窯元の代表格・長谷園

伊賀焼の窯元として最も著名なのが、天保3年(1832年)創業の長谷園です。伊賀焼の里・丸柱地区にある老舗窯元で、現存する日本最大の16連房の旧登り窯や大正建築の旧事務所を見学できます。伝統の技は確実に若い陶工たちに受け継がれており、その作業ぶりを見学することや実際に陶芸体験も可能です。
参考)伊賀焼窯元長谷園【公式】

 

長谷園は約180年の歴史を受け継ぐ窯元で、現在7代目が運営しています。「かまどさん」「ヘルシー蒸し鍋」「ビストロ土鍋」などのユニークな機能土鍋を数多く生み出し、プロの料理人にも愛されています。300〜400万年前の古琵琶湖層から採掘した伊賀の粗土で作る土鍋は、上質な手触りも魅力となっています。毎年5月2日・3日・4日には「窯出し市」を開催し、3日間でのべ3万人のお客様が訪れる一大イベントとなっています。
参考)伊賀焼窯元 長谷園

 

伊賀焼窯元長谷園【公式】
長谷園の公式サイトでは、かまどさんをはじめとする様々な伊賀焼製品の詳細や購入方法、窯出し市などのイベント情報が確認できます。

 

伊賀焼作家の特徴的な技法

伊賀焼作家たちは、熱に強い特性を生かした「伊賀の七度焼」と呼ばれる製法で作品を制作します。高温で何度も焼成するため、窯の中で壊れてしまうものも多く、完成品として取り出せるものはごくわずかです。焦げと窯変によるビードロ、力強い形が独特で、土の風合いを生かした焼き物が多いのが特徴となっています。
参考)料理を引き立て美味しくする。名脇役の陶器「伊賀焼」の魅力に迫…

 

古伊賀の特徴として、釉薬を掛けずに焼く「焼締(やきしめ)」技法があります。1200〜1300℃の高温で焼き上げるため、かなり強度があります。窯の中で灰が表面に付着して溶けた結果、自然と釉薬状になる「ビードロ釉」と呼ばれる透明な緑色の層が生まれます。赤くなっているところは土に含まれている鉄分が酸化して発色し、黒いところは焦げたような状態で変色しています。
参考)サイケデリックなご老人

 

坂本瀧山は、古伊賀の伝統的技法「焼締」にこだわり、一つの作品のために高温で何度も焼き、伊賀焼の特徴である自然釉のもたらす見事な景色を作り上げています。このように各作家が独自の解釈で伝統技法を継承しながら、現代的な表現を追求しています。

伊賀焼作家の市場評価と価値

伊賀焼作家の作品は、実績や知名度によって市場評価が大きく異なります。展覧会での受賞歴がある作家や、国内外の陶芸美術館に所蔵されている作家の作品は買取額が跳ね上がる可能性があります。川喜田半泥子の作品は国内外で人気が高く、希少価値の高い作品であれば数百万円で取引されることもあります。
福森雅武は土楽窯の7代目で、現代伊賀焼の代表的作家です。轆轤(ろくろ)による手仕事で伝統技術を受け継ぎながらも、食器・茶器・土鍋といった日常使いの器にも対応する実用性の高い作品を手がけています。若くして土楽窯の当主となった後は意欲的に創作を続け、国内外で個展を開催し、伝統とモダンを融合させた作品は市場でも高く評価されています。
著名作家の作品で保存状態が良く、共箱・付属品が揃っているものは特に高い評価を受けやすくなっています。真贋の証明がしっかりしている場合はさらにプラス材料となり、コレクターやギャラリー市場での価値が高まります。

伊賀焼作家選びの着眼点

伊賀焼作家を選ぶ際には、まず伝統的な技法を重視するか、現代的な表現を求めるかを明確にすることが重要です。古伊賀の復興に取り組む作家の作品は、茶陶としての格式を持ち、コレクション性が高くなっています。一方、新学のような現代作家の作品は、日常使いにも適した実用性と芸術性を兼ね備えています。
窯元の歴史や規模も重要な要素です。長谷園のような老舗窯元は、安定した品質と豊富な製品ラインナップが魅力で、土鍋などの調理器具を求める場合に適しています。個人作家の作品は、一点物としての希少性と作家の個性が強く反映されるため、芸術作品としての価値を求める場合に向いています。
参考)https://store.igamono.jp

 

伊賀焼の特徴である耐火性と蓄熱性を生かした作品を選ぶなら、伊賀の粗土を使用した本格的な製法で作られているかを確認することが大切です。約400万年前の古琵琶湖層から採れる伊賀の土を使用した作品は、遠赤外線効果により食材の芯まで熱が浸透し、調理器具として優秀な働きをします。
参考)伊賀焼の土鍋とは?特徴・使い方・選び方まで徹底解説 | 伝統…

 

伊賀焼作家のイベントと体験

伊賀焼作家や窯元では、様々なイベントや体験プログラムを提供しています。長谷園では陶芸体験(要予約、有料)が可能で、実際に陶工たちの作業ぶりを見学しながら伝統の技を学ぶことができます。新歓嗣の窯では穴窯を使った本格伊賀焼作りも体験できます(要相談)。
参考)(開催終了)長谷園「窯出し市 2025」開催のお知らせ

 

窯出し市は伊賀焼を手に入れる絶好の機会です。長谷園では毎年5月2日・3日・4日の3日間、9:00〜17:00に窯出し市を開催しています。この期間限定のイベントでは、通常よりお得な価格で作品を購入できるほか、作家や職人と直接交流する機会もあります。のどかな自然の中で、この日限りの体験とお買い物を楽しめます。
伊賀焼陶器まつりでは、藤原有二、泉窯、語心庵など多くの窯元が出店し、様々な作家の作品を一度に見比べることができます。40回以上の歴史を持つこのイベントは、伊賀焼の魅力を広く知る機会となっています。
参考)伊賀焼陶器まつり公式ホームページ

