丸卓を炉で使う点前では、柄杓を棚に動かさず水差しに水を注いだほうが正しいと思っていませんか?実は、2本脚の丸卓では水差しを棚に乗せたまま水を注ぐのが正解で、やかん(水次)は使えません。
丸卓は、天板と地板がともに丸い形をした2本脚の棚です。読み方は「まるじょく」で、茶道を始めて間もない方が最初に習う棚のひとつとして、裏千家でも広く使われています。
棚の脚が2本という特徴は、4本脚の更好棚などと比べると一目で判別できます。ちょうど細い柱が2本、上下の丸板をつないでいるイメージです。シンプルな構造ながら、お道具の荘り方(飾り方)や水の注ぎ方には独自のルールがあります。
丸卓には主に「利休好み」と「宗旦好み」の2種類があります。利休好みは桐の木地(塗りをしていない素材感を活かした仕上がり)で、2本の柱が天板と地板の内側に付いており、地板の裏には低い3つの足がついています。一方、宗旦好みは一閑張(いっかんばり)の黒仕上げで、2本の柱が天板と地板の外側に付いているのが特徴です。デザインの印象としては、利休好みがやわらかでたおやかな雰囲気を持つのに対し、宗旦好みはシャープでモダンな印象があるといわれています。
丸卓は炉・風炉いずれの場合にも使用できる棚です。これは中国から伝わった「卓(たく)」と呼ばれる飾り棚を茶道の棚物に応用したもので、もともとは床の間に香炉や花入を飾る台として使われていたとされています。川から流れてきた壊れた酒樽を見て棚に応用しようと思いついたという逸話も残っており、道具の歴史を感じさせる棚です。
裏千家の稽古では、丸卓から更好棚、大板二枚板へとステップアップしていくことが多く、棚の扱いの基礎を身につける入口としても重要な存在です。
丸卓の道具の荘り方(かざりかた)は、棚の板の形と脚の数によって決まります。つまり、丸板か四角板か、2本脚か4本脚かで変わってくるということです。
まずお点前に入る前の水屋仕事として、水を入れた水差しを地板(下の板)に、お茶を入れた棗を天板(上の板)に荘ります。これが炉での丸卓の基本の配置です。
柄杓の荘り方は、丸板の棚ならではのポイントがあります。お点前が進んで棗や茶杓の拝見が所望されたとき、柄杓の合(ごう=湯を汲む丸い部分)を「ふせて」天板に置くのが正しい扱いです。右手を柄杓の裏に回して合をふせる動作が求められます。向こう3分の1に合が、手前4分の1に柄の端がくるように置くのが目安で、四角板の棚でも位置の比率は同じです。
ただし、「合をふせる」のは木地(塗りをしていない生地)の丸卓の場合です。溜塗りなど塗りが施された丸卓の総飾り(お点前で使う道具をすべて棚に飾った状態)のときは、柄杓を天板の真ん中にまっすぐ置きます。同じ丸卓でも木地か塗りかによって柄杓の置き方が変わるので注意が必要です。これは意外と稽古でも混乱しやすい点のひとつです。
蓋置は、柄杓の合からまっすぐ下、柄杓の節のあたりの位置にバランスよく置きます。棚点前では竹以外の蓋置を使うのが原則です。これが基本です。
水の注ぎ方については次の見出しで詳しく説明しますが、道具の荘り方・柄杓の向きはセットで覚えておくとお稽古がスムーズになります。
丸卓での水の注ぎ方は、棚の構造上の特徴から来る独自のルールがあります。これを知らないまま稽古に臨むと、必ずといっていいほど詰まる場面が出てきます。
2本脚の丸卓では、水を入れるときに水差しを棚から動かしません。地板の上に置いたまま、上から水を注ぎます。これは天板が上に覆いかぶさる形になっているため、やかん型の水次を使うと天板が邪魔になってしまうからです。そのため、丸卓では細長い注ぎ口を持つ片口(かたくち)を使って水を入れるのが基本です。
一方で、4本脚の棚(更好棚など)の場合は柱が4本ある分、横方向に開口が広く、やかん(水次)で水差しを棚から出し入れする動作が可能です。脚の本数が変わると水の注ぎ方も変わるということですね。
裏千家の初心者向け茶道教室の案内でも「棚柱が4本のときにはやかんで水指に水を差し、棚柱が2本のときには片口でお稽古」という記述があり、これは公式サイトでも明記されています。知っていると稽古の段取りで無駄な動きがなくなります。
裏千家公式サイト|初心者向け茶道教室の案内(棚の種類と水の差し方)
片口は細長い注ぎ口が特徴の器です。長さにして15〜20cm程度のコンパクトな道具ですが、狭い棚の地板にある水差しへピンポイントで水を注ぐには非常に使い勝手のよい形です。稽古では実際に片口を手に持ってみると感覚がつかみやすいので、道具屋や稽古場で一度確認してみるとよいでしょう。
炉の薄茶棚点前(丸卓)の全体的な流れを整理します。細かい所作は稽古で繰り返し確認するとして、ここでは迷いやすい場面に絞って解説します。
まず水屋仕事の段階で、水差しを地板に、棗を天板に荘っておきます。棚(丸卓)は定座として、畳の中央・炉縁から16目の位置に置きます。この「16目」という距離はハガキの長辺(約14.8cm)よりやや広い間隔です。
お点前の手順のポイントをまとめると次のようになります。
| 場面 | 注意点 |
|---|---|
| 棚点前の座り方(炉) | 内隅(炉縁の内側の角)を膝の中心に狙って座る |