 

伊賀焼作家が生み出す多様な作品

伊賀焼作家たちは、茶陶から日常使いの器まで幅広い作品を制作しています。谷本景は「耳付花入」などの古典的作品を数多く手がけると同時に、独自の造形美を追及した現代的な花器も制作しています。伊賀焼は「伊賀に耳あり、信楽に耳なし」と言われるように、水差や花生けは対になる"耳"を持つものが多く、『破袋水差』や『耳付花入』が代表的な作品です。
新学の作品は、伝統的な伊賀焼の大胆なカットや造形を現代的に創造したもので、花器や抹茶茶碗はもちろん、普段使いのご飯茶碗、湯呑、珈琲カップまで伊賀焼の揺らぎや歪みが見られます。その美しさと技術の高さ、そして独自の表現力によって、多くの人々から高い評価を受けています。
参考)https://narrative-platform.com/pages/%E4%BD%9C%E5%AE%B6-%E6%96%B0%E5%AD%A6%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6

 

土鍋は伊賀焼の代表的な製品で、長谷園の「かまどさん」は特に人気が高い作品です。伊賀の土の耐火性と蓄熱性を最大限に生かした土鍋は、火から下ろした後でもなかなか冷めず、弱火でコトコト煮込んでいるのと同じ温度を保ってくれます。日本で取れる陶土の中で土鍋にできるほどの耐火度を持つのは伊賀の土のみと言われています。
参考)https://three-tone.com/?mode=cateamp;cbid=2009610amp;csid=0

 

伊賀焼作家の歴史と茶道文化

伊賀焼の歴史は天平年間(729〜749年)に伊勢神宮の神瓶を作るため、丸柱寺谷の地に窯を興したのが始まりとされています。戦国期から織豊時代にかけて茶道文化が勃興すると、伊賀焼は茶陶として全国的に評価されるようになりました。天正年代の伊賀の領主・筒井定次は大いにこれを奨励し、続く領主藤堂氏も藤堂伊賀の優品を世に出しました。
参考)https://kokehada.com/sub-1.html

 

本格的に伊賀で茶陶が焼かれ始めるのは、天正十三年(1585年)に筒井定次が大和郡山からこの地に移封となってからと考えられています。上野城内で茶道具の焼成を目的として始まり、慶長十三年に藤堂高虎・高次が城主となって後も引き継がれ、桃山陶器の一つの頂点を極めました。古田織部、小堀遠州等の茶人の指導も得て、伊賀焼は茶陶としての地位を確立し現在に至っています。
参考)遠州公ゆかりの茶陶「伊賀焼」 href="https://www.enshuryu.com/%E5%B0%8F%E5%A0%80%E9%81%A0%E5%B7%9E/%E9%81%A0%E5%B7%9E%E5%85%AC%E3%82%86%E3%81%8B%E3%82%8A%E3%81%AE%E8%8C%B6%E9%99%B6%E3%80%8C%E4%BC%8A%E8%B3%80%E7%84%BC%E3%80%8D/" target="_blank">https://www.enshuryu.com/%E5%B0%8F%E5%A0%80%E9%81%A0%E5%B7%9E/%E9%81%A0%E5%B7%9E%E5%85%AC%E3%82%86%E3%81%8B%E3%82%8A%E3%81%AE%E8%8C%B6%E9%99%B6%E3%80%8C%E4%BC%8A%E8%B3%80%E7%84%BC%E3%80%8D/amp;#8211; 遠州流茶道

 

「織部好み」と呼ばれる歪みの激しい造形に自然柚、焦げなどが見られる『破調の美』が古伊賀の特徴です。野性味と自然美を併せ持つ唯一無二の焼き物として、茶人風流人の心をとらえました。器壁にはヘラ工具を使用した波状の文様や格子状の押し型文様のほか、ゆがみ、緑色のビードロ、灰かぶりや焦げ、鉄釉を垂らすといった意匠が見られます。

伊賀焼作家の窯元めぐり情報

伊賀焼の窯元は主に三重県伊賀市に集中しており、窯元めぐりが楽しめます。恒岡光興は三重県伊賀市円徳院1085に位置し、森里卓己は西条189-3、工藤二郎は槙山に窯を構えています。それぞれの窯元で個性的な作品を制作しており、直接訪問して作品を見ることができます。
参考)窯元めぐり

 

春萌窯、圡楽窯、光月窯、忠央窯などは、素朴な風合いが魅力のおしゃれなデザインで人気を集める窯元です。各窯元は伝統的スタイルはもちろん現代的デザインの器も数多く並び、伊賀焼の中にあって多様な作品に出合うことができます。伊賀焼発祥の地・丸柱の窯元では、異色の作品を見つける楽しみもあります。
参考)【決定版】伊賀焼の魅力とは?おしゃれなデザインの人気窯元5選…

 

窯元めぐり | 伊賀焼
伊賀焼の公式サイトでは、各窯元の所在地や連絡先、特徴などの詳細情報が掲載されており、窯元めぐりの計画に役立ちます。

 

伊賀焼作家たちは、約1200年の歴史を持つ伝統を守りながらも、常に新しい表現を追求し続けています。古伊賀の復興に尽力した歴史的巨匠から、現代的な感性で新しい伊賀焼を生み出す若手作家まで、それぞれが独自の美意識と技術で作品を制作しています。窯元めぐりやイベントへの参加を通じて、実際に作家や作品に触れることで、伊賀焼の奥深い魅力をより深く理解することができるでしょう。