| 柄杓を構えるとき | 「鏡柄杓」の形で左手で節を持ち、右手で切り止めに添える |
| 蓋置を炉の傍に置く | 炉の右下に3目ずつあけて置く |
| 棗の荘り方(炉) | 天板の右寄りに置く(拝見後は蓋置の対角線上) |
| 柄杓を棚に飾るとき | 丸板なので合をふせ、右手を裏に回して置く |
| 水の注ぎ方 | 水差しは棚から動かさず、片口で地板上に注ぐ |
お点前の途中で棗と茶杓の拝見が所望される場面でも、丸卓では柄杓を天板に荘ってから蓋置を隣に添えるという手順を踏みます。拝見が終わったあとは棗を蓋置の対角線上に置き合わせます。この置き合わせの位置は、上から見たときに三角形を描くような位置関係になるとバランスよく仕上がります。
お仕舞いの段階では、柄杓で水を釜に一杓さし湯返しをします。湯返しとは、釜に水を差したあと湯を汲んで再び釜に戻す動作のことで、釜の温度を調整する意味合いがあります。水指が運びの点前の場合には湯返しはしませんが、棚に水指が置いてある場合は湯返しが必要です。これだけ覚えておけばOKです。
丸卓を使った炉の点前には、薄茶点前の他に「濃茶棚点前」と「総飾り」があります。それぞれで手順や道具の扱いが変わってくるため、段階を踏んで理解しておくと稽古が整理されます。
濃茶棚点前は薄茶よりも正式なお点前です。道具も少し増え、棗の代わりに茶入(ちゃいれ)と仕覆(しふくく)が加わります。仕覆とは茶入を入れる袋のことで、緒を解く・被せ直すという一連の動作が点前の中に含まれます。薄茶点前では使わない道具なので、扱いに慣れるまで意識的に割稽古(部分稽古)をするのが有効です。
茶碗については、濃茶点前では絵柄のない茶碗を使うのが原則です。楽茶碗・萩茶碗など、素朴で無地感のあるものが選ばれます。これは、抹茶の緑色と茶碗の色・質感が引き立て合うためです。陶器に関心のある方にとってこの点は特に面白い部分で、茶碗の産地・釉薬・焼成の違いによって手取り感や保温性が変わり、それが濃茶の飲み味にも影響すると言われています。
総飾りとは、建水以外のすべての道具(柄杓・蓋置・棗・茶碗など)を棚に飾った状態でお点前をする形式です。厳しいところですね。通常の点前と逆の手順でお道具を棚から取り出すことになるため、順序を逆から覚えておく必要があります。また、総飾りのときは拝見がないという点も覚えておきたいポイントです。
丸卓の総飾りでは、柄杓を天板の真ん中にまっすぐ置き(木地の場合は合をふせる)、蓋置を水差しのすぐ前に、棗と茶碗を柄杓を挟んで両側に置きます。飾る手順は「柄杓→蓋置→茶碗・棗」の順です。
稽古を積む中でこうした道具の組み合わせに目が向いてくると、茶碗だけでなく棗・水指・蓋置の陶磁器的な味わいにも自然と関心が広がっていきます。意外ですね。産地でいうと、水指には信楽・備前・京焼などがよく使われ、それぞれ土の表情が大きく異なります。道具の歴史や産地を調べながら稽古をすると、棚点前の学習に厚みが生まれます。
茶道の稽古を陶器・やきものへの関心から始めた方にとって、丸卓を使った炉点前は単なる所作練習以上の意味を持ちます。棚に置かれるお道具のほとんどが陶磁器や木工品であり、それぞれに産地・作家・時代背景があるからです。
まず注目したいのが水指です。丸卓の地板に置く水指は、形・素材・釉薬のバリエーションが豊富です。京焼の清和窯のような品のある白釉のものから、信楽の荒々しい土感を残したもの、備前の焼締のものまで選択肢は多岐にわたります。炉の季節(11月〜4月)は口の広い水指が映えるといわれ、胴が張って安定感のある形が多く使われます。これは使えそうです。
蓋置も陶器が多く使われます。棚点前では竹以外の蓋置を使うのが原則で、青磁・絵唐津・仁清写しなどが稽古場でよく見られます。蓋置は掌に乗るほどの小さなもので、高さは5cm前後、重さは100gを切るものがほとんどです。小さいながらも釉薬の質感や高台の削りに作家の個性が出やすいので、陶芸ファンにとって見どころのある道具です。
茶碗に関しては、丸卓の薄茶点前では絵柄のあるものも使えますが、濃茶では無地のものを選びます。稽古を通じて様々な茶碗を手にすることになりますが、炉の季節は「手に持ったときの温もり感」が一層重要になります。厚手で保温性の高い楽茶碗や、鉄分を含む暗い釉薬の萩茶碗は炉時期の代表的な選択肢です。
陶器を観る視点で茶道の稽古を進めるなら、稽古前後に道具の産地や作家を簡単にメモしておくことをおすすめします。数稽古を重ねるうちに自然と「この釉薬は何焼き」「この土の味は備前に近い」という感覚が育ち、茶道の学習と陶芸知識が相互に深まります。
また、初心者がよく使う稽古用の道具は1〜3万円程度から揃えることができます。棚については楽天・Amazonでも桐木地の組み立て式丸卓が1万円台から入手でき、自宅稽古の環境を整えやすくなっています。棚を手元に置くと、柄杓の置き位置や水差しへの水の注ぎ方を繰り返し確認できるので上達が早まります。稽古の復習効率が上がるということですね。

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